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第二章 募集
①-3
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鏡の文字を読み終えた瞬間、驚く間も無くダウンバーストがラミルたちを襲います。同時に甲高い鳥の鳴き声と羽音が耳に叩きつけられました。
「きゃあっ!?」
ラミルたちが上を向くと、そこには一軒家を優に凌駕するほど巨大な鳥の魔物が。
茶色の羽に真っ白なくちばし、まるで人の手の如く器用に発達した脚、そして通常の鳥とは似ても似つかぬカメレオンのような目。どれをとっても、普通の鳥では無いことがビシバシと伝わってきます。
「魔物ッ! に、逃げるよ!」
そう言って動き出そうとした瞬間――なんと、子パッカが浚われてしまいました。
「あっ、しーちゃん!」
「きゅい?」
状況が飲み込めていない子パッカは、首を傾げて為すがままに連れ去られてしまいます。タニアは大慌てで弓を撃ちましたが、魔物はドンドン高度を上げていきすぐにタニアの射程距離から外れてしまいました。
「ら、ラミル! どうしよう、しーちゃんが! しーちゃんが!」
今にも泣きそうなほど動揺するタニア。ラミルはそんなタニアの両肩を掴み、一括しました。
「タニア、落ち着け!」
「ッ!」
びくっ、と肩を震わせて涙を引っ込めるタニア。ラミルは彼女の肩を抱いたまま脳みそをフル回転させ、今まさに逃げようとしている魔物の種類を思い出します。
「えっと……あの目は天いや、違う、脚、脚! あの脚は確か、確かノウェイシュライクだったはず! ――それなら、それならすぐにはしーちゃんを襲わない! 巣の付近の木に突き刺して保存する習性があるから!」
突き刺すと言っても、正確に言うと高所から巣の付近の木に向けて落とすというだけです。人間どころかちょっとした動物でも軽々持ち上げる子パッカの肉体があれば、クッションとなる木々があれば無事でいられるでしょう。
すぐに発見できれば。
「ノウェイシュライクは、ぶっちゃけ取った餌のことなんて忘れて放置する! だからその下には馬鹿みたいに魔物や猛獣が集まるんだよ! ノウェイシュライクの餌を横取りするために!」
「じゃ、じゃあ……!」
「そう! 今必要なのはノウェイシュライクの巣の正確な場所を見つけて、しーちゃんが落とされたらすぐに見つけて保護すること!」
しかし保護と言いましたが、それはつまり他の魔物や猛獣と奪い合いをするという意味。ほぼ戦闘力の無い二人で、そんなことが出来るでしょうか。
(やるしかないんだけどね!)
肚を決めたラミルが、タニアの手を取って駆け出した瞬間――突然、脇の木々の間から水色の斬撃が飛び出してきました。
轟! とその斬撃の風圧で、ラミルとタニアは思わずその場に尻もちをついてしまいます。
「な、なにが……!」
新たな敵か――そう思ったラミルがその斬撃の方向を追うと、それは正確にノウェイシュライクに向かっていき……その首をスパァン! と真っ二つにしてしまいました。
「嘘……!」
空中から血の雨が降り注ぎ、絶命したノウェイシュライクは脚から力を抜きます。すると子パッカは空中に投げ出され、自由落下を開始しました。
「な、なに今の……って、ぼさっとしてる場合じゃない!」
ラミルは即座に『パッカの鏡』を起動。地面に舞う落ち葉に光を当て、一瞬にして山が出来てしまうほど大量に増やしました。
間一髪地面に落ち葉を敷き詰めるのが間に合い、子パッカはぼすんとその中に落ちます。そして落ち葉を掻きわけて出てくると……何故か楽しそうに笑いだしました。
「きゅいきゅいきゅ――きゅっ!?」
そんな彼に思いっきり抱き着くタニアとラミル。二人とも心臓がバクバク言っており、目には涙が浮かんでいます。
「よ、よがっだ……! しーちゃん、よがっだ、よがっだわ……!」
二人ともぎゅーっと、子パッカが潰れそうなほど抱きしめます。タニアは鼻水をすすり、ラミルは子パッカに怪我がないことを確認し……子パッカを抱きしめたまま、落ち葉のベッドの上にごろんと寝転びました。
そして安堵の涙を流しながら、無事を祝います。
「まっ、ま、まざが……こんっ、ひっ、ごんなごとになるなんで……ひぐっ、よがっ、うわああああよがっだああああ」
「ぼくまだ、生きた心地しないよ……もうなんか、恐かったのと安心したので逆に涙引っ込んじゃった……あー……本当、良かった……。って、そうだ。さっき助けてくれた人は誰だろう」
そこまで話してやっと、さっき助けてくれた人がいたことを思い出しました。ラミルは涙を拭って立ち上がると……落ち葉のクッションの麓に、真っ赤なフルプレートメイルの剣士が一人立っていました。
二メートル近くあり、随分と強そうです。
「あのっ、ありがとうございます!」
ラミルは取り合えず大きな声でお礼を言い、剣士の方へ歩き出しました。すると剣士はビクッと体を震わせ、ぶんぶんと首を振って距離を取ります。
「あ、あの」
「…………!」
ブンブンと首を振り、ただただ距離を取る剣士。ラミルが一歩踏み出すと、その剣士も正確に一歩あとずさります。
そのあまりにも意味不明且つ挙動不審な行動に困惑していると、剣士はくるっと振り向いて森の中へダッシュで消えて行ってしまいました。
「……な、なんだったんだろう」
「わっ、わがらないけど……ひぐっ、すっ、凄い腕前の人だったわね。っていうか、ほっ、本当に、良かった、本当にあの人がたまたまいてくれなかったら絶っっっ対にもう何もかも無理だった」
まだ涙が止まらないタニアは、チリ紙で取り敢えず鼻をかみます。そしてハンカチで涙をぬぐい、改めて子パッカを抱きしめます。
「でも……これから先、こんなヤバい魔物がたくさん出てくるのよね。改めてこの旅、子どもだけにさせるものじゃないでしょ……」
「まぁ世の中にはぼくと同い年でも、ドラゴンをぶった斬ったりするらしいし多少はね?」
「ならそういう人を選べって話になっちゃうでしょうが――って、しーちゃん、どうしたの?」
ジッと、森の中……さっきの剣士が去っていった方を見つめる子パッカ。そしてワクワクしたような顔になり、ビシッとサムズアップを向けました。
「きゅっ!」
「……もしかして」
「あの剣士さんを、仲間に加えたいの?」
「きゅい!」
思いっきり頷く子パッカ。
どうやら、三人目の仲間の目途が立ったようですね。
②へつづく
「きゃあっ!?」
ラミルたちが上を向くと、そこには一軒家を優に凌駕するほど巨大な鳥の魔物が。
茶色の羽に真っ白なくちばし、まるで人の手の如く器用に発達した脚、そして通常の鳥とは似ても似つかぬカメレオンのような目。どれをとっても、普通の鳥では無いことがビシバシと伝わってきます。
「魔物ッ! に、逃げるよ!」
そう言って動き出そうとした瞬間――なんと、子パッカが浚われてしまいました。
「あっ、しーちゃん!」
「きゅい?」
状況が飲み込めていない子パッカは、首を傾げて為すがままに連れ去られてしまいます。タニアは大慌てで弓を撃ちましたが、魔物はドンドン高度を上げていきすぐにタニアの射程距離から外れてしまいました。
「ら、ラミル! どうしよう、しーちゃんが! しーちゃんが!」
今にも泣きそうなほど動揺するタニア。ラミルはそんなタニアの両肩を掴み、一括しました。
「タニア、落ち着け!」
「ッ!」
びくっ、と肩を震わせて涙を引っ込めるタニア。ラミルは彼女の肩を抱いたまま脳みそをフル回転させ、今まさに逃げようとしている魔物の種類を思い出します。
「えっと……あの目は天いや、違う、脚、脚! あの脚は確か、確かノウェイシュライクだったはず! ――それなら、それならすぐにはしーちゃんを襲わない! 巣の付近の木に突き刺して保存する習性があるから!」
突き刺すと言っても、正確に言うと高所から巣の付近の木に向けて落とすというだけです。人間どころかちょっとした動物でも軽々持ち上げる子パッカの肉体があれば、クッションとなる木々があれば無事でいられるでしょう。
すぐに発見できれば。
「ノウェイシュライクは、ぶっちゃけ取った餌のことなんて忘れて放置する! だからその下には馬鹿みたいに魔物や猛獣が集まるんだよ! ノウェイシュライクの餌を横取りするために!」
「じゃ、じゃあ……!」
「そう! 今必要なのはノウェイシュライクの巣の正確な場所を見つけて、しーちゃんが落とされたらすぐに見つけて保護すること!」
しかし保護と言いましたが、それはつまり他の魔物や猛獣と奪い合いをするという意味。ほぼ戦闘力の無い二人で、そんなことが出来るでしょうか。
(やるしかないんだけどね!)
肚を決めたラミルが、タニアの手を取って駆け出した瞬間――突然、脇の木々の間から水色の斬撃が飛び出してきました。
轟! とその斬撃の風圧で、ラミルとタニアは思わずその場に尻もちをついてしまいます。
「な、なにが……!」
新たな敵か――そう思ったラミルがその斬撃の方向を追うと、それは正確にノウェイシュライクに向かっていき……その首をスパァン! と真っ二つにしてしまいました。
「嘘……!」
空中から血の雨が降り注ぎ、絶命したノウェイシュライクは脚から力を抜きます。すると子パッカは空中に投げ出され、自由落下を開始しました。
「な、なに今の……って、ぼさっとしてる場合じゃない!」
ラミルは即座に『パッカの鏡』を起動。地面に舞う落ち葉に光を当て、一瞬にして山が出来てしまうほど大量に増やしました。
間一髪地面に落ち葉を敷き詰めるのが間に合い、子パッカはぼすんとその中に落ちます。そして落ち葉を掻きわけて出てくると……何故か楽しそうに笑いだしました。
「きゅいきゅいきゅ――きゅっ!?」
そんな彼に思いっきり抱き着くタニアとラミル。二人とも心臓がバクバク言っており、目には涙が浮かんでいます。
「よ、よがっだ……! しーちゃん、よがっだ、よがっだわ……!」
二人ともぎゅーっと、子パッカが潰れそうなほど抱きしめます。タニアは鼻水をすすり、ラミルは子パッカに怪我がないことを確認し……子パッカを抱きしめたまま、落ち葉のベッドの上にごろんと寝転びました。
そして安堵の涙を流しながら、無事を祝います。
「まっ、ま、まざが……こんっ、ひっ、ごんなごとになるなんで……ひぐっ、よがっ、うわああああよがっだああああ」
「ぼくまだ、生きた心地しないよ……もうなんか、恐かったのと安心したので逆に涙引っ込んじゃった……あー……本当、良かった……。って、そうだ。さっき助けてくれた人は誰だろう」
そこまで話してやっと、さっき助けてくれた人がいたことを思い出しました。ラミルは涙を拭って立ち上がると……落ち葉のクッションの麓に、真っ赤なフルプレートメイルの剣士が一人立っていました。
二メートル近くあり、随分と強そうです。
「あのっ、ありがとうございます!」
ラミルは取り合えず大きな声でお礼を言い、剣士の方へ歩き出しました。すると剣士はビクッと体を震わせ、ぶんぶんと首を振って距離を取ります。
「あ、あの」
「…………!」
ブンブンと首を振り、ただただ距離を取る剣士。ラミルが一歩踏み出すと、その剣士も正確に一歩あとずさります。
そのあまりにも意味不明且つ挙動不審な行動に困惑していると、剣士はくるっと振り向いて森の中へダッシュで消えて行ってしまいました。
「……な、なんだったんだろう」
「わっ、わがらないけど……ひぐっ、すっ、凄い腕前の人だったわね。っていうか、ほっ、本当に、良かった、本当にあの人がたまたまいてくれなかったら絶っっっ対にもう何もかも無理だった」
まだ涙が止まらないタニアは、チリ紙で取り敢えず鼻をかみます。そしてハンカチで涙をぬぐい、改めて子パッカを抱きしめます。
「でも……これから先、こんなヤバい魔物がたくさん出てくるのよね。改めてこの旅、子どもだけにさせるものじゃないでしょ……」
「まぁ世の中にはぼくと同い年でも、ドラゴンをぶった斬ったりするらしいし多少はね?」
「ならそういう人を選べって話になっちゃうでしょうが――って、しーちゃん、どうしたの?」
ジッと、森の中……さっきの剣士が去っていった方を見つめる子パッカ。そしてワクワクしたような顔になり、ビシッとサムズアップを向けました。
「きゅっ!」
「……もしかして」
「あの剣士さんを、仲間に加えたいの?」
「きゅい!」
思いっきり頷く子パッカ。
どうやら、三人目の仲間の目途が立ったようですね。
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