【村スキル】で始まる異世界ファンタジー 目指せスローライフ!

カムイイムカ(神威異夢華)

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第1章 村スキル

第7話 閃光のルーザー

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「土まみれになっちまったな」

 ルーザーさんと一緒に町に帰ってくると彼が呟く。
 穴を掘る道具もなかったから結構大変だった。ナイフや剣で穴をほるなんて経験は日本じゃできないだろうな。

「ん? おうおう。【閃光のルーザー】さん。今度の寄生先はその新人か?」

 ルーザーさんと一緒に冒険者ギルドに帰ってくると声がかけられる。若い冒険者がニヤニヤと笑いながら彼を見つめる。

「ははは、エクス。そんなにいじめないでくれるか」

「いじめてなんていないさ。真実を話しているだけだ」

 ルーザーさんは恥ずかしそうに頭を掻きながら笑う。そんな彼を見てエクスと言われた若い冒険者は口角を上げる。

「いくらやったんだ? 俺にもくれよ」

 エクスはそう言って僕の肩に手をまわしてくる。あまりいい人じゃなさそうだ。

「ルーザーさんにはいろいろと教えてもらったんです。その勉強代を払っただけで」

「ははは、勉強! 面白いことを言うやつだな。失敗のしかたでも教えてもらったのか? それとも身内の失い方か?」

 僕が素直に答えるとエクスは笑いながら言ってくる。
 失敗? 身内の失い方……ルーザーさんの過去に何かあったのか?

「……ははははは。昔のことをあまり声高に話さないでくれ。恥ずかしいからな」

「ぶはは。ここまで言われて何も言えないなんてな。あんた男も捨てたか?」

 ルーザーさんは俯いて苦笑いを浮かべると声を上げた。彼の言葉にエクスは嬉しそうに笑うと併設されている酒場に入っていった。

「……」

 ルーザーさんは無言で冒険者ギルドを出ていった。僕はそれを見送ることしかできない。僕が何か言っても意味はないと思う。だって、彼のことを何一つ知らないんだから。

「ムラタさん」

 その場で立ち尽くしているとクリスさんが声をかけてくれる。
 受付に座るように促されると僕は素直に答えて受付に座る。

「えっと、換金をお願いします。ゴブリンの魔石です」

「はい」

 僕は魔石を取り出してクリスさんに手渡す。彼女は何か言いたそうにして硬貨を取り出す。

「ルーザーさんは有名な冒険者だったんです」

 クリスさんは我慢できずに話し出す。

「【閃光のルーザー】とても速い斬撃で魔物を倒すことから二つ名がつくことになりました。王都でも有名だった彼は弟さんと一緒に王都で過ごすことになりました。そして、王都で……」

 クリスさんはそう言って俯く。僕は話を聞いて頷くことしかできない。僕にできることはないから、知ることしかできないから。
 
「魔物の群れ。王都は群れに襲われて幾万の魔物のむれと戦った。冒険者のルーザーさん達も駆り出されて戦った。それは壮絶な戦いだった。城壁が落ちて、建物を叩き潰すほどの大きな魔物が襲い掛かってくる。彼は弟さんと一緒に最後まで戦い、内壁で魔物の群れを追い出すことに成功します。ですが彼は命よりも大切なものを失ってしまう。弟さんを……」

 クリスさんは涙を流して話してくれる。そんなすごい人がなんであんな言い方されないといけないんだ? 英雄じゃないか。

「はっ。その群れを生んだのもあいつだろ。自業自得だ」

 クリスさんの話が面白くないエクスが口をはさんでくる。

「奴が魔物を逃がしたから生まれた群れだろ? その自責の念であんな馬鹿になっちまった。自分で魔物を狩ることが出来なくなった。寄生虫野郎になった」

「だからってそれを更に陥れるあなたはなに?」

 エクスの言葉に声を上げるクリスさん。二人は睨みあう。

「えっと、二人とも熱を入れすぎですよ」

「あ?」

 二人に声を上げるとエクスが睨みつけてくる。

「まるで自分のことのように。悔しそうにしすぎです」

 ルーザーさんがいい人なのはわかってる。エクスはそんな彼が腐っていくのが悔しいんだ。そして、クリスさんはそれを見ていることしかできないのが悔しいんだ。
 僕も、話を少し聞いただけで悔しくなってくる。

「ちっ。何が悔しそうだ。つまらねえ」

 エクスはそう言って酒場の席に戻っていく。

「……そうか。私悔しかったんだ。そうか」

 クリスさんはそう言って受付の奥の部屋へと入っていく。僕は二人を見送ると冒険者ギルドを後にした。

「人に歴史ありっか」

 人の死が身近な世界。魔物のいる世界なだけはある。人生の濃い人が多いんだ。僕が薄っぺらに感じる。
 宿屋への道路を歩きながら考える。王都、この町よりも大きな町が襲われるほどの魔物の群れ。そんな天災のようなものがある世界。現代日本で育った僕が敵うはずがない。

「……よう。ムラタ」

「ルーザーさん?」

 宿屋の前に着くとなぜかルーザーさんが酒瓶を持って待っていた。少し目の赤い彼は、僕の肩に手を回すと酒臭い口を開く。

「お前のおかげで酒にありつけた~。付き合え~」

「じゃあ、中で飲みましょ」

「おお! ムラタは良い奴だな~」

 彼の話を聞いた僕は彼を不憫に思った。そして、同情をしてしまった。少しでも彼の心が晴れるなら付き合おうと思った。
 これは僕の偽善だ。とても薄っぺらい偽善。
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