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第二章 黒煙

第五十五話 エルフ

「お姉さん、エルフさんなの?」
「エリシーナお姉ちゃんのお母さん?」
「エリシーナ?エルフがいるのですか?」

 子供達が群がっていて声が聞こえてくる。どうやら、訪問者はエルフさんのようです。領主の館にいた子供達の中にはエルフが一人。実質、うちにいるエルフはエリシーナちゃんとその子だけ。一人はハーフエルフだけどね。
 エルフの人がうちに何のようなんだろう?

「あなたがルークさん?」
「はい」
「急な訪問失礼した。私はエルフの狩人、エル・ルナ。ルナと呼んでくれ」
「あ、は~?」

 僕に気付いた綺麗な緑髪のルナさんは僕に深くお辞儀をして自己紹介をしてきた。深くお辞儀をしてきたので僕は首を傾げている。初対面にしてはかしこまり過ぎなような気がしたんだけど、この後の話で色々と理由が分かった。

「取りあえず中に入ってください。ここじゃ色々と」
「あ、そうですね。子供も多いし。しかし、いいのでしょうか。私なんかがこの建物に入って?」
「え?はい、大丈夫ですよ」

 ルナさんは何故か頬を赤くして畏まってしまった。外で立ち話も何だし、人の目も結構あるので中に入ってもらおうと思っただけなんだけど?

 ティリス様達と話した食堂に座ってもらう。そこにたどり着くまでもずっと建物の内装を見ていたルナさん、目が輝いていて芸術品を見ているかのようにうっとりとしている。

「それで今日は何のようで?」
「ルークさんは世界樹を知っていますか?」
「世界樹ですか?」

 確か、エルフが結界で守っているとかいう代物だったかな?諸説あるからよくわからないんだけど。

「あなた達の生みの親とか、世界のマナを守っているとか言われている物ですよね。僕は見た事ありませんけど」

 ユアンに聞かせた英雄の話とかでそんな話があった。エルフは世界樹から生まれる。だから、魔力保有量が高くて魔法が強いって言われているって書いてあった。それも、幾つかの話の一つ、世界樹は地上になくて空を飛んでいるとか、エルフが隠しているとか、憶測で色々と話はあるけどね。

「見たことない・・・本当にそうでしょうか?」
「え?」

 ルナさんが僕へと顔を近づける。僕の目をじっと見つけてきて僕は恥ずかしくなってしまってそっぽを向くと首を掴まれて正面を向かされてしまう。

「じっとしてください。私はあなたの過去を見ているんです」
「過去?」
「正確に言うと記憶ですね。私は夢見のスキルを持っているのです」

 数分、僕の目をじっと見つめてくるルナさん。傍から見たら勘違いされそうだけど、大丈夫だろうか?

「エルフのお姉ちゃんとキスするの~?」
「私もルークお兄ちゃんとキスしたい~」

 おませな女の子達がそんな事を話しているけどルナさんは構わずにずっと見てきている。これは情操教育的にも悪いね。止めよう。

「ルナさん、すいません。子供達もいるので」
「あ、すいません。職務に夢中になり過ぎましたね。ですが、あの木は確かに世界樹になっていて」
「世界樹になっていて?」

 何の話だろう。全然見当もつかない。

「私達、エルフは木と通じ合う事が出来ます。それは世界樹でも同じ。その世界樹に聞いたのです。あなたをこの地に植えたのは誰ですかと・・・」
「ちなみにどこですかそれは?」
「私達はそこをゴブリンの山、と呼んでいました。ゴブリンが占拠していた緑豊かは山です。中腹に平らな土地があり、そこにゴブリン達が住んでいましたが少し前に滅んだようです。そして、そこには五つの木が一つに同化して世界樹になっていたのです。強い結界を作り、魔の者を退ける強力な物です。ぜひ私達、エルフはそこに住みたいと思ったのですが。世界樹は創造主に聞いてくれと言われて」

 ・・・木と話せるのって困るね。まさか、あのレインツリーが世界樹になっていたなんて。っていうか本当にあのレインツリーなのかな?もうちょっと話を聞こう。

「世界樹がそんな簡単にできるものなんですか?」
「出来るわけないですよ。それに人が作ったなんて信じられなくて、夢見のスキルを持っている私がそれを調べに来たのです。そうしたら、確かにあんたが苗を植えている記憶が見えました。ですがその記憶は一か月も経っていないじゃないですか、それに何ですかあなたの能力は・・」

 ギクッ、色々見られてしまったようだ。しからばこの人を亡き者に・・・って出来るわけないので口止めしないと。

「ルナさん、それ以上は秘匿してください。人族の人達に知られると色々面倒なので」
「記憶を見ているのでそのくらいは心得ています。それよりも記憶を見た事を怒らないのですか?」
「見てしまったならしょうがないですし、エルフの代表としての責任で強硬したならしょうがないかなって」
「・・ルークさんは変わった方ですね。人族にはもったいない」

 ルナさんに秘匿を約束すると頷きながら納得してくれた。僕の記憶を全部見ているわけではないみたいだけどあまり広めてほしくないからね。

「それで・・エルフはあの土地に住んで大丈夫でしょうか」
「あそこはゴブリンが住んでいたわけだから誰の土地でもないと思います。なので大丈夫じゃないですかね?」

 ルナさんのお願いに僕はなんとなく答えた。土地の権利はお金持ちの物だから、何とも言えないけどあそこはゴブリンが占領していたから誰のものでもないはずなんだよね。だから、大丈夫でしょう。

「でしたら世界樹に話してほしいので一緒に来ていただけますか?」
「ええ、今からですか?今帰ってきたばかりなのですが・・」
「ぜひ!」

 ええ~、すっごい積極的に懇願されています。両手で僕の手を包んでお願いしてきています。こんな所モナーナに見られたら誤解されてしまう。

「その人とはどういう関係ですかルーク」
「・・・モナーナ...さん」

 ティリス様達を案内していたモナーナとニャムさんが怖い顔をして覗いていました。顔を近づけてきていたルナさんを誤解したようだ。思っていた通り誤解されてしまったようです。
 二人に色々聞かれた結果、一緒にレインツリーの木に会いに行くこととなりました。まさか、五本のレインツリーが一つになって世界樹になってしまっていたとは驚き。僕はため息をつきながらも街の外に行くことにしました。
 何故か、ティリス様達もついてくることになってしまった。なぜ?
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