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第一章 ジーニアスベル

第24話 招かれざる客

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「末恐ろしい子供ですね」

「ははは、確かに」

 ローズさんの言葉にお父さんが笑いながら答える。
 騎士団の寝泊まりしている大きめの住宅でお父さんたちと騎士団の人達が談笑中。
 洞窟のダンジョンから帰ってきてゴーレム君が騒ぎになっちゃったから次の日に呼び出しされてしまった。
 みんな僕を見て満面の笑顔になって行く。

「ジーニは超天才なのよ」

「神童ですね。私もよく言われたものですが、ジーニ様と比べたら天と地との差があります。まさか、魔物の群れの大半を屠ったファイアストームがその子の魔法とは」

「バブ!」

 お母さんが自慢げに声をあげるとローズさんが同意して僕の頬をつついてきた。

「俺達もびっくりだ。ゴーレムを従魔にしちまうなんてな。Aランクの冒険者や王族でも従魔なんてそうそういないっていうのにな」

 お父さんが僕の抱き上げて頭を撫でてくれる。そんなに珍しかったのか。僕のスキルの【試練】は色々と反則だな。これからもそういった従魔化させるようなアイテムが出てくるかもしれないな。積極的にやっていこう。

「お~い。ジーク」

「ん? どうしたグッツ?」

 みんなで話しているとグッツさんがやってきた。嫌そうな顔をしてるけど何があったんだろう?

「行商人が来たんだけどな。少し身分の高い奴で、問題のあるやつでよ」

「身分が高くて問題?」

「ああ、ここの鉱石を独占するって言ってきてるんだよ」

 トルトさんみたいないい人ばかりじゃないってことかな。

「わかった。ローズさんも一緒に来てもらっていいですか?」

「はい、そんな不届きもの。追い出しましょう」

 騎士団のミルファさんやラミルダさんも立ち上がってお父さんと共に村の入口に向かう。
 僕ももちろん、お母さんに抱っこされてついていく。ゴーレムも後ろにいるから威圧感半端ないな。

「いいから全てよこせと言っている!」

 村の入口に着くと声を荒らげてグレースさんに突っかかる男がいた。ちょび髭を生やした優男、少し高価な服を着てるな。

「お待たせしました。この村の長を務めているジークです」

 泣きそうになってるグレースさんを庇うように間に入るお父さん。グレースさんはすぐにグッツさんに抱き着く。

「ふんっ。やっと来たかウスノロが」

「……」

 隠す気もなく愚痴をこぼす男。お父さんの眉間がピクピクしてるのを感じる。

「私はウォッカ男爵。金貨百枚でこの村を買ってやる。ありがたく思え」

「……」

 金貨百枚か、ブランド様にもらったお金と同じだな。村の復興にはほとんどお金を使っていないからそのまま持ってるんだよな~。だからお金はいらない。

「あなたに村を買うことはできません」

「!? なぜだ! 百枚だぞ。そ、そうか! 金貨を知らないんだな、田舎者め。ほら、これだ!」

 お父さんが断ると男は金貨を一枚見せびらかしてくる。その時に僕の後ろのゴーレムを見て後ずさっていく。

「な、なんでゴーレムが……。だ、だれか! 私を助けろ」

 ゴーレムにびっくりしたウォッカ男爵。声を荒らげると彼の馬車を守っていた兵士達が集まってくる。

「あれはうちの従魔ですよ。安心してください」

「じゅ、従魔だと……」

 お父さんがなだめるとみんな唖然としてゴーレムを見上げる。
 少しするとウォッカ男爵は薄気味悪い笑みを浮かべた。

「なるほどなるほど、この村を納めればゴーレムも私のものに……」

「何を考えているんだ?」

「!? 騎士団!? 赤い鎧ということはローズ!?」

 ウォッカの呟きにローズさんが剣を引き抜いて威嚇する。やっとローズさん達にも気が付いて声をあげた。

「あんたには売れないよ。変な気を起こす気ならこっちも本気でやるからな。さあ、出て行ってくれ」

「……いいでしょう。今のところは諦めましょうか。ですが後悔することになりますよ」

 お父さんがウォッカに睨みを利かせるとやつはニヤッと口角をあげた。そのまま、馬車に乗ると帰っていく。そんなことを言ってくる人をそのまま帰すのは嫌だな~。

 ということでウォッカ男爵の向かった方向にやってきた僕。奴を帰した日の夜にゴーレムと一緒にやってきました。

「バブバブ」

「ゴッゴ」

 ゴーレムに僕を担がせて進んでいると焚火の火が見えてくる。ゴーレムじゃ目立つから彼はここまでだな。出番を待ってもらおう。

「ウォッカ様! 本当にやるんですか?」

「ん? なんだ、怖気づいたのか?」

「そ、そうじゃないですが、勝てる気がしませんよ」

「それを怖気づくと言うのだ。まったく、教養のない馬鹿が」

 兵士達と焚火を囲んで話すウォッカ。何とも馬鹿らしい話をしている。

「あの村の連中を見ただろ。どれもこれも女は美しかった。グレースとかいう女と子供を抱いていた女を見ただろ。あれは鉱石よりも価値のある女だ。フヒヒ、想像だけでも……」

 ウォッカがいやらしい笑みを浮かべて夜空を見上げた。確かに僕らの村は綺麗な人が多いな。ローズさんは綺麗だし、シリカちゃん、ララちゃんは可愛いしね。
 
「で、ですが。従魔持ちの魔法使いがいるということですよ。Aランク以上の実力を持っているはずです見たでしょうゴーレムですよ」

「そんなもの、奇襲で殺してしまえばいいのだ。どんなに優れた戦士も魔法使いも眠るのだから」

 兵士の言葉にウォッカが薄気味悪く笑った。
 残念だけど、眠らない人もいるんだよね~。僕みたいな。

「ダブダブダブ! 【バーバァー】」

「火が!」

「て、敵か!? 灯りをつけろ!」

 焚火に水魔法の【ウォーター】をかける。一瞬で鎮火すると真っ暗になってウォッカ達が騒ぎ出す。僕って天才みたいだからすべての属性の魔法が使えちゃうんだよね。みんなの前だと火と聖属性の魔法で我慢してるのでした。
 すかさず僕は、

「バブ!」

「ばぶ? ぐほっ!?」

 ドタドタドタ。声をあげて突進を繰り出す。みんな体をくの字に体が曲がって寝込んでいく。コロコロしてあげてもいいんだけど、町の近くに人の死体があるのはあんまりいい事じゃないんだよね。魔物が集まる原因にもなるし、こいつら自身が魔物になっちゃうしね。

「ど、どうした! へ、返事をせんか!」

 音に焦りを見せるウォッカ。辺りが静かになると馬車へと逃げこんでいく。

「こ、怖い! だ、誰かいないのか! な、何が望みだ! すべて叶えてやる。なんでも言ってみろ」

 ウォッカの叫びに思わずニタ~っと笑みがこぼれる。人が怖がる姿は面白いな~。そうだ、幽霊のせいにするか。

 ズシン、ズシン。馬車に近づく大きなもの、ゴーレムの頭に跨って長い布をマジックバッグから取り出して被る。そして、帆馬車の天井を破いて、顔をのぞかせてゴーレム君の目を赤く輝かせる。

「ゴ~~~~~!!!」

「ギャ~~~~~!」

 ウォッカと目が合って、ゴーレムが叫ぶ。驚いたウォッカは白目を向いて倒れちゃった。
 ゴーレムの姿も布のおかげてバレてないだろうし、大丈夫だろう。

「バブ?」

 一応ウォッカの身体検査をしておこうと思ったらお漏らししちゃってるよ。よっぽど怖かったんだな。何がとはいわないけど、大きい方まで出ちゃってる。
 まあ、これだけ怖い思いすれば二度と来ないだろう。
 そして、僕は意気揚々と帰宅。いいことした後は心晴れやかだな~。楽しかった~。
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