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第2話 ドラゴンの卵
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吐く息が白い。口から出た息が夜空の星のように白く輝く。寒さは中空に星を作る。それは生き物と自然が作り出す光景。
息を吐く生き物がいてこそ作られるものだ。それは龍も同じ。龍が吐く息は赤く輝く。寒さはその光を白へと変えていく。龍は負けじと炎を青くさせていく。いくらはいても自然には勝てない。龍はそれに気がつき山の中に身を隠し、極限の寒さから逃げる。
雪山には龍が住む。ビートはそんな山の頂上に帰ってきた。白い岩をシーナに言われるまま捨てに来た。だが、異変に気が付く。
「なんだか体が軽い……」
ビートはそう言って村を見下ろす。
白い岩を拾った時と違い、一瞬で頂上に来れた。それも卵を抱えている状態で。誰が見ても異常なのが分かる。それは5歳のビートでも理解できるものだった。
彼は試すように白い岩を手放す。ピョンピョンと跳ねて体の重さを感じる。彼は首を傾げて辺りを見回す。
「……やっぱり軽い」
再度白い岩を両手で抱える。すると不思議なことにビートの体は軽くなった。ピョンピョンと跳ねてみるとすぐに理解する。
白い岩を持っているのに彼の身長の2倍の跳躍を見せる。軽く飛んでそれだけ飛べている。本気で飛んだらどれほど高く飛べるのか。彼はワクワクしながら試しに飛んでみる。
「わ、わぁ~!」
跳躍して山のてっぺんを見下ろす。太陽の光が山に反射してビートを輝かせている。光の妖精が彼に祝福を与えているように見える。彼はまた、日常に楽しさを覚えた。
捨ててきなさいといわれた白い岩。彼はそれを【ドラゴンの卵】と呼んで森の中に隠すことにした。毎日の薪拾いの時を楽しむために。
雪山の森の中、雪の葉っぱを付けた森を下から見ていたビート。今は上から見下ろして雪の葉っぱが太陽の光を反射してくる輝きに目を奪われる。空を飛んでいるかのような感覚に彼は笑顔を作る。
彼は楽しくて時間を忘れてしまった。
「薪はどうしたの! 早くしなさいって言っているでしょ! ……あなたなんて生まなければよかった!」
シーナは泣きながらビートを𠮟りつける。雪山の夜、彼は外へと叩きだされる。泣いて謝ってもシーナは扉を開けることはなかった。
寒い、手が痺れる。顔、耳、足……すべてが冷たい。息を吹きかけても更に寒くなるだけ。雪の妖精は容赦なくビートを冷やしていく。
「ドラゴンの卵さん」
ビートは凍る涙を拭ってドラゴンの卵の元へと体を寄せる。森の中、彼を温めるのはドラゴンの卵だけ。
脈打つ卵は元気を出してと彼を温める。母のようなぬくもりを与えてくれる卵は彼を抱きしめる。
安心して目を瞑る彼は寝息を立てる。驚くことに彼の体は寒さに悩まされることはなかった。
いつの間にか寝てしまったビート。少しすると声が聞こえてくる。
「ビート! ビート! 私を置いていかないで! あの人に捨てられてあなたまで失ったら私……」
夜が終わり、朝日が差し込んでくる中。シーナの声が聞こえてくる。凍る涙を拭い血相を変えてビートを探しているシーナ。彼女もまた捨てられた人。捨てられる絶望を知っていた彼女は過ちを犯すところだった。
ドラゴンの卵を抱えてビートは母に駆け寄る。シーナは彼に気が付いて抱きしめる。硬い卵に気が付くけれど、抱きしめるのをやめない。
ビートは気が付いた。ドラゴンの卵も母もとても温かいことに。母の鼓動もドラゴンの卵の脈打つ音も、とても心地がいい。二度寝をしてしまう程に安心を与えてくれる。
僕の為に泣いてくれてた。僕はお母さんの大切な人なんだ。そう思ったビートは涙を流す。
ドラゴンの卵がその涙を受け取る。卵は脈打って輝く、輝きが治まると一回り大きくなったように感じる。温かさも強くなったように感じた。
「温かい。ビート、これからは一緒に薪を拾いに行きましょ」
シーナは卵の異常に気が付くことはなかった。抱きしめるビートがとても温かい、ただそれだけのことと感じた。
母の言葉にビートは嬉しくて再度彼女を抱きしめる。ドラゴンの卵を手放すほど喜んで抱きしめる。
涙が地面の雪に穴をあける。穴の先で氷となった涙はダイヤよりも美しく見えた。
それから毎日シーナと一緒に薪拾いを始めた。嬉しくて手をつなぎっぱなしのビートは目を開けない程笑顔が絶えなかった。
温かい、どんな冬の寒さも彼を凍えさせることはできない。母がいてくれればどんな氷も溶かせる。ビートは誇らしげに、自慢げに母を見つめる。
「ビート、お父さんのことを話すわね」
輝く森の天井の下。シーナはビートに父との話をする。
真実を聞いてビートは涙をこぼした。涙が落ちた地面の雪はとても黒く輝く。とても悲しい話だ。
ビートの父は彼らを捨てた。町に二人の代わりとなる家族を作っていた。『これからはここに来れない。今日が最後』そう父は伝えてきた。シーナは涙を流して語る。
悲しい真実に胸が冷える。とても冷たい、冬の雪山よりも冷たい真実。ビートは胸を抑えてシーナを見つめる。
「お母さん。お胸が冷たい。お母さんも?」
ビートは泣くのを我慢して問いかける。シーナもまた泣くのを我慢して頷いて答えた。二人は抱きしめあって声を殺して泣き出した。雪の妖精が吹雪を呼んで声を殺してくれる。悲しみは雪が連れて行ってくれる。彼らはそう感じて無遠慮に声を上げて泣いた。
息を吐く生き物がいてこそ作られるものだ。それは龍も同じ。龍が吐く息は赤く輝く。寒さはその光を白へと変えていく。龍は負けじと炎を青くさせていく。いくらはいても自然には勝てない。龍はそれに気がつき山の中に身を隠し、極限の寒さから逃げる。
雪山には龍が住む。ビートはそんな山の頂上に帰ってきた。白い岩をシーナに言われるまま捨てに来た。だが、異変に気が付く。
「なんだか体が軽い……」
ビートはそう言って村を見下ろす。
白い岩を拾った時と違い、一瞬で頂上に来れた。それも卵を抱えている状態で。誰が見ても異常なのが分かる。それは5歳のビートでも理解できるものだった。
彼は試すように白い岩を手放す。ピョンピョンと跳ねて体の重さを感じる。彼は首を傾げて辺りを見回す。
「……やっぱり軽い」
再度白い岩を両手で抱える。すると不思議なことにビートの体は軽くなった。ピョンピョンと跳ねてみるとすぐに理解する。
白い岩を持っているのに彼の身長の2倍の跳躍を見せる。軽く飛んでそれだけ飛べている。本気で飛んだらどれほど高く飛べるのか。彼はワクワクしながら試しに飛んでみる。
「わ、わぁ~!」
跳躍して山のてっぺんを見下ろす。太陽の光が山に反射してビートを輝かせている。光の妖精が彼に祝福を与えているように見える。彼はまた、日常に楽しさを覚えた。
捨ててきなさいといわれた白い岩。彼はそれを【ドラゴンの卵】と呼んで森の中に隠すことにした。毎日の薪拾いの時を楽しむために。
雪山の森の中、雪の葉っぱを付けた森を下から見ていたビート。今は上から見下ろして雪の葉っぱが太陽の光を反射してくる輝きに目を奪われる。空を飛んでいるかのような感覚に彼は笑顔を作る。
彼は楽しくて時間を忘れてしまった。
「薪はどうしたの! 早くしなさいって言っているでしょ! ……あなたなんて生まなければよかった!」
シーナは泣きながらビートを𠮟りつける。雪山の夜、彼は外へと叩きだされる。泣いて謝ってもシーナは扉を開けることはなかった。
寒い、手が痺れる。顔、耳、足……すべてが冷たい。息を吹きかけても更に寒くなるだけ。雪の妖精は容赦なくビートを冷やしていく。
「ドラゴンの卵さん」
ビートは凍る涙を拭ってドラゴンの卵の元へと体を寄せる。森の中、彼を温めるのはドラゴンの卵だけ。
脈打つ卵は元気を出してと彼を温める。母のようなぬくもりを与えてくれる卵は彼を抱きしめる。
安心して目を瞑る彼は寝息を立てる。驚くことに彼の体は寒さに悩まされることはなかった。
いつの間にか寝てしまったビート。少しすると声が聞こえてくる。
「ビート! ビート! 私を置いていかないで! あの人に捨てられてあなたまで失ったら私……」
夜が終わり、朝日が差し込んでくる中。シーナの声が聞こえてくる。凍る涙を拭い血相を変えてビートを探しているシーナ。彼女もまた捨てられた人。捨てられる絶望を知っていた彼女は過ちを犯すところだった。
ドラゴンの卵を抱えてビートは母に駆け寄る。シーナは彼に気が付いて抱きしめる。硬い卵に気が付くけれど、抱きしめるのをやめない。
ビートは気が付いた。ドラゴンの卵も母もとても温かいことに。母の鼓動もドラゴンの卵の脈打つ音も、とても心地がいい。二度寝をしてしまう程に安心を与えてくれる。
僕の為に泣いてくれてた。僕はお母さんの大切な人なんだ。そう思ったビートは涙を流す。
ドラゴンの卵がその涙を受け取る。卵は脈打って輝く、輝きが治まると一回り大きくなったように感じる。温かさも強くなったように感じた。
「温かい。ビート、これからは一緒に薪を拾いに行きましょ」
シーナは卵の異常に気が付くことはなかった。抱きしめるビートがとても温かい、ただそれだけのことと感じた。
母の言葉にビートは嬉しくて再度彼女を抱きしめる。ドラゴンの卵を手放すほど喜んで抱きしめる。
涙が地面の雪に穴をあける。穴の先で氷となった涙はダイヤよりも美しく見えた。
それから毎日シーナと一緒に薪拾いを始めた。嬉しくて手をつなぎっぱなしのビートは目を開けない程笑顔が絶えなかった。
温かい、どんな冬の寒さも彼を凍えさせることはできない。母がいてくれればどんな氷も溶かせる。ビートは誇らしげに、自慢げに母を見つめる。
「ビート、お父さんのことを話すわね」
輝く森の天井の下。シーナはビートに父との話をする。
真実を聞いてビートは涙をこぼした。涙が落ちた地面の雪はとても黒く輝く。とても悲しい話だ。
ビートの父は彼らを捨てた。町に二人の代わりとなる家族を作っていた。『これからはここに来れない。今日が最後』そう父は伝えてきた。シーナは涙を流して語る。
悲しい真実に胸が冷える。とても冷たい、冬の雪山よりも冷たい真実。ビートは胸を抑えてシーナを見つめる。
「お母さん。お胸が冷たい。お母さんも?」
ビートは泣くのを我慢して問いかける。シーナもまた泣くのを我慢して頷いて答えた。二人は抱きしめあって声を殺して泣き出した。雪の妖精が吹雪を呼んで声を殺してくれる。悲しみは雪が連れて行ってくれる。彼らはそう感じて無遠慮に声を上げて泣いた。
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