Sky Sanctuary

shiori

文字の大きさ
7 / 11

6、心痛

しおりを挟む
 吾郎と美雪の信じたくない光景を見てしまった海人は眠れない夜を過ごした。
 
 二人が仲良くしていたところを見た後になって、余計に心優しく、綺麗な美雪に惹かれていた自分を海人は自覚した。

(どうして吾郎が美雪と……何なんだよ、あいつは。あんな奴じゃなかったのに……)

 胸が苦しくなり、嫉妬の炎を燃やす海人。
 海人は嫉妬のあまり、友人である吾郎を許せなくなりそうだった。



 翌日、同学年である二年生の教室を回り、前田吾郎まえだごろうのクラスを突き止めた海人は迷いながらも教室までやってきて吾郎を呼んだ。

「なんだ……海人か、久しぶりだな」

 教室から出てきた吾郎。中学の頃より身長が伸び、筋肉質になった肉体は日に焼け、頼りある男の雰囲気を纏っている。

「うん、聞きたいことがあって」

 体格差から威圧感を感じながらも、海人は目を逸らすことなく真っすぐ吾郎に視線を向けた。

「突然教室までやって来て、仰々しい態度だな、聞きたいことがあるなら言ってみろ」

 話しやすかった友人であるはずの吾郎が赤の他人のように感じてしまう。
 息を飲むほどに海人はいつも以上に緊張していた。
 しかし、周りの注目を集める前に早く伝えなければならない。
 勇気を出して海人は口を開いた。

「うん、じゃあ遠慮なく聞くよ、近本さんとはどういう関係なの?」

 答えを知るが怖い。でも知らないままでいる不安の方が勝っていた。
 海人は迷いを断ち切り美雪と吾郎の関係に踏み込んだ。

「あぁ? 美雪のことか?」
「近本美雪さん、僕のクラスメイトでクラス委員をしてる」
「そういえばお前、美雪と同じクラスだったか。目が不自由だからノートを貸してあげてる男子がいるって話してたがお前のことか。
 丁度いい、これ返しておいてくれるか?」

 そう言って見慣れた筆跡をした美雪のノートを差し出してくる吾郎。
 馴れ馴れしく”美雪”と呼んだことが海人の感情をさらに逆なでした。

「僕の質問に答えてないけど? 
 昨日見たんだ、吾郎が近本さんと一緒に帰るところ」

「あぁ……別に隠してるつもりはないからいいか。
 付き合ってるよ、夏休み前からずっと」

 吾郎は何事もないかのように、あっさりと交際を認めた。

「何で吾郎が……近本さんと……」

 信じたく感情が沸騰し、言葉が漏れる。
 平静状態でない海人の態度を見て、吾郎は苛立ちを覚えた。

「俺が美雪と付き合ってたら何かおかしいのかよ?
 海人、見苦しい奴だな。
 美雪の世話になってるんだろ、俺に口を挟んでどうする気だよ」

「どうするって……確かめたかっただけだよ……」

 海人は目の前が暗転したように耐え切れない眩暈と息苦しさに襲われた。
 頭の中で一瞬、自分に向けてくれた美雪の屈託のない笑顔が浮かび上がる。

 だが、それは瞬時に消え去り、海人は怒りと悲しみに震え、歯を食いしばって、目の前の吾郎から背を向けて教室を離れるしかなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

『☘ 好きだったのよ、あなた……』

設楽理沙
ライト文芸
2025.5.18 改稿しました。 嫌いで別れたわけではなかったふたり……。 数年後、夫だった宏は元妻をクライアントとの仕事を終えたあとで 見つけ、声をかける。 そして数年の時を越えて、その後を互いに語り合うふたり。 お互い幸せにやってるってことは『WinWin』でよかったわよね。 そう元妻の真帆は言うと、店から出て行った。 「真帆、それが……WinWinじゃないんだ」 真帆には届かない呟きを残して宏も店をあとにするのだった。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい 

設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀ 結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。 結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。 それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて しなかった。 呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。 それなのに、私と別れたくないなんて信じられない 世迷言を言ってくる夫。 だめだめ、信用できないからね~。 さようなら。 *******.✿..✿.******* ◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才   会社員 ◇ 日比野ひまり 32才 ◇ 石田唯    29才          滉星の同僚 ◇新堂冬也    25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社) 2025.4.11 完結 25649字 

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

処理中です...