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第十三話「繋がる三つの魂」2
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「本当はね、正直に打ち明けると私は確かに三つ子の中で後継者に選ばれて生活は豊かだったかもしれない。
でも、二人一緒に仲良く暮らしていることが羨ましかった。
だから、ずっと思っていた。二人の輪の中に入って一緒にお話したいって、自分も血の繋がった姉弟なんだって認めてほしかったの」
手を繋いで歩きながら私の話しをじっと聞いてくれる光は私の気持ちが伝わったのか頷いてくれた。
この願いは、魔法使いの使命と向き合いながら、自分の意思で願った初めての願いだったと思う。
水原家に入り、私は一人階段を上がって舞の部屋までやってきた。
この扉の向こうに舞がいると思うと緊張するけど、私は応援してくれる人達を信じて、そっと扉に手を伸ばす。
扉を開けないよう触れるだけにして、舞が扉の先にいることを強くイメージして、私は自分に思いつく限りの言葉を掛けることに決めた。
「舞ちゃん、知枝です、今日から改めてよろしくお願いします。
私も舞ちゃんが心配しているように、ご両親のことを心配しているつもりです。
先の事なんて分からないけど、私のことを信じてくれると嬉しいです。
私は、自分に姉弟がいるって初めて知った時、すぐに会いたいって思ったから。
でも、自分の立場がそれを許してはくれないことも分かってた。
だから、これはね、私が自分の意思で初めて願ったことなの。
舞ちゃんがご両親のことを、自分の力で支えてあげたいって気持ちを持つようになったのと同じように、私は自分の意思で変えられること、切り拓けることがあるって信じたかったの。
だから、一年間、よろしくお願いします」
願いを込めて、この想いが届きますようにと語り掛ける。
扉の前に来る前までは一言だけにするつもりだったのに、気付いたら自分語りのようになっていた。
伝えたい言葉がありすぎて、溢れてくる感情が止まらなかった。
舞は、こんな私を嫌わないでくれるかな? 少しは受け入れてくれるかな?
私はそんなことを思いながら、自分の部屋に戻った。
*
夕食は舞や和志叔父さんとまつり叔母さんも集まることになった。
テーブルに料理が並べられ、夕食の用意出来たので、揃ってテーブルに座った。
私のことを歓迎してか、一際豪華な食卓のラインナップにも驚かされながら、初めて全員揃って食卓に座ることに私は緊張していた。
「なんて呼べばいいのかしら?」
私がテーブルの中央にある唐揚げに惹かれて目が泳いでいると、舞の声が聞こえた。私は海外住まいが長かったため、こういった大衆料理への憧れもあり、日本の食卓の方が美味しいと思ってきたので、見るだけで嬉しくなっていた。
慌てて私は舞の方を見る、瞬きをしながら、見開かれた舞の瞳が目の前に映る。なかなか意識すると委縮してしまいそうで、緊張もしてしまって、自然に舞のことを見れない。今日までの仲違いのことを思えばそれは仕方ないところなんだけど。
「私のことは好きに呼んでくれていいよ、私の方も舞ちゃんのことはどう呼べばいいかな?」
「あたしの事は呼び捨てにしていい、光の事もそうしてるでしょ」
あっさりとした口調で舞は呼び捨てでと要望を言ってくれた。
「そうだね、それじゃあ、舞、これからお世話になります」
「うん、よろしく、知枝」
お互いを名前で呼び合うと、心が途端に近づけたようで無性に照れる気持ちだった。そういう気持ちになったのは舞も同じな様子で、舞は少し視線をそらして、箸に手を伸ばした。
「そこは、お姉ちゃんじゃないんだ」
「それは、ハードル高すぎるでしょ」
「そうなんだ、僕にはその基準は分からないけど」
「光は分からなくていいのよ」
私は相変わらず仲の良さそうな二人の会話を羨ましく思った。
舞とも、こんな風に自然に話せるようになったらいいなと、心から思った。
私は夕食が終わって、自室に戻って明日からの日々のことを考えた。
バタバタとした滑り出しだったけど、これでなんとかやっていけそうな気がする。
新しい家族、新しい学園、新しい環境で私はこれから一年間をここで過ごす。それは、きっと今までの人生で一番充実したものになる。
平凡で普通な、私が渇望してきた友達や家族と近い距離で過ごす日々。
私には勿体ないくらいのことだけど、私はワクワクしながら、荷物整理の続きをして、明日からの生活に備えた。
でも、二人一緒に仲良く暮らしていることが羨ましかった。
だから、ずっと思っていた。二人の輪の中に入って一緒にお話したいって、自分も血の繋がった姉弟なんだって認めてほしかったの」
手を繋いで歩きながら私の話しをじっと聞いてくれる光は私の気持ちが伝わったのか頷いてくれた。
この願いは、魔法使いの使命と向き合いながら、自分の意思で願った初めての願いだったと思う。
水原家に入り、私は一人階段を上がって舞の部屋までやってきた。
この扉の向こうに舞がいると思うと緊張するけど、私は応援してくれる人達を信じて、そっと扉に手を伸ばす。
扉を開けないよう触れるだけにして、舞が扉の先にいることを強くイメージして、私は自分に思いつく限りの言葉を掛けることに決めた。
「舞ちゃん、知枝です、今日から改めてよろしくお願いします。
私も舞ちゃんが心配しているように、ご両親のことを心配しているつもりです。
先の事なんて分からないけど、私のことを信じてくれると嬉しいです。
私は、自分に姉弟がいるって初めて知った時、すぐに会いたいって思ったから。
でも、自分の立場がそれを許してはくれないことも分かってた。
だから、これはね、私が自分の意思で初めて願ったことなの。
舞ちゃんがご両親のことを、自分の力で支えてあげたいって気持ちを持つようになったのと同じように、私は自分の意思で変えられること、切り拓けることがあるって信じたかったの。
だから、一年間、よろしくお願いします」
願いを込めて、この想いが届きますようにと語り掛ける。
扉の前に来る前までは一言だけにするつもりだったのに、気付いたら自分語りのようになっていた。
伝えたい言葉がありすぎて、溢れてくる感情が止まらなかった。
舞は、こんな私を嫌わないでくれるかな? 少しは受け入れてくれるかな?
私はそんなことを思いながら、自分の部屋に戻った。
*
夕食は舞や和志叔父さんとまつり叔母さんも集まることになった。
テーブルに料理が並べられ、夕食の用意出来たので、揃ってテーブルに座った。
私のことを歓迎してか、一際豪華な食卓のラインナップにも驚かされながら、初めて全員揃って食卓に座ることに私は緊張していた。
「なんて呼べばいいのかしら?」
私がテーブルの中央にある唐揚げに惹かれて目が泳いでいると、舞の声が聞こえた。私は海外住まいが長かったため、こういった大衆料理への憧れもあり、日本の食卓の方が美味しいと思ってきたので、見るだけで嬉しくなっていた。
慌てて私は舞の方を見る、瞬きをしながら、見開かれた舞の瞳が目の前に映る。なかなか意識すると委縮してしまいそうで、緊張もしてしまって、自然に舞のことを見れない。今日までの仲違いのことを思えばそれは仕方ないところなんだけど。
「私のことは好きに呼んでくれていいよ、私の方も舞ちゃんのことはどう呼べばいいかな?」
「あたしの事は呼び捨てにしていい、光の事もそうしてるでしょ」
あっさりとした口調で舞は呼び捨てでと要望を言ってくれた。
「そうだね、それじゃあ、舞、これからお世話になります」
「うん、よろしく、知枝」
お互いを名前で呼び合うと、心が途端に近づけたようで無性に照れる気持ちだった。そういう気持ちになったのは舞も同じな様子で、舞は少し視線をそらして、箸に手を伸ばした。
「そこは、お姉ちゃんじゃないんだ」
「それは、ハードル高すぎるでしょ」
「そうなんだ、僕にはその基準は分からないけど」
「光は分からなくていいのよ」
私は相変わらず仲の良さそうな二人の会話を羨ましく思った。
舞とも、こんな風に自然に話せるようになったらいいなと、心から思った。
私は夕食が終わって、自室に戻って明日からの日々のことを考えた。
バタバタとした滑り出しだったけど、これでなんとかやっていけそうな気がする。
新しい家族、新しい学園、新しい環境で私はこれから一年間をここで過ごす。それは、きっと今までの人生で一番充実したものになる。
平凡で普通な、私が渇望してきた友達や家族と近い距離で過ごす日々。
私には勿体ないくらいのことだけど、私はワクワクしながら、荷物整理の続きをして、明日からの生活に備えた。
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