テーラーボーイ 神様からもらった裁縫ギフト

カムイイムカ(神威異夢華)

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第二章 悪しき影

第六十三話 悩めるサーシャ

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「どうしたものかしらね・・」

 私はサーシャ、魔王様の四天王の一人、ミスラ様の右腕。
 アレク達の部屋から戻って自室のベッドに座って考え込む。
 なんで考え込んでいるかと言うと目的の人物が分かって、それがとてもいい子だったって事なのよね。

「嘘をつくことであんなに悩むなんてね。見ているこっちが悲しくなるわ」

 あの子達と遊んでいる時はとても楽しかった。嘘じゃないあの瞬間だけは本当に好きだったわ。
 うすうす気づいていたのよ、あの子達が嘘をついているってね。だって、あの子達嘘をつくのが下手なのよ。とくにアレク君はね。

「こんなアイテムバッグまでくれちゃうし・・・、魔王様なら何も危害を加えないと思うけれど、ミスラ様は欲しがるでしょうね」

 他の四天王に言ったとしてもミスラ様と同じか亡き者にすると言い出す人もいるでしょうね。そうなったら人族との全面戦争を意味するかもしれないわ。こんなアイテムバッグをプレゼントしてくる程の職人だもの、アレクはとてもすごい子なのよ。クードを倒したのも魔道具のような話をしていたしね。
 私がその話をなんで知っているのかと言うと、アレク達が依頼でいなくなってすぐに後をつけたのよ。すぐ隣の店に入っていくのを見て、煙突から中に入って聞いていたの。煙突の中だからハッキリとは聞こえなかったけれど、ドランと言うクードを倒したと言ってきた男がアレクの為に名乗ったと言っていたわ。
 それから魔法の話を聞いたの、アレクとシーナは類まれな能力を持っている事も分かってしまった。嘘をついていると思っていたけれど、本当に嘘をつかれてるってわかると悲しい物よね。

「魔王様に相談してからミスラ様に言った方がいいかもしれないわ・・」

 ベッドに寝っ転がってそんな結論が出た。魔王様なら、アレクを傷つける事はないと思う。これが一番最善のはずだわ。

「問題はこのアイテムバッグよね」

 こんな高価な物を持っていたら怪しまれる。だけど、そこら辺に置いておいたら騒ぎになるだろうし、アレク達は返品は受け付けないの一点張りだし。

「どうしたらいいのかしら?」

『お困りですにゃ?』

「えっ? 猫?」

 鍵のかかっていた部屋に猫が迷い込んできた。とても可愛らしい猫で勝手に私の手が撫でまわしているわ。

『マスターのアイテムバッグをどうしようか悩んでいるにゃ?』

「マスターって事はあなた、アレクの?」

『そうにゃ、従魔にゃ~』

 やっぱり、凄い子ねアレクは。

「あなたが持っていてくれるって事?」

『あんまり驚かないのにゃ』

「魔族の中じゃ従魔は結構普通の事なのよ。それよりもアイテムバッグを持っていてくれるの?」

 猫がつまらなそうにしているわ。でも、従魔は魔族の中では普通の事だからそんなに驚かないわ。それに、アレクなら一匹じゃすまないと思うしね。

「それで? 持ってくれるの?」

『いいにゃ。ゼットトゥースにちゃんと伝えるようににゃ~』

「馴れ馴れしいわね。あなた、アレクの従魔だからって魔王様を呼び捨てにしないでちょうだい」

 流石に魔王様を呼び捨ては聞き捨てならなかったから語気を強めた。猫のくせに生意気よ。

『にゃはは、何度かあった事があるからにゃ~。ゼットトゥースとは旧知の仲にゃ』

「旧知? そんなはずはないわ。ゼットトゥース様の知り合いは四天王や部下達だけのはずよ」

『信じられないのも無理はないにゃ。無理に信じてもらおうとも思わないにゃ。とりあえず、このアイテムバッグは預かっておくにゃ』

「・・・」

 この猫の言っている話が本当ならば、それなりの従魔なのでしょうね。これもゼットトゥース様に聞けばわかる事。今はアイテムバッグを預かってくれるという言葉に甘えるしかないわね。

「これは大切な物なの。絶対に無くさないでね」

『分かってるにゃ。マスターがこのアイテムバッグを渡したって事は本当にサーシャを信頼している証拠。大切に保管しておくにゃ』

「ゲート! あなたはまさか、大精霊?」

 アイテムバッグを渡すと、猫は黒い異次元の穴を召喚してるわ。アイテムバッグをその穴に入れたのを見て、私は猫の正体にたどり着く。

『にゃはは、自己紹介をしていなかったにゃ。僕はカーバンクルのカクルにゃ』

「カーバンクル・・・」

『にゃは、その顔が見たかったにゃ。ゼットトゥースによろしくにゃ~』

 尻尾をフリフリとご機嫌よく動かして、カクルは扉から出ていったわ。もう、アレクの周りは規格外がいっぱいだわ。
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