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第十二章「brave new home」2
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冬の季節の間は京都の街並みを歩くことが多かった。
有名な観光地にも向かい、往人さんがスケッチする横でゆったりと風情を楽しみながら過ごすことが多々あった。
その中でも印象的だったのが”雪月花の三庭苑”の一つ、雪の庭とも言われる顕本法華宗総本山、妙満寺だ。
畳の部屋から覗く魅惑の庭園の雪景色はあまりの美しさにドラマの世界に迷い込んだかのようだと言う。
”雪の降る季節はありのままに真白に染められた姿が印象的で美しい”と往人さんは夢中になってスケッチをしていた。
往人さんの母親が生前、お寺の住職と親しくなさっていた縁で、一般の人が入れない時間帯に三庭園の風景画を特別に描かせてもらっていたことがあり、その頃はまだ小さかった往人さんも一緒に過ごしていたみたい。
往人さんの絵画の原点にはやっぱり母親がいる。
恩愛を抱く母親との足跡を辿るのもまた、往人さんにとって大切なことなのだ。
そのことを改めて実感しながら、私は往人さんに猫のように身体をスリスリして甘えながら寒い日も付き合った。
「この厳しい寒さを耐え凌げば、また新しい春がやって来る。
その前にこの雪化粧に彩られた庭園をキャンバスに収められてよかったよ」
母親との思い出を心から慈しむ往人さんは甘く囁くようにそう私に言った。
「四季は繰り返される。そうして私達の思い出は積み重なっていくのね」
「その通りだな、郁恵も風情のある言い回しをするようになった」
「往人さんと過ごす時間が、私を変えてるんだよ」
時間という普遍的な営みを感じるための一つの習慣。
それが暦には込められている。
避けることの出来ないこの季節の寒さを身体いっぱいに刻み込み、私は往人さんと凪いだ風に乗って新しい春へと向かっていく。
「ねぇ……往人さん。ずっと考えていたことがあるの」
ある時、私はそう話を切り出し、もう一歩先へ進んでいくために心に秘めていた願いを口にした。
予感めいたものを感じていたのか、往人さんはそっと口元を緩め、優しく微笑む。
盲目の私にも分かる、胸の鼓動が高鳴る私と同じように往人さんは確かに私を見て、幸せを噛み締めていると。
「俺も同じことを考えていたよ、そろそろ潮時かなって思ってた。
本当に長い間、母さんが亡くなってから世話になってた。
郁恵となら大丈夫だって思えるよ、一緒に暮らそう」
「私もね……これ以上迷惑は掛けられないなって。私には往人さんがいて選べる幸せがある。それはね、とても幸福なことだって思うから。
だから、もう籠の中の雛鳥でいるのは止める、私もいずれ親鳥になりたいから。
ねぇ、どこまでも一緒に支え合って、歩いて行きましょう」
私達は繋いだ手をギュッと強く握りしめ、二人手を取り合って同棲をすることに決めた。
怖いことだって、辛いことだって、苦しいことだって、一緒に共有していきたいって思った。
楽しいことも、男女の営みも、相手を想いあう大切さも、全部分かち合ってきたから。
「そうと決まったら、早く根城を探さないとね」
ワクワクしてくる心情そのままに私は往人さんに話しかける。
「一緒に住む物件だろ? まぁ、大学から遠くならない範囲で探していこう」
私は寮を離れる決心をして、往人さんは師匠の家を離れる決心をした。
それはとても大きな転機で、私達は大きな一歩を歩み出そうとしていた。
有名な観光地にも向かい、往人さんがスケッチする横でゆったりと風情を楽しみながら過ごすことが多々あった。
その中でも印象的だったのが”雪月花の三庭苑”の一つ、雪の庭とも言われる顕本法華宗総本山、妙満寺だ。
畳の部屋から覗く魅惑の庭園の雪景色はあまりの美しさにドラマの世界に迷い込んだかのようだと言う。
”雪の降る季節はありのままに真白に染められた姿が印象的で美しい”と往人さんは夢中になってスケッチをしていた。
往人さんの母親が生前、お寺の住職と親しくなさっていた縁で、一般の人が入れない時間帯に三庭園の風景画を特別に描かせてもらっていたことがあり、その頃はまだ小さかった往人さんも一緒に過ごしていたみたい。
往人さんの絵画の原点にはやっぱり母親がいる。
恩愛を抱く母親との足跡を辿るのもまた、往人さんにとって大切なことなのだ。
そのことを改めて実感しながら、私は往人さんに猫のように身体をスリスリして甘えながら寒い日も付き合った。
「この厳しい寒さを耐え凌げば、また新しい春がやって来る。
その前にこの雪化粧に彩られた庭園をキャンバスに収められてよかったよ」
母親との思い出を心から慈しむ往人さんは甘く囁くようにそう私に言った。
「四季は繰り返される。そうして私達の思い出は積み重なっていくのね」
「その通りだな、郁恵も風情のある言い回しをするようになった」
「往人さんと過ごす時間が、私を変えてるんだよ」
時間という普遍的な営みを感じるための一つの習慣。
それが暦には込められている。
避けることの出来ないこの季節の寒さを身体いっぱいに刻み込み、私は往人さんと凪いだ風に乗って新しい春へと向かっていく。
「ねぇ……往人さん。ずっと考えていたことがあるの」
ある時、私はそう話を切り出し、もう一歩先へ進んでいくために心に秘めていた願いを口にした。
予感めいたものを感じていたのか、往人さんはそっと口元を緩め、優しく微笑む。
盲目の私にも分かる、胸の鼓動が高鳴る私と同じように往人さんは確かに私を見て、幸せを噛み締めていると。
「俺も同じことを考えていたよ、そろそろ潮時かなって思ってた。
本当に長い間、母さんが亡くなってから世話になってた。
郁恵となら大丈夫だって思えるよ、一緒に暮らそう」
「私もね……これ以上迷惑は掛けられないなって。私には往人さんがいて選べる幸せがある。それはね、とても幸福なことだって思うから。
だから、もう籠の中の雛鳥でいるのは止める、私もいずれ親鳥になりたいから。
ねぇ、どこまでも一緒に支え合って、歩いて行きましょう」
私達は繋いだ手をギュッと強く握りしめ、二人手を取り合って同棲をすることに決めた。
怖いことだって、辛いことだって、苦しいことだって、一緒に共有していきたいって思った。
楽しいことも、男女の営みも、相手を想いあう大切さも、全部分かち合ってきたから。
「そうと決まったら、早く根城を探さないとね」
ワクワクしてくる心情そのままに私は往人さんに話しかける。
「一緒に住む物件だろ? まぁ、大学から遠くならない範囲で探していこう」
私は寮を離れる決心をして、往人さんは師匠の家を離れる決心をした。
それはとても大きな転機で、私達は大きな一歩を歩み出そうとしていた。
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