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第二章 プチ旅行
第54話 正体
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◇
「おや? 早い帰還ですね。狂王ルグール」
「早い帰還じゃねえ! どうなってんだ?」
私の名前はエインベリアル。エイベルグの領主の男。
ドワーフの里を襲撃させた狂王ルグールが帰ってきた。息を切らせて命からがらといった様子。
ワインを楽しんでいたのに無粋な方です。なにやら憤っている様子。”私”の計画通りだというのに。
「お前に言われてドワーフを襲ったんだ。それなのにあのシゲルとかいうお前のところの”厄介な奴”がいたんだ。どうなってんだ?」
「ふふ、そうですかそうですか。それは計画通りですね」
「計画通り? 何を言ってんだ。ドワーフを全員ゾンビやグールに変えて戦力を増やすって話だっただろ! アシュラとベノムのゾンビもなくなっちまってどうすんだ?」
ルグールは何度も何度も疑問を投げかけてくる。私は思わずため息をつく。
「私はそういうつもりで攻めさせたのではありません。私の目的は”統一”なのですから」
「あ? 戦争をして俺達だけの世界を作るんじゃねえのか?」
「私は一言も言ってませんよ。そんなことは私は統一して”平和”を手に入れるといったんですからね」
「種族統一で平和って言ったじゃねえか! それは俺達魔族が勝って!」
「あ~、うるさい」
ルグールは私の胸ぐらを掴んできて話に熱を帯びる。私は思わず手で彼を払う。彼の上半身と下半身が泣き別れしてしまう。
「な、なにしやがる」
「すごい生命力ですね。それで生きていられるなんて」
ルグールは上半身だけで口を動かす。少しずつ血が彼の唇にかかる。とても汚い。
「ん~、やはり血は若い少女の物がいい」
彼の血を拭い指をしゃぶる。ワインに入った若い少女の血とは違う。とても古臭い生ごみのような味。神は同種族で争うことを嫌ったのでしょう。
同じ種族の血はとてもまずい。
「て、てめえ。裏切るのか」
「失礼ですね。私は裏切っていません。私は最初からすべての物の敵ですから」
「こ、この野郎。し、死んじまえ」
「汚い言葉だ。お前も糧となれ」
なおも胸ぐらを掴んでくるルグールを私は両手で持ち上げる。そして、青い炎を作り出して彼を灰にしていく。よく燃える、散り際は綺麗ですね。
「思っていたよりも”糧”は少ない。もう少し死が必要ですね」
私はクスっと笑いワインを一気に飲み干す。うまい、新たに一人の少女を買った甲斐がある。
「そういえば、彼と一緒に獣人の少女がいましたね。強くて美しい少女だった。味を見てみたいものですね」
そう言って窓の外を見据える。何もなかったかのように住人が生活している姿が見える。私という驚異を知らずにのうのうと暮らしている。誰かが犠牲になっているとも知らずに。
「つかの間の平和。知らないからこそ平和でいられる。この一秒で不幸になっている者もいるというのに。皆、自分が豚だと知るんです。もう少し、もう少しです。みんな平等になる。平等の”平和”、死を迎えるんです。楽しみですね」
もう目の前まで来ている。私の野望。楽しみで楽しみで……涎が止まりませんよ。待っていてください。私の平和、神様……。
◇
「シーちゃん。本当に作れるんですか?」
「おう! 俺の範囲に入ったら肉体は作れるぜ! 灰になっても範囲にはいってればな。ただ、魂は別の作り物になっちまう。もう死んじまったからな」
「あ、そうなんですね。それなら作らなくてもいいですかね」
遺跡の戦いから次の日。私はシーちゃんと共に遺跡に帰ってきました。今もドワーフさんが一生懸命使えそうなものを回収しています。
私はというとアシュラさんとベノムさんを手に入れようと思ったのですが、魂は別と聞いていたたまれない気持ちになったのでやめようかと思いました。
戦力としては彼らが欲しいですが、死者への冒涜ですよね。ただでさえ二度死んでいるんです。このまま安らかに眠ってもらいましょう。
「それならあのゴーレムっていうのはどうだ? 魂もないし、冒涜にならないだろ?」
「おお! それはいいですね。ロボットはロマンですから」
「ん? なんだかわからねえが乗り気になってくれたか」
シーちゃんの提案に頷くと早速彼がドワーフゴーレムを作り出してくれる。本物よりも色のないドワーフゴーレム。真っ白でなんだか作り物っぽい。ってどっちも作り物ですけど。
「なんだか個性がないですね。もうちょっとどうにかできないんですか?」
「あぁ~。今回のご主人様は色合いも見てくるのか? じゃあ青とか赤で色塗ってやるよ」
「おお! いいですねいいですね。おもちゃ屋さんにありそうな色合いです。誰かに怒られる色してますよ」
「怒られちゃダメだろ? よくわからねえな」
シーちゃんの色彩センスに脱帽です。この子! 動きますよ! と言いたくなる色合いです。黄色の部分がないくらいの違いしかありませんよ。これは胸熱ですね。
「ゾンビゴーレムとでも名付けるか?」
「ええ!? 素材は何なんですか?」
「全部マナでできてる。マナゴーレムでいいか」
「そっちの方がいいですね。ゾンビはやっぱりイメージ悪いです」
死霊の球という割にはマナで何でも作れてしまうんですね。ですが一つ気になることが。
「なんだか動かないですけど?」
「ああ、そりゃ動かねえよ。誰も入ってねえだろ?」
「え? あれに入るんですか?」
「ああ、魂入れねえと」
思わず納得してしまいました。彼は死霊の球なんですよね。死んだ人の霊を使ってなんでも兵士にしてしまうというわけです。
ということはゴーレムの数だけ霊が必要ってことですよね……なんだか困りました。
「ここら一帯には捨てる程霊がいる。100は作れるな」
「100人の霊!? なんだか申し訳ないですよ」
「なに言ってんだ? 人だけじゃねえよ。動物の霊も死霊だ。人は全体の中じゃ少ないほうだ」
「あ、そうなんですか」
シーちゃんはそう言ってゴーレムに霊を入れていく。動き出すとすぐに私の前に並んでいく。しかし、壮観ですね。
「この場所にしまっておいて使いたいときに転移させる。でいいか?」
「そんなこともできるんですか!? どこにしまおうか心配していましたがドリウスさんに話しておきます」
シーちゃんは大変優秀な魔道具さんのようです。これで何が来ても怖いものはないですね。
「おや? 早い帰還ですね。狂王ルグール」
「早い帰還じゃねえ! どうなってんだ?」
私の名前はエインベリアル。エイベルグの領主の男。
ドワーフの里を襲撃させた狂王ルグールが帰ってきた。息を切らせて命からがらといった様子。
ワインを楽しんでいたのに無粋な方です。なにやら憤っている様子。”私”の計画通りだというのに。
「お前に言われてドワーフを襲ったんだ。それなのにあのシゲルとかいうお前のところの”厄介な奴”がいたんだ。どうなってんだ?」
「ふふ、そうですかそうですか。それは計画通りですね」
「計画通り? 何を言ってんだ。ドワーフを全員ゾンビやグールに変えて戦力を増やすって話だっただろ! アシュラとベノムのゾンビもなくなっちまってどうすんだ?」
ルグールは何度も何度も疑問を投げかけてくる。私は思わずため息をつく。
「私はそういうつもりで攻めさせたのではありません。私の目的は”統一”なのですから」
「あ? 戦争をして俺達だけの世界を作るんじゃねえのか?」
「私は一言も言ってませんよ。そんなことは私は統一して”平和”を手に入れるといったんですからね」
「種族統一で平和って言ったじゃねえか! それは俺達魔族が勝って!」
「あ~、うるさい」
ルグールは私の胸ぐらを掴んできて話に熱を帯びる。私は思わず手で彼を払う。彼の上半身と下半身が泣き別れしてしまう。
「な、なにしやがる」
「すごい生命力ですね。それで生きていられるなんて」
ルグールは上半身だけで口を動かす。少しずつ血が彼の唇にかかる。とても汚い。
「ん~、やはり血は若い少女の物がいい」
彼の血を拭い指をしゃぶる。ワインに入った若い少女の血とは違う。とても古臭い生ごみのような味。神は同種族で争うことを嫌ったのでしょう。
同じ種族の血はとてもまずい。
「て、てめえ。裏切るのか」
「失礼ですね。私は裏切っていません。私は最初からすべての物の敵ですから」
「こ、この野郎。し、死んじまえ」
「汚い言葉だ。お前も糧となれ」
なおも胸ぐらを掴んでくるルグールを私は両手で持ち上げる。そして、青い炎を作り出して彼を灰にしていく。よく燃える、散り際は綺麗ですね。
「思っていたよりも”糧”は少ない。もう少し死が必要ですね」
私はクスっと笑いワインを一気に飲み干す。うまい、新たに一人の少女を買った甲斐がある。
「そういえば、彼と一緒に獣人の少女がいましたね。強くて美しい少女だった。味を見てみたいものですね」
そう言って窓の外を見据える。何もなかったかのように住人が生活している姿が見える。私という驚異を知らずにのうのうと暮らしている。誰かが犠牲になっているとも知らずに。
「つかの間の平和。知らないからこそ平和でいられる。この一秒で不幸になっている者もいるというのに。皆、自分が豚だと知るんです。もう少し、もう少しです。みんな平等になる。平等の”平和”、死を迎えるんです。楽しみですね」
もう目の前まで来ている。私の野望。楽しみで楽しみで……涎が止まりませんよ。待っていてください。私の平和、神様……。
◇
「シーちゃん。本当に作れるんですか?」
「おう! 俺の範囲に入ったら肉体は作れるぜ! 灰になっても範囲にはいってればな。ただ、魂は別の作り物になっちまう。もう死んじまったからな」
「あ、そうなんですね。それなら作らなくてもいいですかね」
遺跡の戦いから次の日。私はシーちゃんと共に遺跡に帰ってきました。今もドワーフさんが一生懸命使えそうなものを回収しています。
私はというとアシュラさんとベノムさんを手に入れようと思ったのですが、魂は別と聞いていたたまれない気持ちになったのでやめようかと思いました。
戦力としては彼らが欲しいですが、死者への冒涜ですよね。ただでさえ二度死んでいるんです。このまま安らかに眠ってもらいましょう。
「それならあのゴーレムっていうのはどうだ? 魂もないし、冒涜にならないだろ?」
「おお! それはいいですね。ロボットはロマンですから」
「ん? なんだかわからねえが乗り気になってくれたか」
シーちゃんの提案に頷くと早速彼がドワーフゴーレムを作り出してくれる。本物よりも色のないドワーフゴーレム。真っ白でなんだか作り物っぽい。ってどっちも作り物ですけど。
「なんだか個性がないですね。もうちょっとどうにかできないんですか?」
「あぁ~。今回のご主人様は色合いも見てくるのか? じゃあ青とか赤で色塗ってやるよ」
「おお! いいですねいいですね。おもちゃ屋さんにありそうな色合いです。誰かに怒られる色してますよ」
「怒られちゃダメだろ? よくわからねえな」
シーちゃんの色彩センスに脱帽です。この子! 動きますよ! と言いたくなる色合いです。黄色の部分がないくらいの違いしかありませんよ。これは胸熱ですね。
「ゾンビゴーレムとでも名付けるか?」
「ええ!? 素材は何なんですか?」
「全部マナでできてる。マナゴーレムでいいか」
「そっちの方がいいですね。ゾンビはやっぱりイメージ悪いです」
死霊の球という割にはマナで何でも作れてしまうんですね。ですが一つ気になることが。
「なんだか動かないですけど?」
「ああ、そりゃ動かねえよ。誰も入ってねえだろ?」
「え? あれに入るんですか?」
「ああ、魂入れねえと」
思わず納得してしまいました。彼は死霊の球なんですよね。死んだ人の霊を使ってなんでも兵士にしてしまうというわけです。
ということはゴーレムの数だけ霊が必要ってことですよね……なんだか困りました。
「ここら一帯には捨てる程霊がいる。100は作れるな」
「100人の霊!? なんだか申し訳ないですよ」
「なに言ってんだ? 人だけじゃねえよ。動物の霊も死霊だ。人は全体の中じゃ少ないほうだ」
「あ、そうなんですか」
シーちゃんはそう言ってゴーレムに霊を入れていく。動き出すとすぐに私の前に並んでいく。しかし、壮観ですね。
「この場所にしまっておいて使いたいときに転移させる。でいいか?」
「そんなこともできるんですか!? どこにしまおうか心配していましたがドリウスさんに話しておきます」
シーちゃんは大変優秀な魔道具さんのようです。これで何が来ても怖いものはないですね。
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