40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)

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第三章 守るべきもの

第63話 終焉へといざなうもの

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「こ、こんなことがあってなるものか。私の隷属魔法が効かないなんて。こんな辱め!」

「口を閉じてください。まだ終わりじゃないですよ!」

 雷を両手に纏ってうろたえているエインを殴りつける。ダメな大人は殴って思い知らせます。今、この時だけはパワハラは無しにしてください。

「うぐ、そんな馬鹿な。私を圧倒している?」

『格闘【極】を習得しました』

 うろたえるエインの声と同時にスキルを極めてしまいました。彼の変形していく顔がゆっくりと見えます。これは時間が止まっていると言ってもいいくらいの速度ですね。

「シゲル! 大丈夫か! ってなんだ、心配して損した」

 エインが気絶するまで殴っているとルドラさんが駆けつけてきてくれました。マジックバッグも持ってきてくれたみたいです。とどめにツインブリューナクを取り出す。

「お、おい。シゲル? 何をするんだ?」

「なにって決まっています。この人にとどめを」
 
 ツインブリューナクを振り上げるとルドラさんが心配して声をあげる。私は素直に答えてエインを見下ろす。
 私がしていることは平和のための戦争といったところでしょうか。彼にはもう、何もできないはずです。それなのに命を狩ろうとしている私。

「……どうしました? とどめを刺しなさい」

「わかっています。そうしなくてはいけないということを。でも、私は……」

 エインが半開きの目で話しかけてくる。そのれに答えられずにツインブリューナクを降ろす。争いを否定しておいて、人の命を取ろうとしている。私は自分を愚かだと思ってしまいました。最後まで対話を諦めずにいたいです。

「エインさん。あなたは平和を作ろうとしていたんですよね。それはみんなのため。違いますか?」

「……ああ、不幸に死んでいく人を見送っているうちに死は安らぎを与えていると思った。数えられないほどの人の死を目の当たりにして、死こそ平和、平等であったと思ったのだ」

 私は彼に問いかける。そして、彼は優しい口調で答えてくれた。

「私はシゲルに負けた。ということは神は違うと言っているのか? 死こそ平和ではないのか? それならば私は何をすればいいんだ? 領主として何をすれば?」

「……そんなもん簡単だ」

 エインさんの言葉にルドラさんが彼の胸ぐらを掴んで答える。

「平和っていうのは笑顔だ。みんなを笑顔にするのが領主の仕事だ。死ぬときも笑顔、生まれる時も笑顔。それを一つでも多く作るのが領主様の仕事だ!」

 ルドラさんは涙を瞳に貯めながら声をぶつける。彼は本当に熱い男ですね。思わず私も泣いてしまいました。

「そうか、そんな簡単なことだったのか。私は皆を死の世界へ連れていくことこそ平和だと思ったのだが」

 エインさんはそう言って俯いた。
 
「地震?」

 彼がうつむくと同時に地面が揺れ始める。地震に慣れている私でも戸惑う揺れ。震度7~8でしょうか。建物が揺れて倒壊を始める。

「ちぃ! これじゃ生き埋めだ」

「それが幸せだ。この後の惨状を鑑みるとな」

 ルドラさんの声にエインさんがつぶやいた。
 建物が壊れて天井が襲い掛かってくる。私はツインブリューナクで受け止めて力強く切り上げる。吹き飛んでいく瓦礫、上には何もなくなりました。上には誰もいなかったみたいですね。

「死霊術師の遺跡。すべてこの町と繋がっています」

 瓦礫から出ているとエインさんが語りだす。

「死霊術師は人族以外を抹消しようとその仕組みを作り出しました。その仕組みとは【血の魔法陣】。遺跡と遺跡を魔法陣で結び、その中で死んだ者たちを力に変えて”作り出す”」

「作り出す? 何をですか?」

 エインさんは淡々と話し出して、私の疑問を聞くとニヤッと笑みを浮かべた。

「神です! 【終焉へといざなう者】」

 エインさんがそう言って指さす方向を見上げる。
 私達もそのほうこうを見つめると剣のような鋭いドラゴンが飛んでいます。バサッバサッと音を立てて飛び立ち、太陽と重なると光を生み出す。デモンストレーションとでも言いたげに町の外へと光を照らす。光が照らされた大地が黒くえぐれていく。虫眼鏡で熱したみたいになっていますね。

「不完全ですが誕生してしまいましたね」

「て、てめぇ! あんなものをよくも!」

 エインさんが横たわり呟く。ルドラさんは怒りを彼にぶつけようと胸ぐらを掴んでいます。

「こんなことをしていていいのか? 早くあいつを倒さないと多くの人が死ぬぞ」

「ちぃ! 言われなくても! おい! シゲル行くぞ!」

「はい……。あなたはしっかりと反省してください。死んだらそこで終わりなんです。生きているあなたなら反省できるはずです」

 エインさんの声にルドラさんが憤りながらもこぶしを納める。私は彼を応援する。私は彼を殺めることができなかった。あとは応援することしかできません。
 彼が人の道に戻ってきてくれることを願います。

「空を飛ばれちゃ何も出来ねえ! シゲル頼めるか?」

「わかりました」

 徒歩を使い空へ上がる。鋭く飛行する【終焉へといざなう者】さん。終焉さんと呼んであげましょうか。
 剣が飛んでいるように見える彼は魔法で飛んでいるんでしょうね。明らかに積載量オーバーの体をしています。物理を無視しないでください。ってそれは私もですね。

「勝負ですよ! 終焉さん!」

「GYAaaaa!」

 私は声を上げて終焉さんに気付かせる。彼は私に気が付き鋭い方向を浴びせてくる。
 さあ、モンスターハントの時間です。終焉を終わらせてしまいましょう。
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