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第三話「ファミリアレストラン」2
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「どうでしたか? 先輩」
しばらくしてデザートの感想を聞きにやってきた舞は浩二に聞いた。この時も営業スマイルは決して忘れてはいない。
「美味しかったよ、真奈も大満足みたいだ」
「そうですか、それは本当によかったです。このデザート、言ってなかったけどあたしが作ったものなの」
舞がそう言うと浩二は絶句して驚くほかなかった。
「あたしも早く一人前になりたいから、このお店のためにも、店長のためにも、美味しいって喜んでくれるお客様のためにも」
そう言葉にする舞は清々しくて、自分に自信を持っており、後悔など微塵もなく見えた。
不思議と舞の一皮むけた、自分を貫く姿を間近で見たような気がした。
*
「おいしかったね、舞おねえちゃん、ほんとすごいんだ、真奈もお料理上手になれるかな…、むー、でもまずはじょうずにたまご割れるようになんなきゃ! しゅぎょーだ! しゅぎょーだ! パンチプレスだ!」
ファミリアを出て、上機嫌な真奈をよそに、まだ浩二は今日の舞の姿が目に焼き付いて離れなかった。
(どこか無理をしている……?)
そんな、お節介とも言えるようなことが、家に帰るまでずっと浩二の頭の中でグルグルと思い浮かび、なかなか離れなかった。
*
「みんな、少しずつ、確実に変わっていくのかもしれないね」
そう唯花からメッセージが送られてきたときには、何か言葉に出来ない思いを浩二は抱いたが、ここしばらくのことを振り返って”一番変わったのは”唯花だと改めて感じた。
ずっと一番近くにいたから? 一番よく知っているから? それは考えればキリのない迷路なのかもしれない、そんなことを思いながら、一番変わっていないのは自分なのかもしれないと悲観的にも浩二は思った。
「舞のことは確かに驚いたけど、このことは舞なりに考えて決めたことみたい。
そうだね、考えてみれば久しぶりにがっつり今日は舞と話したかもしれない。
舞の思い、その気持ちは真剣で本物だって、私は信じるよ。
浩二もね、難しいことは考えなくていいけど、応援してあげて。
たぶん、どこかで無理をしていると思うから。
困ってる様子を見かけたら、手を差し伸べてあげて。
きっと、その優しさは舞を救うことに繋がると思うから」
浩二は唯花から送られてきたメッセージを何度も確認する。
何も考えていなかったのか、気付かないふりをしていたのか。
(どこかの時点で舞は諦めていたんだと思う。
だから……、全部を手に入れることは出来ないと、理想の実現のためには取捨選択をして、犠牲が必要であると思って自分の選択を受け入れたんだ。
何が正しくて、何が間違っているかなんて、俺にだって分からない。
でも、あの笑顔は後悔しているようには見えなかった。
選んだ先にある結末を受け止めて、これからも前に進み続けようとしているように見えた。
俺は、舞にはこれからも後悔してほしくはないな……)
昼から、夕方、夜になり、始業式の一日が過ぎていく。
約二週間ぶりの幼馴染三人での登校、今年の一月まで付き合っていた八重塚羽月と同じクラスメイトとなったこと、舞が留年して二年生をやり直していること、浩二にとってどれも無視できないほどの大事であった。
そしてまだ、始まりの予感を残しながら、穏やかに、ゆるやかに、着実に、次の舞台の幕が上がろうとしていた。
しばらくしてデザートの感想を聞きにやってきた舞は浩二に聞いた。この時も営業スマイルは決して忘れてはいない。
「美味しかったよ、真奈も大満足みたいだ」
「そうですか、それは本当によかったです。このデザート、言ってなかったけどあたしが作ったものなの」
舞がそう言うと浩二は絶句して驚くほかなかった。
「あたしも早く一人前になりたいから、このお店のためにも、店長のためにも、美味しいって喜んでくれるお客様のためにも」
そう言葉にする舞は清々しくて、自分に自信を持っており、後悔など微塵もなく見えた。
不思議と舞の一皮むけた、自分を貫く姿を間近で見たような気がした。
*
「おいしかったね、舞おねえちゃん、ほんとすごいんだ、真奈もお料理上手になれるかな…、むー、でもまずはじょうずにたまご割れるようになんなきゃ! しゅぎょーだ! しゅぎょーだ! パンチプレスだ!」
ファミリアを出て、上機嫌な真奈をよそに、まだ浩二は今日の舞の姿が目に焼き付いて離れなかった。
(どこか無理をしている……?)
そんな、お節介とも言えるようなことが、家に帰るまでずっと浩二の頭の中でグルグルと思い浮かび、なかなか離れなかった。
*
「みんな、少しずつ、確実に変わっていくのかもしれないね」
そう唯花からメッセージが送られてきたときには、何か言葉に出来ない思いを浩二は抱いたが、ここしばらくのことを振り返って”一番変わったのは”唯花だと改めて感じた。
ずっと一番近くにいたから? 一番よく知っているから? それは考えればキリのない迷路なのかもしれない、そんなことを思いながら、一番変わっていないのは自分なのかもしれないと悲観的にも浩二は思った。
「舞のことは確かに驚いたけど、このことは舞なりに考えて決めたことみたい。
そうだね、考えてみれば久しぶりにがっつり今日は舞と話したかもしれない。
舞の思い、その気持ちは真剣で本物だって、私は信じるよ。
浩二もね、難しいことは考えなくていいけど、応援してあげて。
たぶん、どこかで無理をしていると思うから。
困ってる様子を見かけたら、手を差し伸べてあげて。
きっと、その優しさは舞を救うことに繋がると思うから」
浩二は唯花から送られてきたメッセージを何度も確認する。
何も考えていなかったのか、気付かないふりをしていたのか。
(どこかの時点で舞は諦めていたんだと思う。
だから……、全部を手に入れることは出来ないと、理想の実現のためには取捨選択をして、犠牲が必要であると思って自分の選択を受け入れたんだ。
何が正しくて、何が間違っているかなんて、俺にだって分からない。
でも、あの笑顔は後悔しているようには見えなかった。
選んだ先にある結末を受け止めて、これからも前に進み続けようとしているように見えた。
俺は、舞にはこれからも後悔してほしくはないな……)
昼から、夕方、夜になり、始業式の一日が過ぎていく。
約二週間ぶりの幼馴染三人での登校、今年の一月まで付き合っていた八重塚羽月と同じクラスメイトとなったこと、舞が留年して二年生をやり直していること、浩二にとってどれも無視できないほどの大事であった。
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