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第一章 ジーニアスベル

第13話 夜の狩り

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「ん~、ジーニアス……むにゃむにゃ」

「ジーニ、今日はなにするつもりなの~……むにゃむにゃ」

「バブバブ」

 設営の終わったテントで両親が寝てる。夢の中でも僕は二人と遊んでいるのかな?
 最近、みんなと一緒に居ることが多くて試練が達成できないから夜に行動してる。
 なので今日も静かにテントの外へ。

「バブバブ! バブバブ!」

 野営地から離れていく。見張りをしてる騎士さんが見えるけど、野営地の中への警戒はしてないから簡単に出られた。僕のハイハイは音を置き去りにするから気づけないのは仕方ないけどね。

「バブ! バッブ!」

 野営地から少し離れて、思いっきりジャンプ!
 体重がかなり低いため凄い高度が高い。雲が横を通るくらいの高さ、ここら一帯の景色が一望できる。
 試練自体の難易度がかなりレベルアップしてしまったからこんなことをしないといけなくなった。

 ーーーーーーー

  試練

 Eランク以上の魔物を狩れ 0/100 

 報酬 経験値 知力の秘薬

 ーーーーーーー

 変更してもいいんだけど、知力や精神力も上げておきたいと思ったから変更しなかった。
 Eランク以上のくくりがよくわからないから見つけた魔物をただただ狩るだけ、闇夜に隠れてハイハイが魔物を襲う。

「タッタッタ~! ダ!」

「ギャ!?」

 ハイハイから鋭くジャンプして四本足の魔物の胴体を貫く。だいたいこの攻撃で決着がつく。僕のハイハイタックルを初めて見て躱す魔物はやばい子だろうな~。
 
「タッタッタ~! ダ!」

「!?」

 百匹目の魔物と遭遇していつも通り胴体抜きをしてやろうと思ったら避けられた。僕は驚いて振り返る。

「人間の……赤子。いや、人間にしては動きがおかしいな。同類の類か? ゴブリンキングがやぶれたと聞いて見に来たが。元凶か?」

 男が僕を見て呟く。人の姿をしているけど、目が真っ赤で牙が生えてる。白い肌でタキシードみたいな服を着てる。これはヴァンパイアとか吸血鬼とか、そういった子かな? こんな夜中に火を使わずに歩くのはおかしいもんな。それに口ぶりから魔物側の匂いがするぞ。

「バブ!」

「敵対的な小僧だな。我々からしたら人間は餌だ。お前は極上の餌と言うわけだ!」

 男はそういって掴みかかってくる。しかし、それはダメだよ。
 ドシュ! 予備動作なしのハイハイからの跳躍。弾丸のような僕の突進で彼の胴体に風穴があく。
 僕を捕まえるには前かがみになるしかない。その状態で跳躍を躱すなんて出来るわけがない。男の胴体を通り抜けて振り返る。男はワナワナと風穴の開いた体を触診していく。

「私はヴァンパイアのヤゾ様だぞ。こ、こんなガキにやられるはずがないんだ!」

 血で胴体を作って、更に剣を作り出す。血で再生したのか、流石ヴァンパイアといったところかな。

「タッタッタ~!」

「馬鹿の一つ覚え! 毎度そんな直線的な攻撃が通ると思うか!」

 ハイハイで近づこうと思ったらバックステップで逃げていく。流石に近づけなくなった。まあ、本気で追えば追いつけるけど、流石に武器もちに突撃するには勇気がいるな。たぶん、ステータスがすべての世界だから、ヤゾの攻撃は僕には効かないと思うけど。

「ダブ!」

「く! 早い! しかし、私の剣からは逃げられんぞ!」

 僕から離れようとするヤゾ、そして、左右から赤い剣が襲い掛かってくる。自由に飛ばせるのは凄い便利な攻撃だな。魔法か何かだろうか?

「私達は血を自由に使える。怪我をしてからが本気なのだ! さあ、私の血肉となれ!」

 自慢げに話してくるヤゾ。上下左右で血の剣が踊り狂ってる。長くなるとみんなが起きちゃうからな~。
 彼には悪いけど、早く済ませよう。

「ダブダブダブ~。【バイバ~バブ~ブ】」

「な!? 魔法だと!?」

 ファイアストームを唱えると驚愕して声をあげるヤゾ。激しい炎の竜巻が血の剣とヤゾを巻き込んで轟音とともに燃やしていく。そして、

『試練を達成しました』

 達成を告げる声が聞こえてくる。ヤゾを倒したみたい。意思疎通のできる魔物は初めてだったな~。人を餌なんて言うやつとは仲良くできないから始末できてよかった。
 とりあえず、すぐに秘薬を飲んでっと。

「バブ?」

 秘薬を飲んでいると試練が課せられた。

 ーーーーーーー

  試練

 一週間以内にAランク以上の魔物を狩れ 0/1 

 報酬 マジックバッグ

 ーーーーーーー

 Aランクの魔物? Eランクの試練から一気にランクが上がった。達成できるかわからないけど、報酬が一番欲しいものだ。
 マジックバッグ、無限にアイテムが入るバッグ。僕の知識ではそういう認識だけど、この世界ではどうだろうか? そこも気になるところだな。
 おっと、考える前に帰ろう。そろそろお母さんとかがびっくりしちゃうから。

「ジーニ! どこへ行ったの! ジーニ~」

「ジーニアス~!」

 あらら、大騒ぎになってる。さすがのファイアストームはやりすぎたかな。お父さんとお母さんが声をあげ始めてる。騎士団の人達も動き出しそうだ。早くいかないと!

「ジーニ様!」

「バブ?」

 まだ野営地の外なのにシリカちゃんが僕に気が付いて声をあげた。一足先に探しに出てきてたみたい。
 僕を抱き上げると涙を流してる。

「ジーニ様。心配させないでください」

「バブバブ!」

「……あなたは夢のような、現実ではないようなお人。いなくなられるともう会えないんじゃないかと不安になります」

 シリカちゃんは泣きながら声を紡ぐ。確かに僕って赤ん坊とは思えないことばっかりしてるからな~。夢の中の人物みたいに映っちゃうよな。難民のみんなにはそこそこ知られちゃってる、主に子供にだから大人にはシーって教えてるけど。
 シリカちゃんに抱かれて野営地に戻るとみんな安心してくれた。騎士団の人達にも迷惑かけちゃったな。
 シリカちゃんに抱きしめられながら床につく。お母さんとシリカちゃんに挟まれて眠る。明らかにどこかへ行かないようにと言った感じだ。そんなに心配させちゃったか。これからはもっと急いで試練を達成しよう。
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