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第二章 募集
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……そんな会話をしながらも、朝からてくてくと歩く二人と一体。今回も鏡に魔物や猛獣が出てくるタイミングを尋ねながら歩いていますが、油断は出来ません。
ラミルもタニアも、行きと違ってかなり周囲を警戒しながら歩きます。
「あと、休憩もなるべく入れながら歩きたいわね。さっき貰ったお弁当も食べたいし」
「そうだね。……中身見て無いけど、何入れてくれたんだろう」
「休んだ時のお楽しみにしましょうよ。――あっ、あそことか良いんじゃない?」
そう言って木陰を指さすタニア。周囲よりも少しだけ背の高い木が、大きい影を作っていました。しかもおあつらえ向きに、切り株が三つも並んでいます。
恐らくラミルたちよりも前にこの道を通った冒険者が、木を切り倒して椅子にしたのでしょう。
「きゅい~!」
子パッカが駆け寄って、真ん中の切り株にぴょんと飛び乗ります。ラミルとタニアは周囲に魔物や猛獣がいないことを確認して、左右の切り株に座りました。
そしてカバンから、朝イアおばさんから貰ったお弁当を取り出します。中身は……。
「わぁ……えーっと、これはベーグルサンドイッチかな。二種類あるね」
「間に挟まってるのは……これ、クリームチーズね。美味しそう!」
さっそく皆で一つずつ取り出し、頬張ります。すると次の瞬間、まるでハチミツがかかっているかのような甘みと香ばしい麦の香りが口内に広がりました。
ミルベライトの牛乳から作られたクリームチーズなので、僅かな酸味の後に豊かな甘みを感じられます。しかも真ん中にはクルミも挟まれており、その食感がアクセントになって食べていて飽きを感じさせません。
「甘い! 凄い! 美味しい! これクリームチーズなのよね!?」
「タニア、語彙力が無くなってるよ。しーちゃんはどう?」
「きゅい~~~~~~~!!!」
目をハートにして輝かせる子パッカ。そしてもう一つのベーグルサンドイッチを掴み、一口で半分頬張ってしまいます。
「ちょっ、しーちゃん。もっとゆっくり食べないと。……こっちは何味かな」
「きゅい! きゅい!」
噛みついた断面を見せる子パッカ。そこには苺が挟まっており、溢れてくるのはホイップクリームです。二つ目はイチゴホイップサンドイッチだったようです。恐らくこのホイップクリームも、ミルベライトの牛乳から作った物でしょう。
……ただでさえ甘いミルベライトの牛乳で作ったホイップクリームは、くどくないのでしょうか。ラミルはそんな疑問を抱きつつも、ベーグルサンドイッチを取って一つかじりました。
「! お、美味しい……! イチゴが凄く酸っぱいし、ベーグルもちょっと苦い……!?」
よく見ると、ベーグルの色が黒っぽいのでコーヒーベーグルのようです。
確かにホイップクリームは非常に甘ったるいのですが、苦みのあるベーグルと非常に酸味の強いイチゴでそれを中和し、むしろ高めています。
「甘酸っぱ苦いって、なんか癖になる味だなぁ」
「きゅいっ! きゅいっ!」
子パッカはパタパタと足をばたつかせ、立ち上がって踊り出しました。相変わらず、テンションが上がると踊ってしまうようです。
タニアははぐはぐと頬張り、よーく味わってから飲み込むと……頬を紅潮させ、ラミルの方へ顔をずいっと近づけてきました。
「ラミル、やっぱりあの牧場を二人で継がない……?」
「たぶん、イアおばさんの腕がいいだけだと思うよ あと、ほっぺにクリーム」
「! そ、そういうのはもっとさりげなく教えてよ!」
ごしごしとハンカチで顔を拭うタニア。
ラミルの言う通り、ベーグルサンドイッチがここまで美味しいのはイアおばさんの腕前のおかげでしょう。でもやはり、最上級のミルベライトの牛乳で作っているから……というのも多分にあるはずです。
三人は夢中になってベーグルを食べます。そして最後の一個になったところで、全員の手が止まりました。
なんと、中のベーグルは偶数個しかなかったのです。
「タニアかしーちゃんが食べていいよ」
「アタシは良いわよ。しーちゃん、はいどうぞ」
そう言って子パッカに渡すタニア。子パッカはそれを受け取り、二人の顔を見ると……はぐ! と一口、ちょうど三分の一くらいかじりました。
そして残った分を半分こし、ラミルとタニアに渡します。
「きゅい~」
ラミルとタニアは顔を見合わせ、一つずつ受け取ります。そして笑顔になりながら、がぶっとかぶりつきました。
「美味しいわ! ありがとう、しーちゃん」
「ありがとね、しーちゃん。うん……これが、一番美味しい」
二人からお礼を言われた子パッカは、誇らしげに胸を張ります。そんな彼の頭をラミルとタニアは撫でてから、残った分を頬張ります。
「「ごちそうさま」」
「きゅい」
食べ終わったところで三人は手を合わせました。そしてすぐに立ち上がります。
休憩は大切ですが、魔物が襲ってくるかもしれない以上……あんまりゆっくりもしていられません。
「――さぁ、行こうか。っとと、その前に」
移動する前に、ラミルは鏡を取り出します。行きよりも頻度を上げて、魔物の位置を鏡に訊いているのです。
タニアが弓矢を取り出したのを見て、ラミルは鏡に問いかけました。
「鏡よ鏡、鏡さん。周囲に魔物はいますか?」
ぴちょーん……と雫が水面に落ちる音が辺りに響き、鏡面に文字が浮かび上がります。
――絶望するような、文字が。
『はい。貴方達の真上から、鳥の魔物が襲い掛かってきます』
「「――え?」」
つづく
ラミルもタニアも、行きと違ってかなり周囲を警戒しながら歩きます。
「あと、休憩もなるべく入れながら歩きたいわね。さっき貰ったお弁当も食べたいし」
「そうだね。……中身見て無いけど、何入れてくれたんだろう」
「休んだ時のお楽しみにしましょうよ。――あっ、あそことか良いんじゃない?」
そう言って木陰を指さすタニア。周囲よりも少しだけ背の高い木が、大きい影を作っていました。しかもおあつらえ向きに、切り株が三つも並んでいます。
恐らくラミルたちよりも前にこの道を通った冒険者が、木を切り倒して椅子にしたのでしょう。
「きゅい~!」
子パッカが駆け寄って、真ん中の切り株にぴょんと飛び乗ります。ラミルとタニアは周囲に魔物や猛獣がいないことを確認して、左右の切り株に座りました。
そしてカバンから、朝イアおばさんから貰ったお弁当を取り出します。中身は……。
「わぁ……えーっと、これはベーグルサンドイッチかな。二種類あるね」
「間に挟まってるのは……これ、クリームチーズね。美味しそう!」
さっそく皆で一つずつ取り出し、頬張ります。すると次の瞬間、まるでハチミツがかかっているかのような甘みと香ばしい麦の香りが口内に広がりました。
ミルベライトの牛乳から作られたクリームチーズなので、僅かな酸味の後に豊かな甘みを感じられます。しかも真ん中にはクルミも挟まれており、その食感がアクセントになって食べていて飽きを感じさせません。
「甘い! 凄い! 美味しい! これクリームチーズなのよね!?」
「タニア、語彙力が無くなってるよ。しーちゃんはどう?」
「きゅい~~~~~~~!!!」
目をハートにして輝かせる子パッカ。そしてもう一つのベーグルサンドイッチを掴み、一口で半分頬張ってしまいます。
「ちょっ、しーちゃん。もっとゆっくり食べないと。……こっちは何味かな」
「きゅい! きゅい!」
噛みついた断面を見せる子パッカ。そこには苺が挟まっており、溢れてくるのはホイップクリームです。二つ目はイチゴホイップサンドイッチだったようです。恐らくこのホイップクリームも、ミルベライトの牛乳から作った物でしょう。
……ただでさえ甘いミルベライトの牛乳で作ったホイップクリームは、くどくないのでしょうか。ラミルはそんな疑問を抱きつつも、ベーグルサンドイッチを取って一つかじりました。
「! お、美味しい……! イチゴが凄く酸っぱいし、ベーグルもちょっと苦い……!?」
よく見ると、ベーグルの色が黒っぽいのでコーヒーベーグルのようです。
確かにホイップクリームは非常に甘ったるいのですが、苦みのあるベーグルと非常に酸味の強いイチゴでそれを中和し、むしろ高めています。
「甘酸っぱ苦いって、なんか癖になる味だなぁ」
「きゅいっ! きゅいっ!」
子パッカはパタパタと足をばたつかせ、立ち上がって踊り出しました。相変わらず、テンションが上がると踊ってしまうようです。
タニアははぐはぐと頬張り、よーく味わってから飲み込むと……頬を紅潮させ、ラミルの方へ顔をずいっと近づけてきました。
「ラミル、やっぱりあの牧場を二人で継がない……?」
「たぶん、イアおばさんの腕がいいだけだと思うよ あと、ほっぺにクリーム」
「! そ、そういうのはもっとさりげなく教えてよ!」
ごしごしとハンカチで顔を拭うタニア。
ラミルの言う通り、ベーグルサンドイッチがここまで美味しいのはイアおばさんの腕前のおかげでしょう。でもやはり、最上級のミルベライトの牛乳で作っているから……というのも多分にあるはずです。
三人は夢中になってベーグルを食べます。そして最後の一個になったところで、全員の手が止まりました。
なんと、中のベーグルは偶数個しかなかったのです。
「タニアかしーちゃんが食べていいよ」
「アタシは良いわよ。しーちゃん、はいどうぞ」
そう言って子パッカに渡すタニア。子パッカはそれを受け取り、二人の顔を見ると……はぐ! と一口、ちょうど三分の一くらいかじりました。
そして残った分を半分こし、ラミルとタニアに渡します。
「きゅい~」
ラミルとタニアは顔を見合わせ、一つずつ受け取ります。そして笑顔になりながら、がぶっとかぶりつきました。
「美味しいわ! ありがとう、しーちゃん」
「ありがとね、しーちゃん。うん……これが、一番美味しい」
二人からお礼を言われた子パッカは、誇らしげに胸を張ります。そんな彼の頭をラミルとタニアは撫でてから、残った分を頬張ります。
「「ごちそうさま」」
「きゅい」
食べ終わったところで三人は手を合わせました。そしてすぐに立ち上がります。
休憩は大切ですが、魔物が襲ってくるかもしれない以上……あんまりゆっくりもしていられません。
「――さぁ、行こうか。っとと、その前に」
移動する前に、ラミルは鏡を取り出します。行きよりも頻度を上げて、魔物の位置を鏡に訊いているのです。
タニアが弓矢を取り出したのを見て、ラミルは鏡に問いかけました。
「鏡よ鏡、鏡さん。周囲に魔物はいますか?」
ぴちょーん……と雫が水面に落ちる音が辺りに響き、鏡面に文字が浮かび上がります。
――絶望するような、文字が。
『はい。貴方達の真上から、鳥の魔物が襲い掛かってきます』
「「――え?」」
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