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第一章 神様からの贈り物

第三十話 頼もしい大人たち

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「いらっしゃ~い」

「あらあら、お帰りなさい」

 ソルトさんの店に着くとそこにはベラさんも一緒にいた。この二人は仲がいいみたいです。

「思った通り、アレク君達が山を崩したようだ」

「はは、凄いねアレク君達は」

 ドランさんがソルトさんに苦笑いしながら告げてる。別にやりたくてやったわけじゃ。

「全く・・・」

「あらあら、そんなに怒っちゃダメよ。町を救ってくれたんだから褒めてあげないと」

「ベラさんの言う通りよ」

 ドランさんに呆れられているとベラさんとウーナさんが庇ってくれた。

『ふむ、お嬢さん方は見込みがありそうだにゃ~』

「ん? 誰だ」

「にゃ~って?」

 カクルが顔を洗いながらつぶやく。みんな誰の声かわからずに周りをキョロキョロと見回してる。僕とシーナはカクルを見やった。

「カクル!」

「カクル? ってあの猫か?」

 シーナが思わずカクルの名を呼ぶとみんながカクルを見やった。

『うちのマスターがゴブリンキングを倒したから山が崩れて、町は助かったんだにゃ。それも分からないようじゃ、まだまだ人間はダメだにゃ~』

 見られても構わずに話し続けるカクル。みんな、口をあんぐりとあけて呆けている。

「アレク君? あの猫は?」

「えっと・・」

『マスター、隠す必要はないにゃ。この子らは君の味方になってくれるはずだからにゃ。だから、この部屋に招いたのにゃ。防音の結界の店ににゃ』

 ドランさんの質問に僕は言いあぐねているとカクルが言っても大丈夫だと言ってきた。
 どうやら、このお店は防音の結界がされているようで、ここに呼んだって事は周りに言うつもりはないって事だと判断したみたい。やっぱりドランさん達はとてもいい人だって事が今回は判明したよ。まあ、今までもいい人だと思っていたけどね。

「やはり、猫が話しているのか・・」

『今の姿は仮の姿にゃ。今から戻るにゃ』

 カクルが尻尾を抱えてバク宙、一瞬で元の緑の体躯のリス型に変身した。

「!? カーバンクル!?」

『コロボックルの坊やはやっぱり気づいたね』

 カクルの姿を見て、ソルトさんが叫んだ。

「カーバンクルだと! 大精霊じゃないか」

「あらあら~可愛らしい姿ね~」

「ベラさん、今はそんなときじゃ・・」

 姿が変わったカクルにみんな驚いているんだけど、ベラさんはカクルに抱き着いてナデナデし始めた。ウーナさんが宥めるんだけどそれでもやめてくれません。

『撫でられていると喋りにくいにゃ』

「あらあら、ごめんなさいね。でも、可愛すぎるのがいけないのよ~」

 カクルの一言でベラさんはカクルを離した。嫌がっていると言うのが分ると直ぐに離してくれたみたいだ。

『ふぅ』

「それでカーバンクルが何故?」

「実はスタンピードの予兆があのドラゴンだったんです」

「なに! スタンピード!?」

 僕はカーバンクルが召喚を出来る事やそれをゴブリンキングがやっていた事を告げた。

「なるほど、という事は今はアレク君がマスターだから安心という事か」

 説明を聞いてドランさん達は頷いて納得してくれた。僕がマスターになった事で危険がないと安心してくれてる。僕なら大丈夫だと思ってくれているのは何だか嬉しいな、まだ会ったばかりなのに。

『マスターは人望があるんだね』

「う~ん、あんまり意識してないけどそうなのかな?」

「アレクは優しいもん。みんな信じてるんだよ」

 そんなに良い事をしているとは思ってなかったけどな。

「とりあえず、これ以上の危険はないんだな。では、今まで通り、山の件は私が処理しておこう」

「山の欠けた理由なんてどうするの?」

「そうだな・・・ドラゴンが暴れたといえば国も納得するだろう」

 ドラゴンって山が欠けるほどの力を持っていたんだね。それを一瞬で僕らは倒してしまったのか。フェイブルファイア様のギフトは本当に規格外だな~。

「そのドラゴンはドランが倒した事にするんだよね?」

「・・ああ、しばらくはそれで通す。アレク君がCランク以上になってクランを持つまでな」

「・・・」

 ウーナさんの指摘にドランさんは僕を見つめて話してきた。僕は思わず視線を逸らせる。

「とにかく、アレク君達は今まで通り、ランク上げに勤しんでくれ。早速、ウーナ」

「今日はギルドに来ない方がいいからここで報告を受けちゃうね」

 ドランさんの合図でウーナさんが信頼のペンを片手に僕の前へ。

 信頼のペンを紙に当ててもらってゴブリンの巣の依頼達成を証明してくれた。

「はい、確かに。報酬は金貨一枚ですね」

「えっ? 大銅貨じゃ?」

「ドラゴンを倒しているし、更にゴブリンキングを倒しているでしょ。カクルちゃんの事もあるし受け取っておいて。これはギルドからの信頼って事でね」

「ああ、良い事をしたのに叱ろうとしてしまった事への謝罪と取ってくれていい。受け取ってくれ」

 報酬が多すぎると思って声をあげたんだけどウーナさんとドランさんに頭を下げられて受け取ってほしいと言われてしまった。これは受け取らざる負えないね。

「じゃあ、お言葉に甘えて」

「これからはこっちが甘えるかもしれないがな」

「ダメだよドランさん。私達みたいな子供に甘えちゃ」

「はは、そうだな。これからはしっかりと町を守っていこう」

 ドランさんとウーナさんはそう言ってソルトさんの店から出ていった。

「おっと、そうだった。この間のドラゴンの素材で早速作っておいたぞ。ほら!」

「わ~!? きれ~」

 二人を見送ると、龍の鱗が赤く輝く剣が机の上に置かれた。シーナが輝く目でそれを見て声をもらす。
 ソルトさんはドランさんに見せないように出してくれたのかな。本当にそう言う所頼りになるな~。
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