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第一章 始まり

第二十一話 ユアンとカテジナ

 ルークがモナーナとチームを組んでいた時、ルークの故郷リバーハブ村のカテジナ叔母さんは笑っていた。

「凄い凄いよ~、まさかルークが」

 ルークの仕送りに驚いているカテジナ、笑いが止まらずにベッドで悶えている。

「銀貨3枚とあんなタオルの手紙で金貨2枚だよ!。洗濯なんてさせてたのが馬鹿みたいだよ」

 ルークはモナーナ魔道具店で販売した売り上げの半分をもらっている、モナーナは一割でいいといったのだがルークはモナーナに感謝しているのでそれじゃダメだと断ったのだ。

 初日から今までの売り上げは金貨15枚に上るこれは少し小さな町の一か月ほどの税収と同等。ルークの商品はその全てが金貨一枚でも安いほどの商品、ルークは商品の価値をよくわかっていないので装飾品としての価値しか値段に加算していない。最高級の魔道具が銀貨数枚で手に入るのだから売れないわけがない。モナーナ魔道具店はいつも大繁盛している。

 それを鑑みるとルークの仕送り額は少なくも見えるが1ルークと言われていたのを見ていたカテジナは大いに喜んでいるのだった。

「まさか、あのルークがね~」

 感傷深くカテジナは呟いた。

 カテジナはユアンを見送った後、どうにかしてルークを早く外に出したかった。しかし、自分もお金が必要でルークを使って最低限の生活ができるお金を稼ごうと思った、それが洗濯だった。思いのほかルークは早く洗濯を済ませて当初考えていた金額を大きく超えて稼げた。お金が手に入ると今度はルークが邪魔になる。ルークを早く自分の元から旅立たせるにはどうするか考えた時、あの手紙を考えついたのだ。何とも卑しい大人だろうか。

「ユアンよりも仕送りしてくるなんてね~」

 ユアンは冒険者になり、幸先良いスタートを切ったが最初から金貨を得るような仕事はできていない。ユアンも下積みをしっかりしてから上がりたいといってFランクの冒険者からスタートしている。ルークと同じようにゴブリンを倒してEになり今はCランクまであがったがそれでもまだ銀貨を得る仕事だ。ユアンは先に村を旅立った、旅先のギルドで恩恵の儀をして周囲に[エタニティ]ユアンと言われるようになった、未来永劫ユアンを越える才能はないという意味らしい。

 ユアンの仕送りは銀貨が5枚、それでも周囲の人を驚かせたものだがルークの仕送りは更に周りを驚かせた。金貨を送る者など世界を見ても指折り数える程度であるもちろん平民の括りでだ、驚くのも無理はない。

「これで私は何もしないで暮らせるね~」

 カテジナはそう言ってベッドに横たわった。

 村で暮らすのなら金貨一枚で一年ほど暮らせる。仕送りは不定期だが毎回金貨以上が届く、なのでカテジナは悠々自適な生活ができるのだ。

 しかし、世の中そんなに簡単ではない。

「カテジナさん、お金入ったんでしょ?つけを払ってくださいよ」
「チィ、金の匂いを嗅ぎつけたね。今の私は機嫌がいいからね。はらってやるさね」

 カテジナは意気揚々と借金取りの前へ躍り出た。カテジナは二人の子供を一人で育てた、その為に借金をしていたのだ。それだけを見ればとてもいい人なのだが、大半の借金の理由は男であった。ユアンを可愛がる一方、男を買い遊んでいた。ルークに家事をやらせてカテジナは時折手伝う程度でほぼ遊んでいたのだ。

「あと金貨4枚分だからね。よろしく頼むよ」
「はいはい、また入ったらすぐに呼ぶからね~」

 カテジナはルークから届いた金貨を二枚渡した。こんな村で借金を金貨6枚するなどどうかしているカテジナだが、彼女も寂しかったのだ。ユアンはルークに取られてしまっていたし、夫は魔物に殺されてしまっていた。親しい物は誰もいなかったカテジナは男を買う事を覚えて溺れていったのだ。

 借金取りを笑顔で送り返したカテジナは家に入りベッドに横たわる。

「こんな事なら、もっと可愛がるんだったかね」

 少しの後悔を口にしたカテジナだがこれから得られるお金に頬を緩ませてほくそ笑んだ。






「え!兄さんがエリントスに?」

 場所は変わって王都リナージュ、ユアンはアレイストの手紙を読みながら驚きの声をあげた。 

「兄さんがリバーハブ村を出た・・・母さんが手放すなんて」

 ユアンの手紙を持った手が力無く垂れた。ユアンはルークがリバーハブ村を出ないと思っていた、カテジナが手放すはずがないと思っていたからだ。ユアンは自分以外の”女”にルークを取られるのを良しとしていない。

 ユアンは女である、ルークは鈍感にもそれに気付かずに接していた。ユアンはそれを知っていたが言わなかった、男同士の方が色々と都合が良かったのだ。

「兄さんに変な虫がついていなければいいけど・・」

 再度手に力を込めて手紙をぐしゃぐしゃにしたユアンは妬みを含んだ気を放つ。その気に気付いた魔法使いの少女がユアンに近づく。

「どうしたんですか?ユアン様」
「あ~・・なんでもないよ。アレイストさんから手紙が来てね。僕の兄がエリントスにいるようなんだ」
「え~ユアン様のお兄様が。どんな方なんですか?」
「僕の兄さんはね。とっても優しいんだ。僕の頭を撫でてくれて抱きしめてくれて、それで僕は兄さんの背中を流してあげて後ろから抱きしめると嫌がるんだけどそれがまた可愛くて」
「・・・」

 ユアンは女であるが周囲にはそれを隠している。ない寄りの胸はサラシのような薄い布で縛り鎧で隠している。その為、魔法使いの少女は想像している、ユアンとその兄の濡れ場を。頬を赤く染めた少女は立ちながら気絶していた。

「それでね。兄さんはとっても可愛いんだ・・・ってネネ、大丈夫かい?」
「は!お背中お流しします!」
「ハハハ、ネネは面白いな」

 我に返った魔法使いの少女ネネは、寝言を呟いた。ユアンに笑われたネネは帽子で顔を隠して誤魔化している。

 ユアンはパーティーを組んでいる。そのパーティは4人、ユアン、ネネ、シルフィ、ダネンの女パーティである。しかし、周りからはユアンのハーレムパーティに見えている。ユアンとネネは人族、シルフィは狼の獣人、ダネンはドワーフと人族のハーフだ。

「ユアン、いい依頼があったよ」
「本当?じゃあ行こうか」

 狼の獣人シルフィが依頼の紙を掲げて声を張り上げた。

 当分は王都での依頼の日々だ。エリントスに行きたい気持ちを抑えてユアンは戦っていく。

 兄さん、待っていてね。僕が必ず幸せにするから。

 ユアンはルークが稼げているというのは知らされていない、Eランクに上がったばかりという情報で考えている。ユアンが今のルークの所持金を知った時が楽しみだ。

 ユアンの旅は決意をより堅くしてスタートしていく。
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