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第二章 学校

第63話 鮎川

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「ラルク! ラルクしっかりして!」

「うう……ここは?」

「良かった、なんともないね」

「えっ、ああ、ありがとうございます」

「ラルク?」

 僕はアユカワ ヒロト。
 気が付くと倒れていて、可愛い少女に手を貸してもらって立ち上がっている。
 少女は僕を見つめて困惑した顔をしている。僕はこの子の事を知らないけど、この子は僕の事を知っているようだ。

「えっと、僕はアユカワって言います。君の名前を聞いてもよろしいでしょうか? お礼がしたいので」

「ちょっとラルク、何の冗談?」

「ラルク? 僕はアユカワ ヒロトですが?」

 女の子は困惑して肩をゆすってくる。明らかに初対面といった感じではない。そんなことをしていると空から見知った女の子が降りてきた。空から降りてきたから驚いていると降りてきた女の子が抱き着いてきた。

「ラルクお兄ちゃん大丈夫だった?」

「ラルク? 何を言っているんだいアイ。お父さんの名前忘れたのかい?」

「!?」

 僕らの可愛い子、アイが困惑に顔をゆがめて涙を目にためている。

「お父さん! 意識戻ったの?」

「アイは変なことを言うね。そういえば、ここは何処なのかな? 海外?」

 アイを抱き上げて周りを見渡す。明らかに現代日本ではないのが見てわかる。レンガ作りの家々が並び、道路はちょっとした石造りの道路、アスファルトではない時点で現代ではないよな。

「アイちゃん、これはどういうことなの?」

「オーリーちゃん……とにかく、屋敷に帰るの……」

 アイはうつむいて、さっきから心配そうに見てきた女の子、オーリーちゃんに答えている。

 オーリーにラルク……何処かで聞いたことがあるような?

 僕はアイに案内されて、大きな屋敷が二つある家に着いた。正面の大きい方の屋敷に入っていく。

「お父さんここに座っていて欲しいの。ルナちゃん達を呼ぶの」

「あ、ああ、分かったよ」

 アイはいつの間にか成長しているみたいだな。お姉さんみたいになってるよ。

 それにしてもラルク、オーリー、そしてルナか……ルナのお母さんがウテナだったら確定だな。

「ラルクさん、本当に記憶を?」

「あなたは?」

 アイが三人の女性を連れて帰ってきた。小さい子がルナ、ということはこの質問してきた女性は、

「私はウテナと申します。本当に記憶を取り戻したのですね」

 やはりそうか……。この見知らぬ世界は僕の書いていた漫画の世界。だが、なぜここに僕はいるんだ? 
 疑問に思い、最後の記憶を思い出す。確か、僕とサエカはアイがぬいぐるみを連れていくと言って聞かないから少し車を走らせたんだよな。そうしたら、

「サエカ、ぬいぐるみも連れていけばいいんじゃないか? そんなに怒らなくても」

「そうよね……なんでぬいぐるみを持っているからって連れていかなかったのかしら……」

 サエカはそういって車を走らせている。突き当りを左に曲がるとバックミラーからアイの姿が見えなくなった。これ以上行くとアイを本当に置いていくことになってしまう。

「サエカ……そう思うんだったらそろそろ」

「そ、そうね……でも、体が動かないの……」

 サエカがおかしなことを言っている。車を路肩に止めたので体が動かないなんて言うことはないはずだ。あんだけ怒ったから今更って事なんだろう。仕方ない、僕が迎えに行こう。

「僕が迎えに行くよ……あれ? 開かない」

 そして、次の瞬間。後ろからすごい衝撃がやってきて視界に黒い靄がかかっていった。

 それからオーリーに手を貸してもらうところになったんだよな。思い出したら色々と不可解なことがいっぱいあるな。ほとんどがサエカの異常だ。

 まず、サエカはぬいぐるみを持って行っちゃダメと言っているが普段はそんなことを言ったことがない。あの時首を傾げながら車に乗り込んだ、今思えば力ずくでもサエカを車から降ろせばよかった。

 次にサエカが車を走らせてアイから見えない所まで進んだことだ。アイはまだ五歳、この距離はかなりのものになる。普通ならば見える範囲までにとどめるだろう。その時に言っていたことも気になるところだ。体が勝手にとか自分でもやっていたことを理解できていない感じだった。

 最後に僕が車の外に行こうと思った時だ。扉が開かなかった。鍵はたしかに開けた、なのに、開かなかった。明らかに別の誰かの力が加わっている事が分かる。そのあとの衝撃はどういうことかわからないし、視界が黒い靄に覆われたのも分からない。何がどうなってこんなことに。

 僕の作った漫画の中に入ってしまったのもよくわからない。アイに詳しく話を聞かなくちゃいけなさそうだ。

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