赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました

カムイイムカ(神威異夢華)

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第二章 フェイク

第25話 フェイクという男

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 ジーニがダメな行商人を退治していたころ。
 王都ジュスペンスに動きがあった。

「ブランド様。ブレイン様がいなくなったことで第一騎士団の団長を決めなくてはいけないのでは?」

「ふむ」

 大臣の言葉に顎に手を当てて考え込むブランド。本来ならジークの名を出すのだが、一度断られている手前口に出せないでいる。

「失礼しますよ~」

「誰だ!?」

 円卓の間にて話をしていると見知らぬ仮面をつけたタキシードの男が入ってきた。大臣が声をあげるが次の瞬間、ブランド以外の人間が静かに席から立ち上がり円卓の間を出ていった。
 異様な雰囲気の中、タキシードの男は名乗る。

「私の名はフェイクですブランド様。あなた様に会えて嬉しいですよ嬉しいですね~」

「……フェイク」

 ブランドは名乗りを受けて席から立ち剣を抜く。それなりの実力を持つブランドは片手に剣、片手に風魔法を纏って身構える。

「逞しいですねブランド様。ですが安心してください。今は手を出しませんよ」

「……別に目的があるということか?」

「そうですよそうですね~」

 フェイクの言葉に安心することなく聞き返すブランド。フェイクの言い回しに苛立ちを覚えるブランドは剣に力を込めた。

「ハッ!」

 苛立ちに任せて剣を振り上げてそのまま振り下ろした。確かにとらえたフェイクの肩、しかし、手応えのない感触にブランドは冷や汗をかいてバックステップを踏む。

「何者だ!?」

「ふふふ、だから言ってるでしょう。私はフェイクなのですよ。うっそ~なのです。怖いですか? 怖いですね~」

 剣をフェイクの体から離しブランドが叫ぶとフェイクはふざけて答えた。確かに切ったはずの肩は無傷。 
 苦虫を嚙み潰したよう表情になるブランドだったが、すぐに苦しみに顔を歪める。

「ぐっ!?」

「ブランド……」

 さっきまでフェイク以外いなかった円卓の間に漆黒の鎧を着た男が現れた。
 隻腕で漆黒の鎧を着た男がブランドの首を掴み持ち上げる。鎧の中から聞こえる声に殺気を感じてブランドは顔を青ざめさせる。

「こらこら~。やめなさいグリード。今はまだ駄目ですよ~。この人達は餌なのですから~。まあ、この間は邪魔者のせいで餌にできなかったのですが」

「ゴホッゴホッ……。え、餌……」

 フェイクの声にグリードはブランドを放す。

「そうですよ。人間なんていくらでも増えます。魔物の餌にして魔王の餌になって欲しかったんですよ~。やっとゴブリンの中から有能なキングが生まれたって言うのに。ハァ~思わず大きなため息がでてしまいますよ~」

 フェイクのため息の言葉にブランドは顔を引きつらせる。

「1万以上もの魔物を倒しちゃうような人間はいないと思っていたんですけどね。神のいたずらですかね~。次の有能な魔物は見つけてはいるのですがね~。まだまだこの子、グリードの方が優秀なくらいです」

 隻腕のグリードの肩を叩いて話すフェイク。すでに次の魔物がいるということにブランドは更に顔を青ざめさせる。

「ということでね~。グリード君をくれたブランド様には感謝しかないので挨拶に伺わせてもらったというわけです」

「くれた? まさか!?」

「そのまさかですよ~。王に裏切られた騎士、ブレイン君で~す。再会できてうれしいですか? 嬉しいでしょ~」

 フェイクは嬉しそうにブランドに報告する。ブランドはグリードを見つめて歯ぎしりをならす。

「あらあら、ふふふ。卑しいですね~ブランド様~」

「卑しい?」

「そうですよブランド様。グリード君ともう一人なんていやらしい」

 ニヤッと笑うフェイクにブランドは怪訝な表情を向ける。なおも満面の笑みで答えるフェイク。

「では私は次の友人のところに向かいますのでこれで」

「友人だと?」

「ふふ、ブランド様も知っている人ですよ。私の遊びを邪魔した方です」

 フェイクの声を聞き、ブランドはジーク達を思い浮かべる。そして、行かせまいと魔法を放ち剣を振り上げた。
 
「!?」

 一瞬で自分の首が切り落とされ、持っていた剣が地面に突き刺さった。自分の死を認識して絶命していく。

「どうでしたか? 自分の死は怖いでしょう、怖いですね~」

「!? ハァハァ……」

「ふふ、あなたの部下たちはこの力で出て行ってもらったわけですけれど、あなたはすぐに出れたようですね。あなたも存外優秀ですね」

 フェイクの声に現実ではなかったことを理解する。確かにブランドは自分の体を離れたところから見ることになっていた。
 地面に突き刺さる切られた剣、そして、首を切られた自分。自分は死んでしまった。ブランドはその苦しみを一瞬で味わい精神を蝕まられた。
 フェイクは幻術を使い、他者を操ることが出来るのだろうことがわかった。

「ではでは、そろそろサービスはやめましょうか。行きますよグリード」
 
「ま、待て!」

 フェイクは引き止めるブランドを無視して王城を後にした。何事もなかったかのように大臣たちが戻ってきてブランドを救護していく。

「さあさあ、遊びの準備ですよ~。楽しいですね、楽しいですよ~」

 スキップを踏むフェイクは楽しそうにジュスペンスを進む。後ろを歩くグリードは少し小走り、傍から見られている姿は異様に映っただろう。

「魔物の王を育てていてよかったですね~。魔王を作るよりも楽しいことが見つかったのですから。ねえ、グリード」

「……殺す、ジーク」

「ふふふ。楽しそうですね~楽しいですね~。は~、会いに行くのはいいのですが、お土産も持っていきたいですね~。何がいいでしょうか。オーク? コボルト? どちらも倒したことがありますよね~。それならヴァンパイアなんてどうでしょうか~。同じ人間にしか見えないあれなら楽しいことになるかも……。終わっちゃったりして」

 不気味な笑みを浮かべてグリードに話しかけるフェイク。
 ジーニ達の元へ静かに近づいてくる。
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