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6、心痛
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吾郎と美雪の信じたくない光景を見てしまった海人は眠れない夜を過ごした。
二人が仲良くしていたところを見た後になって、余計に心優しく、綺麗な美雪に惹かれていた自分を海人は自覚した。
(どうして吾郎が美雪と……何なんだよ、あいつは。あんな奴じゃなかったのに……)
胸が苦しくなり、嫉妬の炎を燃やす海人。
海人は嫉妬のあまり、友人である吾郎を許せなくなりそうだった。
*
翌日、同学年である二年生の教室を回り、前田吾郎のクラスを突き止めた海人は迷いながらも教室までやってきて吾郎を呼んだ。
「なんだ……海人か、久しぶりだな」
教室から出てきた吾郎。中学の頃より身長が伸び、筋肉質になった肉体は日に焼け、頼りある男の雰囲気を纏っている。
「うん、聞きたいことがあって」
体格差から威圧感を感じながらも、海人は目を逸らすことなく真っすぐ吾郎に視線を向けた。
「突然教室までやって来て、仰々しい態度だな、聞きたいことがあるなら言ってみろ」
話しやすかった友人であるはずの吾郎が赤の他人のように感じてしまう。
息を飲むほどに海人はいつも以上に緊張していた。
しかし、周りの注目を集める前に早く伝えなければならない。
勇気を出して海人は口を開いた。
「うん、じゃあ遠慮なく聞くよ、近本さんとはどういう関係なの?」
答えを知るが怖い。でも知らないままでいる不安の方が勝っていた。
海人は迷いを断ち切り美雪と吾郎の関係に踏み込んだ。
「あぁ? 美雪のことか?」
「近本美雪さん、僕のクラスメイトでクラス委員をしてる」
「そういえばお前、美雪と同じクラスだったか。目が不自由だからノートを貸してあげてる男子がいるって話してたがお前のことか。
丁度いい、これ返しておいてくれるか?」
そう言って見慣れた筆跡をした美雪のノートを差し出してくる吾郎。
馴れ馴れしく”美雪”と呼んだことが海人の感情をさらに逆なでした。
「僕の質問に答えてないけど?
昨日見たんだ、吾郎が近本さんと一緒に帰るところ」
「あぁ……別に隠してるつもりはないからいいか。
付き合ってるよ、夏休み前からずっと」
吾郎は何事もないかのように、あっさりと交際を認めた。
「何で吾郎が……近本さんと……」
信じたく感情が沸騰し、言葉が漏れる。
平静状態でない海人の態度を見て、吾郎は苛立ちを覚えた。
「俺が美雪と付き合ってたら何かおかしいのかよ?
海人、見苦しい奴だな。
美雪の世話になってるんだろ、俺に口を挟んでどうする気だよ」
「どうするって……確かめたかっただけだよ……」
海人は目の前が暗転したように耐え切れない眩暈と息苦しさに襲われた。
頭の中で一瞬、自分に向けてくれた美雪の屈託のない笑顔が浮かび上がる。
だが、それは瞬時に消え去り、海人は怒りと悲しみに震え、歯を食いしばって、目の前の吾郎から背を向けて教室を離れるしかなかった。
二人が仲良くしていたところを見た後になって、余計に心優しく、綺麗な美雪に惹かれていた自分を海人は自覚した。
(どうして吾郎が美雪と……何なんだよ、あいつは。あんな奴じゃなかったのに……)
胸が苦しくなり、嫉妬の炎を燃やす海人。
海人は嫉妬のあまり、友人である吾郎を許せなくなりそうだった。
*
翌日、同学年である二年生の教室を回り、前田吾郎のクラスを突き止めた海人は迷いながらも教室までやってきて吾郎を呼んだ。
「なんだ……海人か、久しぶりだな」
教室から出てきた吾郎。中学の頃より身長が伸び、筋肉質になった肉体は日に焼け、頼りある男の雰囲気を纏っている。
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体格差から威圧感を感じながらも、海人は目を逸らすことなく真っすぐ吾郎に視線を向けた。
「突然教室までやって来て、仰々しい態度だな、聞きたいことがあるなら言ってみろ」
話しやすかった友人であるはずの吾郎が赤の他人のように感じてしまう。
息を飲むほどに海人はいつも以上に緊張していた。
しかし、周りの注目を集める前に早く伝えなければならない。
勇気を出して海人は口を開いた。
「うん、じゃあ遠慮なく聞くよ、近本さんとはどういう関係なの?」
答えを知るが怖い。でも知らないままでいる不安の方が勝っていた。
海人は迷いを断ち切り美雪と吾郎の関係に踏み込んだ。
「あぁ? 美雪のことか?」
「近本美雪さん、僕のクラスメイトでクラス委員をしてる」
「そういえばお前、美雪と同じクラスだったか。目が不自由だからノートを貸してあげてる男子がいるって話してたがお前のことか。
丁度いい、これ返しておいてくれるか?」
そう言って見慣れた筆跡をした美雪のノートを差し出してくる吾郎。
馴れ馴れしく”美雪”と呼んだことが海人の感情をさらに逆なでした。
「僕の質問に答えてないけど?
昨日見たんだ、吾郎が近本さんと一緒に帰るところ」
「あぁ……別に隠してるつもりはないからいいか。
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「何で吾郎が……近本さんと……」
信じたく感情が沸騰し、言葉が漏れる。
平静状態でない海人の態度を見て、吾郎は苛立ちを覚えた。
「俺が美雪と付き合ってたら何かおかしいのかよ?
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美雪の世話になってるんだろ、俺に口を挟んでどうする気だよ」
「どうするって……確かめたかっただけだよ……」
海人は目の前が暗転したように耐え切れない眩暈と息苦しさに襲われた。
頭の中で一瞬、自分に向けてくれた美雪の屈託のない笑顔が浮かび上がる。
だが、それは瞬時に消え去り、海人は怒りと悲しみに震え、歯を食いしばって、目の前の吾郎から背を向けて教室を離れるしかなかった。
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