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第一章 神様からの贈り物

第二十一話 S

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「そう・・・」

 僕らは小声で包み隠さずにウーナさんに告げた。あんなに心配してくれたウーナさんに嘘はつけないよ。
 それに黙っていてくれるって言ってるしね。

「マスターにも言うけどちゃんとあなた達の事は広めないようにするからね」

「はい、ありがとうございます」

「あなた達の事は信じているけど、ドラゴンライダーをどうやって倒したの? 剣でとは言わないわよね?」

 倒したことを言っただけだったのでウーナさんは疑問を投げかけてきた。
 ドラゴンの鱗は並大抵の剣じゃ貫けないんだ、僕たちが倒せるなんて普通は思わないよね。僕も正直倒せたなんて夢みたいだよ。

「魔法で・・」

「魔法?」

「そうです・・」

「凄いんだよ。アレクが魔法を放つと十本の槍みたいな炎がドラゴン達を次々落としていったの。私はワイバーンをやっと倒したくらいで・・」

「・・ワイバーンも十分凄いわよ・・」

 魔法でと告げるとウーナさんが聞き返してきた。僕が口ごもっているとシーナが代わりに話す。ウーナさんは呆れて声をもらした。

「ドラゴンを倒す魔法なんて上級でも限られているのよ。あなた達が使える魔法なんてアローシリーズくらいでしょ? 土魔法のアローで倒したの?」

「だから、槍だって言ったでしょ。炎の槍だよ~」

 ウーナさんの質問にシーナが答える。シーナの答えにウーナさんは更に顔を曇らせた。

「ドラゴンに炎魔法で勝つって・・・あなた達、Sランクの冒険者なの? ドラゴンは炎に耐性があるのよ。普通ははじかれるかして終わりだわ」

「普通に刺さってたよ・・」

「・・もういいわよ。信じているわ。あなた達が規格外って知っているしね。じゃあ、これね。オークの討伐依頼の報酬よ」

 ウーナさんは呆れながらも受付の下から報酬の銀貨の入った袋を取り出して渡してきた。

「多いんじゃないですか?」

「ふふ、少ないくらいよ。明日はゴブリンの巣を掃除しに行くんでしょ? 今度は心配しないからね」

「はい! ありがとうございます」

 ウーナさんはウインクして報酬をおまけしてくれた。皮袋には銀貨が十数枚入っている。こんなにもらえるとは思わなかったのでホクホクだよ。

「じゃあ、また明日来ます!」

「うん、気をつけてね」

「「はい!」」

 ウーナさんは本当に良い人だな~。僕とシーナはウーナさんに手を振りながらギルドを後にした。





「マスター。緊急招集は無駄になったようよ~」

「なに!」

 私はドルドランの町のギルドマスタードランの妻になる予定の女ウーナ。いい方の問題児達を見送って、ドランに心配事が無くなった事を告げにマスターの部屋にやってきた。書類を片づけていたドランに報告をすると書類が宙を舞うほど驚いているわ。こういう姿はそうそう見れないから、あの子たちに感謝ね。

「ドルドランの町にいる冒険者ではこんな短時間で処理できるはずがない・・・。そういえば、彼らは東の森に向かった?」

「そのまさかよ。オークの討伐依頼を済ましてきたわ。東の森のね」

「・・・」

 ドランは開いた口が閉まらない様子よ。私の言葉を聞いて信じられないといった感じかしらね。

「どうやって・・どうやってドラゴンを?」

「どうやら[ファイアランス]を十発ほど放って倒したみたいなの」

「ファイアランスを十発!? レベル50の魔導士なのか! 彼らは?」

 ドランは更に信じられないといった様子で聞き返してきたわ。私は違うと思うわよって言うと椅子に力なく座り込んでいたわ。頭が痛くなったのか抱え込んでしまってる。何だか可哀そうになってきちゃった。

「大丈夫? 揉んであげるからゆっくり考えて」

「ああ、すまない。しかし、信じられないな。ランスシリーズの魔法を十本」

「話じゃ、以上かもしれないわよ」

「十本以上か・・・、フェイブルファイア様に聞いたら答えてくれるだろうか?」

「ダメだと思うわよ。フェイブルファイア様はプライバシーについては頑なだし」

 フェイブルファイア様は王族だろうが貴族だろうが人のステータスについては何も言ってくれないの。とてもいい神様よね。

「ランスを十本以上とはな・・・。ドラゴンを倒したのだから、そのくらいは出来ないと無理か。ドラゴンの死骸は確認したか?」

「してないわよ。卸されたらどう説明するの? 倒しましたって言ったら、あなたくらいしか手を挙げられないわよ」

「そうだな。って私でもワイバーンとドラゴンを同時に、ましてやライダーを打ち負かす事は出来ないぞ」

 元Sランクのドランでも一人でライダー達が乗ったドラゴンやワイバーンを倒す事は難しい。戦士タイプでは限界があるのよね。強いんだけど、一対多数ではそれほど脅威にはならないのよね。

「あの子達もそれを分かっていて卸さなかったんでしょ。たぶん、ソルトの所に卸すと思うわよ」

「ソルトか、あの人ならばドラゴンの素材も扱えるな。彼らはすでにソルトと会っていたんだな」

「ええ、ソルトの所の印が付いた装備をしていたわ」

「英雄の誕生を見ているのかもしれないな」

 ドランは窓を開けて空を見つめているわ。諦めにも似た感情かしらね。私は後ろから優しく抱きしめることしかできない。これから彼は町中にドラゴンが居なくなったことを告げないといけない、私はサポートしかできない、だって、彼が苦しんでいる姿が愛おしくて可愛らしいからそれを見てからじゃないと助けられないの。最近はあの子達のおかげですぐに見れるけどね。
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