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第一章 落とされたもの
第39話 アクリア
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「アクリアさん……」
僕は彼の名を呟く。
『ああ、私はアクリア。愛しき人をこの世に蘇らせるためにバッグへと命を捧げた男だ』
「え? バッグ?」
彼の話を聞いて僕はバッグに視線を移す。薄っすらとバッグが輝いているのが見える。
『【落とし物バッグ】本来の姿は【賢者の石】と言われる不定形なスライムのようなものだった。おっとまずはこの状況をどうにかしよう。私に触れて口を大きく開けるんだ。アート!』
「は、はい!」
言われた通りバッグに何とか手を伸ばして口を大きく開いた。すると僕を縛り付けていた触手が次々とバッグの中に入って行く。
「な、なんだそのバッグは!?」
気が付いて驚愕の声をあげるヴァルエル。落とし物バッグの力はものすごくて、シエルさんやイーマちゃん。みんなの触手まで吸い込んでしまう。
『堕天使……神から落されたもの。お前もまた捨てられたものなのだよ』
アクリアさんがそう言って白銀の剣を僕に突き出してきた。
『さあアート。これでやつを本当の捨てられしものに』
「え? でも、どうやって!」
槍で突いても倒せない相手をどうやって倒せばいいんだよ。
『簡単なことだよ。神になればいいんだ。そして言ってやればいい。お前は要らないっと』
「神になる?」
『ああ』
アクリアさんの言葉に首を傾げる。この白銀の剣と関係があるのかな?
シエルさんやイーマちゃんに視線を泳がせるけど、二人も分からない様子だ。僕も理解できない。
『ふう。まったく君は……。私の中には何が入ってる?』
「え? バッグの中? ……もしかして?」
アクリアさんの言葉を聞いて中を思い出す。そして、一つ思いつく。
「才能?」
僕は才能の水晶をいくつも取り出す。
『神は全知全能。その白銀の剣は神にのみ本来の力を解放する』
「そ、そんなすごい剣だったの? で、でも、才能を得ると熱が……」
アクリアさんの熱のこもった声に不安の声をもらす。才能を得るといつも倒れてしまう。今、そんなことになったら。
『大丈夫。私を信じて』
「……わ、分かりました! やってみます!」
彼の声に答えて才能を取りこんでいく。
「させるものか!」
「邪魔はさせません!」
ヴァルエルが触手や足を動かして邪魔をしてくる。シエルさん達が守ってくれるけど、僕も才能を取得しながら避ける。
ドクンドクン、才能を入れるたびに血が沸騰するのを感じる。体が熱い……。
「は、白銀の剣が光って行く?」
才能の光が体に入って行くたびに光を増す白銀の剣。ひびが割れるように光が纏わりついていく。
『あと少し!』
「は、はい……うっ!?」
「アート様!」
アクリアさんの声で勇気づけられて最後の才能を取り込む。入れたとたんに視界が真っ暗になって驚きの声をあげるとシエルさんが体を支えてくれた。
「だ、大丈夫だよシエル。少し目がみえなくなっただけ」
「目が!? そ、そんな!?」
目を開けてみても前が見えない。シエルさんが悲しそうな声をもらすけれど、まだ終わりじゃない。白銀の剣を両手で握りしめる。
「……。【神剣フリーディア】って言うんだね。じゃあ、君の本当の力を見せて」
白銀の剣が囁きかけてきて答える。【神剣フリーディア】誰にも邪魔されない世界か。
フリーディアは姿を光へと変えていく。僕よりもヴァルエルよりも大きくなった光は猛々しくやつを見下ろす。
「そ、そんなバカな! なぜ神の剣が!?」
「さあ、落とされしもの! 土に還れ!」
「!?」
僕の声でフリーディアが光の津波となってヴァルエルへと覆いかぶさる。光の一つ一つがやつを切り刻み、大地へと還していく。
『終わりです。やつは私の中に入りました』
「アクリアさん……」
バッグの中を見るとヴァルエルという名が刻まれているのが見えた。大きなままでは神の”落とし物”にならなかったってことか。
でも、落とし物バッグは複製されるはず?
『奴は落とし物になる前に私の中に入れています。複製などしてしまったら大変なことになりますから。ですが、少々力を使いすぎてしまいました』
アクリアさんはそう言うとバッグが光を失って行く。
「アクリア様……」
『ははは、シエル。相変わらず君は綺麗だな』
シエルさんがバッグに手を添えて話しかける。嬉しそうで、悲しそうな彼女。胸が締め付けられる。
「賢者の石に命を?」
『ははは、イシリアと一緒に作り出してね。大変だったよ。だけど、もう一度君に会えたのだから報われたよ』
賢者の石、どんな形状のものかもわからない秘宝と言われている魔道具みたいなものだな。僕も物語か何かでしか聞いたことがない。
『イシリアと作った賢者の石は魔物の命を多く使ってね。スライムのようなやつになった。そして、奴は私に取引を持ち掛けてきたのさ』
「取引ですか?」
『ああ、私の命を差し出せば私の記憶から人や物を再生させるとね』
アクリアさんの話は本当に夢物語だった。死んだ人も生き返すことができるのだから。
『範囲はイシリアが作った、この町という限定ではあるがしっかりと活用できたみたいだね。本当に良かったよ。君もイーマもしっかりと再生されてる』
「アクリア様」
楽しそうに話すアクリア様。だけど、シエルさんは悲しそうで僕は見ていられない。
『さて、そろそろ喋れなくなってしまうな。また喋れるようになるまで、アート。みんなを守っておくれよ?』
「は、はい!」
『いい返事だ。じゃあシエル。愛している』
「アクリア様……」
アクリアさんがそう言うとバッグが光を失って行く。泣き崩れるシエルさんを抱きしめると自然と僕も涙が流れていた。
僕は彼の名を呟く。
『ああ、私はアクリア。愛しき人をこの世に蘇らせるためにバッグへと命を捧げた男だ』
「え? バッグ?」
彼の話を聞いて僕はバッグに視線を移す。薄っすらとバッグが輝いているのが見える。
『【落とし物バッグ】本来の姿は【賢者の石】と言われる不定形なスライムのようなものだった。おっとまずはこの状況をどうにかしよう。私に触れて口を大きく開けるんだ。アート!』
「は、はい!」
言われた通りバッグに何とか手を伸ばして口を大きく開いた。すると僕を縛り付けていた触手が次々とバッグの中に入って行く。
「な、なんだそのバッグは!?」
気が付いて驚愕の声をあげるヴァルエル。落とし物バッグの力はものすごくて、シエルさんやイーマちゃん。みんなの触手まで吸い込んでしまう。
『堕天使……神から落されたもの。お前もまた捨てられたものなのだよ』
アクリアさんがそう言って白銀の剣を僕に突き出してきた。
『さあアート。これでやつを本当の捨てられしものに』
「え? でも、どうやって!」
槍で突いても倒せない相手をどうやって倒せばいいんだよ。
『簡単なことだよ。神になればいいんだ。そして言ってやればいい。お前は要らないっと』
「神になる?」
『ああ』
アクリアさんの言葉に首を傾げる。この白銀の剣と関係があるのかな?
シエルさんやイーマちゃんに視線を泳がせるけど、二人も分からない様子だ。僕も理解できない。
『ふう。まったく君は……。私の中には何が入ってる?』
「え? バッグの中? ……もしかして?」
アクリアさんの言葉を聞いて中を思い出す。そして、一つ思いつく。
「才能?」
僕は才能の水晶をいくつも取り出す。
『神は全知全能。その白銀の剣は神にのみ本来の力を解放する』
「そ、そんなすごい剣だったの? で、でも、才能を得ると熱が……」
アクリアさんの熱のこもった声に不安の声をもらす。才能を得るといつも倒れてしまう。今、そんなことになったら。
『大丈夫。私を信じて』
「……わ、分かりました! やってみます!」
彼の声に答えて才能を取りこんでいく。
「させるものか!」
「邪魔はさせません!」
ヴァルエルが触手や足を動かして邪魔をしてくる。シエルさん達が守ってくれるけど、僕も才能を取得しながら避ける。
ドクンドクン、才能を入れるたびに血が沸騰するのを感じる。体が熱い……。
「は、白銀の剣が光って行く?」
才能の光が体に入って行くたびに光を増す白銀の剣。ひびが割れるように光が纏わりついていく。
『あと少し!』
「は、はい……うっ!?」
「アート様!」
アクリアさんの声で勇気づけられて最後の才能を取り込む。入れたとたんに視界が真っ暗になって驚きの声をあげるとシエルさんが体を支えてくれた。
「だ、大丈夫だよシエル。少し目がみえなくなっただけ」
「目が!? そ、そんな!?」
目を開けてみても前が見えない。シエルさんが悲しそうな声をもらすけれど、まだ終わりじゃない。白銀の剣を両手で握りしめる。
「……。【神剣フリーディア】って言うんだね。じゃあ、君の本当の力を見せて」
白銀の剣が囁きかけてきて答える。【神剣フリーディア】誰にも邪魔されない世界か。
フリーディアは姿を光へと変えていく。僕よりもヴァルエルよりも大きくなった光は猛々しくやつを見下ろす。
「そ、そんなバカな! なぜ神の剣が!?」
「さあ、落とされしもの! 土に還れ!」
「!?」
僕の声でフリーディアが光の津波となってヴァルエルへと覆いかぶさる。光の一つ一つがやつを切り刻み、大地へと還していく。
『終わりです。やつは私の中に入りました』
「アクリアさん……」
バッグの中を見るとヴァルエルという名が刻まれているのが見えた。大きなままでは神の”落とし物”にならなかったってことか。
でも、落とし物バッグは複製されるはず?
『奴は落とし物になる前に私の中に入れています。複製などしてしまったら大変なことになりますから。ですが、少々力を使いすぎてしまいました』
アクリアさんはそう言うとバッグが光を失って行く。
「アクリア様……」
『ははは、シエル。相変わらず君は綺麗だな』
シエルさんがバッグに手を添えて話しかける。嬉しそうで、悲しそうな彼女。胸が締め付けられる。
「賢者の石に命を?」
『ははは、イシリアと一緒に作り出してね。大変だったよ。だけど、もう一度君に会えたのだから報われたよ』
賢者の石、どんな形状のものかもわからない秘宝と言われている魔道具みたいなものだな。僕も物語か何かでしか聞いたことがない。
『イシリアと作った賢者の石は魔物の命を多く使ってね。スライムのようなやつになった。そして、奴は私に取引を持ち掛けてきたのさ』
「取引ですか?」
『ああ、私の命を差し出せば私の記憶から人や物を再生させるとね』
アクリアさんの話は本当に夢物語だった。死んだ人も生き返すことができるのだから。
『範囲はイシリアが作った、この町という限定ではあるがしっかりと活用できたみたいだね。本当に良かったよ。君もイーマもしっかりと再生されてる』
「アクリア様」
楽しそうに話すアクリア様。だけど、シエルさんは悲しそうで僕は見ていられない。
『さて、そろそろ喋れなくなってしまうな。また喋れるようになるまで、アート。みんなを守っておくれよ?』
「は、はい!」
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