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赤い瞳と青い瞳
第3話 灯
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「……」
滅んだ村を離れて街道を歩く。
雨のせいで目がとても痛い。なんであの雨は塩っ辛かったのかな。
しばらく歩いていると狼に襲われた。剣で一匹を切りつけて絶命させると去っていく。丁度いい、これを食べよう。
火をおこすことはできない。そのまま、食べられそうなところを食べる。意外に目や脳みそはそのままでも美味しかった。
でも、おじさん達と一緒に食べた料理には勝てない。また食べたいけど、もう食べられない……そんなことを考えていると視界が揺れる。
「仇を取る」
目を擦って前へと進む。森に入ってさらに進むと王都と言われる町に着く。とても立派な城壁に囲まれた町、馬車が何台も入っていくのが見える。
「止まれ! みすぼらしい女だ。どこから来た?」
門番の兵士がそんな声をかけてくる。私は唇をかみしめて剣に手を伸ばす。
「待て待て。おいおい、女性の扱いもできないのか? お嬢さんもう大丈夫ですよ」
いかつい兵士を制して調子のいい兵士が出てきた。私とダンスを踊るかのように組み合って声をかけてくる。
「あんまり殺気を出すと死ぬぞ」調子のいい男は小声でそう言ってくる。
「このお嬢さんは俺の客だ。さあ、お前たちはあっちのお客さんの応対でもしてな」
調子のいい兵士はそう言って私を町の中へと案内してくる。何度も振りほどこうと思ったが以外に力が強い。それは相手もそう思っていたみたいで「あんた力強いな」と言ってきた。
悔しい思いでいっぱいになる。こいつらは仇だ。村のみんなや母の仇。力で負けていたら仇がとれない。
「ろくに食べないで人は殺せねえ。ほら、食えよ」
調子のいい兵士は私を部屋に案内して食べ物と飲み物をくれた。肉を挟んだパンにトウモロコシのスープ。勝手によだれが口からこぼれてくる。
男がその様子を見て笑う。私は男をにらみつけた。
「お~怖い。見られたくないならそう言えよ。じゃあ、俺は仕事に戻るからな。この部屋は好きに使いな。俺を殺すでもよし、抱かれるでもよしな」
調子のいい男が部屋から出ていった。施しをされた、最初はそう思ってパンを地面にたたきつけたい気持ちでいっぱいになっただけど、お腹が鳴るとそんなことはしたくないと思ってしまった。
口に放り込むパン、スープ。あの時と同じように体に染みわたっていく。
「うっ、うう。あの頃に戻りたい。戻りたいよ」
体が潤いを帯びると自然と口が、言葉が出てくる。最愛の人と過ごした村での思い出が蘇ってくる。兵士を倒しているときも、歩いているときも思い出さなかった思い出。必死に戦っていた私は忘れたかったのだろうか。
「ん? おこしちまったか?」
泣き疲れてベッドで寝込んでいると調子のいい男が帰ってきていた。扉を開く音も聞こえなかった。彼は気を使ってくれているみたい。
男は服を何着か無造作に放る。
「女ものの服はよくわからないからな。適当に買ってきた」
頬を赤くして声をあげる男。彼は女性慣れしているようだけれど、そうではないみたい。最愛の人と初めて話した時を思い出す。
一着の服を手に取るとその場で着替える。彼は驚いて背中を向けてきた。
「ど、どうだ? 結構センスは良いと思うんだが?」
男が頬を搔きながら聞いてくる。私はそんな男の背中に飛びついた。抱きしめて耳を甘噛みする。男が震えるのを感じて離れるとベッドに横たわる。
「……そういうことでいいのか?」
男は決意したように声を漏らすと服を脱いでいく。だけど、彼は煮え切らない様子で脱ぎ捨てた服を拾い集めていく。
「自分を大切にしろ。俺は床で寝る。食事は机に置いてあるからな。お休み」
男は床に寝っ転がるとそのまま寝息を立てていく。彼の様子に少し安心した。剣を握る手、彼に突き立てなくて済んだから。
「起きたか? 飯は準備してある。食えよ」
朝起きると男はそう言って部屋を出ていった。本当に私に手を出さなかった。あの男は何が目的なの?
不審に思いながらも机に用意されたご飯を食べる。昨日の料理もそうだけど、とても美味しい。匂いが残ってるから、自分で作ってるのかも。
「ただいま……いたのか」
男が帰ってきた。ただいまといったくせに私がいることに驚いてる。暇だったからすべての部屋を掃除していたから気づかなかったみたい。
照れくさそうに頬を掻いてる。
「リック」
「ん? どうした?」
帰ってきて早々に男の知り合いが部屋を訪ねてきた。扉を挟んで小さな声で会話、あまり人に聞かせたくない話みたい。
「バックスはイレーネが殺したんじゃない。貴族がやったんだ」
うっすらと聞こえてくる声、報告している人も驚愕の事実なのか熱がこもってる。リックと呼ばれた男はそれを聞いてこぶしから血をにじませる。
「皆に話せ。どうするかはみんなで決めよう」
リックはそう言って椅子に座ると天を仰いだ。しばらく見ていると考え込んだり、体を震わせたりしてる。
「なあ、あんた」
掃除をしながら見ていた私に声をかけてくるリック。私は首をかしげると鋭く拳を打ち込んできた。それを軽くかわす私。私はなんでこんなに動けるんだろう。思ってみれば、イレーネをやった時も油断していたとはいえ、大人を6人も手にかけてる。
「あんたやっぱりただものじゃねえ。俺の仲間になってくれないか?」
リックはそう言うと私の手を取って手の甲にキスをしてきた。
「正直、俺はあんたに惚れちまった。殺気のこもったその両目にな」
告白をしてくるリック。私はその殺気をあなたにも向けていた。それなのにこんなことを言ってくる。この人も狂っているのかも。
「俺はな。反乱を起こすつもりだ。貴族のやりたい放題をいつまでも許すわけにはいかねえんだ。あんたも俺たちに殺気を向けるくらいに国を憎んでいるんだろ? 力になってくれ」
リックはそう言って決意に灯を灯す。私はこの国を壊したい、手伝ってくれるなら私も手伝う。
滅んだ村を離れて街道を歩く。
雨のせいで目がとても痛い。なんであの雨は塩っ辛かったのかな。
しばらく歩いていると狼に襲われた。剣で一匹を切りつけて絶命させると去っていく。丁度いい、これを食べよう。
火をおこすことはできない。そのまま、食べられそうなところを食べる。意外に目や脳みそはそのままでも美味しかった。
でも、おじさん達と一緒に食べた料理には勝てない。また食べたいけど、もう食べられない……そんなことを考えていると視界が揺れる。
「仇を取る」
目を擦って前へと進む。森に入ってさらに進むと王都と言われる町に着く。とても立派な城壁に囲まれた町、馬車が何台も入っていくのが見える。
「止まれ! みすぼらしい女だ。どこから来た?」
門番の兵士がそんな声をかけてくる。私は唇をかみしめて剣に手を伸ばす。
「待て待て。おいおい、女性の扱いもできないのか? お嬢さんもう大丈夫ですよ」
いかつい兵士を制して調子のいい兵士が出てきた。私とダンスを踊るかのように組み合って声をかけてくる。
「あんまり殺気を出すと死ぬぞ」調子のいい男は小声でそう言ってくる。
「このお嬢さんは俺の客だ。さあ、お前たちはあっちのお客さんの応対でもしてな」
調子のいい兵士はそう言って私を町の中へと案内してくる。何度も振りほどこうと思ったが以外に力が強い。それは相手もそう思っていたみたいで「あんた力強いな」と言ってきた。
悔しい思いでいっぱいになる。こいつらは仇だ。村のみんなや母の仇。力で負けていたら仇がとれない。
「ろくに食べないで人は殺せねえ。ほら、食えよ」
調子のいい兵士は私を部屋に案内して食べ物と飲み物をくれた。肉を挟んだパンにトウモロコシのスープ。勝手によだれが口からこぼれてくる。
男がその様子を見て笑う。私は男をにらみつけた。
「お~怖い。見られたくないならそう言えよ。じゃあ、俺は仕事に戻るからな。この部屋は好きに使いな。俺を殺すでもよし、抱かれるでもよしな」
調子のいい男が部屋から出ていった。施しをされた、最初はそう思ってパンを地面にたたきつけたい気持ちでいっぱいになっただけど、お腹が鳴るとそんなことはしたくないと思ってしまった。
口に放り込むパン、スープ。あの時と同じように体に染みわたっていく。
「うっ、うう。あの頃に戻りたい。戻りたいよ」
体が潤いを帯びると自然と口が、言葉が出てくる。最愛の人と過ごした村での思い出が蘇ってくる。兵士を倒しているときも、歩いているときも思い出さなかった思い出。必死に戦っていた私は忘れたかったのだろうか。
「ん? おこしちまったか?」
泣き疲れてベッドで寝込んでいると調子のいい男が帰ってきていた。扉を開く音も聞こえなかった。彼は気を使ってくれているみたい。
男は服を何着か無造作に放る。
「女ものの服はよくわからないからな。適当に買ってきた」
頬を赤くして声をあげる男。彼は女性慣れしているようだけれど、そうではないみたい。最愛の人と初めて話した時を思い出す。
一着の服を手に取るとその場で着替える。彼は驚いて背中を向けてきた。
「ど、どうだ? 結構センスは良いと思うんだが?」
男が頬を搔きながら聞いてくる。私はそんな男の背中に飛びついた。抱きしめて耳を甘噛みする。男が震えるのを感じて離れるとベッドに横たわる。
「……そういうことでいいのか?」
男は決意したように声を漏らすと服を脱いでいく。だけど、彼は煮え切らない様子で脱ぎ捨てた服を拾い集めていく。
「自分を大切にしろ。俺は床で寝る。食事は机に置いてあるからな。お休み」
男は床に寝っ転がるとそのまま寝息を立てていく。彼の様子に少し安心した。剣を握る手、彼に突き立てなくて済んだから。
「起きたか? 飯は準備してある。食えよ」
朝起きると男はそう言って部屋を出ていった。本当に私に手を出さなかった。あの男は何が目的なの?
不審に思いながらも机に用意されたご飯を食べる。昨日の料理もそうだけど、とても美味しい。匂いが残ってるから、自分で作ってるのかも。
「ただいま……いたのか」
男が帰ってきた。ただいまといったくせに私がいることに驚いてる。暇だったからすべての部屋を掃除していたから気づかなかったみたい。
照れくさそうに頬を掻いてる。
「リック」
「ん? どうした?」
帰ってきて早々に男の知り合いが部屋を訪ねてきた。扉を挟んで小さな声で会話、あまり人に聞かせたくない話みたい。
「バックスはイレーネが殺したんじゃない。貴族がやったんだ」
うっすらと聞こえてくる声、報告している人も驚愕の事実なのか熱がこもってる。リックと呼ばれた男はそれを聞いてこぶしから血をにじませる。
「皆に話せ。どうするかはみんなで決めよう」
リックはそう言って椅子に座ると天を仰いだ。しばらく見ていると考え込んだり、体を震わせたりしてる。
「なあ、あんた」
掃除をしながら見ていた私に声をかけてくるリック。私は首をかしげると鋭く拳を打ち込んできた。それを軽くかわす私。私はなんでこんなに動けるんだろう。思ってみれば、イレーネをやった時も油断していたとはいえ、大人を6人も手にかけてる。
「あんたやっぱりただものじゃねえ。俺の仲間になってくれないか?」
リックはそう言うと私の手を取って手の甲にキスをしてきた。
「正直、俺はあんたに惚れちまった。殺気のこもったその両目にな」
告白をしてくるリック。私はその殺気をあなたにも向けていた。それなのにこんなことを言ってくる。この人も狂っているのかも。
「俺はな。反乱を起こすつもりだ。貴族のやりたい放題をいつまでも許すわけにはいかねえんだ。あんたも俺たちに殺気を向けるくらいに国を憎んでいるんだろ? 力になってくれ」
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追記(2021/10/7)
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更に追記(2022/3/9)
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