40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)

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第二章 プチ旅行

第55話 願い

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「おかえりシゲル。明日にはここを出て行っちゃうんだろ?」

「ただいまもどりました。そのつもりですよ。途中に寄った村も気になりますしね」

 遺跡から帰ってきてドーシュさんに迎えられる。彼女は私の答えを聞いて寂しそうに俯く。

「あんたたちが来て毎日楽しかったよ。またいつでも来てくれて構わないからね。他の宿屋に行ったら怒鳴りに行くよ」

「はは、わかっていますよ。ちゃんとここに帰ってきます」

 ドーシュさんの恫喝を笑うと彼女もにっこりと笑ってくれる。こういう出会いがあるのが旅ですよね。今回の旅はとても楽しかったです。
 ロサンゼルスに行けると思ってのった飛行機が異世界に来てしまいましたが、そのおかげでこんな旅ができる。私は本当に運が良かったです。

「お父さん……」

「エチルちゃん。また間違えちゃいましたね」

 部屋に戻るとエチルちゃんが迎えてくれる。私をお父さんと呼んでしまうと悲しい顔になっていく。私は笑いながら彼女の頭を撫でる。

「おじちゃん……。お父さんになってほしい。リリスお姉ちゃんから聞いたんだ。養子っていうのがあるんでしょ?」

「……それは」

 エチルちゃんの声に私は嬉しいという感情と悲しいという感情が交錯する。受け入れてしまっていいんだろうか。
 もちろん、私は彼女を守ってあげたいと思うし、嬉しいと思っています。ですが、受け入れるということは彼女がお父さんを忘れてしまうということになってしまう。それはとても悲しいことです。
 彼女のお父さんは最後まで彼女を守って死んでいった。そんな彼がエチルちゃんの記憶からいなくなる。そんなことあってはならない。

「ダメ?」

 考え込んでいるとエチルちゃんが涙を瞳に貯めて聞いてくる。
 ダメなわけがない。私はそう答えて彼女を抱きしめてあげたかった。ですが……。

「シゲルさん。難しく考えないでください。勇気を出してエチルちゃんは決断したんです」

 考え込んでいると後ろから声が聞こえてくる。振り向くとリリスさんが立っていました。ルッソ君達も私の動向を伺っています。

「エチルちゃんが私をお父さんと言ってくれるのはとても嬉しいです。彼女も作ったことがないのに子供を、とは思いますし恥ずかしいんですが。でもですよ。エチルちゃんが本当のお父さんを忘れてしまうんじゃないかって。それはとても怖いことです。私のせいで本当のお父さんが消えてしまう。そんなこと……あってはいけない」

 私は涙をこぼして訴えかける。するとエチルちゃんが背中に抱き着いてくる。

「忘れない! お父さんはここにいるもん。私はシゲルお父さんになって欲しいの」

 エチルちゃんも涙をこぼして訴えかけてきてくれる。とても温かい涙が背中を温めてくれる。
 私は肩にかかる彼女の手に自分の手を合わせる。とても温かくて小さな手。私はこの子を守ってあげたかった。だからあの時、初めて会った時も町に連れて行った。ルドラさんに心配されましたが、今この瞬間まで守り抜いた。
 私なんかがエチルちゃんのお父さんと名乗っていいのでしょうか。

「いいな~、シゲルさんがお父さん」

「ほんと……。うちのお父さんは仕事ばっかりだからな~」

 ルッソ君とミラちゃんがもらい泣きをして羨ましそうにつぶやいてくれる。そう言ってもらえると嬉しいですが。ミラちゃんのお父さんのアズさんもとても素晴らしい方だと思いますよ。

「不束な男ですがエチルちゃんのお父さんになっていいですか?」

「うん! シゲルお父さんがいい! お父さん!」

 私は決心をしてエチルちゃんを背中から降ろした。そして、宣言をすると彼女は再度飛びついてくる。彼女を抱きしめると涙が滝のように流れ出る。
 エチルちゃんも涙が止まらないみたいです。

「ふふ、二人で泣きすぎですよ。ハンカチが足りない」

 リリスさんがそう言って涙を拭ってくれる。彼女のおかげで私達は家族になれた。というか養子縁組の書類のようなものはいらないんでしょうか? そういった取り組みはあるみたいですが?

「書類とかいらないんですか?」

「養子縁組はその町の領主や貴族に知らせればいいだけだ。この町ではドリウス将軍だな」

 冷静になって疑問を投げかけるとガルドさんが鼻をすすりながら教えてくれる。役所のような施設もあると思ったのですが貴族がそういう役割をしてるみたいですね。
 実は貴族様って大変な職業なのでは? エインベリアルさんも色々と大変そうでしたしね。

「話は聞かせてもらったよ。おめでとう」

 ということでドリウスさんを夜の食事に招待して養子の話をした。するとわかったと言って火酒を注いでくる。

「儂の養子にもなるか?」

「いやいやいや。私は養子にはならないですよ! なってどうするんですか?」

「ん~、なったらドワーフの重鎮になれる。王族にも意見が通るようになるぞ。無欲なシゲルには重荷にしかならないか。ガハハ」

 ドリウスさんがからかいだしたので苦笑いを浮かべるしかありません。ですがこれで正式にエチルちゃんと親子になれたというわけですね。
 いつも『獣人のお子さん?』と聞かれたときに困っていましたがこれからは自信満々に『子供です』と答えることができるんですね。とても嬉しいです。

「明日には帰ってしまうんだな」

 火酒を一気に飲み干すとドリウスさんは寂しそうに俯く。
 私は火酒を注いであげるんですが注いだらすぐに飲み干してしまいます。体に悪そうですがドワーフさん達は『俺たちの血液は火酒だ』と言って飲むのをやめないんですよね。
 
「よし! 明日は盛大に見送るぞ! 金貨も沢山やるぞ~!」

「いやいや、そういったのは。って金貨も必要ないですよ!」

 ドリウスさんは上機嫌になって声を上げる。いつの間にか他のドワーフさん達も参加している最後の夜のパーティー。
 日に日に人の増える宿屋として有名になっていたドーシュさんのお店。最後は満席となってしまいました。店の前も行列ができています。
 人族の英雄とドワーフの英雄と飲める宿屋と言われているらしいです。最初は嫌われていたドワーフの里でしたが、最後は私にはもったいないほど、好いてくれました。ただただ私は嬉しい。
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