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家出少年
しおりを挟む「それで明日友達の家に泊まりに行きたいんですけど………」
「…………」
「ゆ、ゆかりさんは賛成してくれますよね………?」
「…………」
「き、昨日の事は悪かったと反省しています。で、でも明日の約束はもうしてしまったんですよ。今更行けないって言うのも………ねぇ?」
「…………」
重い。重苦しいよ。空気が。食事の場くらいみんなでワイワイ楽しみながらした方がきっと料理もおいしくなると思うよ?
レインとジュリーもこれには苦笑いしかしていない。神父様とゆかりさんは無言でもくもくと料理に箸をつけている。昨日のにぎやかな夕食がもの恋しい……
夕食の場、発端は僕の一言から始まった。
「昨日は本当にすいませんでした。で、明日から土曜日じゃないですかー。僕ちょっと友達と遊ぶ約束しているので行ってきていいですか?」
「いいですよ、ヒカリ君。で、いつ帰ってくるのですか?」
「うーん、決めてないけど日曜日の夕方くらいには帰ってくるつもりです」
「………ヒカリ、またどこかに泊まるの?」
「うん。ちょっと遠いところに家があるらしくてね。でも今回ちょうど連れて行ってくれる友達がいたからいい機会かなって」
嘘は言ってないよー、嘘は。
「ヒカリ、あなた眼帯をするような怪我までしてまだ懲《こ》りてないの?」
「だ、だから大した怪我じゃないって! 保健の先生に一応つけておきなさいって言われたからつけてるだけだよ?」
「ではヒカリ君。目を見せてください」
「うぅ……わかりましたよぅ……」
これは賭けだ。レインとジュリーのいう事が正しいのであれば何の問題もない筈。頼む!見えないでいてくれ!
僕はそっと眼帯を外す。それを見逃すまいと神父様とゆかりさんが鋭い目で見る。
「ほ、ほら。もう傷もないでしょう?」
「………」
「………」
な、何か言ってくれ!
僕の手には脂汗が噴き出しまくる。これがダメならきっと何もかもうまくいかなくなるような気がする!根拠はないけど!
「そうですね……何もないですね」
「ちょっと充血してるくらいかしら。ちゃんと見えているの?」
「う、うん。問題ないよ。眼球っていうよりは目の周りを打っただけだから」
ご、誤魔化せたか!! レインとジュリーは落ち着いた様子で汁物を啜っている。よっぽどさっきの呪文みたいなやつに自信があるのだろう。
「じゃ、じゃあ問題ないよね?」
「ではヒカリ君。他に怪我無いか調べさせてもらいますよ?まずは手を見せてください」
この言葉で確信する。この人は敵だ。目はともかくとして千堂の刻印の場所を知っているということはもうそういう事だろう。この人が僕たちを……
僕はまたしても手を入念に見せる。
「どうですか?何もないでしょう?」
「…………おかしいですね。あなたは手のひらに痣があった筈ですが」
!? しまった!! 僕の手のひらにはうっすらとではあるが痣があった。それを神父様とゆかりさんは知っている。痣まで消えてしまっていては不自然だ!
よく見るとレインとジュリーも落ち着いている風を装ってはいるものの、二人とも目が泳ぎまくっている。
おいおい、まずいんじゃないかぁー?君達やってくれたなぁ!!
「ま、まぁ痣が消えるくらいなんでもいいじゃないですか。逆十字なんてちょっと教会に住んでる身としては気持ち悪かったし」
「………そうですかねぇ」
神父様はゆかりさんを見る。ゆかりさんは首を横に振るだけで何も言わない。神父様はそこから少し考え込んで、
「こういう事もありますかね。もういいですよ」
「そ、そうですか」
ホッと一息つく。これでもう安心だ。安心して明日は……
「ですが明日はダメです」
「な、何でですか! いくら神父様とはいえ横暴ですよ!」
「ヒカリ。あなたの体は何も悪くないみたいね。でもあなたは一度罪を犯した。前もって友達のところに行くと連絡すればよかったのに当日の、それも夕方遅くにラインで連絡するなんてダメでしょう?」
「だ、だから今日はこうやって頼んでるんじゃ………」
「ヒカリ君」
神父様の少し機嫌の悪そうな声が食堂に響く。これはマズい。初めて聞いたよ、こんな声は。
「ダメなものはダメです」
「そ、そんなぁ……」
こうなってはもうどうしようもない。もう僕の意見はマトモに聞いてはくれないだろう。
そして話は冒頭に移る。何度説明してもキリがない。無言を突き通されては打つ手がない。
昔、友達の誰かが言っていたような気がする。親は子を選べない。でも子供だって親を選ぶことができない。そして子供は自由にできないのに、親は子供を束縛してくるものだと。
規則とは大人が決めていくものだ。それは規制することで行動を制限し、危ないことや悪いことから守ろうという意図があるのかもしれない。校則や家のルールでもそうだ。あれはダメ。これもダメ。ダメダメダメ、ダメ。これでもかというくらいにルールというものが存在する。
普通に生活していたらそのルールは破ることはないだろう。普通に起きて、普通に暮らし、普通に寝る。それが一般的な人生だ。ましてや高校生なんかは学校さえ行っていれば何もしなくてもいいというくらいまである。
でももう僕だって高校生だ。そろそろ自立したい。
いつまでも親のいう事をハイハイと従っていたらそれはもう親の操り人形だ。僕の人生は僕が決めていきたい。いくら元は孤児とはいえ、孤児なら、親がいないなら、保護者のいう事をすべて聞かなければならないのだろうか?それは本当に僕の人生だろうか?
「神父様。僕だってもう高校生です。一日家を空けるのがそんなにダメなことなんですか?」
無駄だと思いつつも僕は最後の抵抗として神父様に頼み込んでみる。
「あなたはまだ高校生ですよ?相手のお家にも迷惑が……」
「迷惑はかけません。別に暴れに行くわけではありませんよ?」
「ですがあなたはまだ子供で……」
「ではいつまで子供なんですか?」
いい加減イライラしてきた。この人はもう人の話を根本的に聞いてない。行かせないという結果の為の口実を作っているだけだ。
「それは成人したらで……」
「それまではこの教会にいろと?休日でさえどこにも行くなと?」
「そうは言ってません。外泊が危ないというだけで」
「ヒカリ、あなた変よ?」
ゆかりさんが宥めにかかるがもう止まらない。
「危ないとは何なんです?僕が今までそんな危ないことをしてきましたか?」
「してはいませんが、何が起こるかわからないという……」
「そんなこと言ったら何もできないじゃないですか!」
僕は声を荒げる。
「バイト禁止の高校生に、『お金も稼げないのに偉そうな事言うな』って言ってるようなものでしょう?どうすればいいっていうんですか!」
「…………」
「国が決めた成人なんてアテになるんですか?そりゃ色々と国にいる以上、国に住むには国のルールがあるでしょうよ。でもこれは家庭のルールでしょう?国じゃない」
「ヒカリ、あなたは神父様の気持ちも……」
「僕の気持ちだってあるでしょ!」
そうだ。これは僕の気持ちだ。そもそも僕はあなた方の敵なんだ。何故記憶操作なんかしたかわからないけれど、そんなことをするのが家族な筈はない。
「もういいです。勝手に行きますよ、僕は」
「ヒカリ!」
食器を台所にもっていき僕は自室へ向かう。後ろからゆかりさんの声が聞こえるが知ったことか!
千堂の里は桃源郷だといっていた。もし教会に住めなくなったら、そこに一生住み着いてもいいのかもしれない。
ジリリリリリィィィィ……………
目覚まし時計の音で目が覚める。外はまだ暗い。時刻は朝の五時を過ぎたところ。外もまだ薄暗く、普段より早く起きた僕は気だるい体に鞭を打って体を起こす。
目覚ましを止める。こんな朝早くに起きたのは勿論、神父様たちに気づかれずに出ていくためだ。朝食だって食べる気はない。千堂の里は学校から三時間くらいだと言っていたし、昼食は里で食べればいいだろう。
身支度を整える。思えば制服以外で外を出るのは久しぶりだ。休日は部屋で本を読んでいるか、庭でレインとジュリーの二人と遊びまわってるくらいしかしてこなかった。二人を里に案内したいがそれはダメだろう。
ヒカリが着るのは今時の若者風のファッションだ。これは学校の帰り道に黒霧が選んでくれたものだ。アホなくせにファッションセンスがある黒霧は、ファッションの概念すら知らなかったヒカリを見かね、わざわざ選んでくれたのだ。その時は嫌々だったものの、今となってはありがたく思える。
持っていくものは二万円が入った財布にスマホ。本当は小雪に集合時刻を早めるようにお願いしたかったのだが、ヒカリは小雪の連絡先を知らない。聞いてなかったのが悔やまれる。
「…………僕は謝りませんよ」
誰が聞いてるわけもないその独り言をヒカリは言い訳のように呟く。そして窓をあけ、二階から命綱もなしに直接ジャンプする。
シャン!
地面に亀裂が入る。しかし、ヒカリ自身に衝撃が来ることはなかった。この力の事を大分理解したヒカリにとってはお手の物である。宇宙からダイブしたって死にはしない。
「行っちゃうの?」
後ろから声をかけられた。驚いて振り向くとレインが一人、そこにいる。
「………ああ、行くよ」
「帰ってくる気はある?」
「どうだろう。そこが良ければそこにいる。僕の居場所は僕が決めたい」
「そう…………」
レインは悲しそうな目で下を見ている。風に吹かれて髪がなびく。それはもうヒカリが知っているあの幼い中学生のものとは明らかに違っていた。
「本当はね、私は今あなたを止めなければならないの」
「それでも僕は行くよ」
「ええ。わかってる。正確にはあなたを止めるように強制されているのだけれども……ふふ、あなたの『死に至る一撃』は死刻虫だけでなく、"服従"の"祝福"ですら殺してしまった。それをあの二人は気づいていない……」
死刻虫? 祝福? それに今『死に至る一撃』って……
「行って、千堂。あなたはもうじき本当に逃げられなくなる。粛清隊は本気になった。来月から部隊が本格的にこちらに配属されるわ。だからこれはいい機会よ……」
「さっきから何を言って……」
「忘れないで。あなたは強い。でもあなたは裏切られて今こういう状況になってるの。そしてお願い。もし可能であるならば私達を…………」
その先をレインは言わなかった。ああ、その先は言わなくてもわかってる。
「私の魔術がもうすぐ切れるわ。そうしたらあの二人が起きてしまう。あなたがいなくなったことを知れば、ただ単に家出と思うか逃げたと思うのかは謎だけど、どちらにせよ碌なことにはならないわ」
「…………わかった。これが最後になるかもしれないけれど、今まで楽しかったよ、レイン」
「ええ、私も本当にあなたの事が好きだったわ」
え?
「じゃあね。私の初恋の人」
そう言うとレインは家の中に戻っていってしまった。なんだろう。この気持ちは。今までレインをただの中学生としか見ていなかったが、昨日から大人びていたり、優しい口調になったりと変化の幅が広すぎる。
でもそうか……レインもそういう年頃だったのか……
僕は生まれて初めて女性に告白されるというビッグイベントを迎えたわけだが、複雑な心境になった。
僕は足早にその場を離れる。そして今日も僕は坂を下っていくのであった。
時刻はもう九時半を過ぎている。
約束の時間は九時だったよね?まさか夜の九時と勘違いしてない?
場所は千の宮高校の校門の前。にある茂みに隠れている。どうしてって?レインの言い方的に探しに来るかも的なこと言ってたじゃん?だからよ。
「あ、いたいたー。待ったー?」
「めっちゃ待ったわボケーーーーー!」
すると、ヒッという短い悲鳴を小雪があげる。
「そ、そこは『全然待ってないよ、今来たとこさ』じゃないの!?」
「そんなの幻想じゃい!なんで遅れたのか理由を説明してもらおうかぁ、ええ?」
「そ、それはヒカリに会うからおめかししようと思って……」
え?
「そ、それで遅れたのよ。悪いっ!」
確かに、私服にしては気合が入ってるっぽかった。全体を黒を基調とした服を着ており、いろんな意味で街中を歩いていたら男はみんな振り返るだろう。でもなぁ………
「で、本当は?」
この人がそんなウブな理由で遅刻する訳ないんだよ。目を見ればわかる。これは……
「あ、わかっちゃった?見たいテレビがあったから見てきたの♪」
嘘つきの目だ。魔性の。女ならすべてが許されると思ってる目だね。
「ごめんけど、今僕気持ち的にもシリアスな場面だからさ。ふざけてる場合じゃないんだよ」
「? どういう事?」
「とりあえずその里まで案内してくれる?その途中に話していくから。あ、あとなるべく人に見つかりたくないんだ。人通りの少ない道とかない?」
「何よヒカリ、誰かに追われてんの?」
「………」
「………マジのようね。わかったわ。じゃあついてきて」
僕の真顔をキチンと理解してくれたのか。小雪さんも真顔になり素早く移動してくれる。ありがたい。こういう時何も聞かずに行動してくれるのは本当に助かる。
「見失わないでね」
見失う?後ろをついていくだけで?そんなことあるもんか。
そう思っていたのだが一瞬で小雪さんは目の前からいなくなった。
「置いていくわよーー」
遠くの方で声が聞こえる。速すぎでは!?
僕も本気で小雪さんの後を追う。今ならわかる。千堂としての能力の引き出し方が。イメージが。僕に足りないのは明確なできるという想定。それが足りなかったから力が今まで発揮しなかったのだろう。
気を取り直して僕は走る。もう学校にも戻れないかもな、と思いながら。
「そんなことがあったのね……ていうかあんた教会に住んでたの?」
「うん。言わなかったっけ?」
「聞いてないわよ!?でもそうか。これでなんとなくわかったわ。ヒカリの記憶喪失の黒幕は十中八九粛清隊ね」
「粛清隊?」
「ええ。粛清隊。要は教会の戦闘集団のことよ。彼らは表向きでは神を信仰しているけど実際は人を信仰しているの」
「人を?」
僕らは今山の中を走っている。正確には地面だけではなく、木の枝を足場にしたり、倒木を踏みつけたりしながら飛んだり跳ねたりしているわけなのだが。最初はちゃんと道路を走っていたのだが、すぐに山の中に入り、こうして獣道ですらない所を延々と走っている。
「そうよ。つまり、人以外の異形の存在を否定しているのよ」
「なんか祓い人みたいだね」
「そうね。粛清隊が私達とかも敵にしなければね」
「え?どういう事?」
「つまりね。彼らは普通の人々の生活を守るって考えなのよ。私達のような"奇跡"を持つ存在はもはや人ではないって感じかしらね。祓い人の中にも妖魔の力を取り込んでる人が結構いるから粛清隊の標的ってわけ」
そういえば綾子さんの魔眼もそんな感じだった気がする。
「私がなにより気に食わないのがね、粛清隊も"祝福"っていう異能を使うことなのよ」
「それって僕が受けていた記憶操作なんかのこと?」
「多分ね。人によってその力の系統は違うらしいけど。その力の起源すら私達にはわからない。噂では後天的に身につけるものらしいけど、実際はよくわからないわ」
他の組織は許さないのに、自分たちが能力を使うのはセーフなのか。なんて奴らだ。矛盾だろう、どう考えても。
「やってることは魔女と変わらないわ。人体実験や卑劣な手段で粛清隊は成り上がってる。『すべては人の世の為』って理由をつけてね」
「悪質な宗教団体みたいなものか」
「そうね。妄信的なのが正にそれよ」
僕らはもう走り始めて三十分になる。でも距離的にはもうかなり走ったのではないだろうか。千堂の身体機能故か、息も全く上がってないが。
「そのレインとジュリーって女の子達はきっと粛清隊の飼い犬ね」
「飼い犬?」
「ええ。要は粛清隊に捕まった異形の者たちが人体実験や制約を受けて教会の為に働かされている者たちのことよ。多分その二人は人間じゃないわ」
二人が人間じゃない!? 確かに変な能力使ってたけど……
「赤嶺教会は私達の中でも少し有名なの。赤嶺善導。彼、相当強い筈よ」
「神父様が?」
「ええ。私達に匹敵するって言われてるくらいだもの。でも二、三人千堂がいれば普通に勝てるでしょうけどね」
あの神父様が"異端狩りの千堂"と同等だとは……人は見かけによらない。
「ともかく、あなたあの教会から抜け出して正解よ。あれ以上いたらヒカリはもう完全に元に戻れなかったかも」
「そうか……あ、元に戻ると言えば影道って知ってる?」
途端、小雪の足が止まる。ちょ、ちょっと急に止まらないでよ…。
「………どこでその名前を聞いたの?」
「え?確か祓い人のお寺だったけど……あ、言ってなかったっけ?」
「………前に言ったことを訂正するわ。以前、最果てに至った人数聞いたことあるでしょ」
「あー、そんなことあったね」
「あれは間違いよ。千堂影道。この時代唯一、最果てに至った最強の千堂。そして、十年前に行方不明になった音信不通の千堂。それが千堂影道。私の憧れだった人」
…………それが僕かもって言った方がいいかな……
「どうしてその名前をお寺で聞いたの?」
「え!? えーっとなんでだっけ? そ、そうだ。魔人狩りの時にお世話になったって言ってたから……」
「……そう。もし影道さんに会ったら教えてね」
「う、うん……」
なんだろう。嘘ついちゃった。でも僕が影道なんて証拠まったくないんだよね。でもおかしいよね。十年前って言えば僕七歳じゃん。説明の仕様がないよ。
「……待って! 誰かいるわ!」
「え、どこに!?」
だが周囲には木と草むらがあるだけで何も見えない。
「目だけで判断しないで。音で聞いてみて」
「音?」
耳を澄ます。すると確かに声が聞こえる。だが感じ的にめっちゃ距離ある。よく聞こえたね。僕もだけど。
「襲われてるわ。おそらく祓い人が」
「ええー!じゃあ助けに行かないと!」
「は?なんでよ。無視していくわよ」
「なんでさ!?」
「言ったでしょ?私達には関係ないの。余計な戦闘は控えるべきだわ」
「で、でも……」
知ってしまった手前知らぬ存ぜぬでは気が済まない。何より祓い人には一宿一飯の恩がある。これは人ととしての矜持であり…
「どうしても行くというのなら止めないわ。でももうあなたを里に案内するのは無理ね」
「……」
「私だって暇じゃないもの。行くたびに首ツッコんで戦ってたら疲れちゃうわ」
「わかったよ。無視して行こう」
「あなたやっぱり千堂ね。物分かりがいいわ」
なんか褒められた気がしない。でもそうか、今から行くところはそういうところだ。これまでの価値観とは全く違うところに行くというのならそちらに合わせるのが筋というものだろう。郷に入っては郷に従えってね。
僕らはそれからも走り続ける。するとまたしても小雪さんが足を止める。
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「……まずいわね。追って来てる」
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それはつまり……。小雪は大きくため息をつくと頷いてこう言った。
「ええ。ここで迎え撃つしかないでしょうね。準備して」
「そうか……って準備って?」
「あなたは触れたものを破壊する力でしょう?だったら奇襲に向いているわ」
「ああ、それ勘違いだったんだ」
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「ああ。『弱点に至る一撃』。これが僕の"奇跡"の名前らしい」
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「そ、それ影道さんと同じ能力じゃない!!」
「あー、そうみたいだね。それがどうしたの?」
「どうしたのって…。まぁ同じ"奇跡"の能力者って意外といるからありえないことではないんだけれど……でもそうか。あなたも影道さんと同じなのね……」
小雪はうーん、と深く考え込んでしまっている。こうしている間にも追跡者が段々とその距離を縮めてきているのがわかる。足音だけでも十人以上は確実にいる。かなりの人数だ。
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「これを相手に投げるの。忍者の手裏剣みたいにね」
「なるほど。これなら確かに少ない力で敵を圧倒できるな。でも僕鎧とかなくて大丈夫かな……」
「何言ってんの?あなたに防具なんか必要ないわよ」
あ、そっか。僕のこの力は無敵でしたね。
「小雪さんはどうすんの?」
「私はほら、この服はちょっと特殊でね。『自動変形防御』っていう概念付与された特別製のものだから心配しなくてもいいわ」
聞く限り自動で服が防御してくれるのだろう。まったく千堂とはつくづく反則だ。
「師匠がくれたものなの。よく考えたら初めてね」
「何が?」
小雪はニヤっと面白いものでも見つけたかのように笑う。それは少し魅惑的でもあり、子供っぽさを残している感じでもあった。
「千堂として戦うのがよ。あなたに黒色の戦い方ってものを見せてあげるわ」
小雪さんマジかっけぇ……このまま敵を一掃してくれないかしら……
なんだかんだでもう敵がすぐ近くまで近づいている。待ち伏せするのって結構怖いよね……。特に相手の人数が多いとさ。
接敵まで十秒前。十、九、八……………
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