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第1話 マイト
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「ああ、マイト。なんであなたがこんなことに……」
僕はマイト。20歳で事故にあった。
脳死状態で母さんの泣き声が聞こえてくる。
脳死でもはっきりと言葉が響いてくるよ。
「神様、どうか、来世では強くて健康な体をマイトに……ううっ」
母さんの最後の願いと共に僕は意識をなくす。
ーーーーー
「おい起きろ! さっさと馬車に乗れ」
「赤ん坊を抱いているの。優しくして」
「ったく。きたねえガキ生みやがって。落とさずに乗れよ」
意識が戻るとぼやけた視界に黒髪の女性が映る。
「オギャ~。オギャ~」
意味が分からずに僕は泣き出してしまった。すると目の前の女性が髪を掴まれた。抱かれていた僕は濡れた地面に落ちる。
「ガキを泣かせるな。わかったか!」
「わかったから放して~」
女性の懇願に男は「ったく」と言って髪を放した。女性は僕を抱き寄せて抱っこをするとよしよしと言って頭を撫でてくれた。
お母さん、僕はその時に初めてこの人がお母さんだということが分かった。
そこから僕は泣くのをやめて目を瞑った。
どうやら僕は死んでしまって、転生してしまったらしい。不幸にも僕は奴隷の子供に転生してしまったようだ。
『どうか来世では強くて健康な体をマイトに』
不幸な自分の転生の事を思っているとそんな声が聞こえてきた。目を閉じていた真っ暗な視界に白い文字で英字と数字が並んだ。
マイト LV 1
HP 200
MP 200
STR 100
DEF 100
DEX 100
AGI 100
INT 100
MND 100
まるでゲームのキャラクターの能力を現すステータスのような表記に僕はワクワクした。
LV1で二百とか百行っているということはベテランの人達は一万とか行くのかな?
この世界の常識を知りたいところだけど、僕は赤ん坊だから知ることもできない。ってその前に奴隷だからここから脱出することを考えないとな。もちろん、このお母さんと共にね。
「よしよし、いい子ねマイト」
「うっせえぞ女。殴られたいか!」
「うるさいのはあんただよ。うちの子が泣いたらどうするんだい!」
「ふん」
奴隷が複数入れられた馬車の中では小声でもうるさいらしく、お母さんが怒られている。お母さんはかなり強気な人のようで言い返しているよ。
「まったく、女には優しくしろって教わらなかったのかしら。マイト、あんたは女に優しくするんだよ~」
僕の頬をつつきながらそう言ってくるお母さん。頬はこけて茶色く汚れた服を着ている。奴隷たちはみんなそんな服を着ていて蹲っている人たちが大半だ。お母さんやさっき怒ってきた人以外は下を向いている。この世の終わりといった様子だ。
しばらく馬車に揺られると目的地についたようでみんな降ろされる。大きな天幕の中へと連れられると檻の中へと入れられていった。
「奴隷はいかがかな? 赤子も入荷してるよ」
天幕の外からそんな声が聞こえてくる。赤子は僕しかいないから僕の事なんだと思う。
「どうぞ見て行ってください」
黒いシルクハットをかぶった奴隷商が煌びやかな服を着た男を連れてきた。見るからにお金持ちって感じ。
「赤子というのはあれか?」
「はい、生まれて半年といったところですよ。なかなか綺麗な顔をしている娘と男から生まれたので将来は保証されていますよ」
奴隷商はそういって買わせようと説得していく。
買わないで買わないで、僕はそう願った。前世でも両親に親孝行できなかったのに今世でも親孝行ができないなんて最悪だよ。
「ふむ。ブルーアイの瞳に青い髪か、なかなかに綺麗だな。よし買おう」
煌びやかな男は僕の顔を見てキラキラ光っている革袋を奴隷商の男に手渡した。
下品にひっひっひと笑いながら奴隷商は革袋の中に入っていた金貨を手に取って数えだす。
僕の願いも空しく、お母さんと離されてしまうみたい。
「いや! いやよ! その子は私がいないと死んでしまうわ! だから私も!」
「うるさい。このお方は子供だけほしいんだ。おまえのような臭いものはいらんのだよ」
お母さんは最後の抵抗をする。だけど、ろくに食べていない体では無駄な抵抗に終わった。抵抗のできない体だけど、最後の抵抗で僕は泣きに泣いた。無駄に終わって僕は奴隷商に抱かれて別の天幕で綺麗に洗われた。
洗われて綺麗になると綺麗な青い服を着せられた。そして、馬車に乗った僕を買った男へと手渡された。
お母さん、どうか、僕が大きくなるまで生きていてください。そう願って僕は馬車に揺られていく。
「良い素体が手に入った。これで私はまだ生きられる」
揺れる馬車の中。男はそう呟いた。いい素体?
僕はマイト。20歳で事故にあった。
脳死状態で母さんの泣き声が聞こえてくる。
脳死でもはっきりと言葉が響いてくるよ。
「神様、どうか、来世では強くて健康な体をマイトに……ううっ」
母さんの最後の願いと共に僕は意識をなくす。
ーーーーー
「おい起きろ! さっさと馬車に乗れ」
「赤ん坊を抱いているの。優しくして」
「ったく。きたねえガキ生みやがって。落とさずに乗れよ」
意識が戻るとぼやけた視界に黒髪の女性が映る。
「オギャ~。オギャ~」
意味が分からずに僕は泣き出してしまった。すると目の前の女性が髪を掴まれた。抱かれていた僕は濡れた地面に落ちる。
「ガキを泣かせるな。わかったか!」
「わかったから放して~」
女性の懇願に男は「ったく」と言って髪を放した。女性は僕を抱き寄せて抱っこをするとよしよしと言って頭を撫でてくれた。
お母さん、僕はその時に初めてこの人がお母さんだということが分かった。
そこから僕は泣くのをやめて目を瞑った。
どうやら僕は死んでしまって、転生してしまったらしい。不幸にも僕は奴隷の子供に転生してしまったようだ。
『どうか来世では強くて健康な体をマイトに』
不幸な自分の転生の事を思っているとそんな声が聞こえてきた。目を閉じていた真っ暗な視界に白い文字で英字と数字が並んだ。
マイト LV 1
HP 200
MP 200
STR 100
DEF 100
DEX 100
AGI 100
INT 100
MND 100
まるでゲームのキャラクターの能力を現すステータスのような表記に僕はワクワクした。
LV1で二百とか百行っているということはベテランの人達は一万とか行くのかな?
この世界の常識を知りたいところだけど、僕は赤ん坊だから知ることもできない。ってその前に奴隷だからここから脱出することを考えないとな。もちろん、このお母さんと共にね。
「よしよし、いい子ねマイト」
「うっせえぞ女。殴られたいか!」
「うるさいのはあんただよ。うちの子が泣いたらどうするんだい!」
「ふん」
奴隷が複数入れられた馬車の中では小声でもうるさいらしく、お母さんが怒られている。お母さんはかなり強気な人のようで言い返しているよ。
「まったく、女には優しくしろって教わらなかったのかしら。マイト、あんたは女に優しくするんだよ~」
僕の頬をつつきながらそう言ってくるお母さん。頬はこけて茶色く汚れた服を着ている。奴隷たちはみんなそんな服を着ていて蹲っている人たちが大半だ。お母さんやさっき怒ってきた人以外は下を向いている。この世の終わりといった様子だ。
しばらく馬車に揺られると目的地についたようでみんな降ろされる。大きな天幕の中へと連れられると檻の中へと入れられていった。
「奴隷はいかがかな? 赤子も入荷してるよ」
天幕の外からそんな声が聞こえてくる。赤子は僕しかいないから僕の事なんだと思う。
「どうぞ見て行ってください」
黒いシルクハットをかぶった奴隷商が煌びやかな服を着た男を連れてきた。見るからにお金持ちって感じ。
「赤子というのはあれか?」
「はい、生まれて半年といったところですよ。なかなか綺麗な顔をしている娘と男から生まれたので将来は保証されていますよ」
奴隷商はそういって買わせようと説得していく。
買わないで買わないで、僕はそう願った。前世でも両親に親孝行できなかったのに今世でも親孝行ができないなんて最悪だよ。
「ふむ。ブルーアイの瞳に青い髪か、なかなかに綺麗だな。よし買おう」
煌びやかな男は僕の顔を見てキラキラ光っている革袋を奴隷商の男に手渡した。
下品にひっひっひと笑いながら奴隷商は革袋の中に入っていた金貨を手に取って数えだす。
僕の願いも空しく、お母さんと離されてしまうみたい。
「いや! いやよ! その子は私がいないと死んでしまうわ! だから私も!」
「うるさい。このお方は子供だけほしいんだ。おまえのような臭いものはいらんのだよ」
お母さんは最後の抵抗をする。だけど、ろくに食べていない体では無駄な抵抗に終わった。抵抗のできない体だけど、最後の抵抗で僕は泣きに泣いた。無駄に終わって僕は奴隷商に抱かれて別の天幕で綺麗に洗われた。
洗われて綺麗になると綺麗な青い服を着せられた。そして、馬車に乗った僕を買った男へと手渡された。
お母さん、どうか、僕が大きくなるまで生きていてください。そう願って僕は馬車に揺られていく。
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