赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました

カムイイムカ(神威異夢華)

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第一章 ジーニアスベル

第18話 呪いの鎧ボルグ

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「う、ここは……」

「よかった。ここは私の家よ。食べ過ぎて倒れられて」

 目を覚ますデシウスさん。体を起こすと辺りを見回してる。お母さんが水の入った木のコップを手渡した。

「すみません。私はどのくらい寝ていましたか?」

「一時間も経ってないわよ」

「じゃあ、まだ間に合う。ううっお腹が重い」

 デシウスさんはお腹を抑えて蹲る。

「なぜそんなに急ぐの? 倒れる前に言ってたヴァンパイアと関係してる?」

「聞いてしまいましたか」

 デシウスさんはそういってベッドに倒れる。

「その鎧も関係してる? 脱がそうと思ったら肌に張り付いていたから」

「……」

 ベッドに寝かせる時に邪魔になるってことで鎧を脱がせようと思ったら脱がすことができなかったんだよな~。まるでゲームの呪いの防具みたいだ。

「私の一族に伝わる鎧です。一度身につけたらその仇を倒すまで脱げないと言われています」

「仇?」

「私の場合はヴァンパイア。ご先祖様はドラゴンでしたのでまだましですね」

 そんな恐ろしい鎧を身に着けちゃったのか。まともな暮らしが出来なくなるな。

「……湯あみとかトイレはどうしているの?」

「わざわざ湯を作ることはありません。川で水浴びですね。トイレは……あまり言いたくはないのですが鎧が吸収しています」

「!? じゃあ、そのまま……」

 お母さんの素朴な疑問にも正直に答えてくれるデシウスさん。鎧のおむつって感じだな。

「大変だったのね。じゃあ、そのヴァンパイアを倒すまで脱げないのね?」

「はい。そのものを倒した方に触れられるだけでも達成できるので倒した方を探していたのです」

「そうなのね。探してる人はどんな人なの?」

「たぶんですが、ジーク様だと思われるのですが。ジュスペンスの英雄ですから」

 お母さんが感動して涙を見せて話すとデシウスさんがお父さんの名を話した。僕らは思わず顔を見合わせて目をパチクリさせる。

「うちの人はヴァンパイアなんて倒していないと思うけど……」

「うちの人? ではここがオーベンの村ですか? 外の看板にはジーニアスベルと書いてありましたが?」

 お母さんの呟きにデシウスさんは首を傾げてる。そういえば、看板を変えたばかりだった。彼を騙すことになっちゃったな。

「今日からジーニアスベルになったのよ。本当にさっき変えたばかりだったの」

「そ、そうだったんですね……。ではここで待っていれば私は」

 お母さんの言葉にデシウスさんは拳に力を込めてる。悲願が叶うと思って涙してるんだろうな。

「ん~、でも、さっきも言ったけれど、ヴァンパイアなんて倒していないと思うけど。因みに触るって言うのはどう触るの? 妻として知っておきたいんだけれど」

「いかがわしいことをするわけじゃありません。その方に触れて【願いが叶った】と呟くだけです」

 ガシャン! お母さんの疑問に答えたデシウスさん。それと同時にデシウスさんの鎧が彼から剥がれていく。肌着だけの彼……なぜか胸が膨らんでいる?

「……キャ!?」

「……女の子?」

「バブ?」

 野太い声じゃない声をあげるデシウスさん。兜もはじけてしまって金髪の長い髪がなびいてる。

「なんで!? なんで急に脱げたの!?」

 オロオロよ涙を見せるデシウスさん。もしや、ヴァンパイアってヤゾとかいうやつのこと? 倒したの僕じゃん……。ってことは僕が触った後に【願いが叶った】って言ったから脱げたのか。それにしても呪いの鎧のくせに【願いが叶った】なんて悪趣味だな。

「とにかく、おめでたいわね。服は私の服をあげるわ」

「あうう、ありがとうございます」

「それにしても綺麗な髪ね。長い間、日の目を見ていなかったって言うのにね。これもエルフだからかしら?」

 長い金髪のエルフさんだったデシウスさん。この世界にはエルフがいるみたいだ。魔物よりも先に出会いたかったな~。

「20年……」

「え?」

「20年かかりました。両親を殺したヴァンパイアのヤゾをこのボルグと共に追いかけて来て。やっとやっと願いが叶いました!」

 20年……。彼女はこんなに綺麗な姿と声をしているのに20年封印されてたのか。それが報われた喜びはダムが決壊する程の衝撃だろうな。

「父様母様! 私はやりました!」

 デシウスさんは涙で布団を濡らす。お母さんが思わず頭を撫でちゃってるな。僕も一緒に撫でてあげると彼女は僕の顔を見つめてきた。

「え!? あなたは?」

「ふふ、私とジークの子、ジーニアスよ。いい子でしょ?」

「……。子供、ですよね?」

 デシウスさんはびっくりした表情で僕を抱き上げる。お母さんが紹介してくれたのに聞こえていないみたいだ。

「レベルが凄い高い……」

「バブ!?」

 デシウスさんの呟きに僕はびっくりして声をあげた。もしや、この人レベルが見える人?

「え? レベルが見えるの? ジーニはどのくらいなの?」

「……45です」

「!?」

「バブ!?」

 お母さんが興味津々で聞くとハッキリと答えるデシウスさん。合ってるから確実に見えてる。お母さんが驚くと同時に僕も驚くとジト目で僕を見てくるお母さん。

「ジーニ……。ここに帰ってくるとき、野営のときにいなくなったわよね?」

「バ、バブ」

「あの時にデシウスさんの仇を倒したんじゃないの?」

 お母さんが詰めよってきて尋問を開始。的確に指摘してくるお母さんに思わず頷いてしまう。

「やっぱり……。もう、誰に似たのかしらね」

 お母さんは呆れてため息と共に声を漏らした。たぶん、お父さんかな~?

「やはり! では恩人はこの子、ジーニ様なのですね」

「バブ?」

 デシウスさんは薄着のまま、僕を抱きしめる。大きめのお胸が苦しい。あのボルグとかいう鎧に締め付けられていたとは思えないほどのお胸だ。

「デシウスさん?」

「お母様! 恩人であるジーニ様のお世話は私に任せてください。これからは執事、いえ! メイドとしてお世話させていただきます!」

「バブ?」

 お母さんの焦りの声にデシウスさんが何のためらいもない声をあげる。なんでそんなことに?

「私達の里ではこのボルグの鎧にまつわる昔話があるのです。それには仇を代わりに討たれた場合について記されていました」

「そ、それが恩人のお世話なの?」

「はい。結婚が許されるならそれでもいいのですが多くは執事やメイドになるものでした」

「……ジークじゃなくて良かったわ」

 お母さんの質問に素直に答えるデシウスさん。お父さんじゃなくて良かった……じゃないですよお母さん。もしかしたらこの綺麗なエルフさんと僕は結婚させられちゃうよ。って男としては嬉しいことなのか? いやいや、僕には気になる人が別にいるし。

「ジーニ様? エリアス様、お客様ですか?」

「ん? エルフ?」

 邪な考えをしているとシリカちゃんとララちゃんが家にやってきた。僕を抱きしめるデシウスさんを見てシリカちゃんが無言で近づいてくる。

「ジーニ様が苦しそうです! 離れてください!」

「ああ、ジーニ様! 娘、私はデシウス! ジーニ様のメイドとなった。お世話は私がする。よこしなさい!」

「ん、ダメ。お胸で死んじゃう」

 シリカちゃんが僕を奪うとデシウスさんも意地になって奪い返そうとする。ララちゃんも加わって僕の取り合い。丈夫な体だから何とかなっているけど、普通の赤ん坊だったら危険ですよ~。

「はいはい! ジーニは私の子よ! みんなは外に出ていって~!」

「そ、そんなお母様!」

「わ、私ったら。子供みたいに意地になって、ジーニ様、エリアス様。ごめんなさい」

 お母様が僕を奪うとみんなを外に出していく。デシウスさんには洋服を渡してるな。
 シリカちゃんは謝ってくれてるけど、デシウスさんは声をあげるだけ。ララちゃんは無言で従ってくれてるな。

「もう、ジーニは人気者ね。あんなに可愛い子達に想われちゃって……」

「ブ~……」

 お母さんが頬をつついて揶揄ってくる。僕は顔が赤くなるのを感じながらそっぽを向いた。
 想われてると言うよりは大事にされてるって感じだと思うけどな。
 まあ、好きな人に想われてたらいいな~。
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