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第一章 落とされたもの
第38話 激戦
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「アームストロング様!」
「おお、ボイド。皆無事か?」
「はい」
町を囲う城壁上に降り立つと決闘場から避難してきた人たちと合流できた。ルルスさん達もここに避難していたみたいだ。
「冒険者達も集めておきました。いつでも応戦できますが」
「いや、一般人では厳しい。それよりも町の住人を避難させることを考えるべきだ」
「た、確かにあれと戦うことは自殺行為ですね……」
ルルスさんの声に首を横に振るアームストロング様、町を放棄するしかないってこと?
「アマリエル。お前はどうやってあれを始末するつもりだったんだ?」
「言ったでしょ? 自爆よ。この周囲のマナを消滅させるの。しばらく魔法の使えない土地にするほどの爆発ですけどね」
ルドガーが考え込んでアマリエルに質問した。あまりの答えに言葉を無くしてるルドガー。みんなも絶句する。
「私の力じゃそんな大きな範囲は無理。あんなに大きくなるなんて思わなかった」
「そうか。お前でも無理ってことか」
アマリエルの言葉にルドガーが俯く。それを見ていてシエルさんが僕を抱きしめる。
「アート様。私のグングニルもマナを吸い込んで強くなります。あなたの白銀の剣も同じ気を感じます」
「ああ、そういえば本気になればって言っていたね」
ルドガーとの戦いの前にいわれてたっけ、結局簡単にまけてしまったからできなかったけど。
「白銀の剣は私のグングニルよりも強い気を感じます。アマリエルの気、マナよりも大きな気です」
「ええ、アマリエルよりも? それはほんと?」
「はい」
そうか、この白銀の剣が真の姿になれば、もしかしたら?
「アームストロング様! やつが動き出しました!」
「なに!?」
人のサイズだった時は全然動かなかったヴァルエル。大きくなるとすぐに動き出した。
「矮小な人間ども。これよりこの世は滅びへと歩みだす。抗うならば覚悟せよ。我の強さを」
声が空から降りてくる。あまりの恐怖でみんな震えだす。
「ガハハハ! 堕天使のくせに戦略を知っておるわ。まずは兵士の心を折る。まあ、折れんがな。心配せずとも臆したものから負けるぞ。気をしっかりと持て!」
「はい!」
アームストロング様の笑いの声にみんな震えが止まる。
「では先頭の名誉をもらうぞ! はっ!」
アームストロング様はそう言ってペガサスに乗り込んでやつの頭へと飛び立つ。激しい攻撃の音が聞こえてくる。
「俺達も加勢に行くぞ!」
「ルドガー! 僕も!」
「いや、ダメだアート。お前達は飛べないだろ。奴は巨大だ。足元で何をしても危険なだけだ。みんなを連れて逃げろ」
ルドガーたちも飛び立とうとする。僕が声をかけるとルドガーたちは首を横に振って答えた。
「逃げないよ僕らは。下で戦う」
「アート……。死なないでね。私はあなたが死んでしまったら」
「大丈夫だよお母さん」
僕が決意を口にするとアマリエルが頬を摩って話した。そんな僕らを見てルドガーはいたたまれない様子。だけど、戦いに行かなくちゃいけない。アマリエルに抱えられてアームストロングの加勢に飛んでいった。
「さあ、僕らも行こうシエル」
「はい!」
空に戦いに向かったみんなを見送って僕らはヴァルエルの足元へと走り出す。触手が森のように生い茂って巨人となったヴァルエルから垂れ下がってきている。
「人と同じ形をしてるってことは臓器みたいな急所はあるよね」
「そのはずです。マナが濃くなっています。気をつけてください」
僕の疑問にシエルさんが答える。そうか、世界を作り替える行動はしてるのか。
「大丈夫だよアートお兄ちゃん! 私がずっとマナ食べてるから~。そろそろ外に出さないと大変だけど」
イーマちゃんがお腹を摩りながら話す。デーモンと戦った時みたいな魔法を出さないってことかな? 改めてイーマちゃんってどういう種族なんだろうか?
「お前か! 一向にマナを増やせない原因は!」
垂れ下がる一本の触手に顔が形成されていく。そして、イーマちゃんを睨みつけて声をあげてきた。このすべての触手がヴァルエルそのものなのか。
「エンシェントデーモンだと! 何故生きている! 確かにお前達は滅んだはず。まあいい、また滅ぼしてやる!」
イーマちゃんの正体に気が付いて触手を振り回してくる。何とか躱しながらヴァルエルの足にたどり着く。すかさずシエルさんがグングニルを突き立てる。
「ぐあっ! そ、それは神を殺す槍【グングニル】!? なぜそのようなものがここに。神に落とされた時、槍も紛失していたはずだ」
「あなたを倒すために復活したのかもね」
「ぐぬぬ」
痛みで口を開いたヴァルエル。シエルさんが答えると唇を噛みしめて血を流す。
「こちらも忘れてもらっては困るぞヴァルエル!」
僕も加わろうと白銀の剣を引き抜いていると空から声が聞こえてくる。
アームストロング様がルドガーたちと共に剣を振り上げているのが見える。鋭い打撃音と血肉が地面に落ちてくる。
「無駄だ無駄だ! 私は堕天使! 神より離れた私は不死身なのだ。はははは!」
「え!? わっ!?」
足を切り刻み、顔から血を流すヴァルエルだったけど、それはすべて無駄。奴は本当に不死身みたいだ。すぐに新しい触手が生えてきて僕らを縛り付ける。
「きゃ!?」
「シエル!」
逃げ回っていたシエルさんも縛り付けられる。無事なのはアームストロング様達だけか。
「このまま縛り殺してやる!」
「あ……うっ」
「アートお兄ちゃん……」
ヴァルエルの力が強くなっていく。意識が遠のく、イーマちゃんの苦しそうな声も聞こえてきた。
僕がしっかりしないとダメだ。何か手はないのか。
『私を使うんだアート』
「うっ……。誰?」
どこからか声が聞こえてくる。辺りを見回すけど、縛られるみんなしか見えない。
「あ、アート様。私が助けます」
「ぐははは。そんなこと不可能だ。グングニルも使い手が弱ければただの棒だな」
シエルさんが僕へと手を伸ばして声をあげてる。それをあざ笑うかのようにヴァルエルの声が聞こえてくる。悔しい! こ、こんな奴に僕らが負けるなんて。
『私を使うんだアート!』
悔し涙を流していると荒々しい声が聞こえてくる。
「だ、誰だよさっきから」
『私の名は……アクリア!』
「!?」
憤って聞き返すと驚きの名が叫ばれた。
「おお、ボイド。皆無事か?」
「はい」
町を囲う城壁上に降り立つと決闘場から避難してきた人たちと合流できた。ルルスさん達もここに避難していたみたいだ。
「冒険者達も集めておきました。いつでも応戦できますが」
「いや、一般人では厳しい。それよりも町の住人を避難させることを考えるべきだ」
「た、確かにあれと戦うことは自殺行為ですね……」
ルルスさんの声に首を横に振るアームストロング様、町を放棄するしかないってこと?
「アマリエル。お前はどうやってあれを始末するつもりだったんだ?」
「言ったでしょ? 自爆よ。この周囲のマナを消滅させるの。しばらく魔法の使えない土地にするほどの爆発ですけどね」
ルドガーが考え込んでアマリエルに質問した。あまりの答えに言葉を無くしてるルドガー。みんなも絶句する。
「私の力じゃそんな大きな範囲は無理。あんなに大きくなるなんて思わなかった」
「そうか。お前でも無理ってことか」
アマリエルの言葉にルドガーが俯く。それを見ていてシエルさんが僕を抱きしめる。
「アート様。私のグングニルもマナを吸い込んで強くなります。あなたの白銀の剣も同じ気を感じます」
「ああ、そういえば本気になればって言っていたね」
ルドガーとの戦いの前にいわれてたっけ、結局簡単にまけてしまったからできなかったけど。
「白銀の剣は私のグングニルよりも強い気を感じます。アマリエルの気、マナよりも大きな気です」
「ええ、アマリエルよりも? それはほんと?」
「はい」
そうか、この白銀の剣が真の姿になれば、もしかしたら?
「アームストロング様! やつが動き出しました!」
「なに!?」
人のサイズだった時は全然動かなかったヴァルエル。大きくなるとすぐに動き出した。
「矮小な人間ども。これよりこの世は滅びへと歩みだす。抗うならば覚悟せよ。我の強さを」
声が空から降りてくる。あまりの恐怖でみんな震えだす。
「ガハハハ! 堕天使のくせに戦略を知っておるわ。まずは兵士の心を折る。まあ、折れんがな。心配せずとも臆したものから負けるぞ。気をしっかりと持て!」
「はい!」
アームストロング様の笑いの声にみんな震えが止まる。
「では先頭の名誉をもらうぞ! はっ!」
アームストロング様はそう言ってペガサスに乗り込んでやつの頭へと飛び立つ。激しい攻撃の音が聞こえてくる。
「俺達も加勢に行くぞ!」
「ルドガー! 僕も!」
「いや、ダメだアート。お前達は飛べないだろ。奴は巨大だ。足元で何をしても危険なだけだ。みんなを連れて逃げろ」
ルドガーたちも飛び立とうとする。僕が声をかけるとルドガーたちは首を横に振って答えた。
「逃げないよ僕らは。下で戦う」
「アート……。死なないでね。私はあなたが死んでしまったら」
「大丈夫だよお母さん」
僕が決意を口にするとアマリエルが頬を摩って話した。そんな僕らを見てルドガーはいたたまれない様子。だけど、戦いに行かなくちゃいけない。アマリエルに抱えられてアームストロングの加勢に飛んでいった。
「さあ、僕らも行こうシエル」
「はい!」
空に戦いに向かったみんなを見送って僕らはヴァルエルの足元へと走り出す。触手が森のように生い茂って巨人となったヴァルエルから垂れ下がってきている。
「人と同じ形をしてるってことは臓器みたいな急所はあるよね」
「そのはずです。マナが濃くなっています。気をつけてください」
僕の疑問にシエルさんが答える。そうか、世界を作り替える行動はしてるのか。
「大丈夫だよアートお兄ちゃん! 私がずっとマナ食べてるから~。そろそろ外に出さないと大変だけど」
イーマちゃんがお腹を摩りながら話す。デーモンと戦った時みたいな魔法を出さないってことかな? 改めてイーマちゃんってどういう種族なんだろうか?
「お前か! 一向にマナを増やせない原因は!」
垂れ下がる一本の触手に顔が形成されていく。そして、イーマちゃんを睨みつけて声をあげてきた。このすべての触手がヴァルエルそのものなのか。
「エンシェントデーモンだと! 何故生きている! 確かにお前達は滅んだはず。まあいい、また滅ぼしてやる!」
イーマちゃんの正体に気が付いて触手を振り回してくる。何とか躱しながらヴァルエルの足にたどり着く。すかさずシエルさんがグングニルを突き立てる。
「ぐあっ! そ、それは神を殺す槍【グングニル】!? なぜそのようなものがここに。神に落とされた時、槍も紛失していたはずだ」
「あなたを倒すために復活したのかもね」
「ぐぬぬ」
痛みで口を開いたヴァルエル。シエルさんが答えると唇を噛みしめて血を流す。
「こちらも忘れてもらっては困るぞヴァルエル!」
僕も加わろうと白銀の剣を引き抜いていると空から声が聞こえてくる。
アームストロング様がルドガーたちと共に剣を振り上げているのが見える。鋭い打撃音と血肉が地面に落ちてくる。
「無駄だ無駄だ! 私は堕天使! 神より離れた私は不死身なのだ。はははは!」
「え!? わっ!?」
足を切り刻み、顔から血を流すヴァルエルだったけど、それはすべて無駄。奴は本当に不死身みたいだ。すぐに新しい触手が生えてきて僕らを縛り付ける。
「きゃ!?」
「シエル!」
逃げ回っていたシエルさんも縛り付けられる。無事なのはアームストロング様達だけか。
「このまま縛り殺してやる!」
「あ……うっ」
「アートお兄ちゃん……」
ヴァルエルの力が強くなっていく。意識が遠のく、イーマちゃんの苦しそうな声も聞こえてきた。
僕がしっかりしないとダメだ。何か手はないのか。
『私を使うんだアート』
「うっ……。誰?」
どこからか声が聞こえてくる。辺りを見回すけど、縛られるみんなしか見えない。
「あ、アート様。私が助けます」
「ぐははは。そんなこと不可能だ。グングニルも使い手が弱ければただの棒だな」
シエルさんが僕へと手を伸ばして声をあげてる。それをあざ笑うかのようにヴァルエルの声が聞こえてくる。悔しい! こ、こんな奴に僕らが負けるなんて。
『私を使うんだアート!』
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