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第一章 落とされたもの
第24話 覚醒
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「ん、ふぁ~。あれ? ここは?」
「ユラ~、フィア~」
デーモンの最後を見届けているとユラさん達と騎士隊のみんなが正気に戻っていった。みんな何が起こっていたのか覚えていないみたいだ。それにしてもデーモンがイーマちゃんのことを何か言っていたな。まあいいか、今はみんなの無事を祝おう。
「アート君。本当にありがとう。君達のおかげだよ」
ルルスさんが頭を下げてお礼を言ってくる。
シエルさんとイーマちゃんと顔を見合って笑みがこぼれた。
「ダンジョンマスターを倒したのはアート君達だ。ダンジョンコアの部屋に行ってコアを破壊して攻略して来なさい。ダンジョンをクリアするとレアアイテムの入った宝箱がでるけれど、それも君たちのものだ。では私達はダンジョンを出るよ。本当にありがとう」
ルルスさんはそう言って騎士隊のみんなとダンジョンの出口に向かって行く。後姿を見送っているとジェシイさんがルルスさんに頭を差し出しているのが見えた。
「ん、ルルス様。頭撫でて」
「あ、そ、そうだったなジェシイ」
顔を赤く染めるジェシイさんを優しく撫でるルルスさん。二人はそう言う関係だったのか。
「アートお兄ちゃん。私も撫でて~」
「はは、そういえばイーマちゃんのおかげでデーモンに勝てたんだよな。それにしてもイーマちゃんはどうやって魔法を返したの?」
イーマちゃんがジェシイさんを見て羨ましくなったみたい。僕に頭を撫でてほしいと近づいてくる。撫でながら聞くと指を咥えてシエルさんを見つめた。
「シエルお姉ちゃん? 言っていい?」
「うん。私から伝える。イーマは魔族なのです」
イーマちゃんがシエルさんに確認を取るとシエルさんが説明してくれた。そういえば、戦ってる時にイーマちゃんが言っていたな。魔族か。
「今の世界だと分かりませんが。魔族は私と同じで希少な種族。マナを扱うことに長けているのはもちろんのこと、特に闇魔法に関しては息をするように扱えます」
魔族ってそんなに凄い種族なのか~。イーマちゃんはまだ5歳くらいの子だ。それであれだけの魔法を跳ね返せる。末恐ろしいな~。
「ルルスさんは何も聞いてこなかったね」
「はい。たぶん色々と気を使ってくれたのでしょう。あの方は優しい方ですから」
そんなすごいことをしたイーマちゃんのことを聞いてこないなんてルルスさんはいい人すぎるな~。
「えっと、アート君。話してるところ悪いけどさ、ダンジョンコアのある部屋に行こ。済ませて早く帰ろ」
シエルさんとルルスさんの去っていった方向を見ているとスティナさんが涙目で話してきた。
ユラさんとフィアさんが元気に戻ってきてくれて抱き合ってたけど、感極まって泣いてたんだな。羨ましいほど、仲がいいな~。
「うん。じゃあ行こう」
ルルスさんに譲ってもらったダンジョンコアのある部屋へと歩き出す。ユラさんとフィアさんが場所を知ってるみたいだから案内してもらう。一日程の距離だけど、ゴブリンに何度か遭遇したけど、簡単に退治出来た。
僕とシエルさんとスティナさんで前衛を務めて、ユラさんとフィアさんが後方支援。イーマちゃんも応援で後方支援。完璧な連携が取れていて、スティナさんが楽しそうにしてる。
「……」
「シエル、どうしたの?」
複雑な表情で考え込むシエルさんに声をかける。彼女は少し考えて答えた。
「彼女達との連携が楽しくて……」
「はは、シエルもそう思った? 実は僕もね」
スティナさんが楽しそうにしているのを見て、僕も楽しくなってた。息の合った仲間と一緒だとこんなに楽しいんだな。
冒険者は命をかける仕事だって思っていたけど、仲間が信頼できるとこんなにも安心して戦えるんだな。
「でも、危険な冒険者はダメですよ。今回のように偶に出かけるくらいなら良いと思います」
「そうだね。偶にこうして冒険者ごっこをしようか」
「はい!」
シエルは頑なにそう言うけれど、僕の言葉に嬉しそうに答えた。彼女も本当は冒険者になりたいのかな。
「いつかさ」
「アート様?」
シエルにもやりたいことを我慢してほしくない。だから、
「僕が守られなくても良いくらい強くなったら、冒険者になろうね」
「……アート様、それはもうすぐだと思いますよ」
「え?」
「いえ、何でもないです」
僕の提案に答えるシエルさん。小さい声でよく聞こえなかったけど、満面の笑みだから怒ってはいないみたいだな。喜んでもらえてよかった。
「ゴブリンが数体いただけだったね。ダンジョンマスターがいなくなったから生まれる速度が遅くなっているのかな?」
スティナさんが先頭を歩いてゴブリンを蹴散らして話す。
ゴブリンと戦って更に進んでいくと、何度かゴブリンと出会った。
スティナさん達だけで簡単に倒せた。スティナさんは久しぶりに三人で戦えて嬉しそうにしてる。この光景が見れたことだけで、来た甲斐があったな~。
ゴブリンに出会わなくなってしばらく歩くとダンジョンコアのある部屋の前にたどり着いた。
「ここです」
「扉を開けてすぐにグーゼス様が倒れているはず」
俯きながらユラさんとフィアさんが教えてくれる。死体があるから心の準備をってことかな。
ルルスさんはグーゼス様の死体を見たくなかったのかもしれないな。彼はグーゼス様が好きだったんだろうから。
「……血はあるけど、死体はなくなってるね」
扉を開いて中を見ると血だまりがあるだけで、死体はなくなっていた。みんなの顔を見ると無言で頷く。
「コアってあれ~?」
部屋に入ってイーマちゃんが声をあげる。部屋の中央を見ると六面体のクリスタルがクルクル回っているのが見えた。
「なのかな? 僕は初めて見るからな~」
「私は何度か。確かにあれがダンジョンコアだと思います。形は違いますけど」
イーマちゃんに答えてシエルさんに聞きながらダンジョンコアに近づいていく。
「ダンジョンコアを壊せばいいのかな?」
「そのはずです。壊すと……」
「壊すと?」
「いえ、何でもないですよ。さあ、壊しましょう」
シエルさんは何度か攻略してるみたいだから聞いてみたんだけど、なぜか口ごもってる。首を傾げて再度聞くと彼女は笑顔で頷いただけ、何か隠してそうだけどな。
「ダンジョンの攻略なんて初めて見る! ワクワク」
「ワクワク」
スティナさんとイーマちゃんが楽しそうに僕らの様子を見てる。ユラさん達も同じ様子だ。みんな楽しそうだな。
「じゃあ、壊すよ!」
『はい!』
「やっ!」
ダンジョンコアに白銀の剣で切り付ける。コアは地面に落ちて光を放った。
「え? これって……」
コアから出た光が僕の前で集まっていく。見たことある物体に変わっていく。
「才能だ……」
僕は前に戦士と魔法使いの才能を落とし物バッグから取り出した。その時に見た才能の形とは少し違うけど、たぶん同じだろう。
「シエル」
「はい。あなたは強くなれる」
コアが変化した才能の塊に触れる。光が僕の腕を通って体に入ると、大きな光になって視界が真っ白になって行った。
シエルさんは知っていたんだ。彼女はダンジョン攻略経験者だったのか。
「ユラ~、フィア~」
デーモンの最後を見届けているとユラさん達と騎士隊のみんなが正気に戻っていった。みんな何が起こっていたのか覚えていないみたいだ。それにしてもデーモンがイーマちゃんのことを何か言っていたな。まあいいか、今はみんなの無事を祝おう。
「アート君。本当にありがとう。君達のおかげだよ」
ルルスさんが頭を下げてお礼を言ってくる。
シエルさんとイーマちゃんと顔を見合って笑みがこぼれた。
「ダンジョンマスターを倒したのはアート君達だ。ダンジョンコアの部屋に行ってコアを破壊して攻略して来なさい。ダンジョンをクリアするとレアアイテムの入った宝箱がでるけれど、それも君たちのものだ。では私達はダンジョンを出るよ。本当にありがとう」
ルルスさんはそう言って騎士隊のみんなとダンジョンの出口に向かって行く。後姿を見送っているとジェシイさんがルルスさんに頭を差し出しているのが見えた。
「ん、ルルス様。頭撫でて」
「あ、そ、そうだったなジェシイ」
顔を赤く染めるジェシイさんを優しく撫でるルルスさん。二人はそう言う関係だったのか。
「アートお兄ちゃん。私も撫でて~」
「はは、そういえばイーマちゃんのおかげでデーモンに勝てたんだよな。それにしてもイーマちゃんはどうやって魔法を返したの?」
イーマちゃんがジェシイさんを見て羨ましくなったみたい。僕に頭を撫でてほしいと近づいてくる。撫でながら聞くと指を咥えてシエルさんを見つめた。
「シエルお姉ちゃん? 言っていい?」
「うん。私から伝える。イーマは魔族なのです」
イーマちゃんがシエルさんに確認を取るとシエルさんが説明してくれた。そういえば、戦ってる時にイーマちゃんが言っていたな。魔族か。
「今の世界だと分かりませんが。魔族は私と同じで希少な種族。マナを扱うことに長けているのはもちろんのこと、特に闇魔法に関しては息をするように扱えます」
魔族ってそんなに凄い種族なのか~。イーマちゃんはまだ5歳くらいの子だ。それであれだけの魔法を跳ね返せる。末恐ろしいな~。
「ルルスさんは何も聞いてこなかったね」
「はい。たぶん色々と気を使ってくれたのでしょう。あの方は優しい方ですから」
そんなすごいことをしたイーマちゃんのことを聞いてこないなんてルルスさんはいい人すぎるな~。
「えっと、アート君。話してるところ悪いけどさ、ダンジョンコアのある部屋に行こ。済ませて早く帰ろ」
シエルさんとルルスさんの去っていった方向を見ているとスティナさんが涙目で話してきた。
ユラさんとフィアさんが元気に戻ってきてくれて抱き合ってたけど、感極まって泣いてたんだな。羨ましいほど、仲がいいな~。
「うん。じゃあ行こう」
ルルスさんに譲ってもらったダンジョンコアのある部屋へと歩き出す。ユラさんとフィアさんが場所を知ってるみたいだから案内してもらう。一日程の距離だけど、ゴブリンに何度か遭遇したけど、簡単に退治出来た。
僕とシエルさんとスティナさんで前衛を務めて、ユラさんとフィアさんが後方支援。イーマちゃんも応援で後方支援。完璧な連携が取れていて、スティナさんが楽しそうにしてる。
「……」
「シエル、どうしたの?」
複雑な表情で考え込むシエルさんに声をかける。彼女は少し考えて答えた。
「彼女達との連携が楽しくて……」
「はは、シエルもそう思った? 実は僕もね」
スティナさんが楽しそうにしているのを見て、僕も楽しくなってた。息の合った仲間と一緒だとこんなに楽しいんだな。
冒険者は命をかける仕事だって思っていたけど、仲間が信頼できるとこんなにも安心して戦えるんだな。
「でも、危険な冒険者はダメですよ。今回のように偶に出かけるくらいなら良いと思います」
「そうだね。偶にこうして冒険者ごっこをしようか」
「はい!」
シエルは頑なにそう言うけれど、僕の言葉に嬉しそうに答えた。彼女も本当は冒険者になりたいのかな。
「いつかさ」
「アート様?」
シエルにもやりたいことを我慢してほしくない。だから、
「僕が守られなくても良いくらい強くなったら、冒険者になろうね」
「……アート様、それはもうすぐだと思いますよ」
「え?」
「いえ、何でもないです」
僕の提案に答えるシエルさん。小さい声でよく聞こえなかったけど、満面の笑みだから怒ってはいないみたいだな。喜んでもらえてよかった。
「ゴブリンが数体いただけだったね。ダンジョンマスターがいなくなったから生まれる速度が遅くなっているのかな?」
スティナさんが先頭を歩いてゴブリンを蹴散らして話す。
ゴブリンと戦って更に進んでいくと、何度かゴブリンと出会った。
スティナさん達だけで簡単に倒せた。スティナさんは久しぶりに三人で戦えて嬉しそうにしてる。この光景が見れたことだけで、来た甲斐があったな~。
ゴブリンに出会わなくなってしばらく歩くとダンジョンコアのある部屋の前にたどり着いた。
「ここです」
「扉を開けてすぐにグーゼス様が倒れているはず」
俯きながらユラさんとフィアさんが教えてくれる。死体があるから心の準備をってことかな。
ルルスさんはグーゼス様の死体を見たくなかったのかもしれないな。彼はグーゼス様が好きだったんだろうから。
「……血はあるけど、死体はなくなってるね」
扉を開いて中を見ると血だまりがあるだけで、死体はなくなっていた。みんなの顔を見ると無言で頷く。
「コアってあれ~?」
部屋に入ってイーマちゃんが声をあげる。部屋の中央を見ると六面体のクリスタルがクルクル回っているのが見えた。
「なのかな? 僕は初めて見るからな~」
「私は何度か。確かにあれがダンジョンコアだと思います。形は違いますけど」
イーマちゃんに答えてシエルさんに聞きながらダンジョンコアに近づいていく。
「ダンジョンコアを壊せばいいのかな?」
「そのはずです。壊すと……」
「壊すと?」
「いえ、何でもないですよ。さあ、壊しましょう」
シエルさんは何度か攻略してるみたいだから聞いてみたんだけど、なぜか口ごもってる。首を傾げて再度聞くと彼女は笑顔で頷いただけ、何か隠してそうだけどな。
「ダンジョンの攻略なんて初めて見る! ワクワク」
「ワクワク」
スティナさんとイーマちゃんが楽しそうに僕らの様子を見てる。ユラさん達も同じ様子だ。みんな楽しそうだな。
「じゃあ、壊すよ!」
『はい!』
「やっ!」
ダンジョンコアに白銀の剣で切り付ける。コアは地面に落ちて光を放った。
「え? これって……」
コアから出た光が僕の前で集まっていく。見たことある物体に変わっていく。
「才能だ……」
僕は前に戦士と魔法使いの才能を落とし物バッグから取り出した。その時に見た才能の形とは少し違うけど、たぶん同じだろう。
「シエル」
「はい。あなたは強くなれる」
コアが変化した才能の塊に触れる。光が僕の腕を通って体に入ると、大きな光になって視界が真っ白になって行った。
シエルさんは知っていたんだ。彼女はダンジョン攻略経験者だったのか。
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