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第二章 海へ

第二十八話 家建設

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「お父さん何作ってるの?」

「ん?これはな~」

 カシムを退治して次の日、俺は早速孤児院の建物を作り始めた。大工の服に着替えて製作しているのは本物の孤児院の建物だ。一角なのでルキアは何だかわからなかったみたいで首を傾げている。
 孤児院と言ったら教会だ。なので教会を建てる予定。この世界の信仰対象が何なのか分らんのでそこら辺はルナさんに任せるとして、俺は建物を建てるのみだ。

 孤児院の敷地は普通に広いので建てる範囲は十分確保できる。小屋は20坪の二階建てだったが俺が作る教会はその倍にしようと思う。藁のベッドではなくてちゃんとしたベッドに寝てほしいのでそれも作らないとな。
 俺が持っている素材は鉄関係ばかりなので木を入手しないといけない。こんなことならトラ達と会った時とか、ワッツと会った時とかに木を入手しておけばよかった。どうせアイテムバッグは無限みたいだから入れられるだけ入れておくべきだったな。

「とりあえず土台を鉄で作っていくか」

 土台はしっかりしていた方がいいから教会の四方に柱を鉄柱に、そして、土台を鉄で作っていくことにした。下手な現代家屋よりも丈夫なものになるだろう。

「お兄ちゃん何やってるの~?」

 ルキアにつられて子供達も寄ってきてしまった。

「家を作ってるんだぞ。二、三日待ってくれよ。すぐにあったかいベッドで寝られるからな」

 子供達は俺の話を聞いて『わーい』と言ってぴょんぴょん跳ねて喜んでいる。喜ぶのはいいけどチート使ってるので子供達に見せたくないんだよな~。

「みんな~タツミさんの邪魔しちゃダメよ~」

 ルナさんが小屋の中から子供達に声をかけるとみんな仲良く『は~い』と答えて元の遊び場へ戻っていった。

「さて再開するか・・と言っても木がないからこれ以上はできないんだよな」

 土台と鉄柱は配置できた。土地は80坪程で40坪の範囲に土台と鉄柱を作った。小屋はそのまま牛でも飼ってもらおうと考えているのでそのままにしておく。
 俺はここにずっといる気はない。この世界を旅したいからな。なので自給自足できるように収入を得なくてはいけないわけだ。なので牛か畑が好ましいと考えたというわけだ。

「じゃあ、木材屋にでも行きますか」

「キャン!」

「トラがついてきてくれるのか?」

「ルキアも行く~」

 トラとルキアが俺の言葉を聞いて声を上げた。ルキアは大きく手を上げて言っている。
 サンは子供達を背にのせて遊んでいるので今回はお留守番だ。カシムがいなくなってもまだ何かあるかもしれないから、ここにいてもらった方が安心して外に出れる。

 ルキアとトラと一緒に市場にやってきた。海の方に行けば行くほど食べ物が売っている店が増えてくるのだが市場入り口ら辺は素材屋が多く点在している。その中には丸太がドカンと置いてある店がある。最初に来た時に見ていたから売っているのは知っているんだけど値段が分らんから家建てられるほど買えるのか不安だ。

「お父さ~ん、おんぶ~」

「ははは、甘えん坊だな~」

「・・・」
 
 しばらく店の方へ歩いていると、市場を見ていた親子が子供を肩にのせて肩車をし始めた。ルキアはその様子を見て物欲しそうに指を咥えて見ている。

「そら~」

「わ~!」

 やりたそうにしているので俺はルキアを思いっきり持ち上げて肩車をしてあげた。驚いていたルキアだったけどすぐに笑顔になっていつもより高くなった視界に歓声を上げた。

「すご~い」

 平均よりも高い身長の俺が肩車しているので市場全体が見える。ルキアはキョロキョロと周りを見渡して楽しんでいた。俺もそんなルキアを見て楽しみました。
 やっぱり、子供の初めてを見た瞬間っていいよな。感動が顔に出て輝かんばかりだ。

 そうこうしているうちに、目的に店についた。
 木材の値段は木札を見る限りそれほど高くはない。建材に加工されている物は一メートル四方の物で銅貨5枚、加工していない原木が銅貨2枚だからかなり高い感じがするな。加工には技術がいるから高いのは当たり前なんだが、その技術を得られる大工の服をもっている俺なら原木でいいな。

「原木が欲しいんだが」

「いらっしゃい、どのくらいほしいんだ?」

「40坪程の家を建てる予定なんだが」

「おっ、大口のお客さんか。40坪って事は一階建ての家でこの板が1280枚程になると思うんだがどうする?」

 おお、流石本職だな。木材屋のおっちゃんに建物を建てる敷地を言うと答えてくれた。
 坪数を聞いただけでどれだけ必要なのか大体わかるんだな。しかし、1280枚という事はえっと?

「原木なら4枚は加工できる。それだけの腕があればな」

 悩んでいる俺を見ておっさんが口を開いた。まあ、大工の服があれば可能だろう。

「原木で買ってくれるならおまけで白金貨一枚と金貨五枚にまけてやるぞ」

「いいのか?」

「ああ、従魔に愛されているあんたならいいと思ってな」

 肩車しながら話しているのでいい印象を与えていたようだ。おっさんはルキアを見てニカッと笑っている。ここでもうちのルキアは天使であった。

「配送はどうする?」

「孤児院の敷地に運べるか?」

「配送もおまけしてやりたいところなんだが銀貨一枚になるぞ」

 所持金的には原木でオーバーなんだよな。後払いにしてもらって先にギルドに行こう。そこでまた換金だ。

「現金が白金貨一枚と金貨4枚なんだが、あとは少し待ってもらえるか?冒険者ギルドで素材を換金してくるから」

「ああ、大丈夫だぜ。あんたはこいつらを見る限り、良い奴っぽいからな。踏み倒したら商人ギルドに言うだけさ」

 おっさんはニカッと笑ってそう言ってきた。

 孤児院の敷地は教えなくても知っているようだったので配送を任せて俺達はギルドに向かった。
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