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第2章 王国と魔道
第84話 現実の赤い夜
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「何が英雄、勇者だ。目の前の人の命を使う奴が勇者を語るな!」
僕は空で悠々と言葉を落とすゼターに声を張り上げる。魔根の球の衝撃波で口の中を切っていたから血反吐が出る。
口を拭いながらも奴を睨みつける。奴はニヤリと笑うだけ。
「よく言ったムラタ! それでこそ男だ」
「お兄ちゃんカッコいい!」
ルーザーさんとルナちゃんが褒めてくれてゼターへとにらみを利かせてくれる。
「ふ……ははははは。私を見ていて大丈夫か? 魔根の球から魔物達があふれ出すぞ」
ゼターは笑いながら魔根の球を指さす。魔根の球からゴブリンが生まれてくる。大きい……。
「ははは! これはいい! ジャイアントゴブリンのお出ましだ! コボルトロードでも苦戦する魔物だぞ。それが10や20じゃない。1000単位で生まれる! オルクスは終わりを迎える! この研究成果で私は学院長となる! はははははははは!」
愉快と言わんばかりに笑い声を落としていくゼター。ひとしきり笑うと空高くへと舞い上がる。
「ジャネット達は?」
「……赤い夜です」
「ははは、絶体絶命。いいね~、やるっきゃないって状況だ」
ルーザーさんの言葉に答える。彼は楽しそうに笑って剣とナイフを構える。
「ルナちゃんは少し離れてて」
「お兄ちゃん。私だって強くなってるんだよ。任せて!」
「でも……。ってそんなこといってられないのかな。僕から離れないでね」
「うん!」
ルナちゃんに声をかけると彼女は頼もしく声を上げる。ゴブリン達を呼び出して円陣を組む。
僕は彼らに魔法をかける。
「【光よ、我が友の力と成れ】【ブレス】」
温かい白い光がゴブリン達とルーザーさん達を包み込む。それを合図にルーザーさんがジャイアントゴブリンに切りかかる。
1、2、3と倒していく。コボルトロードやグレーターグールも簡単に倒していく。だけど、数が減らない。
「あ!? 小屋が……」
ジャイアントゴブリンが増えていくと小屋が押しつぶされていく。僕は悲しい気持ちになりながらコメ粒ほどの大きさに見えるゼターを見上げる。
彼も同じように悲しい気持ちになっているんだろうな。同情を感じながらも憤りを感じた。
「あんなに嬉しそうに、楽しそうにしていたのに。簡単に壊す。そんな奴が勇者なんてありえない」
僕はそう呟いてジャイアントゴブリンへと切りかかる。
「くっ!? 僕じゃ傷をつける程度か」
「ゴア!」
「うわっ!?」
僕の攻撃は文字通り刃が通らない。ジャイアントゴブリンの手が襲い掛かってくる。
遠くに吹き飛ばされると距離が開いて全体が見渡せるようになった。僕はその時、絶望を感じた。
「まるで赤い夜の戦いじゃないか……」
小屋を押しつぶして生まれているジャイアントゴブリン。それは赤い夜の戦いを彷彿させるものだった。
群れは既に僕らを覆い隠す程の量になってる。ルーザーさん達の倒したジャイアントゴブリン達が少なく感じてしまう。
僕らは城壁のない赤い夜を戦わないといけない。イカルスの援護もない戦い、ましてや防衛者のいない赤い夜……。死、僕は初めて視覚で死を明確に感じた。
「お兄ちゃん! 大丈夫?」
「え? あ、ルナちゃん。だ、大丈夫……。でもルナちゃんはオルクスに帰ってくれるかな?」
「え? 何を言ってるのおにいちゃん?」
僕は顔が冷たくなるのを感じながら、何とかルナちゃんだけでも助けようと声を上げる。
彼女は首を傾げながら僕に聞いてくる。
「ルナちゃんは逃げるんだ。このことをオルクスに伝えて」
「……ヤダ! お兄ちゃん達を置いてなんていけないよ! 行くならみんなでいく!」
カタカタと震える体を抑えながらルナちゃんに告げる。彼女は頑なにそう言ってゴブリン達の指揮を始める。
ゴブリン達は必死に戦ってる。僕とは違う。恐怖を武器にして戦ってる。僕はダメだ。ジャネット達がいないと前も向けない……。
でも、ルナちゃんだけでも守らないと。
「ルナちゃん。いうことを聞いて」
「やだ! ヤダよ! 大丈夫。ルナがお兄ちゃんを守るから! ルーンお姉ちゃんの代わりに」
ルナちゃんの両肩を掴んで説得する僕に、彼女はまっすぐな目で答える。
明確な意思を感じる。僕は恥ずかしくなってしまう。
だって、こんな小さな子に守ってもらえると安心してしまったから。強い子だな、この子は。こんなに小さいのに僕を包み守ってくれてる。
「ごめんルナちゃん。僕が逃げてたよ」
「お兄ちゃん」
ルナちゃんにわからされてしまった。
僕はまだこの世界の住人になれてなかったんだ。死が隣り合わせの世界の住人なら、死を覚悟して戦えるはずなんだ。僕に足りないのは覚悟だった。
「【太陽の光よ、我が力と成り神の力を授けよ】……。【ゴッドブレス】」
僕は魔法をかける。周りの太陽の光が一瞬消えて真っ暗に変わる。光が僕に集まる刹那の瞬間。
暖かな光が僕の中ではじける。バチバチと僕の体の周りで光が弾ける。
「行ってくるねルナちゃん」
「あ、うん! 行ってらっしゃいお兄ちゃん!」
体の湯気を感じてルナちゃんにニッコリ笑う。彼女は顔を赤くさせながらも答えて手を振ってくれる。
僕は戦うルーザーさんの隣に一瞬で移動してジャイアントゴブリンを3体切り伏せる。
「やっと来たか! 俺の英雄!」
「お世辞がうまいですねルーザーさん。何も出ませんよ?」
「ははは、じゃあ、ジャイアントゴブリンの報酬だけでいいぜ」
背中を合わせて軽口を叩き合う。僕らは共に目の前の相手を切り伏せていく。長い、長い戦いの始まりだ。
僕は空で悠々と言葉を落とすゼターに声を張り上げる。魔根の球の衝撃波で口の中を切っていたから血反吐が出る。
口を拭いながらも奴を睨みつける。奴はニヤリと笑うだけ。
「よく言ったムラタ! それでこそ男だ」
「お兄ちゃんカッコいい!」
ルーザーさんとルナちゃんが褒めてくれてゼターへとにらみを利かせてくれる。
「ふ……ははははは。私を見ていて大丈夫か? 魔根の球から魔物達があふれ出すぞ」
ゼターは笑いながら魔根の球を指さす。魔根の球からゴブリンが生まれてくる。大きい……。
「ははは! これはいい! ジャイアントゴブリンのお出ましだ! コボルトロードでも苦戦する魔物だぞ。それが10や20じゃない。1000単位で生まれる! オルクスは終わりを迎える! この研究成果で私は学院長となる! はははははははは!」
愉快と言わんばかりに笑い声を落としていくゼター。ひとしきり笑うと空高くへと舞い上がる。
「ジャネット達は?」
「……赤い夜です」
「ははは、絶体絶命。いいね~、やるっきゃないって状況だ」
ルーザーさんの言葉に答える。彼は楽しそうに笑って剣とナイフを構える。
「ルナちゃんは少し離れてて」
「お兄ちゃん。私だって強くなってるんだよ。任せて!」
「でも……。ってそんなこといってられないのかな。僕から離れないでね」
「うん!」
ルナちゃんに声をかけると彼女は頼もしく声を上げる。ゴブリン達を呼び出して円陣を組む。
僕は彼らに魔法をかける。
「【光よ、我が友の力と成れ】【ブレス】」
温かい白い光がゴブリン達とルーザーさん達を包み込む。それを合図にルーザーさんがジャイアントゴブリンに切りかかる。
1、2、3と倒していく。コボルトロードやグレーターグールも簡単に倒していく。だけど、数が減らない。
「あ!? 小屋が……」
ジャイアントゴブリンが増えていくと小屋が押しつぶされていく。僕は悲しい気持ちになりながらコメ粒ほどの大きさに見えるゼターを見上げる。
彼も同じように悲しい気持ちになっているんだろうな。同情を感じながらも憤りを感じた。
「あんなに嬉しそうに、楽しそうにしていたのに。簡単に壊す。そんな奴が勇者なんてありえない」
僕はそう呟いてジャイアントゴブリンへと切りかかる。
「くっ!? 僕じゃ傷をつける程度か」
「ゴア!」
「うわっ!?」
僕の攻撃は文字通り刃が通らない。ジャイアントゴブリンの手が襲い掛かってくる。
遠くに吹き飛ばされると距離が開いて全体が見渡せるようになった。僕はその時、絶望を感じた。
「まるで赤い夜の戦いじゃないか……」
小屋を押しつぶして生まれているジャイアントゴブリン。それは赤い夜の戦いを彷彿させるものだった。
群れは既に僕らを覆い隠す程の量になってる。ルーザーさん達の倒したジャイアントゴブリン達が少なく感じてしまう。
僕らは城壁のない赤い夜を戦わないといけない。イカルスの援護もない戦い、ましてや防衛者のいない赤い夜……。死、僕は初めて視覚で死を明確に感じた。
「お兄ちゃん! 大丈夫?」
「え? あ、ルナちゃん。だ、大丈夫……。でもルナちゃんはオルクスに帰ってくれるかな?」
「え? 何を言ってるのおにいちゃん?」
僕は顔が冷たくなるのを感じながら、何とかルナちゃんだけでも助けようと声を上げる。
彼女は首を傾げながら僕に聞いてくる。
「ルナちゃんは逃げるんだ。このことをオルクスに伝えて」
「……ヤダ! お兄ちゃん達を置いてなんていけないよ! 行くならみんなでいく!」
カタカタと震える体を抑えながらルナちゃんに告げる。彼女は頑なにそう言ってゴブリン達の指揮を始める。
ゴブリン達は必死に戦ってる。僕とは違う。恐怖を武器にして戦ってる。僕はダメだ。ジャネット達がいないと前も向けない……。
でも、ルナちゃんだけでも守らないと。
「ルナちゃん。いうことを聞いて」
「やだ! ヤダよ! 大丈夫。ルナがお兄ちゃんを守るから! ルーンお姉ちゃんの代わりに」
ルナちゃんの両肩を掴んで説得する僕に、彼女はまっすぐな目で答える。
明確な意思を感じる。僕は恥ずかしくなってしまう。
だって、こんな小さな子に守ってもらえると安心してしまったから。強い子だな、この子は。こんなに小さいのに僕を包み守ってくれてる。
「ごめんルナちゃん。僕が逃げてたよ」
「お兄ちゃん」
ルナちゃんにわからされてしまった。
僕はまだこの世界の住人になれてなかったんだ。死が隣り合わせの世界の住人なら、死を覚悟して戦えるはずなんだ。僕に足りないのは覚悟だった。
「【太陽の光よ、我が力と成り神の力を授けよ】……。【ゴッドブレス】」
僕は魔法をかける。周りの太陽の光が一瞬消えて真っ暗に変わる。光が僕に集まる刹那の瞬間。
暖かな光が僕の中ではじける。バチバチと僕の体の周りで光が弾ける。
「行ってくるねルナちゃん」
「あ、うん! 行ってらっしゃいお兄ちゃん!」
体の湯気を感じてルナちゃんにニッコリ笑う。彼女は顔を赤くさせながらも答えて手を振ってくれる。
僕は戦うルーザーさんの隣に一瞬で移動してジャイアントゴブリンを3体切り伏せる。
「やっと来たか! 俺の英雄!」
「お世辞がうまいですねルーザーさん。何も出ませんよ?」
「ははは、じゃあ、ジャイアントゴブリンの報酬だけでいいぜ」
背中を合わせて軽口を叩き合う。僕らは共に目の前の相手を切り伏せていく。長い、長い戦いの始まりだ。
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