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第五章「ムーンライトセレナーデ~狂騒を掻き消す運命の再会~」2
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これを首に掛けていれば入場できるというカードが入ったネックストラップを首に掛けてホテルへと入っていく。
高いヒールの靴を履いていると危ないので、私はお気に入りのピアノシューズを履いて今日は過ごしている。これなら滑りづらく綺麗なドレスにも違和感なく見せられているはずだ。
盲導犬を引き連れて現れたのはもちろん私だけで受付では私の姿を見て混乱した様子だった。
途中から坂倉さんが割って入り、仲介してくれたおかげで私は無事にBGMの掛かった大きなホールに入場した。
上品さが漂う場違いな空気を感じながら案内を受ける。音の響き方で何となくホールの大きさは想像できた。随分と広くどういう雰囲気の会場か全体像を想像するのは難しかった。
案内された席に立ちシャンパンで乾杯をした後、私はフェロッソを連れて行かれたこともあり静かにしていた。大勢の来賓者が来場している場では危ないからとスタッフがどこかで預かってくれているらしい。こんなところで意地を張って無理を言っても仕方ない。私は黙って従った。
場違いだと思いながら目立たないよう椅子に座って時間が過ぎるのを待つ。
小柄で高級なアクセサリーも付けない私は存在感は薄いと自負している。
ガヤガヤと騒がしい雰囲気の中、何人かに話しかけられたが私は無難に愛想を振りまいて接し、相手から離れてくれるまでやり過ごしていた。
そんな中、私はミスコングランプリ連覇を続ける涼子さんに話しかけられた。
「調子に乗ってこんなところまでのこのこやって来て。
随分と井龍にちやほやされて、気に入られてるじゃない」
声色から連覇を続けている自信のようなものが滲み出ていて、いつもの調子だった。
「あっ、涼子さん、おめでとうございます。
気に入られてるんですかね……私が目が見えなくて右往左往してるから、気を使ってくれてるんだと思いますけど」
「何を言っているのよ、自覚がないのは重症よ。
まぁ、貴方が四位になるなんて想像してなかったけどね。
運も味方にしていると言えるけど、その度胸と天然さは立派なものだわ」
涼子さんはそう悪態をついて、私にローストビーフの載ったお皿を渡してこの場から離れて行った。
嫉妬されているのだろうか……。
涼子さんの前で自分が気に入られていると言えるような勇気は私にはない。
きっと、あの人はああいう性格をしているけど、坂倉さんのことを真剣に好きだと思うから。
不器用な真面目さなのかは分からないが、私に対しては敵対心を隠さない様子だった。
最初は何が載っているのか分からなかったが、涼子さんから渡されたローストビーフは高級感のある美味しさだった。
これは普段味わえないジューシーさと柔らかさで、食べ応えがあって頬が落ちるかと思ってしまった。豪華なディナーが出るホテルというのは嘘ではないようだ。
そうして過ごしていると突然にBGMが変わり、よく聞いたことのあるようなパーティーBGMが流れ始めた。
話し声が少なくなり、一気にモダンの大人の雰囲気が漂い始める。
「何が始まったかわかるかい?」
坂倉さんが隣までやって来て私に囁くように聞く。酔っているというほどではないが、随分と飲酒しているのが酒臭い吐息ではっきりと分かった。
返事できず黙ってしまう。何が始まったかなんて初めてこんな豪華なパーティーに参加する私に当然分かるはずがなかった。
「社交ダンスだよ。ホールの奥はダンス会場になってる。
どいつもこいつも綺麗に着飾って来て、それはパーティーらしい光景だ。
恒例なんだよ。こうして親睦を深めるのが」
学園祭の打ち上げパーティーと言っていたからもっと学生らしい催し物がメインだと思っていたのに、そういう想像とはかけ離れていて私はどう反応していいか分からず空返事をするしかなかった。
「さぁ、俺たちも行こうか。四位に輝いたファイナリストが席に座ったままいるとあっては一大事だ」
「そんな……私、ダンスを踊ったことなんてありませんよ」
「気にしなくていいさ。ほとんどが学生だ。まともに踊れる奴なんてこの場にいない」
そんな失礼なことはないだろうと思ったが、坂倉さんの勢いに負けて私は席を立ち、手を繋いで会場奥のダンスホールまでエスコートされた。
高いヒールの靴を履いていると危ないので、私はお気に入りのピアノシューズを履いて今日は過ごしている。これなら滑りづらく綺麗なドレスにも違和感なく見せられているはずだ。
盲導犬を引き連れて現れたのはもちろん私だけで受付では私の姿を見て混乱した様子だった。
途中から坂倉さんが割って入り、仲介してくれたおかげで私は無事にBGMの掛かった大きなホールに入場した。
上品さが漂う場違いな空気を感じながら案内を受ける。音の響き方で何となくホールの大きさは想像できた。随分と広くどういう雰囲気の会場か全体像を想像するのは難しかった。
案内された席に立ちシャンパンで乾杯をした後、私はフェロッソを連れて行かれたこともあり静かにしていた。大勢の来賓者が来場している場では危ないからとスタッフがどこかで預かってくれているらしい。こんなところで意地を張って無理を言っても仕方ない。私は黙って従った。
場違いだと思いながら目立たないよう椅子に座って時間が過ぎるのを待つ。
小柄で高級なアクセサリーも付けない私は存在感は薄いと自負している。
ガヤガヤと騒がしい雰囲気の中、何人かに話しかけられたが私は無難に愛想を振りまいて接し、相手から離れてくれるまでやり過ごしていた。
そんな中、私はミスコングランプリ連覇を続ける涼子さんに話しかけられた。
「調子に乗ってこんなところまでのこのこやって来て。
随分と井龍にちやほやされて、気に入られてるじゃない」
声色から連覇を続けている自信のようなものが滲み出ていて、いつもの調子だった。
「あっ、涼子さん、おめでとうございます。
気に入られてるんですかね……私が目が見えなくて右往左往してるから、気を使ってくれてるんだと思いますけど」
「何を言っているのよ、自覚がないのは重症よ。
まぁ、貴方が四位になるなんて想像してなかったけどね。
運も味方にしていると言えるけど、その度胸と天然さは立派なものだわ」
涼子さんはそう悪態をついて、私にローストビーフの載ったお皿を渡してこの場から離れて行った。
嫉妬されているのだろうか……。
涼子さんの前で自分が気に入られていると言えるような勇気は私にはない。
きっと、あの人はああいう性格をしているけど、坂倉さんのことを真剣に好きだと思うから。
不器用な真面目さなのかは分からないが、私に対しては敵対心を隠さない様子だった。
最初は何が載っているのか分からなかったが、涼子さんから渡されたローストビーフは高級感のある美味しさだった。
これは普段味わえないジューシーさと柔らかさで、食べ応えがあって頬が落ちるかと思ってしまった。豪華なディナーが出るホテルというのは嘘ではないようだ。
そうして過ごしていると突然にBGMが変わり、よく聞いたことのあるようなパーティーBGMが流れ始めた。
話し声が少なくなり、一気にモダンの大人の雰囲気が漂い始める。
「何が始まったかわかるかい?」
坂倉さんが隣までやって来て私に囁くように聞く。酔っているというほどではないが、随分と飲酒しているのが酒臭い吐息ではっきりと分かった。
返事できず黙ってしまう。何が始まったかなんて初めてこんな豪華なパーティーに参加する私に当然分かるはずがなかった。
「社交ダンスだよ。ホールの奥はダンス会場になってる。
どいつもこいつも綺麗に着飾って来て、それはパーティーらしい光景だ。
恒例なんだよ。こうして親睦を深めるのが」
学園祭の打ち上げパーティーと言っていたからもっと学生らしい催し物がメインだと思っていたのに、そういう想像とはかけ離れていて私はどう反応していいか分からず空返事をするしかなかった。
「さぁ、俺たちも行こうか。四位に輝いたファイナリストが席に座ったままいるとあっては一大事だ」
「そんな……私、ダンスを踊ったことなんてありませんよ」
「気にしなくていいさ。ほとんどが学生だ。まともに踊れる奴なんてこの場にいない」
そんな失礼なことはないだろうと思ったが、坂倉さんの勢いに負けて私は席を立ち、手を繋いで会場奥のダンスホールまでエスコートされた。
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