転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)

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第12話 ラフレイシア

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 オォォォォ、枯れ木ばかりの森にそんな声がこだました。ゾンビやスケルトンが植物のような女性を囲む。

「私はラフレイシア。罠にはめた動物を食べる魔物よ」

「バブ?」

 急に名乗ってきたラフレイシア。僕は首を傾げる。

「ただの餌だと思って名乗らなかったのだけど、違うみたいだからね。名乗らせてもらうわ。あなた見込みがあるわ。私のマスターにならない?」

 ふむふむ、分が悪いと思って交渉したいってことか。
 人も食べるような魔物と仲間になるのはな~。

「生まれたばかりで消滅はしたくないのよ。こんな数の死体達を操るなんて尋常じゃないわ、あなた。私を吹き飛ばしたのもおかしいし。どうかしら?」

「バブ?」

「も、もちろん、人を襲わないって誓うし、契約もする。何なら人の作ったものを食べるとかにするわ。植物だけど魔物だから人と同じものでも生きられるから」

 焦るように懇願してくるラフレイシア。まあ、話せる相手を倒すのも気が引けるかな。

「バブ」

「え? いいってこと?」

「バブバブ」

 頷いて声をあげるとラフレイシアは万歳をして泣きだした。

「良かったよ~。生まれてすぐに死ぬところだったよ~」

 そういえば初めての食べ物が僕とか言っていたな~。でも、この子を飼えるほど、お金に余裕はないんだけどな。

「がう! ぐるるる」

「あら? 食べ物!」

「バブ!」

「え? ダメなの? でもお腹が。森はこれ以上枯らせられないし。お腹空いたよ~」

 熊さんが僕を追いかけてきてラフレイシアを睨みつけて威嚇してる。丸い尻尾が垂れているからビビってはいるみたいだね。
 ラフレイシアが食べたそうにしてきたので怒ると彼女はお腹を抑える。
 熊さんは僕を心配してきてくれたからね。流石に食べさせるわけにはいかない。

「バブバブ!」

「ええ~。死肉はちょっと~」

 スケルトンたちを指さしてラフレイシアを見ると何を言いたいのか分かったみたいで首を横に振った。流石に死肉は嫌みたいだ。しょうがない、マシューの屋敷が近いからそこに連れていくか。

「バブバブ」

「ちょ、マスター。どこ行くのよ~」

 声をあげてマシューの屋敷へ歩き出す。夜が明けてしまうので急ぎたいんだけど、僕のスピードにはついてこれないだろうから普通のハイハイ。

「マスター、どっちに行けばいいのか言ってくれれば私が歩くわよ~」

 早くいきたいと思ったらラフレイシアが僕を抱き上げた。

「熊もついてきてるけど、マスターはテイマーでもあるのかしら?」

「バブ?」

「がう」

 気が付くと熊さんもついてきてた。僕と熊さんは一度拳を交え合った仲。もう友になっているようだ。
 生まれたばかりのくせに色々と物知りなラフレイシア、テイマーなんているんだな~。

「動物と仲良く出来て、動物を強化できるらしいわ。私は魔物だからテイマーについてはそのくらいしかわからないけど」

 歩きながら解説してくれた。ほうほう、テイマーは魔物じゃなくて動物を強化できるのか。ネズミさんやリスさんが近づいてきたのはそういうことなのかな? 僕にはテイマーの素質があるってことかも。

「でも、マスターは死霊魔法が使えるから違うと思うんだけどな~。適性が複数ある人って稀だし~」

 そうこう話している間に屋敷が見えてきた。夜も深くなってきたので嫌な雰囲気の屋敷、まあ実際に仲にはゾンビとかグールとかいろいろいるからお化けの類は出てるんだけどね。

「なんだか嫌な屋敷ね~。マスターには似合わないわ」

 豪華なお庭を抜ける。庭の整備もゾンビがやっている。花壇をいじるゾンビ、なんだか変な感じ。
 屋敷の中に入って隅々まで物色、キッチンに食べ物があったけど、少し痛んでいた。キッチンには流石にゾンビはいないけど、通路とかにはゾンビやスケルトンが複数いた。みんな掃除しっぱなしでいい子たちばっかだ。

「あったわ~。鶏の卵~。鶏を飼っているみたいね」

 僕をキッチンのテーブルに置くとラフレイシアが食べ物を見つける。ゾンビ達は飼っている動物の世話もしているみたいで卵は新鮮でミルクも常備してあった。なかなか便利な死霊魔法の使い方だな~。

「んきゅきゅ。ぷは~、それにしても流石マスターね。ゾンビたちそれぞれに魔石をはめて空気からマナを補給させているなんて。戦闘さえさせなければあれだけのマナで言切れるものね」

 ラフレイシアがミルクを飲みながらそんなことを言って来た。別に僕がやったことでもないけど頷いておこう。僕もミルクともらう。流石にお腹がすきました。

「がう」

「ああ、そうだったわね~。マスターの動物にもあげないとね」

 熊さんもキッチンに入ってきたのでミルクを一瓶ボールにあける。美味しそうになめていく熊さん。

「それでマスター、こんな快適な場所に案内してどうするんですか?」

「バブ?」

 どうするって言われてもな~。お腹が空いたっていうから連れてきただけなんだけど。

「私って木の属性の頂点の魔物なので戦闘とかが好きなんですけど」

 悩んで腕を組んでいるとラフレイシアがそういってきた。頂点とな、それは凄い。

「まあ、生まれたばかりで弱かったのもあるけど、マスターと会ったのが運のつき。平和に過ごすのもいいかなって考えを買えたんですけどね、はは」

 生気のない目で遠くを見つめるラフレイシア。うむ、僕は偉大だ。頂点の魔物を改心させてしまったようです。とにかく、ラフレイシアと熊さんにはここで暮らしてもらおうかな。

「ええ、じゃあ。ここでこの熊と暮らすんですか。魔王にもなれる私が……」

 ラフレイシア僕のジェスチャーを読み取ってそういってきた。しばらくはここに滞在してもらおう。おかあさんに紹介するのはまた今度ってことで。
 とりあえず、死霊魔法の性能とステータスの凄さは実感できたかな。
 早く帰ってお母さんの目覚める前に布団に戻らないと。
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