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第一章 落とされたもの
第32話 決闘の日
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訓練を二日ほどして、とうとう決闘の日がやってきた。
シエルさんとの訓練は僕をより強くしてくれた。二日では体が成長することはないけど、経験は得られた。
それと分かったことがある。シエルさんは才能がないと言っていたけど、彼女は持っているよ。神様がくれる才能ではないもの、彼女自身の才能だ。その才能は努力によって更なる才能に進化するんだろうな。
「アート君! 応援席で見てるからね!」
「でも本当にアート君がでるの?」
「スティナがでればいいんじゃない?」
決闘場の前に来るとスティナさん達が心配して声をかけてくれる。フィアさんが心配してスティナさんの頭を撫でながら言うけど、僕は首を横に振って答える。
「僕じゃなくちゃダメなんです」
ルドガーは僕とやりたくないと言ってくれたけど、僕は試したいんだ。今の僕がどれほど彼に追いついているのかを。
「ゼパードは明らかに圧倒していました。ルドガーもアート様には勝てません」
「……シエルさんがそう言うなら大丈夫なのかな」
「はい」
シエルさんが自信満々に僕を褒めてくれる。スティナさん達は納得して笑みをこぼす。
「アート!」
「エマさん! 見に来たんですか?」
「うん。司祭様に無理を言って」
エマさんが駆け足で近づいてくると僕を抱きしめてくれた。心配してくれてるみたいで少し涙目だ。
「心配しないで見ていてください」
「そんなの無理よ。今も心臓が張り裂けそう」
僕の言葉に胸を抑えて話すエマさん。そんなに心配してくれるなんて嬉しいな。
「アート。エマさん」
「「ルドガー」」
抱き合っているとルドガーが声をかけてきた。花束を持っていてエマさんに手渡す。
「これが終わったら正式に結婚を申し込みます」
「え? ルドガー、あなた自分の歳を分かっているの?」
12歳の成人にならないと結婚できないのにエマさんに告白をしてるルドガー。エマさんは困惑してるな。
「俺は貴族になったんです。貴族の婚約者は何歳でも決められる」
孤児院育ちでも貴族になれるのか。ルドガーはやっぱりすごいな。
「でも……。私は今年で28歳よ。20も離れてる。あなたが12歳になったら32歳、もっとふさわしい人がいるわ」
「年齢じゃないんです! 俺はエマさん、あなたが」
エマさんの両手を掴んで言葉に熱を込めるルドガー。それでもエマさんは首を横に振った。
「ルドガー」
「シロト……。アートに俺が勝ったら返事を聞かせてください」
シロトが遠巻きにルドガーを呼んだ。ゼパードもいて、シエルさんを睨みつけてくる。彼女は気にも留めずにイーマちゃんと話してるな。
僕らから離れていくルドガー、エマさんは頬に手を当てて困り果ててる。
「なんでこんなに好かれてしまったのかな」
「いいな~」
エマさんの独り言にスティナさんが指を咥えて声をもらす。なぜか僕を見つめてくるスティナさん、僕からしたらスティナさん達三人が羨ましいけどな。友情って感じでね。
「お~い! アート君!」
「あっ、ボイドさん、フルさん」
ルドガー達を見ているとボイドさんが声をかけてきた。
「応援しているぞ!」
「頑張ってね!」
「ありがとうございます」
二人が応援してくれる。僕はガッツポーズをして答えるとボイドさんが耳打ちしてくる。
「王都に知り合いがいてね。今日の決闘の話の前に手紙を送ったんだ。そうしたらこの決闘を見に来てくれるらしい」
「王都の人ですか?」
「ああ、ブロガのやり方が流石に横暴すぎるからな」
ボイドさんは裏で動いてくれてたみたいだ。でも、ここから王都までは一週間程かかるはず。どうやって?
「こんなに早く来れるんですか?」
「手紙はギルドを通せば魔法で転送できるんだ。流石に人は出来ないがね」
「え? じゃあ、どうやってきたんですか?」
「ん、空だよ」
僕の疑問に答えてくれるボイドさん。手紙を転送するだけでも初耳だったのに空ってどういうこと?
「ペガサスって知ってるか?」
「翼の生えた馬でしたっけ?」
「ああ、それだ。王都の知り合いはペガサスナイトの天空騎士団の隊長でな。王都からここまで一日もかからないのさ」
あ~、だから空って言ったのか。飛んでこれるってわけだ。って、ペガサスナイトの知り合いがいるって凄いな~。
「アームストロングって言うんだがな。気持ちのいい奴だ。昔はよく酒場で愚痴を言い合った仲でな」
「はいはい自慢はおしまい。そろそろ時間だよアート君」
「あっ、本当だ」
ボイドさん達と話していると決闘の時間になってしまう。
ルルスさんが決闘場の中から手を振ってるのが見える。空いている手でジェシイさんの頭をなでてあげているな。本当に彼女はルルスさんが好きなんだな~。
「じゃあ、皆さん見ていてくださいね」
みんなに挨拶をして決闘場に入って行く。
「うん! 危なくなったら乱入するからね!」
「はいはい。スティナじゃないけど、危なくなったらすぐに降参してね」
スティナさん達は応援席の入場口に入って行く。降参か、したくないな~。
「おはようアート君」
「おはようございます!」
元気に挨拶をしあって決闘の舞台を見据える。
「本来はここで私の首が飛ぶところだったんだな。アート君本当にありがとう。今は君に感謝しているよ。騎士として汚名返上の舞台を用意してくれたことに」
「ルルスさん……。いえ、僕こそ、ルドガーと戦えるんです。僕こそお礼を言わないと」
ルルスさんがお礼を言ってくる。僕が答えると握手を求めてきた。手に触れるととても温かくて熱が入っているのが分かる。
「お集りの皆さま。ようこそいらっしゃいました。これより、ブロガ様の聖騎士隊のお披露目会をいたします。それに伴い、ブロガ様に逆らったものたちの末路をお見せいたします」
『!?』
仮面を被った男が舞台の上で声をあげる。声が魔法で拡張されているみたいでハッキリと聞こえた。逆らった者の末路ってまさか……僕達のこと?
シエルさんとの訓練は僕をより強くしてくれた。二日では体が成長することはないけど、経験は得られた。
それと分かったことがある。シエルさんは才能がないと言っていたけど、彼女は持っているよ。神様がくれる才能ではないもの、彼女自身の才能だ。その才能は努力によって更なる才能に進化するんだろうな。
「アート君! 応援席で見てるからね!」
「でも本当にアート君がでるの?」
「スティナがでればいいんじゃない?」
決闘場の前に来るとスティナさん達が心配して声をかけてくれる。フィアさんが心配してスティナさんの頭を撫でながら言うけど、僕は首を横に振って答える。
「僕じゃなくちゃダメなんです」
ルドガーは僕とやりたくないと言ってくれたけど、僕は試したいんだ。今の僕がどれほど彼に追いついているのかを。
「ゼパードは明らかに圧倒していました。ルドガーもアート様には勝てません」
「……シエルさんがそう言うなら大丈夫なのかな」
「はい」
シエルさんが自信満々に僕を褒めてくれる。スティナさん達は納得して笑みをこぼす。
「アート!」
「エマさん! 見に来たんですか?」
「うん。司祭様に無理を言って」
エマさんが駆け足で近づいてくると僕を抱きしめてくれた。心配してくれてるみたいで少し涙目だ。
「心配しないで見ていてください」
「そんなの無理よ。今も心臓が張り裂けそう」
僕の言葉に胸を抑えて話すエマさん。そんなに心配してくれるなんて嬉しいな。
「アート。エマさん」
「「ルドガー」」
抱き合っているとルドガーが声をかけてきた。花束を持っていてエマさんに手渡す。
「これが終わったら正式に結婚を申し込みます」
「え? ルドガー、あなた自分の歳を分かっているの?」
12歳の成人にならないと結婚できないのにエマさんに告白をしてるルドガー。エマさんは困惑してるな。
「俺は貴族になったんです。貴族の婚約者は何歳でも決められる」
孤児院育ちでも貴族になれるのか。ルドガーはやっぱりすごいな。
「でも……。私は今年で28歳よ。20も離れてる。あなたが12歳になったら32歳、もっとふさわしい人がいるわ」
「年齢じゃないんです! 俺はエマさん、あなたが」
エマさんの両手を掴んで言葉に熱を込めるルドガー。それでもエマさんは首を横に振った。
「ルドガー」
「シロト……。アートに俺が勝ったら返事を聞かせてください」
シロトが遠巻きにルドガーを呼んだ。ゼパードもいて、シエルさんを睨みつけてくる。彼女は気にも留めずにイーマちゃんと話してるな。
僕らから離れていくルドガー、エマさんは頬に手を当てて困り果ててる。
「なんでこんなに好かれてしまったのかな」
「いいな~」
エマさんの独り言にスティナさんが指を咥えて声をもらす。なぜか僕を見つめてくるスティナさん、僕からしたらスティナさん達三人が羨ましいけどな。友情って感じでね。
「お~い! アート君!」
「あっ、ボイドさん、フルさん」
ルドガー達を見ているとボイドさんが声をかけてきた。
「応援しているぞ!」
「頑張ってね!」
「ありがとうございます」
二人が応援してくれる。僕はガッツポーズをして答えるとボイドさんが耳打ちしてくる。
「王都に知り合いがいてね。今日の決闘の話の前に手紙を送ったんだ。そうしたらこの決闘を見に来てくれるらしい」
「王都の人ですか?」
「ああ、ブロガのやり方が流石に横暴すぎるからな」
ボイドさんは裏で動いてくれてたみたいだ。でも、ここから王都までは一週間程かかるはず。どうやって?
「こんなに早く来れるんですか?」
「手紙はギルドを通せば魔法で転送できるんだ。流石に人は出来ないがね」
「え? じゃあ、どうやってきたんですか?」
「ん、空だよ」
僕の疑問に答えてくれるボイドさん。手紙を転送するだけでも初耳だったのに空ってどういうこと?
「ペガサスって知ってるか?」
「翼の生えた馬でしたっけ?」
「ああ、それだ。王都の知り合いはペガサスナイトの天空騎士団の隊長でな。王都からここまで一日もかからないのさ」
あ~、だから空って言ったのか。飛んでこれるってわけだ。って、ペガサスナイトの知り合いがいるって凄いな~。
「アームストロングって言うんだがな。気持ちのいい奴だ。昔はよく酒場で愚痴を言い合った仲でな」
「はいはい自慢はおしまい。そろそろ時間だよアート君」
「あっ、本当だ」
ボイドさん達と話していると決闘の時間になってしまう。
ルルスさんが決闘場の中から手を振ってるのが見える。空いている手でジェシイさんの頭をなでてあげているな。本当に彼女はルルスさんが好きなんだな~。
「じゃあ、皆さん見ていてくださいね」
みんなに挨拶をして決闘場に入って行く。
「うん! 危なくなったら乱入するからね!」
「はいはい。スティナじゃないけど、危なくなったらすぐに降参してね」
スティナさん達は応援席の入場口に入って行く。降参か、したくないな~。
「おはようアート君」
「おはようございます!」
元気に挨拶をしあって決闘の舞台を見据える。
「本来はここで私の首が飛ぶところだったんだな。アート君本当にありがとう。今は君に感謝しているよ。騎士として汚名返上の舞台を用意してくれたことに」
「ルルスさん……。いえ、僕こそ、ルドガーと戦えるんです。僕こそお礼を言わないと」
ルルスさんがお礼を言ってくる。僕が答えると握手を求めてきた。手に触れるととても温かくて熱が入っているのが分かる。
「お集りの皆さま。ようこそいらっしゃいました。これより、ブロガ様の聖騎士隊のお披露目会をいたします。それに伴い、ブロガ様に逆らったものたちの末路をお見せいたします」
『!?』
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