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第二章 黒煙

第四十二話 ヒーロー

 ラザラさんが人質になってしまい僕らはにらみ合う形になった。これは完全に敵対する体制だね。メイドや執事も僕らにナイフや剣を向けてきている。

「この状況でも私の言う事に従わないか。ではこの女にこれをつけてしまうか」

 拮抗した状態を嫌ったルザーが取り出したのは首輪のようなもの。それを見てユアンが顔を歪めた。

「あれは隷属の首輪・・」
「隷属の首輪?」

 ユアンの言葉に僕は首を傾げる。隷属の首輪ってどういうものなのだろう?隷属と言うだけあって奴隷紋と同じような物なのだろうか。

「ふふ、ユアン君は流石に知っているようだね。その通り、これは隷属の首輪さ。奴隷紋よりも強力な闇魔法によって対象を思いのままに使役できるのだよ。主に囚人に使われる物さ」
「・・・」

 闇魔法と聞いて僕は無言で成り行きを見守った。これはもう、勝ち確定ですね。

「さあ、ラザラ、このナイフでルーク君を傷つけるのだ」
「はい、ご主人様」

 首輪をつけられたラザラさんは目が虚ろで、ナイフを持たされるとすぐに僕たちに近づいてきた。

「さあ、やるんですよ」

 ナイフが振り上げられてルザー達は歓喜の笑みを浮かべる。

「ルークさん・・・」
「もう大丈夫ですよ」
「な、どういう事だ!なぜ隷属の首輪が効かない?」

 ラザラさんは意識を失って僕にもたれかかった。闇魔法スキルを7にしていたのでどんな闇魔法でも解除できちゃうんだよね。人質が自分で近づいて来てくれるのは助かるので様子を見ていたんだ。ユアンとモナーナにも合図していたので手は出さないでくれていました。

「隷属解除の魔道具を持っていたのか。そうだ、そうに違いない」

 現実を受け入れられない様子のルザー。何だか凄い狼狽え様です。

「そうですわよね。隷属の首輪を解除できるなんてスキル6以上ですものね」

 魔道具としてならば時間をかければそう言った強力な魔法は手に入るんだけど、普通の魔法でこう言った事ができるのは高位の魔法使いだけなんだってさ。魔道具を持っている体でいこうか。

「人質は返してもらったのでもうかえりますね。孤児院は経営しますので」
「ちょっと、ルーク?」
「兄さん、もう切っていいんじゃ?」
『・・・』

 僕の言葉にその場にいた人達がみんな唖然としています。モナーナに止められて僕は足を止めました。そして、ユアンが物騒な事を言っています。あまり血を見る事はしてほしくないのだけどね。
 ここであった事はなかった事にして孤児院経営に専念したかったのにやっぱりダメかな?

「ぐぬぬ、この私をここまでコケにして帰れると思っているのか」

 ルザーの声に反応したメイドや執事が僕らの前に立ちふさがる。忠誠心が強いなって感心しちゃうよ。

「ルーク君、僕らはワティスの事も調べていたんだよ。まさか、黒煙龍を街にいれてしまうとはね」
「ふ~ん、ワティスさんの言っていた人影って言うのはやっぱり、ルザーの手先だったのか」

 貴族に知られているとなるとワティスさんが危ない。貴族に逆らってしまうと商売がしづらくなる。ワティスさんならそれでもうまくやるかもしれないけど、そうなるとクコの行動が心配だ。邪魔するものは消し炭になってしまうんじゃないかな?

「ワティスを心配するのなら大人しくしろ。そうすればなかった事にしてやる。忠誠は誓ってもらうがな」

 それってほぼ奴隷みたいなものじゃないかな?いい加減ユアンの殺気が凄いんだけど。

「あなたのような貴族がこの世界をダメにするんだ。何だか王都の貴族と話しているみたいで腹が立つ」

 ユアンの目が黒く澱んできた。貴族に何か恨みでもあるのかな、すっごい殺気だよ。確かに僕もいい加減腹が立つけどそんなに殺気は出してないよ。

「ルザー伯爵、ちょっと待ってもらえるかな?」

 入口の扉が開いて外からの光で巨躯の男の人のシルエットが映る。ツカツカと歩いてくる人の顔が見えてくるといつも見るあの人だった。

「「「ダリルさん!」」」

 僕とモナーナとメイさんの声がハモル。白い聖騎士の服を着て現れたのは紛れもなくダリルさんだった。あの服は僕でも知っている王都の近衛兵の服です。近衛兵の服には襟に階級が記される。その階級で順位が決まるんだけどダリルさんの着ている服はゼロだった。ゼロ何て言う階級は聞いた事がないんだけど、

「その服、それにその階級は・・・まさか、[豪槍]なのか」
「昔の話ですね。今はしがない宿屋の亭主です」

 ルザーはすっごい狼狽えています。僕達もポカーンと眺めるばかりで何が何やら訳が分かりません。とにかく、今のダリルさんはすっごくカッコいい。

「歴代一位と言わしめた豪槍が何故ここに?」
「私は引退してから色々な街に住みました。そのどの街もいわくつきの領主が治める街でした。そのほとんどの領主を懲らしめて、やっと平穏になったと思ってこの街に住み始めた。そうしたら、また碌でもない領主の街だった。という事だ」

 ダリルさんが喋っていくと部屋が寒くなっていく、メイドや執事、ユーラやルザーは体をさすりながらダリルを見ている。恐怖の対象から目が離せないのか瞬きすら忘れているようで一切目を閉じていない。

「この事は王に知らせている。すぐに後任が来るだろう」
「・・・」

 ダリルさんの言葉にルザーはポカーンとしている。ユーラは腰砕けになり座り込んでしまった。

「私は、私は何もしてないわ。この人が勝手に」
「今更何を言ってる。お前が装飾品が欲しいとか言って金が要るようになったんだろ」

 醜い二人の言い合い、何とも言い難い空気が部屋を覆っていった。呆れたようにメイド達はいなくなっていった。雇われの彼らは裁かれないで済むだろうけど一定の罰がかせられると思う。
 しかし、驚きました。あんなに優しいダリルさんが近衛兵のトップだったなんて、人に歴史ありって本当だね。

「皆さん、隠していてすいません」
「いえいえ、そんな頭を下げないでください」
「最初から隠さずにいればこんなことにはならなかったのに」

 ダリルさんが深くお辞儀をして僕らに謝ってきた。確かにラザラさんが危険な目にあわなくて済んだかもしれない。ダリルさんは正体を明かしたくなかったんだと思うんだ。僕もその気持ちはわかるもん。
 貴族を裁くことが出来るほどの人が目の前に現れて助けを頼まない人はいるのだろうか、僕は別に頼まないけど、それは僕に力があったからであって持っていなかったら頼んでいたかもしれない。

「ルザーの後任はだれが?」
「今探しているのですが、たぶん無理だと思います。なので私が貴族になり替わりこの街を統治することになると思います」
「「「ええ~」」」

 またまた三人で大きな声を上げてしまった。その声にルザーとユーラもビクッとしちゃっています。
 まさか、ダリルさんがワインプールの街の領主になってしまうなんて思いもよらなかったから。でもこれで一安心だね。しかも、ダリルさんが治めてくれれば色々なアイテムを卸していいかもしれない、むふふ。

「もしかしたらですよ。とにかく、あの二人を連行します」

 僕が喜んでいるとそれを見て少し顔を引きつらせるダリルさん。そんなに嫌がらなくていいのに。
 
 ダリルさんが手で合図を送ると外からフルプレートの鎧を着た人達が十数人入ってきてルザーとユーラの両腕を掴み外の馬車へと入れていった。馬車は罪人が入る鉄格子の馬車で惨めな姿でした。

「あの二人は不正な取引をして、金を稼いでいました。街の税収にも手を出していて私の後輩からも用心するようにときていたんですが尻尾を掴ませないでいたんです。そこへルーク君たちが来てくれて色々と引っかき回してくれて。今回は本当にありがとうございました」

 再度深々とお辞儀をしてきたダリルさんに僕たちはタジタジ、今でも信じられないよ。あのダリルさんが近衛兵だなんて。

「後は私がやっておきますので。皆さんは先に嗜む子牛亭へ帰っていてください。この事はカルロに内緒ですよ」

 ダリルさんはウィンクして話してきた。強面の顔に似合わなかったので僕らは無言で外の馬車へと入っていき馬車は嗜む子牛亭の方へと走っていく。馬車の中にはミスリーが丸くなって寝てました。この子は最近、怠けています。今度、討伐にでも行きましょう。
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