間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
表紙へ
33 / 64
3巻

3-1

しおりを挟む



 第一話 創造主


「私はこの世界をつくった神。そして、あなたをここに来させたのも私の意志よ。コヒナタさん」

 女性は僕にそう言うと、地面から白い椅子を出現させ、背もたれに手をかけた。
 気が付くと僕らの背後にも二脚の椅子が現れていた。その片方には服がかけてある。女性ものの白いドレスだから、ルーラちゃんのためのものだろう。
 辺り一面真っ白の〝神界〟。ここにいるのは僕、小日向こひなたれんと、星光せいこう教会の幼い巫女みこであるルーラちゃん。そして目の前に立つ絶世の美女だけだ。
 ついさっきまで、僕は自分の作った街でルーラちゃんの一団と話をしていたんだけど、ルーラちゃんに触れられた瞬間、この空間に飛ばされてしまっていた。

「神……?」

 女性の話に驚きを隠せない僕。彼女は僕のそばにいるルーラちゃんに目を向けた。

「ルーラ、よくここまで来られましたね。色々な苦労もあったでしょう。そのころもはこれまでの功績をたたえてあなたに与えます」
「えっ……ありがとうございます……。あなた様はもしかして……ルースティナ様?」

 女性はルーラちゃんの問いにうなずいた。

「そうよ、私の名はルースティナ。あなたの名前も、そこから取ったのよね」

 微笑ほほえむルースティナ様を見て、ルーラちゃんは目に涙を浮かべている。信仰心の厚いルーラちゃんにとって、神様に対面するのはそれだけ凄いことなんだな。

「ルーラ、その服に着替えなさい」

 ルースティナ様はルーラちゃんの頭をでてそううながすと、僕を振り返った。

「コヒナタさん」

 エコーのかかっている声で僕の名を呼び、足音も立てずに近付いてくる。
 美しい顔が迫ってきて、僕は思わずじりじりと後ずさりしてしまう。

「そんなに怖がらないで大丈夫よ。あなたがここに来たのは必然、いつかはルーラと会ってここに来ることになっていたのよ。少し予想よりも早かったのは世界樹のおかげかしら?」
「その前に、僕をここに呼んだのはあなたの意志、という話を聞かせてもらえませんか」
「やっぱり、気になるわよね」

 ルースティナ様はそう言ってあごに手を当てた。

「ここ、というのは〝こちらの世界〟のことよ。あなたは来るべくして来たの」
「僕から財布を盗んだあの青年が、勇者になる予定だったってマリーは言っていたんですが」

 この世界に召喚される直前、僕は高校生くらいの青年に財布を盗まれた。
 その泥棒の青年を追いかけていた時に突然光に包まれ、気が付くと目の前にテリアエリンの王と宮廷魔術師のマリーがいたのだ。

「そうね。あの子は確かに能力は優秀だったのだけど、性格がね……人がどうなってもいいと思っていたり、他人の物を我が物顔で使ったり。正直、最悪よ」

 ルースティナ様は顔をゆがめて答えた。

「それじゃ、ルースティナ様は最初から僕を召喚するつもりだったんですか?」
「そうよ」
「じゃあ、なんで僕のスキルがマリーの鑑定でバレなかったんですか?」
「単純明快な話よ。あの子に見せたら、いいように使われて用が済んだら捨てられるだけじゃない。そんなの許容できないわ」

 ルースティナ様の問いに、僕は確かにと頷く。
 あのまま王様やマリーにバレていたら、手下としてこき使われるだけだっただろう。人々のためになることだったらいいけど、戦争とか利権とか……そういうことのために使われていたかもしれない。考えただけでもゾッとするよ。

「なんで、僕だったんですか?」
「元々マリーの作った魔法陣では、あの青年が選ばれていた。それが発動する瞬間に、ちょちょいと魔法陣の効果をいじって、あなたを召喚させたの」

 誰でもよかった、ということかな。

「近くにいたから、というのは一番の理由ね。でも、この世界に来てからのあなたを見ていると、あなたを選んでよかったと思ってるわ」

 ルースティナ様は僕の心が読めるようだ。彼女はそう言ってくれた後、「立ち話もなんだから」と椅子に座るように促した。
 僕と、服を着終えたルーラちゃんが着席すると、ルースティナ様も座る。次の瞬間、僕らとの間に机が現れた。ルースティナ様は机に頬杖をつき、僕に向かって微笑む。

「もしかして、世界樹の枝が採取できてしまうのもあなたのおかげでしたか?」
「世界樹の枝じゃと~⁉」

 今まで黙っていたルーラちゃんが、早速疑問をぶつけてきた。
 まあ、世界樹の枝が採取できていましたなんて聞いたら普通は驚くよね。僕らはもう慣れてしまったからな~。何だか反応が新鮮に感じる。

「ルーラ、その辺りは後で私が説明するから待っててね。……枝の話はね、世界樹がそうしてほしいって言ってきたのよ」
「ワルキューレが?」

 ワルキューレは、世界樹の分体である少女だ。

「そうよ。だから、あなたを世界樹の主にしたくてそうしたの。枝を売れば色々と有利だと思ったのよ、それはしなかったようだけどね」

 まあ、有利かもしれないけど目立ち過ぎるしなあ……。

「そうなのよ。結果的にそれで正解だったと思うわ。この世界のエルフの話は聞いたでしょ、世界樹の枝なんてものが市場に現れたら、すぐにエルフたちの耳に届いて大騒ぎになる。その時はその時と思って動く予定でいたんだけど、杞憂きゆうだったみたいね」

 僕が呑気のんきに暮らしている間に、色々考えたり根回ししたりしていたのか。大変だったんだろうな~。

「あとは、神界に呼んだ理由も伝えないとね。でもその前に……コヒナタさん、今回の召喚の件、本当にごめんなさい。この世界の創造主としておびさせて」

 ルースティナ様は椅子から立ち上がり、綺麗に九十度腰を曲げて謝ってきた。

「そんな、頭を上げてください。そこまで不幸な目にはっていませんから大丈夫です」
「いいえ、ちゃんと謝らなくてはいけません。あちらの世界の人との繋がりもあったでしょうに。突然こんな異世界に飛ばされて……」

 何度もなだめて、ようやく頭を上げてもらった。そんなに謝らなくて大丈夫なんだけどな。
 元の世界での人の繋がりなんて両親とネットの知り合いくらいだ。兄弟もいないし、従妹いとこはいたけど疎遠そえんだしね。自分で言っていて悲しくなるな。

「あなたが消えた後、コヒナタさんの両親はずっと探していたのよ。だから私は二人の夢の中に現れて、事の詳細を話したの。それでわかってくれて、今はあちらの世界であなたの幸せを願ってくれているわ」
「そうか、急にいなくなったらそうなるよね」

 元いた世界から僕のいた痕跡こんせき自体が消えてしまった、ということでもないみたいだ。
 自分がいなくなっても大丈夫だろうなんて思っていたけど、こうやっていなくなったことに気付く人がいるなら、迷惑がかかってしまうよね。
 父さん母さんには申し訳なかったな~。

「二人はあなたの無事を知って泣いて喜んでいたのよ。お父様からは、『こっちじゃ彼女も作らなかったんだから、そっちじゃうまくやれよ』と言伝ことづてを預かったわ」
「親父……」

 余計なお世話だよ。でもまあ、心配してくれてありがとう、親父。

「あんまりしんみりするのもなんですから、本題に入っていいですよ?」
「はい」

 気を付けみたいな姿勢で立っていたルースティナ様は白い椅子に戻った。ルーラちゃんはずっと真剣なまなざしでルースティナ様を見つめている。

「ルーラにもこのことをちゃんと知っておいてほしくて、一緒に来てもらったの。意味はわかるわね」
「はい。〝けがれ〟の対処に関して、人族も力を貸しなさい、ということですね」

 ルーラちゃんが敬語で喋っていて新鮮な感じだ。
 のじゃとか年寄りじみた口調だったけど、見た目からすると今のほうがしっくりくるな。やっぱりあの喋り方は、巫女だから威厳いげんのようなものが必要ってことなんだろうか。

「ええ。世界が危ないって時に、人だからとかエルフだからとか言ってる場合じゃないのよ」

 ルースティナ様はそう言った。そんなに危ないことなのかな? 僕が持ってる世界樹の雫をぶっかけるだけで終わりのはずなんだけど。

「そう、それをかければ、穢れに洗脳されている人は元に戻る。だけど、エルフの王エヴルラードにどれぐらい効くかはわからない。それに操られている大勢の兵士や、穢れそのものになってしまった側近もいるわ。真っ向から戦うのは大変よ」
「それをかければ、とは何をかけるのでしょうか……?」

 僕の心の声が聞こえていないルーラちゃんは首を傾げた。

「世界樹から作った雫のことよ」
「また世界樹……」

 ルーラちゃんはついてこられないようで目がうつろだ。無理もありません。

「これから冬が来るから、それに乗じて穢れも動くかもしれないけど、街の対処は今ある結界で大丈夫。ただこちらから攻めるとなると、コヒナタさんの作った街からエルフの国まではかなり遠いわ。だからこれをあげる」

 ルースティナ様は、小さめの杖を地面から出現させた。

「これはエルフの国のブレイドマウンテンにそびえ立つ、デスタワーの頂上に転移できる杖よ」
「デスタワー⁉」

 ルースティナ様の言葉にルーラちゃんが驚き戸惑とまどっています。
 地理も何もわからないから僕は反応のしようがない。

「ブレイドマウンテンは、エルフの国でもよく知られている魔の山なんじゃよ。その名の通り刃物を使う魔物や、武器そのものの魔物が多くて、死亡率が高いんじゃ」
「そんな危険なところなの?」
「だから誰も登ろうとはしなかった。じゃが近年になってエルフが登るようになり、多くの者が命を捨てていったと聞く。……恐らく洗脳されて、登頂を命じられていたんじゃろうな。もっとも、タワーまでは着かなかったらしいが」
「……」

 そこ、転移して大丈夫なの? 下山するのも大変なんじゃないのかな。

「大丈夫よ。デスタワーなんて言われているけど、それはただ人々がそう名付けただけで、本当は魔物をはばむ結界が張られているし、命の泉もある回復ポイントなの。タワーでその杖を使えば、直接帰ってこられる仕組みになっているし、おトイレや温泉もあって、とてもいいところなのよ」
「へ、へ~……」

 まるで観光案内をしているかのようなルースティナ様に、やや引いてしまう僕。ルーラちゃんも唖然あぜんとしていた。
 デスタワーのデスは、そこにたどり着くまでが死って意味なのかもね。

「誰もたどり着いていないからみんな知らないのよね。もったいない」
「ちなみに魔物の強さは?」
「レベルで言うと40~60くらいかしらね」
「60‌⁉」

 ルーラちゃんがあわあわと口を押さえて狼狽うろたえているけど、僕の装備を着ていれば300レベルくらいのステータスになるから大丈夫だな。

「そうそう。コヒナタさんと仲間たちなら大丈夫」
「大丈夫なのか……」

 ルースティナ様が両手を顔の前に上げてガッツポーズを作った。一方、ルーラちゃんは、呆れたような目で僕を見てきた。この光景もなんだか久しぶりなような気がする。

「その山からエルフの国の王都、エヴィルガルドまでは一日もかからない距離よ。そこから強襲して一気にほろぼしちゃいましょう」
「いやいや、滅ぼしちゃダメでしょ」

 ルースティナ様が恐ろしいことを言っている。元凶げんきょうのエヴルラードだけ倒せばいいんでしょ。
 相手の数は多くても、こっちだって人と装備は充分だから、やりようはあるはずだ。世界樹の雫がもし効かなければ、聖なる聖水も一緒にかけたっていい。

「あら、そう。思っていたよりもアイテムが豊富みたいで安心したわ」
「……あんまり心を読んで受け答えしないでくださいよ。こんがらがる」
「ふふ、ごめんなさいね。ねえ、その変わった聖水、私にも一本くれないかしら」
「神様にねだられちゃ、あげないわけにはいきませんね」

 聖なる聖水という重ね言葉みたいな名前の水をあげた。喜んで飲んでいるが、心なしかルースティナ様の身体がポワッと輝いたように見えた。すぐに消えたから気のせいかな。

「さて、時を止めていられるのもこれまでね。ここからみんなを見守っているわ」
「止めていたんですね、ありがとうございます。少し心配だったんです」

 精神だけこっちに来て肉体がそのままにされていたら、ウィンディたちにどんないたずらをされるかと思ってたんだよね。

「コヒナタさんはみんなに好かれていますからね」

 またまた、心の中をのぞいたルースティナ様が微笑んできた。
 みんなも物好きだよね。僕みたいな人についてきてくれるんだからさ。

「では、また。何かあったらルーラちゃんと来ますね」
「そうね。来るにはどうしても彼女の力が必要だものね」
「レン、それでその……教会本部についても改めて頼みたいのじゃが」
「うーん、本部の話はもうちょっと考えさせてほしいけど。とりあえず、来てくれた人たちの住居は確保するよ」

 ルーラちゃんから最初に受けていた、教会本部建設の許可が欲しいという相談。僕の言葉を聞いてがっかりしているけど、彼女の兵士たちの住居は確保してあげたい。
 これはまた、鍛冶かじの王による建設ラッシュの予感。


 ◇


「――レンレン⁉」
「大丈夫か?」

 神界から帰ってくると、僕の身体は屋敷の二階の寝室に寝かされていた。
 ファラさんとウィンディが心配そうに僕の顔を覗き込んでいる。

「ごめん、大丈夫……あれ、時間を止めたんじゃないのか……」

 ルースティナ様は時間を止めたとか言っていたけど、少し経っていたみたい。

「ルーラちゃんが触ったとたん、二人ともフワッて身体が浮かんで、意識を失ってソファーに倒れちゃったんだよ。念のためベッドまで運んだんだけど、なんともなくて良かった……二人いっぺんに運んだから疲れたよ~」

 ウィンディは自分の肩をもみながら言う。流石さすが、僕の装備を付けているだけあって力持ちだな。

「はは、ありがと。何も二人いっぺんじゃなくても良かったんじゃない?」
「ウィンディ、ちゃんと本当のことを言いなさい。最初はレンにおおいかぶさって何をしようとしていたんだ?」
「え~。女の子からそんなこと言えないよ~」
「……」

 ファラさんは腕を組んで怒っている様子。
 寝込みを襲うなんて、本当に美人が台無しだぞウィンディ。
 ルースティナ様はまさか、これを見越してちょっと時間を進めていたのか? なんとなくだけど、あの人そういうの好きそうだもんな。

「じゃあ、起きたところで正式にご褒美ほうびを」
「はいはい、それで今度はどんなことになっているの?」

 ウィンディが僕にキス顔で迫ってくるのを止めながら、ファラさんが尋ねてきた。
 隠しても仕方ないので、僕は二人にルースティナ様との話を報告した。
 信じてもらえるか微妙と思っていたけど、二人は驚いている。

「神様って本当にいたんだね。正直、星光教会の嘘だと思ってたよ」
「私も……今の今まで信じられなかった。家を失くした時、私は神を捨てたからな……」

 二人とも信じられないといった様子。
 ファラさんの家は、昔ギザールとかいう貴族が壊した、みたいな話を聞いたっけ。彼女はその時に自暴自棄じぼうじきになってしまったんだね。

「まあ今があるのは、あの出来事があったからだから、もういいんだけどね。テリアエリンのギルドの受付係になっていなかったら、レンには出会わなかっただろうし」
「私もレンレンに助けてもらう直前、神はいないと思ったよ……」

 懐かしいな。ウィンディも危ない目に遭ってたもんなあ。

「ルースティナ様はそんなにあちこちに手出しはできぬのじゃよ」

 ファラさんとウィンディが俯きながら話していると、部屋の扉が開いてルーラちゃんが入ってきた。さっきルースティナ様にもらった白いドレスを着ている。側近のナーナさんも一緒だ。

「ルースティナ様は世界を救おうとしているお方――救済が及ばない人々がいるのは仕方のないことだと思います。ウィンディさんの場合は、コヒナタ様がいたというのもあるでしょうし」

 ナーナさんがそう話す。僕がいたからあえて助けなかったってことか。何だか褒められているようで恥ずかしいな。

「言ってみれば、レンは神のつかわした天使みたいなものじゃろう。神の手の届かぬ人々を助けているのじゃからな」
「天使……」

 勇者の次は天使ですか。確かに手の届く範囲で助けたいとは思っているけど、そんな大層なものじゃないんだよな。
 困惑しつつ、僕は話題を変えることにした。ルーラちゃんの要望について、みんなに改めて相談する。

「本部はともかく、教会は建ててもいいんじゃないかと思う」

 ウィンディの言葉に、ファラさんも頷く。

「まあ、私も同感だな。信頼し切れないところもあるが」

 教会本部を建てるとなると、事は大きくなる。信用できない教会関係者が関わってくる可能性も高いが、教会であればその心配はないだろう。

「じゃあ、それはOKにしようか」

 僕らが結論を出すと、ルーラちゃんはお礼を言って頭を下げた。

「少しずつ認めてもらえるように頑張っていくのじゃ。回復魔法なり、戦力なりが必要な時はすぐに言ってくれ」
「私からもお礼を言わせてください。ありがとうございます、コヒナタ様」

 ナーナさんにも頭を下げられる。教会を建てられるだけでも嬉しいのか、ルーラちゃんは喜んで飛び跳ねていた。

「あ、そうそう、エレナが元気になったんだよ」
「え? そんなに早く?」

 ハーフドワーフの少女エレナさんは、落盤事故の時に倒れ、体調を崩してしまった。最近は回復してきたとはいえ、まだ部屋にいることが多かったと思うんだけど……。

「いつも通り、雫を飲んで少し寝たら、急に顔色が良くなったんだって。それで少し身体を動かしてたよ。一応、大事を取ってまだ屋敷から出ないように言ってあるけどね」
「そうか~、よかった……」

 ワルキューレの加護が効いたのか、あるいはもしかすると、ルースティナ様のおかげだろうか。ルースティナ様なりの、僕へのつぐないなのかもしれないな。

「まあ一応、今日一日は大人しくしていてもらおう」

 ファラさんが一安心した顔で笑う一方、僕は別のことに気付いた。

「あれ、そういえばクリアクリスは?」

 神界に連れていかれる前は一緒にいたんだけど、今は姿が見えない。

「ああ、リッチと一緒に鉱山の掃除に行ってるよ。レンレンたちを運ぶ時にも手伝おうとしてくれたんだけど、クリアクリスの背じゃ階段が危なそうでさ」
「なるほどね。……とか言って、邪魔者じゃまもの扱いしたんじゃないの?」
「流石にそんなことしないよ~。私を何だと思ってるの~」

 ウィンディはファラさんにからかわれて怒っている。僕もそう思っていたんだけど、違うのか。

「クリアクリスと一緒にレンレンを挟んで寝たかったもん。この街に来る前、野営した時にくっついて寝たのが忘れられなくて……」
「「「「……」」」」

 ウィンディの言葉にその場のみんなは言葉を失くした。まあ、そうなるよね。正直ドン引きだよ。
 僕としてはクリアクリスと一緒にという点だけは良いと思ったけど、口に出すのはやめよう。

「……では私たちは教会建設の準備に入りますね」

 ナーナさんが気を取り直して、ルーラちゃんと一緒に部屋を出ていこうとする。

「あ、建設場所なんですけど、鉱山のある方角の、城壁の外側に建ててくれたらなーと思って」
「壁の外ってことですか?」

 僕の呼びかけに、ナーナさんは振り向いて首を傾げた。

「そうです。あ、別に街の外に締め出すわけじゃないですよ。教会の皆さんの家を建てる場所を考えると、今の城壁内じゃ範囲が足りなそうなので……。だから今の壁は内壁にして、また外側にもう一周壁を作ろうかと」
「なるほどなるほど……」
「ちょっとみんな無視~酷い~」

 ウィンディのことは置いてみんなで屋敷の外へ出ていくと、涙目で僕らを追いかけてきた。
 まったく、前はエレナさんのことで泣いていたし、しおらしくて可愛いとか思っていたのに、ほんとこういうところは残念美人だよな~。


しおりを挟む
表紙へ
感想 452

あなたにおすすめの小説

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。 今年で33歳の社畜でございます 俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう 汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。 すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。 そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。