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第一章 異世界
第一話 釘宮 巽
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俺は釘宮 巽(クギミヤ タツミ)
今日は一日最悪な日だった。歩いては側溝にはまり、車が泥を跳ねてきたりな。スーパーに行けばイートインのコーナーで子供がアイスをぶちまけてきて、挙句の果てには親がコーヒーをぶっかけてきやがった。
それでも怒らない俺は聖人君子かと思うほどいいやつだと思うんだが、人よりも少し強面な為にあまりいい人だとは思われていない。本当は公園に捨てられた子猫を飼ってしまうほどいい子なのになんでこんな目に。
「は~ついてね~。また母さんに服の事言われるよ」
こんな日は珍しいが無茶をして服を汚すことが多い俺は毎回、裁縫が好きな母さんを困らせてしまう。俺の服はスーツ以外すべて、母さんの作った服でとても動きやすい。母さんの服は大好きだ。
母さんはどんな服でも作れてしまうし、何よりも機能的な物ばかりでいい。
そんな母さんに触発されて俺も裁縫が大好きになってちょっとした破れなどは直せるようになった。こんなことくらいで得意げにしていると母さんに頭を殴られるのだが、それもまた家族といった感じでいいな、なんて思っていた。
そんなことを思っていたある日、俺は事故に巻き込まれることとなった。
「駅のホームで酔っぱらいが暴れてるんだってよ。見に行こうぜ」
いつも通り会社に向かうため、俺は最寄りの駅へと向かっていた。周りから駅で酔っ払いが暴れているという声を聞いてため息をはく。
「は~、またかよ。電車絶対止まるだろ」
とつぶやいていると案の定アナウンスが流れる。
『ただいま、信号故障のため運転を見合わせています』
止まった時の常套句、お客様のせいでなんていえないから信号のせいにする。なんとも世知辛い世の中だろうか。
「しょうがないけどホームにいくか」
止まっていてもホームにいれば動いたときにいち早く電車に乗れる。そう思った俺はホームに向かったんだ。だがそれは間違いだった。
「おいおい、凄い人だな」
普通の人よりも少しだけ身長が高い俺は後ろも前も見えて目まぐるしくなる。ヒトヒトヒトとどっちを向いても人だらけだ。
こんな小さなホームでは入りきらないっての、心の中でそう叫んでいると後方から人の波が押し寄せて足元を取られる。
グイグイと流れる波は俺をホームから押し出した、うまく着地したとはいえ線路に出てしまった俺は焦りながらもホームに上がろうとする。
「誰か上げてくれ」
俺は必死にそう叫んだ。だけどホームは人でいっぱいで俺の声なんか届かなかった。
「しょうがない金網を越えて帰るか」
今日はいつにもまして運がないと決めつけた俺は帰る事にした。ホームに上がろうとしてスーツは汚れるし最悪な日だよ。その最悪がまだ終わっていないとも知らずに俺は呑気に金網に振り向いた。
「あれ?靴は?」
いつの間にか靴が脱げていて線路の真ん中に落ちていた。俺はすぐに拾いに行ったんだ。それが間違いだった。
迫る電車、ブレーキの音、俺の記憶はそこで途切れている。
俺はこの時に死んだ。呑気に靴を拾いに行ってこの世を去った。あの靴は親父が最近買ってくれた靴でとても大事だったんだ。仕方ないだろ。
あ~あ、こんなことなら母さんの作ってくれたいい服を着て死にたかった。葬式にもスーツで燃やされるんだろうな。天国だか地獄だか知らないけどそこへもスーツで行くなんて最悪だよ。
今日は一日最悪な日だった。歩いては側溝にはまり、車が泥を跳ねてきたりな。スーパーに行けばイートインのコーナーで子供がアイスをぶちまけてきて、挙句の果てには親がコーヒーをぶっかけてきやがった。
それでも怒らない俺は聖人君子かと思うほどいいやつだと思うんだが、人よりも少し強面な為にあまりいい人だとは思われていない。本当は公園に捨てられた子猫を飼ってしまうほどいい子なのになんでこんな目に。
「は~ついてね~。また母さんに服の事言われるよ」
こんな日は珍しいが無茶をして服を汚すことが多い俺は毎回、裁縫が好きな母さんを困らせてしまう。俺の服はスーツ以外すべて、母さんの作った服でとても動きやすい。母さんの服は大好きだ。
母さんはどんな服でも作れてしまうし、何よりも機能的な物ばかりでいい。
そんな母さんに触発されて俺も裁縫が大好きになってちょっとした破れなどは直せるようになった。こんなことくらいで得意げにしていると母さんに頭を殴られるのだが、それもまた家族といった感じでいいな、なんて思っていた。
そんなことを思っていたある日、俺は事故に巻き込まれることとなった。
「駅のホームで酔っぱらいが暴れてるんだってよ。見に行こうぜ」
いつも通り会社に向かうため、俺は最寄りの駅へと向かっていた。周りから駅で酔っ払いが暴れているという声を聞いてため息をはく。
「は~、またかよ。電車絶対止まるだろ」
とつぶやいていると案の定アナウンスが流れる。
『ただいま、信号故障のため運転を見合わせています』
止まった時の常套句、お客様のせいでなんていえないから信号のせいにする。なんとも世知辛い世の中だろうか。
「しょうがないけどホームにいくか」
止まっていてもホームにいれば動いたときにいち早く電車に乗れる。そう思った俺はホームに向かったんだ。だがそれは間違いだった。
「おいおい、凄い人だな」
普通の人よりも少しだけ身長が高い俺は後ろも前も見えて目まぐるしくなる。ヒトヒトヒトとどっちを向いても人だらけだ。
こんな小さなホームでは入りきらないっての、心の中でそう叫んでいると後方から人の波が押し寄せて足元を取られる。
グイグイと流れる波は俺をホームから押し出した、うまく着地したとはいえ線路に出てしまった俺は焦りながらもホームに上がろうとする。
「誰か上げてくれ」
俺は必死にそう叫んだ。だけどホームは人でいっぱいで俺の声なんか届かなかった。
「しょうがない金網を越えて帰るか」
今日はいつにもまして運がないと決めつけた俺は帰る事にした。ホームに上がろうとしてスーツは汚れるし最悪な日だよ。その最悪がまだ終わっていないとも知らずに俺は呑気に金網に振り向いた。
「あれ?靴は?」
いつの間にか靴が脱げていて線路の真ん中に落ちていた。俺はすぐに拾いに行ったんだ。それが間違いだった。
迫る電車、ブレーキの音、俺の記憶はそこで途切れている。
俺はこの時に死んだ。呑気に靴を拾いに行ってこの世を去った。あの靴は親父が最近買ってくれた靴でとても大事だったんだ。仕方ないだろ。
あ~あ、こんなことなら母さんの作ってくれたいい服を着て死にたかった。葬式にもスーツで燃やされるんだろうな。天国だか地獄だか知らないけどそこへもスーツで行くなんて最悪だよ。
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