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第一章 神様からの贈り物

第四十話 路地裏

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「よいしょっと。よくぞ来てくれました。アレク君シーナちゃん」

 僕らは男の歩いて行くままについていった。すぐそこの突き当りを曲がると壁に覆われた袋小路があって取ってつけたような屋根がついている。大きなベッドのようなソファーがあって、男はそこにどかりと座って話しかけてきた。

「そう、構えなさんな。察しの通り、俺は赤き月夜のリーダーケビンだ。よろしくな、アレク君シーナちゃん」

 お酒をラッパ飲みして、ケビンは自己紹介を始めた。大きな防止を取ると、赤毛の髪の毛が天に逆らうように立っている。帽子をかぶっていたのにあんなに立つものなのかな?

「さて、セッコを知っているよな。そいつにお前達を調べさせていた訳だが、少し暴走しちまったようだ。まずはそれを謝ろう。すまなかった」

 ケビンはそう言って首を垂れた。やっぱり、リーダーをやるような人は人格者なのかな?

「それでだな、アレク君、ザクロの作ったクランに入るそうだな。それをやめて、俺のクランに入ってくれ。そうすれば俺の次の席を用意するぞ。どうだ?」

 ケビンは座りなおして話し出した。自分のクランに入ってくれないかと言って来てる。でも、僕らはもう、ザクロのクランに入ることになってるからね。お断りです。

「お断りします」

「うん、ザクロに暴力を振るおうとしていた人のいるクランだしね。力で何かしてくるような人達のクランには入りたくないな~」

 僕はきっぱりと断った。すると付け足すようにシーナが言葉をつづけた。
 力で言う事を聞かせようとするなんて最低だもんね。

「ふっ、そうか、じゃあその力ずくって言うのを見せてやるよ。野郎ども出番だ!」

『応!』

 ケビンの声に呼応して野太い声が袋小路に響き渡った。僕らが入ってきた路地からぞろぞろとガタイのいい男達が入ってきて、ケビンが座るソファーの中からのそりと女の人が出てきた。誰もこれも体に傷のある歴戦の者達っぽい風貌だ。

「さて、もう一度答えを聞こうか?」

「えっと、お断りです。理由は」

「力で何とかしてくるようなクランはお断り!」

 ケビンの問いに僕がシーナに手で合図して答えるとシーナが理由を話していった。
 僕らの答えを聞いた男達はポキポキと骨を鳴らして、戦闘準備にはいった。

「武器は使わないの?」

「はんっ、こんな子供に武器なんて」

「馬鹿野郎! 全力で行け、セッコの話聞いてねえのか!」

 ドカン! ケビンの叱咤の終わりを告げるようにガタイのいい男の一人が壁に打ち付けられた。シーナの回し蹴りが見事に顔面を捉えた。結構、手加減を覚え始めているから大丈夫なんだけど、あんまり顔面を狙うのはやめようね。

「子供だと思ってなめるからだ! 全員抜剣しろ!」

 ケビンは頭を抑えて、全員に剣を抜くように指示を出した。
 ケビンの指示通り、クランメンバーは剣を抜いていく。その隙を見逃すはずもなく、数人が壁に打ち付けられて、伸びていきました。どの程度のランクの人達なのかわからないけど、弱いな~。全員ワンパンで終わっちゃうよ。

「情報通りの化け物だな・・。Bランクの冒険者が紙くずじゃねえか」

 どうやら、Bランクの人達見たい。腐っていくのはCランクとか聞いたけど、Bランクにもこういった輩がいるみたいだね。

『うにゃん!』

「あれ? カクル? 来たの?」

『うにゃにゃ』

「ああ、そうか、今は話せないのね」

 人が多いからカクルは猫語を話している。カクルは今日は僕の近くにはいなかったんだ。自分の縄張りを形成中らしい、猫の世界も色々大変みたいだね。ってカクルはカーバンクルなわけだけど。

「猫と仲良くお話か!」

「君と話すよりはいくぶんかいいよ!」

 大きなハンマーを振り上げてきた男に拳をねじ込んだ。ハンマーが男の頭に落ちて男は気絶していく、何を食べたらそんなに大きくなれるのかな、今度聞いてみたいものだ。

『マスタ~、手伝うにゃ』

「え? 別に大丈夫だよ」

『うにゃ、たまには人と争いたいにゃ~』

 カクルが参戦、猫パンチやキックで自分の十倍はある人達をなぎ倒していく。双方入り乱れ、大乱闘だな~。

「不甲斐ない奴らだ。おい! 路地裏の、出てこい」

「おう、全員下がれ、一騎打ちだ。受けるだろ!」

 乱闘を良しとしなかったケビンが大きな声を張り上げると上半身裸の大きな男が人垣をかき分けて現れた。

「こいつは[路地裏の狼]のリーダーグゼーノ。Aランクの実力と言われた冒険者だ。まあ、今はランクなしのチンピラだがな」

「親方そりゃないぜ。きたねえ仕事をやらせたのはあんたじゃねえか。まあ、恨んではいねえけどよ」

 どうやら、この人はケビンの友達みたいだね。上ではあるけどケビンは慕われているようだ。

「俺の部下達が世話になったようだな」

「ん? 覚えがないけど」

「ギルドから見える路地でチンピラに絡まれただろ。そいつらだよ」

「あ~、シーナにめっためたにされた人達のリーダーなんだね」

 町に来て、すぐの路地裏のチンピラさん達か、凄く弱かったから忘れていたよ。

「言ってくれる。あの中には俺の兄弟もいたってのに」

「それはご愁傷様。とても弱かったよ」

 上半身裸のグゼーノは涙ぐんで話してきたけど、同情の余地はないのでシーナが切って捨ててるね。

「兄妹の仇だ! 死にさらせ!」

『うにゃん!』

「ぐはっ! なんだこの猫は!」

 カクルが一騎打ちをかって出てしまった。カクルの手加減は完璧みたいで男は尻もちをつく程度ですんでる。見習わないとな~。

「この! 卑怯だぞ! 小僧、お前が出てこい」

「ん~、カクル?」

『うにゃにゃ』

 カクルは僕の問いに首を横に振って答えた。カクルがやりたいみたいだ。大精霊と手合わせ出来てグゼーノは幸せ者だな~。

「この野郎! 可愛い物に戦わせるとは俺よりもきたねえ野郎だ」

 グゼーノは頬を赤く染めてカクルを見つめた。
 強面な顔で頬を赤く染められても困ります。

『うにゃにゃ~!!』

「うが~~・・」
 
 カクルの連続ひっかきと猫キックが炸裂。グゼーノは最後の猫キックで人垣に飛び込んでいった。人垣も数人が気絶してしまった。
 猫にやられるリーダーに戦意喪失した人も多いみたいで人垣がどんどん減っていくよ。
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