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第2章 王国と魔道
第96話 ゼグラデム
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◇
「フォッフォッフォ。なかなかどうして。手に入れたい駒が沢山一か所に集まっておるわ」
少し時は遡り。ゼグラデムが帰還を果たしたオルディナでのお話。
彼は陽気に声を上げて顎髭を触る。背中に学院を感じて高笑いを始めると、ニヤリとオスロード王国のある山の方角を見つめる。
「シロンよ。もういいぞ。帰りなさい」
「わかりました」
後ろを歩いていたシロン司祭。彼女は言われるまま、ゼグラデムから離れていく。まるで操り人形のように素直に答えた彼女は少しゼグラデムから離れると正気に戻る。
「あら? 私はなんで中庭に? まあいいわ。回復魔法の研究をしなくちゃ。回復魔法の研究が済めば、世界から死をなくす平和な世界を作れるんだから。頑張らないと」
シロンはそう言って何事もなかったかのように振舞って自分の教会へと帰っていく。
彼女の口癖もまた、ゼターやリッテンと同じものだった。平和な世界、そのために自分の分野の研究に努める。
「【魔物】と【死霊】の二つがなくなってしまったな。私の手札は手に入れるまでが大変だからな」
大きくため息をつくゼグラデム。彼は彼女達を手札の様に考えている。必要な時にテレポーテーションを使って呼び出す。
とても特異な能力。強力な能力には必ず代償がある。
「ふぅ、若い者の相手は腰に来る。顔を切られたのはいつごろ以来かの~。エスメルも早かったが流石は閃光のルーザーじゃった。ふむ、4人死んだか。補充せんとな」
学院長室に帰還するとそう言って壁を見つめる。壁には人が飾られている。肖像画が飾ってあったゼターよりも狂気な絵が、学院長室に広がっていた。
円卓の間のような壁、ずらりと並ぶ人。まるでマネキンのように飾られている人達。その中で彼が言う人数が黒ずんだ炭の塊になっていた。
「転移の研究は便利なんじゃがな。代償が大きい。人の命を使わんと行かんからな。エスメルとの闘いでも二人も消耗してしまった。奴隷も安い買い物ではないのじゃが」
ゼグラデムはそう言って豪華な椅子に座る。学院長専用の机から豆を取るとカリカリと口に入れていく。
「ん? 手紙か? これはエルディン共和国の印じゃな」
机には緑色の手紙が置かれていた。それを手に取ってゼグラデムはほくそ笑む。
「フォフォ。これは面白いことになっておるな。儂の言葉にエスメルが踊るか」
ゼグラデムは楽しそうに笑う。瓶いっぱいの豆を口に入れて、食い入るように手紙を細かく読んでいく。
「がははは。これはいい、あの王気取りの耳長が死んだか。それも騙されていたエスメルによって。復讐をなしたようだな。邪悪な耳長共め、いつまでも上から見下ろせさせんぞ」
ゼグラデムはエルディン共和国とは同盟関係にあった。エルフは人間であり、短命のゼグラデムを嫌っていた。上から目線で話をする彼らにゼグラデムは嫌気がさしていた。
敵と敵がつぶし合う。これほど楽しい喜劇はない。彼はそう思い、誰かに聞かれることも気にせずに笑い声をあげた。
「は~、楽しい楽しい、この世は天国。実に平和じゃ。儂の元で平和を目指し、儂の駒となる子ら。あの子ら、教授たちのおかげで儂の平和は守られる。たとえ死んでもシロンが復活させる。死ぬような攻撃から守る者もいる」
そう言って彼は学院長室から学院を見下ろす。学院長室は塔の頂上、学院がすべて見下ろせる。
「攻撃もまた同じこと……。教授たちはそれを知らずに学院長になり、夢を叶えるために切磋琢磨し、磨き合う。その成果をすべて私が奪う。そして、使う。才能のあるものを【洗脳】という儂のスキルで集める。実に平和的じゃ」
窓から見下ろす景色を肴に、ワインも口に含むゼグラデム。彼は自分の勝利を感じて愉悦に笑みを浮かべた。
「エスメル側が勝っても、エルディン側が勝っても儂の勝ちじゃ。フォッフォッフォ。使える駒は欲しいが関わって火の粉がかかっても面倒じゃからな。当分は静観じゃな」
ワイン片手にゼグラデムは笑う。
彼の絶大な力は国だった。国民も彼の力の為に存在している。
親が子を作り、その子に才があると取り込み使う。ルーンとルナの両親は子供がいないことに気づきもしなかった。今も知らずに姉妹の妹と暮らしている。
ルナに似た少女を愛でる夫婦。彼女達はたまにルーンとルナの名を呼ぶことがある。しかし、それは記憶の残像となる。掴むことのできない記憶。いつまでも消えない夢。
ゼグラデムは平和を搾取し、平和を目指すことを強要する。悪魔、彼を表すにはその言葉がぴったりだろう。
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「フォッフォッフォ。なかなかどうして。手に入れたい駒が沢山一か所に集まっておるわ」
少し時は遡り。ゼグラデムが帰還を果たしたオルディナでのお話。
彼は陽気に声を上げて顎髭を触る。背中に学院を感じて高笑いを始めると、ニヤリとオスロード王国のある山の方角を見つめる。
「シロンよ。もういいぞ。帰りなさい」
「わかりました」
後ろを歩いていたシロン司祭。彼女は言われるまま、ゼグラデムから離れていく。まるで操り人形のように素直に答えた彼女は少しゼグラデムから離れると正気に戻る。
「あら? 私はなんで中庭に? まあいいわ。回復魔法の研究をしなくちゃ。回復魔法の研究が済めば、世界から死をなくす平和な世界を作れるんだから。頑張らないと」
シロンはそう言って何事もなかったかのように振舞って自分の教会へと帰っていく。
彼女の口癖もまた、ゼターやリッテンと同じものだった。平和な世界、そのために自分の分野の研究に努める。
「【魔物】と【死霊】の二つがなくなってしまったな。私の手札は手に入れるまでが大変だからな」
大きくため息をつくゼグラデム。彼は彼女達を手札の様に考えている。必要な時にテレポーテーションを使って呼び出す。
とても特異な能力。強力な能力には必ず代償がある。
「ふぅ、若い者の相手は腰に来る。顔を切られたのはいつごろ以来かの~。エスメルも早かったが流石は閃光のルーザーじゃった。ふむ、4人死んだか。補充せんとな」
学院長室に帰還するとそう言って壁を見つめる。壁には人が飾られている。肖像画が飾ってあったゼターよりも狂気な絵が、学院長室に広がっていた。
円卓の間のような壁、ずらりと並ぶ人。まるでマネキンのように飾られている人達。その中で彼が言う人数が黒ずんだ炭の塊になっていた。
「転移の研究は便利なんじゃがな。代償が大きい。人の命を使わんと行かんからな。エスメルとの闘いでも二人も消耗してしまった。奴隷も安い買い物ではないのじゃが」
ゼグラデムはそう言って豪華な椅子に座る。学院長専用の机から豆を取るとカリカリと口に入れていく。
「ん? 手紙か? これはエルディン共和国の印じゃな」
机には緑色の手紙が置かれていた。それを手に取ってゼグラデムはほくそ笑む。
「フォフォ。これは面白いことになっておるな。儂の言葉にエスメルが踊るか」
ゼグラデムは楽しそうに笑う。瓶いっぱいの豆を口に入れて、食い入るように手紙を細かく読んでいく。
「がははは。これはいい、あの王気取りの耳長が死んだか。それも騙されていたエスメルによって。復讐をなしたようだな。邪悪な耳長共め、いつまでも上から見下ろせさせんぞ」
ゼグラデムはエルディン共和国とは同盟関係にあった。エルフは人間であり、短命のゼグラデムを嫌っていた。上から目線で話をする彼らにゼグラデムは嫌気がさしていた。
敵と敵がつぶし合う。これほど楽しい喜劇はない。彼はそう思い、誰かに聞かれることも気にせずに笑い声をあげた。
「は~、楽しい楽しい、この世は天国。実に平和じゃ。儂の元で平和を目指し、儂の駒となる子ら。あの子ら、教授たちのおかげで儂の平和は守られる。たとえ死んでもシロンが復活させる。死ぬような攻撃から守る者もいる」
そう言って彼は学院長室から学院を見下ろす。学院長室は塔の頂上、学院がすべて見下ろせる。
「攻撃もまた同じこと……。教授たちはそれを知らずに学院長になり、夢を叶えるために切磋琢磨し、磨き合う。その成果をすべて私が奪う。そして、使う。才能のあるものを【洗脳】という儂のスキルで集める。実に平和的じゃ」
窓から見下ろす景色を肴に、ワインも口に含むゼグラデム。彼は自分の勝利を感じて愉悦に笑みを浮かべた。
「エスメル側が勝っても、エルディン側が勝っても儂の勝ちじゃ。フォッフォッフォ。使える駒は欲しいが関わって火の粉がかかっても面倒じゃからな。当分は静観じゃな」
ワイン片手にゼグラデムは笑う。
彼の絶大な力は国だった。国民も彼の力の為に存在している。
親が子を作り、その子に才があると取り込み使う。ルーンとルナの両親は子供がいないことに気づきもしなかった。今も知らずに姉妹の妹と暮らしている。
ルナに似た少女を愛でる夫婦。彼女達はたまにルーンとルナの名を呼ぶことがある。しかし、それは記憶の残像となる。掴むことのできない記憶。いつまでも消えない夢。
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