40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)

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第二章 プチ旅行

第53話 英雄

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「シシシ。シゲルよろしくな!」

「よろしくお願いしますシーちゃんさん」

「シーちゃんでいいって言ってんだろシゲル~」

 死霊の球は私の横に浮いて特徴的な笑い声を上げる。私の魔力を受け取ると自立して動けるみたいです。ルグールは魔力が足りなかったのでしょうか? おいていくなんておかしな話です。

「おお、英雄たちが帰ってきた!」

『おお!』

 ドリウスさん達と合流すると歓迎してくれる。死霊術師の遺跡は色々と珍しいものが多いみたいで運び込んでいますね。

「ははは、ミスリルやらオリハルコンやら。皿なんかにも使われてる。もったいないから剣や斧にしちまおうって話だ」

「はは、それは凄いですね」

 大変昔に作られた遺跡っぽいのにそんな貴重な鉱石が使われているんですね。遺跡って凄いですね。

「建物も調べたら普通の石じゃねえんだ。死の匂いが強い石でな。死霊術師のマナを入れ込んでる。魔法に対して強くなってるってわけだ」

「マナを入れると魔法に対して耐性を持つってわけですね」

「ああ、城壁に使えば大きな力になる。これからの戦が大きく変わるだろうな」

 ドリウスさんが楽しそうに石を眺めて話す。作り方が分かれば後は職人さんのドワーフさん達の出番ですね。

「皆、続けて使えそうなものを集めてくれ。魔物の生き残りがいるかもしれねえ。その時は大きな声をあげろよ。けが人で済んだのに死者は見たくねえからな」

「はい!」

 ドリウスさんの声に兵士さん達が答える。彼は私達を案内してドワーフの里に帰る。

「今回と前回の戦いでは世話になった。ありがとう。何か儂らにしてほしいことはあるか? 礼がしたい」

「してほしいことですか? えっと、ではベンツさんの村のことを」

「ベンツ?」

 前を歩くドリウスさんが褒美をくれるみたいです。なのでベンツさんの村のことをお願いしようと答える。ベンツさんは大丈夫と言っていたけど、食料に余裕はなかったはずです。
 それもあって、ドーシュさんから食料を多めにかったんですよね。

「ははは、シゲルはほんと無欲だな。人の為に褒美を欲するか。ん? そういえば、その横に浮いてるのはなんだ?」

「あ、ははは。これが今回の騒動の中心のアイテムですよ。死霊の球のシーちゃんです」

 ドリウスさんの疑問に答えると彼は怪訝な表情で見つめてくる。

「ってことは死霊を操れるってことか? 物騒だな。壊してしまった方がいいんじゃないか?」

「そうですね。ですがちゃんと言うことを聞く死霊を操れるなら良いことですよ。警備兵が増やせるみたいなことでしょ?」

「ん? ガハハそりゃいいな。寝ない兵士か。儂も欲しいな」

 ドリウスさんの疑問に答えると彼は楽しそうに笑った。

「シゲル! ドリウス将軍! ご無事ですか!」

 ドワーフの里に帰還するとガルドさんが涙目で迎えてくれる。心配してくれてたみたいですね。

「大丈夫ですよ。一時はどうなるかと思いましたけど」

「とか言ってシゲルさんは終始敵を圧倒してましたよ。アシュラとベノムも出てきたのに」

 私の言葉に付けたして答えるルッソ君。
 そういえば、アシュラとベノムの死体をどこで得たんでしょうか? ゼロから作ることは不可能でしょう。
 魔物の戦利品になる死骸はルドラさんみたいに狩りに使ったり、武器防具の素材に使ったりする。アシュラもベノムもそれ以外に使える部位はなかった。通常なら廃棄される。
 死体をそのまま捨てるわけもない。燃やして灰にするのが普通です。五体満足のゾンビになって襲い掛かってきました。ということは死体を処理していないということ。ルグールがそれを手に入れるにはルドラさん達の目を盗むしかない。
 あの転移があれば盗むことは簡単です。ですが盗まれたことが表立っていないのを見ると……もみ消せる誰かがいなくてはいけない。

「シゲルさん? どうしたんですか?」

「あ、いえ。疲れましたね。ドーシュさんの宿に戻りましょう」

 誰かを疑わなくちゃいけない。そう思っていると顔色が悪くなってしまったのか。リリスさんが心配して顔を覗いてくる。誤魔化して宿に歩き出すとエチルちゃんが抱き着いてくる。

「どうしたのシゲルおじちゃん? なんかいつもと違う」

「え? ははは、少し心配事が増えてしまったんですよ。心配ありません。何も変わりませんよ」
 
 エチルちゃんにも心配されてしまいました。彼女の疑問も誤魔化す。まだハッキリとしていないのに疑うのはおかしいですからね。ですが油断なく警戒しないといけない。

「おかえり! 英雄さん方。お湯とご飯を用意したよ! どっちでも先に楽しんでおくれ」

「ドーシュさんありがとうございます! 私はお湯から~」

 宿屋に帰ってくるとドーシュさんが笑顔で迎えてくれる。ミラちゃんが大喜びでお湯をいただいて自室に入っていく。
 英雄と言われるのは気恥ずかしいですが、食べ物とお湯は助かります。私もお湯で体をぬぐってからご飯を頂きます。

「はぁ~、それにしても大変だったねシゲルさん」

「はは、そうですねルッソ君」

 みんなも体を拭うことにしたようで男性陣は私の部屋に集まりました。ガルドさんも折角なのでということで体を拭っています。

「お風呂がほしいですね~」

 たっぷりな湯舟が恋しくなります。体を拭うなんて貧乏生活をしていた時以来ですよ。昔は食器洗いのようにシンクで体を拭ったもんです。冬は地獄でしたね~。水でしたから。

「お風呂か~。貴族様はそんなの作ってたな。ドワーフに頼んでくることもあるから作り方知ってるぞ」

「ほんとですか!? あ、でも、お高いんでしょ?」

「おいおい。英雄様が何言ってんだ? 今回の報酬で沢山もらえるだろ?」

「はは、それはベンツさんの村のことをお願いするのにつかってしまいました。私にお金は入ってきませんよ」

 ガルドさんと報酬の話をすると彼は『シゲルらしいな』と言って笑ってくれました。そのあともルッソ君に大笑いされて食事を皆さんと楽しんで眠りにつきました。
 なんだか”私らしい”と言われるとうれしく思います。私のことを肯定してくれてるみたいで。この世界に来れてよかった。そう思わせてくれる。
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