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第二章 黒煙

第三話 旅立ち

「ルーク準備できた?」
「うん、行けるよ~」

 とうとう僕たちはエリントスを旅立つこととなった。店の心配がなくなったからモナーナも嬉しそう。

「短い間でしたがありがとうございました」
「こちらこそ不束な子をもらってもらってよかったよ」
「ちょっとスリンさん」

 スリンさんの揶揄いにモナーナは顔を真っ赤にして否定してる。

「モナーナお姉ちゃん、ルークお兄ちゃんと結婚するの?」
「そうだよ~。今度ワインプールで挙式をするんだよ~」
「スリンさん!」

 ルンちゃんの疑問にスリンさんがのっかって更に揶揄っています。微笑ましいな、だけど、こんなやり取りも隣町に言ったら見られないのか、何だか感慨深いです。

「ニャムにも挨拶していってあげてね。一番悲しんでるんだから」
「そうだよね。ギルド職員のニャムは一緒に行けないもんね」
 
 ニャムさんも行きたいとギルドマスターに泣きついていたんだけどダメでした。ギルドも人手不足だからニャムさんに抜けられると困るんだってさ。

「・・・・」

 ギルドに着くと不貞腐れて頬杖をついているニャムさんがいた。機嫌が悪いのは見てわかるほどのその様子を見て僕は怖気づく。

「なんにゃ、惨めなニャムを見に来たにゃ?」

 不機嫌なニャムさんはそう言ってモナーナと僕を交互に睨んだ。

「今生の別れでもないんだから、大げさだよ」

 僕の言葉にモナーナとニャムさんはヒソヒソと内緒話をし始めた。

「ルークは分かってないんだよね」
「そうにゃ、ルークじゃ分からないにゃ、モナーナはルークに変な虫がつかないようにしてにゃ」
「分かってるよニャム、今度会う時には決着をつけましょう」

 女の子二人で笑いながら握手をして話してる。内容はわからないけどきっと友情的な話だと思う。微笑ましいね。

「じゃあニャムさん、行ってきますね」
「行ってらっしゃいにゃ」

 ニャムさんは泣きそうな顔で僕らに手を振った。僕もうるうるしちゃった。

 僕はこのエリントスで自分を見つめることが出来た。常識も少しずつ分かるようになって相場も分かってきたのでこれからは目立たないようにすることが可能だ。ふふふ、次のワインプールの街ではひっそりと暮らして冒険者ランクもゆっくりとあげるぞ~

 ルークは無理な目標を立てていくのだった。ルークは何かするたんびに目立ってしまう、ひっそりと暮らす事は不可能なのだった。

 ルークとモナーナはエリントスを旅立った、もちろんメイとミスリーも一緒に。ワインプールではルークはひっそり暮らせるのだろうか。






 一方その頃、盗賊を返り討ちにした黒煙龍は舌なめずりをして盗賊のアジトでくつろいでいた。

「食べたりんが少し溜飲は下がったかの」

 盗賊のアジトは山に出来た横穴だった。深さはないが30人程が寝れるほどの広さはある。扉をつければ雨風はしのげるだろう。

「さて、これからどうしようかの。目の傷はこの盗賊の付けてた眼帯で隠せるがいかんせん、幼女の姿しかなれんからの」

 黒煙龍は悩んだ。幼女が眼帯をつけているだけで心よい人間達は声をかけてくるだろう。あまり大っぴらに騒がれると正体がバレかねないと思うのだった。傷を隠さないともっと騒ぎになるので現在は眼帯をつけるのが最善だと落ち着くのだった。

「致し方ない、眼帯で我慢じゃな。欠損を治すほどの回復魔法やポーションの使い手はいるだろうか。脅迫して手に入れるしかないな。そうしなければ、あの忌々しい聖属性の小僧を倒せんからな・・・忌々しい、この目の仇は取ってやるぞ」

 黒煙龍は歯軋りをしてユアンを思った。彼女は復讐を思う心を身に纏いワインプールへと歩いて行く。

 しばらく歩いて行くと馬車が隣を走っていき少し走っていった馬車は動きを止めた。

「ややや、お嬢さん。ここら辺の盗賊に襲われたのかい?」

 この街道をしょっちゅう利用していた商人が馬車から降りてきて盗賊の外套を目深に被った黒煙龍が変身している幼女に声をかけてきた。とても心配しているようでおろおろと狼狽えている。

「そうなの・・・おとうさんとおかあさんはころされちゃった。クコをにがすために・・・」
「お~お~、そうかそうか。おじちゃんの馬車に乗りなさい。ワインプールの冒険者ギルドにここいらの盗賊の討伐依頼をだそう。それでお父さんとお母さんの仇をとろう」
「ありがとうおじさん・・・うえ~ん」 

 黒煙龍は演技もお手の物のようで商人を懐柔していった。黒煙龍は身分証明もなしにワインプールへと入っていく、それほど目立たずに。商人と仲良くなり衣食住に困ることはなくなった。

 




 僕らはエリントスからワインプールへの街道を歩いて行く。エリントスからワインプールは歩きだと一週間以上かかってしまう。三日程来た所でメイさんに止められて辺りを捜索することになった。何をそんなに怯えているのかメイさんは強張っていた。

「この着地あとはドラゴンの類いのものです。最近ドラゴンが目撃されたのは三つ山を越えた先の黒煙龍だけです。こちらの方角に飛んでいったとは聞いていましたが・・」
「黒煙龍」

 確かユアンが撃退したっていう龍だったよね。それがここに着地したって事・・・怖いな~。

「聖属性にかなり弱くて勇者の素質を持つユアン、ルークの弟さんに負けて逃げてきたようですね。確か目を負傷しているとか」
「ウニャ~」

 事細かにメイさんは説明していく、その時ミスリーが茂みから出てきて声を上げた。

 ミスリーはこっちといわんばかりに首を振ったので僕らはその後をついていった。案内されていくと、そこには血のりがべったりとばら撒かれた洞窟についた。

「黒煙龍は体力回復の為に盗賊を食べたようですね。しかし、妙ですね。反撃した様子がありません。これだけ狭い空間でこんな長物を振り回したら傷が出来るはずですがありません。攻撃する暇もなかったとすると全員がそうなるはずですが数人がその状態です。まるで油断して武器を出せなかったような感じです」

 メイさんは今までの経験で推測を話していく。僕には全然わからないけど、確かに全員武器を持てなかったのなら黒煙龍に怯えてしまって動けなかったと見れるかもしれない。う~んよくわかりません。

「黒煙龍を目の前にして油断はしないよ。ドラゴンが目の前にいるんだよ」
「モナーナさんの言う事は確かです。ですから普通は恐怖に怯えて体が動かないのが普通ですよね。取りあえず、熊や狼に襲われたのではないのはハッキリといえます」
「それはなんで?」
「こんなに血の匂いがあるのに狼が来ていないんですよ。それはここに黒煙龍のマナが残っているって事です。少なくともドラゴンクラスの魔物のマナに怯えてこれないといった所でしょうか」

 へ~メイさんって凄いな。こんな短時間でそんなこと分かっちゃうんだ。これはスキルとかそう言った類いの能力じゃないからやっぱり経験って大事だよね。

「見事に死体がないですね」
「そう言えばそうですね」

 洞窟の中も見てみたけど死体が全くない、血がべっとりとついているだけでその元が無い感じ。

「ドラゴンってデカいんでしょ、こんな狭い穴に入れるの?」
「そうですね・・・やはり黒煙龍の可能性が大きくなっていますね」

 メイさんは顎に手を当てて考えこんでいる。この狭さがヒントになったようです。僕は何のことだかサッパリ。

「黒煙龍は煙の龍、煙が本体なので形を変える事が可能なんです。目や耳といった機能を持っている部位は回復できないので遭遇したら積極的に狙いましょう」
「という事は、人型になってここに入ったって事ですか?」
「そうですね。そう言う事になります」

 ええ~、じゃあ人型になって街に入りこんでしまったら大変じゃないか。と心配していると、

「街には身分証明のカードが必要です。そのカードを作る時マナを注ぎますよね、その時に魔物だった場合カードが真っ赤に染まるんです。ですから街には絶対に入れないでしょう」

 へー、ってさっきから感心してばかりです。魔物のマナには拒絶反応を起こすカードだったんだね。それなら安心だね。

「この街道の盗賊がいなくなったのは良い事ですが黒煙龍が現れたとなると大変な事ですよ。とにかくワインプールへ向かってそこからエリントスのギルドにも連絡しましょう」
「ニャムにも着いた事言わないとね」
「そうだね」

 メイさんの真剣な言葉に僕とモナーナはランラン気分で答えた。メイさんは呆れて頭を押さえています。

 僕らはうなだれたままのメイさんと三人でワインプールへの道を歩いて行きます。
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