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第一章 異世界
第十話 着ぐるみ
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ルキアを助けてオッズ達の戻っていった小屋に戻ると小屋の外でオッズが立っていた。
「遅かったですね。またかまれましたか?」
「いや、実は」
オッズに従魔契約が完了したことを伝えると目をまん丸くして驚かれた。
「は~?タツミさんは従魔使いだったんですか?騎士隊長じゃ?」
「いやよくわからないけど、契約できたんだ」
やはり、従魔使いという職業があるようだ。別にそれになっていないのに俺はルキアと契約できた。なんでだろうか?
「う~ん、考えられるのは従魔がその人に使ってほしいと思った時、要は仲間になりたいと思った時に名前を付けると従魔にできるというのを聞いたことがありますけど、それは稀な話なんですよね」
ふむふむ、そんなこともあるのか。それならおかしくもないのか?
「でも、契約にはMPが多く取られてしまうはずだけど、大丈夫なんですか?」
「ん?そういえば、光がルキアの中に入っていったけどそれかな?」
「ルキアっていうのがこの魔物の名前ですか?その光がMPですね。ってことはちゃんと契約できていますね」
あの光がMPのようだな。それで契約の証拠にもなるわけね。
「それにしても懐きましたね」
ルキアはずっと俺の服の裾を掴んで離さない。ルキアはずっと人差し指を咥えている。なんとも可愛らしい。
「ああ、なんでかな」
「タツミさんは優しいからな。俺なんか始末するとか言っちまって、ルキアだっけか?すまないな」
オッズは口に出してしまった言葉を後悔したようでルキアを見て謝っている。ルキアは俺を見上げてから首を横に振った。
「そういえば、オッズはなんでルキアが獣人じゃなくて魔物だってわかったんだ?」
転生者の俺からしたら魔物か獣人かなんてわからない。人の体に猫耳としっぽが付いているだけだ。襲ってきた成体達は確かに獣のような目と戦い方だったがこの子は違う。そのまま人間のような仕草をしている。
「そうか~、オラストロは獣人を入れない国でしたね。知らなくても当然ですね。獣人の人達はみんな獣から人に進化したと言われているから獣に近い体躯をしているんです。体は体毛で覆われています。だから分るんですよ」
オッズの話から推測すると、どうやら、人に近い容姿の方が魔物らしいな。転生者である、俺ではわかるはずもない。とにかく、こういった常識が知れるのはいいことだな。
「じゃあ、俺らは休ませてもらいますね」
「あ、ああ、了解」
オッズは大きくあくびをして小屋に入っていった。アイサはすでに眠っているようだ。
静かな夜に俺とルキアは二人で火の番をする。
「そういえば、ルキアのステータスは見えないのか?」
俺と同じように手首にウィンドウを開くものがないか見てみるが何もない。やっぱり、この手首のものは転生者だけのものかもしれないな。
そんなことを考えているとルキアのおなかがグルグルと音を発した。
「お腹すいたか?」
俺の問いにルキアは頷いた。それでは料理人の服にチェンジだ。
「よし、じゃあ作るぞ」
焚火に鉄の盾を乗せて熱していく、そこへイノシシの肉を投入。ジューという音と共においしそうな匂いが漂う。ルキアは目が輝いていて涎が凄いことになっている。
「もうちょっと待ってくれよ」
今にも食いついてしまいそうだったから、注意するとルキアは俺を見上げて頷いた。すぐに肉へと視線を移す姿はとても可愛らしい。
「よし、できたぞ~」
調味料がないが何故か想像通りの味付けがされる。これもチートなのかもしれないな。これで調味料があったらどんだけ旨い物ができるのか、楽しみでもある。早く街に着きたいものだ。
「おいしいか?」
ルキアはバクバクと口にイノシシの肉と香草を入れていく。一口口に入れるたんびに俺を見つめてくるものだから、俺はほほ笑まずにはいられなかった。これが子供の魔力なのかな?守ってやりたいと思ったよ。
「はは、食べたら眠くなったのか?夜の見張りは俺の仕事だから寝るといい」
ルキアがウトウトし始めたので俺は毛布を掛けてやると俺の膝枕で寝始めた。なんとも安らかな顔だろうか。こんな子が魔物だと言われても俺は信じられないな。
「俺の服をあげられればいいんだけどな」
服が布をかけただけの簡素な物だから、あげられないかと思ったんだけど。試してみるかな。
とりあえず、料理人の服についているエプロンを脱いでなげすてると霧散して消えていく。やはり、俺に触れていないと消えてしまうようだ。
「魔物の着ぐるみはどうだ?」
着ぐるみは服じゃないのに手に入った。服模写の副産物だと思うんだがどうだろうか?
「ん?説明文が服と違う?」
ゴブリンの着ぐるみの説明を見る。
「えっと、着ぐるみを着るとその魔物の能力を得ることができる。又、着ぐるみはスキルを持っていないものでも着用化。親切な説明だな」
まるでルキアの為に用意したかのような説明だ。転生ものの多くは神が絡んでいるのだが、まさかして俺もそうなのかな?まあ、顔も見せない神に興味はないけどね。
「まあ、できるんだったら使わせてもらうか」
ステータスウィンドウのゴブリンの着ぐるみを触ると目の前に現物の着ぐるみが現れた。着ぐるみは俺が着用して現れないようだがこれも仕様のようだ。なんとも都合のいいスキルだろうか。
「起きたら着させるかな」
膝の上で眠るルキアの頭を撫でながらつぶやく。全く、嫁の前に子供が手に入ってしまうとは。母さんに知られたら怒らせそうだ・・・いや、ある意味褒められるか?嫁はいらねえ孫が欲しいとか言っていたしな。
その前に、息子を失っているわけだからなんの慰みにもならんか。
「しかし、真っ暗だな~」
夜も深くなってきて焚火の光が届かないところが真っ暗である。街灯のない世界、現代でもちょっと田舎に行けばこの位、暗いと思うが、都内に住んでいる俺からしたら絶望級の暗さだ。手元も見えないだろうな。ただ、
「月ってこんなにきれいなんだな」
都内では見えない星々が空を彩る。オリオン座とかがあれば地球なのかなとか予想もつくけど、まったくといっていいほど知らない配置の星ばかりだ。というか都内で見える星よりも明らかに多いので何が何やらわからんのが正直のところだ。
「月も太陽もあるのに地球じゃないんだな」
サルの進化した星の映画があったけど、それだと未来の地球だったってオチだったな、ここは間違いなく違う星だろうけどな。
この日は静かな夜で終わりを告げた。ルキアの寝息と薪の燃える音が聞こえるだけの夜。
「遅かったですね。またかまれましたか?」
「いや、実は」
オッズに従魔契約が完了したことを伝えると目をまん丸くして驚かれた。
「は~?タツミさんは従魔使いだったんですか?騎士隊長じゃ?」
「いやよくわからないけど、契約できたんだ」
やはり、従魔使いという職業があるようだ。別にそれになっていないのに俺はルキアと契約できた。なんでだろうか?
「う~ん、考えられるのは従魔がその人に使ってほしいと思った時、要は仲間になりたいと思った時に名前を付けると従魔にできるというのを聞いたことがありますけど、それは稀な話なんですよね」
ふむふむ、そんなこともあるのか。それならおかしくもないのか?
「でも、契約にはMPが多く取られてしまうはずだけど、大丈夫なんですか?」
「ん?そういえば、光がルキアの中に入っていったけどそれかな?」
「ルキアっていうのがこの魔物の名前ですか?その光がMPですね。ってことはちゃんと契約できていますね」
あの光がMPのようだな。それで契約の証拠にもなるわけね。
「それにしても懐きましたね」
ルキアはずっと俺の服の裾を掴んで離さない。ルキアはずっと人差し指を咥えている。なんとも可愛らしい。
「ああ、なんでかな」
「タツミさんは優しいからな。俺なんか始末するとか言っちまって、ルキアだっけか?すまないな」
オッズは口に出してしまった言葉を後悔したようでルキアを見て謝っている。ルキアは俺を見上げてから首を横に振った。
「そういえば、オッズはなんでルキアが獣人じゃなくて魔物だってわかったんだ?」
転生者の俺からしたら魔物か獣人かなんてわからない。人の体に猫耳としっぽが付いているだけだ。襲ってきた成体達は確かに獣のような目と戦い方だったがこの子は違う。そのまま人間のような仕草をしている。
「そうか~、オラストロは獣人を入れない国でしたね。知らなくても当然ですね。獣人の人達はみんな獣から人に進化したと言われているから獣に近い体躯をしているんです。体は体毛で覆われています。だから分るんですよ」
オッズの話から推測すると、どうやら、人に近い容姿の方が魔物らしいな。転生者である、俺ではわかるはずもない。とにかく、こういった常識が知れるのはいいことだな。
「じゃあ、俺らは休ませてもらいますね」
「あ、ああ、了解」
オッズは大きくあくびをして小屋に入っていった。アイサはすでに眠っているようだ。
静かな夜に俺とルキアは二人で火の番をする。
「そういえば、ルキアのステータスは見えないのか?」
俺と同じように手首にウィンドウを開くものがないか見てみるが何もない。やっぱり、この手首のものは転生者だけのものかもしれないな。
そんなことを考えているとルキアのおなかがグルグルと音を発した。
「お腹すいたか?」
俺の問いにルキアは頷いた。それでは料理人の服にチェンジだ。
「よし、じゃあ作るぞ」
焚火に鉄の盾を乗せて熱していく、そこへイノシシの肉を投入。ジューという音と共においしそうな匂いが漂う。ルキアは目が輝いていて涎が凄いことになっている。
「もうちょっと待ってくれよ」
今にも食いついてしまいそうだったから、注意するとルキアは俺を見上げて頷いた。すぐに肉へと視線を移す姿はとても可愛らしい。
「よし、できたぞ~」
調味料がないが何故か想像通りの味付けがされる。これもチートなのかもしれないな。これで調味料があったらどんだけ旨い物ができるのか、楽しみでもある。早く街に着きたいものだ。
「おいしいか?」
ルキアはバクバクと口にイノシシの肉と香草を入れていく。一口口に入れるたんびに俺を見つめてくるものだから、俺はほほ笑まずにはいられなかった。これが子供の魔力なのかな?守ってやりたいと思ったよ。
「はは、食べたら眠くなったのか?夜の見張りは俺の仕事だから寝るといい」
ルキアがウトウトし始めたので俺は毛布を掛けてやると俺の膝枕で寝始めた。なんとも安らかな顔だろうか。こんな子が魔物だと言われても俺は信じられないな。
「俺の服をあげられればいいんだけどな」
服が布をかけただけの簡素な物だから、あげられないかと思ったんだけど。試してみるかな。
とりあえず、料理人の服についているエプロンを脱いでなげすてると霧散して消えていく。やはり、俺に触れていないと消えてしまうようだ。
「魔物の着ぐるみはどうだ?」
着ぐるみは服じゃないのに手に入った。服模写の副産物だと思うんだがどうだろうか?
「ん?説明文が服と違う?」
ゴブリンの着ぐるみの説明を見る。
「えっと、着ぐるみを着るとその魔物の能力を得ることができる。又、着ぐるみはスキルを持っていないものでも着用化。親切な説明だな」
まるでルキアの為に用意したかのような説明だ。転生ものの多くは神が絡んでいるのだが、まさかして俺もそうなのかな?まあ、顔も見せない神に興味はないけどね。
「まあ、できるんだったら使わせてもらうか」
ステータスウィンドウのゴブリンの着ぐるみを触ると目の前に現物の着ぐるみが現れた。着ぐるみは俺が着用して現れないようだがこれも仕様のようだ。なんとも都合のいいスキルだろうか。
「起きたら着させるかな」
膝の上で眠るルキアの頭を撫でながらつぶやく。全く、嫁の前に子供が手に入ってしまうとは。母さんに知られたら怒らせそうだ・・・いや、ある意味褒められるか?嫁はいらねえ孫が欲しいとか言っていたしな。
その前に、息子を失っているわけだからなんの慰みにもならんか。
「しかし、真っ暗だな~」
夜も深くなってきて焚火の光が届かないところが真っ暗である。街灯のない世界、現代でもちょっと田舎に行けばこの位、暗いと思うが、都内に住んでいる俺からしたら絶望級の暗さだ。手元も見えないだろうな。ただ、
「月ってこんなにきれいなんだな」
都内では見えない星々が空を彩る。オリオン座とかがあれば地球なのかなとか予想もつくけど、まったくといっていいほど知らない配置の星ばかりだ。というか都内で見える星よりも明らかに多いので何が何やらわからんのが正直のところだ。
「月も太陽もあるのに地球じゃないんだな」
サルの進化した星の映画があったけど、それだと未来の地球だったってオチだったな、ここは間違いなく違う星だろうけどな。
この日は静かな夜で終わりを告げた。ルキアの寝息と薪の燃える音が聞こえるだけの夜。
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