紅い騎士の物語

アヴァン

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神隠し

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「いいか?基本はオレと安城が前衛だ。九寺は弓矢で援護。ヒカリは九寺の護衛だ」

 編成を決める際、蓮也はヒカリと安城、九寺にそう指示した。ヒカリが手をあげる。

「僕が前衛の方がいいんじゃないですか?」
「いや、ヒカリとオレだとすぐ終わっちまう」

 終わらせてもいいと思うけどなー。

「それにな、戦場には伏兵なんかは付きものだ。相手がリンエイただ一人っつーのは虫のいい想定なんだよ。確実性を期すならオレと安城が組んで、ヒカリと九寺が組んだ方がいい」

 そういえば水城さんにも想定が甘いと言われたっけ。僕は指揮官とかには向いてなさそうだ。

「細かい作戦とかあるんですか?」
「そうだなぁ、確かにそういうのはしっかりと立てていた方がいいのは事実だ。だが、綿密な作戦を立てるとアドリブに弱い奴は急な作戦変更があると動きが鈍っちまう。即席のパーティーだと必要最低限が望ましいな」

 確かになー。僕は個人的な戦闘しかしてこなかったから、どうしたらいいか迷うかも。

「だから、こういう時は単純でいいんだよ。いざとなったらオレが安城を守る。ヒカリは九寺を守る。な?わかりやすいし、生存率上がるだろ?」
「わ、私は自分の身くらい自分で守るわよ!」
「あん? 何照れてんだよ。いいって、守るって!お前はぜってぇー死なせねぇからよ!」

 この人は安城さんの事をどう思っているのだろうか。千武を渡すくらいだからかなり気にはいっているんだろうけど、恋愛感情はあるのかな。でも最初はマジ殴りから始まったんだよ?

「まぁ、作戦はこれでいい!作戦と呼べるもんでもねぇけどな!うははははは!」

 これ雑魚キャラが言いそうなセリフなんだけど、大丈夫かなぁ。いや、この人槍最強の千堂だから強いことは強い筈なんだけど……。










「千の道は槍の道!"異端狩りの千堂"!"一の槍"!千堂蓮也!推して参る!」

 そして、ついにリンエイとの対決が今始まるというわけだ。いきなりの自己紹介死刑宣告に、戸惑うリンエイだったが、それを聞いても怯える様子はなく、寧ろ、バチバチと放電することで敵意をあらわにする。

「せ、千堂が来ることは予想してタ! でも、一の位が来るなんて予想外ダ!」
「おうおう! ビビってんのかぁ? よし、安城! 一番槍はお前がやりやがれ!」
「わ、私?」
「おう!せっかく白燕をやったんだ! ある程度使いこなせないようなら返してもらうぞ?」
「わ、わかったわよ!」

 そう言うと、安城は槍を構えて突進する。

 (あ、軽い!)

 渡された時にも思っていたことだが、安城は改めてこの槍の凄さに驚く。今まで持っていた槍は攻撃力はあったのだが重く、動きがどこか緩慢になることがあった。しかし、この槍は今まで持っていたどの槍よりも重いフォルムをしているのに、軽さは抜群。『軽量』が付与された槍は伊達ではない。

「てぃやぁ!」

 リンエイの真正面から白燕を突き刺す。こういう場合、回り込んで攻撃するよりも、真正面から攻撃した方がいいことを安城は知っていた。そもそも、側面や後方へ回り込むことなど、リンエイは許してはくれないだろうが。

「遅イ!」

 瞬発力はあると言っていただけあって、なかなかの速さで突っ込んでいったにもかかわらず、リンエイはいとも容易く横に飛び跳ねて躱す。そして、その体毛が更にバチバチと音を立て、電気の塊が安城に向かって放たれる。

「くっ!」

 安城はその電機の塊に対し、避けることは不可能だと判断し、槍を突き出すことで防ごうとする。従来の槍であれば、槍が電気を通さずとも壊れるような威力ではあるのだが、これは千武。頑丈さにおいては他の追従を許さない。よって……

「な、何ィ!?」

 槍に触れた途端に電気は霧散してしまった。

 (なにこれやばっ!!)

 安城は自分でその攻撃を防ぎつつも、その行動の結果が信じられなかった。と、ここで遠距離から見守っていた九寺が構えていた弓で矢を放つ。

 バシュ! バシュ! バシュ!

 矢はリンエイの体に当たりつつも、その体毛に阻まれて傷一つつかない。祓い人の矢は決して弱いものではない。通称、『万能の矢』とまで言われるこの矢は殺傷力も高められており、どんな妖魔にも効果を及ぼすとされている。しかし、相手は三大妖魔。一介の祓い人の矢など効くわけはないという態度でリンエイは九寺を睨めつける。

「お前らなんかの矢が僕に効くわけないダロ!」
「ほらぁ~! 私に千武があればもっとやれるのにぃ~!」

 こっちを見ないでよ……。僕だって千武の正規品持ってないんだから……

 リンエイは矢は恐れるに足らないと判断したのか。標的を安城と蓮也に定める。安城は毅然として槍を構えたままだが、蓮也が腕を組んでそれを見守っているのが気に食わなかった。

「オイ! そこの蓮也とか言うヤツ! なんでお前は余裕そうなんダ!」
「あん? 余裕そうじゃねぇ。余裕なんだ」
「こ、コイツ!」

 頭にきたリンエイは安城よりもいけ好かない蓮也に対して突進の構えをとる。

「隙あり!」

 安城が再度リンエイに対して突きを繰り出すが、リンエイはそれを躱し、安城の近くの地面をその大きな前足で叩きつけることによって、バランスを崩させる。

 ドォぉォぉォン!

「ち、ちょっとそんなのアリ!?」

 地面の土が浮き上がったことにより、安城は体勢を崩し、その拍子で後ろへと吹っ飛んで行ってしまった。

「ほらほら! お前の番ダ!」
「はぁ……、情けねぇなぁ、安城。まぁ、仕方ねぇ。こいよ、犬っころ」

 だるそうに槍を構える蓮也。その構えは投げ槍の構え。一度限りの投擲攻撃を選択したことに疑問を覚えながらも、リンエイは体中の体毛を放電させながら蓮也に突っ込む。

「せいっ!」

 蓮也が槍を投げる。やる気のない姿勢で投げられたにしてはレーザービームのような速度で槍は飛んでいく。しかし、リンエイはそれを僅差で躱す。

「油断するからダ!」

 その勢いのまま蓮也に噛みつこうとその大きな口を開け……

 ドゴォォォォ!

「ぐばぁぁっぁぁ!?」

 突如、頭に衝撃が走る。な、なんダ! 何が起こっタ!?

「はぁ……全く、どいつもこいつも槍にばかり目がいきすぎなんだよ」

 吹っ飛ばされながらも空中で体勢を整えたリンエイは放心した顔で蓮也を見る。

「オレは昔、槍無しで特訓してた時期もあんだ。当然、体術も極めてる」
「な、今のは殴ったのか!?」
「見えなかったのか? ちげぇよ、蹴ったんだよ」

 リンエイはクラクラした頭で冷静に努めようと前足で地面を蹴って落ちつかせる。槍使いだが、体術も得意。しかも、速度が自分より圧倒的に速い。ということは……

「お前はどう足掻いてもオレには敵わねぇ。どうする? 漢を見せて自害するか、漢になって戦って死ぬか。漢気を感じさせてくれよ」 

 槍を持った女、離れたところにいる弓矢の女と赤い甲冑の誰か。そいつらを倒しても自分が勝てる見込みはない。状況を把握したリンエイはくっくっく、と突如笑い出す。

「あん? どうした?」
「いいヤ、ここまで追い込まれたのは久しぶりだと思ってネ。でも、ここで負けるわけにはいかないんダ!『神隠し』!」
「!! まずい! 三人共! オレに近寄れ!」

 蓮也が初めて見せる焦った顔にヒカリ、九寺、安城はただ事ではないと感じ、理由を聞くより先に体を動かした。しかし、ヒカリと九寺はかなり離れた場所にいて、安城も吹っ飛ばされていた為時間がかかる。

「フハハハハハ! 間に合うわけないヨ! さぁさぁ! 君たちには過去最高の悪夢をお届けしよウ!」

 周囲が歪む、空間が歪む。

 今自分が何をしているのか、走っているのか止まっているのかもわからない。横にいる筈の九寺さんがぼやけて見える。遠くにいる安城さんと蓮也さんがかすむ。けれど、しっかりとリンエイのその姿だけが網膜に映り続ける。

「行ってらっしゃい、お前タチ。帰ってこれるかは君達シダイ。魂の強さを僕に見せてヨ」

 その言葉を最後に僕は意識を失う。最後に覚えているのは、ニタニタと気色悪く笑っているリンエイの表情だけだった…………









「…………ここは?」

 気づけば山の中に倒れていた。気を失う前の事は鮮明に覚えている。リンエイが何かをしたことはわかるのだが、状況がつかめない。

「ふん、リンエイの奴。俺様まで巻き込みおって」
「ああ、友禅。よかった。お前も一緒なんだな」

 甲冑の腕に巻き付いていた友禅はするりするりと体をくねらせる。

「ここはどこなんだろう。わかる?友禅」
「いや、わからん」
「なぁ、リンエイの能力って何かわからないの?」
「わからんな。三大妖魔といわれて有名ではあるが、その能力は伝えられてはおらん。一切不明だな」
「そうか……九寺さんも安城さんも蓮也さんもいないみたいだし、僕はどこかに飛ばされたのか?」

 周囲を千堂の感覚で探ってみても人の気配すらない。サアァァ……という風の音と、チュンチュンと鳥がさえずる音。そして、ザバァァという川のせせらぎが聞こえるくらいだ。

「とりあえず、当てずっぽうでいいから動き回ろうか、友禅」
「そうだな。じっとしておくわけにもいかんだろう。まぁ、動くのは貴様だけどな」
「自分で移動しろよ」

 腕から離れる気配がない友禅を見ながらため息をつく。しかし、今はともかく動くことが先決だ。山を下っていくことにする。



 気づけば三時間経った。急ぐこともないので早歩き程度の速度だったが、いくらなんでも何も無さ過ぎではないだろうか。周囲の風景も全く変わっていないので、同じところをグルグルと回っている錯覚にすら陥る。

「なぁ、友禅。そういえばリンエイは神隠しって言ってたよな」
「言ってたな」
「じゃあここは異界ってこと?」
「知らんわ、そんなもん。つーか知ってたら教えるに決まっとろうが、バカ道が」
「あ、てめぇまたバカにしやがったな!」
「バカにバカと言って何が悪い!少しは人に聞くより頭を使えよ!」
「何だと!この爬虫類が!」
「脳無し人間めっ!」

「ええっと君達? 喧嘩はよしたらどうですか?」

「これは喧嘩じゃないよ!この無駄に偉そうな獣に説教を……え?」
「説教なら俺様が……は?」

 ヒカリと友禅が言い争っていると、それを木の陰から覗いている男がいた。

 身長は百八十にいかないくらいの長身で、すらっとした体型。髪はボサボサなのか意図的にそうしているのかわからないが、まとまりのない割にまとまっていた。服装は赤黒い作務衣をしており、この山ではかなり目立つこと極まりなく、靴は下駄というなんともミスマッチな見た目だった。

「ご、ごめんよ、何か邪魔したかなぁ?」

 気まずそうにその男は言う。そんなことよりも、目の前の男がこの距離になるまで気づかなかったという事がヒカリと友禅は驚いているのであり、話しかけられた事にビックリしたわけではないのだ。

「じ、邪魔はされてませんけど……あなたは誰です?」
「そ、それがし? ええっと、ごめんね? 名乗るのは必要最低限にしておかないといけない決まりだから」
「「??」」
「ま、まぁいいじゃないか。それがしの事なんて。それよりも、君達迷子?」
「迷子というか……まぁ、困ってはいますけど」
「あはははは。それを迷子というんじゃないか」

 そうともいう。てか、マジでこの人誰よ。

ふもとの村まで案内するよ。付いてきて」
「は、はい」

 僕らはその謎の某さんについていくことにした。後で考えれば、話す蛇の事や赤い甲冑の事を疑問に思われない時点でおかしいことに気づくべきだったのだが、この時の僕たちは某さんの不思議なオーラに戸惑って気づくことができなかった。







 某さんの案内から三十分後。道なき道を進み続けて着いた場所は絵にかいたような里のような場所だった。

 例えるなら昔話によく出てくる田舎の風景というべきか。広大な田園風景に平屋の木造の家。そのすぐ近くを流れる大きな川に、何人かの子供がはしゃいでいる声がのどかさを感じさせていた。

「ここが麓の村。神成村です」
「神成村!?」

 確かリンエイと戦っていたところが神成山だったような……

「? そんなに驚くことですか?」
「いや、そうですね……なんでもないです……」

 村の名前を聞いただけで驚かれても困るよね。でも、一体どういうことだろう。

「いやぁ、今日の山での遭難者が二組とは。隣村で何かあったんですかねぇ……」
「二組? 僕以外にも誰か遭難してたんですか?」
「はい。その方も某が見つけたんですがね。いやぁ、参りましたよ。某を見つけるや否や矢を放ってくるもんですから、無力化するのに手こずりました」

 あはは、と笑う某さん。軽く言っているが、危うく死にそうになったというのにこの笑顔はヤバいと僕は思った。

「それは大変でしたね。その方もこの村に?」
「はい。これから行きますよ。一応、よそから来た人は村長の所へ顔を見せることになってますので。構いませんか?」
「は、はい。勿論」

 何か時代を感じるなー。この村は現代社会から隔絶しているのだろうか。

 しばらくすると、村長の家らしきものが見えてくる。何故村長の家らしいのかというと、他よりも家の広さが倍近くあり、三階建てで蔵まであるとなれば、それは村長以外考えられなかったからだ。

 そんな村長の家(仮)から女性の泣き声が響いてくる。

「おやおや、まだあの方は取り乱しているようですねぇ……」
「この泣き声の女性が遭難者なんですか?」
「はい。某が無力化した後に『くっ!拷問するくらいならいっそ殺せ!』と泣きわめきましてね。気絶させてこの村に運んだのですが、起きてしまったようです」

 見た目とは裏腹に某さんは武闘派なようだ。さらって言うところがちょっと危ない感じを醸し出している。というかこの声って……

 誰かに似ているなーと思いながら村長の家の門をくぐる。一応、甲冑の顔当てだけは外す。家屋の中は本当に歴史を感じさせる板張りや家具で溢れており、もうこれだけで歴史博物館が作れそうな勢いだった。

 靴を脱ぎ、失礼かと思ったが、甲冑と刀は装備したままで家に上がると、一つの部屋の前にたどり着く。

「すいませーん。某です。また遭難者を連れてきたんですが」
「おう!入ってきやがれ! というか、この子どうすっかなぁー……」

 某で通じる村長に通じる事に少しおかしさを感じつつも、某さんがふすまを開けると、そこには半纏はんてんを着た禿げ頭の中年の男性と、泣いている巫女姿の女性がそこにはいた。というか……

「九寺さんじゃん」
「うわぁぁぁぁん……。え?ひ、ヒカリさん……?ヒカリさんだぁぁぁぁぁぁ!」

 顔をぐしゃぐしゃにして泣いている九寺魅音。その人がそこにいた。

「一人は怖かったですよぉぉぉぉぉ! 今までどこにいたんですかぁぁぁぁぁ!」
「ちょ、ちょっと! 離してください!」

 大学生のおねえさんに抱き着かれるという黒の会が聞けば裁判案件に遭遇しながらも、僕は興奮するどころか、うっとおしく感じて仕方がなかった。だって、涙と鼻水が甲冑につくじゃん。汚いじゃん。きついじゃん?

「君達知り合い? だったらよかった。じゃあ某はこれで」
「え?行っちゃうんですか?」
「うん。某はこの村の人間じゃないからね」

 じゃあどこの人なんですか?とは聞けなかった。いや、聞いても教えてくれない。そんな気がしたからだ。

「あ、ありがとうございました!何から何まで本当に感謝してます!何か渡せればいいのですが……」
「いいですよ、そんなの。おや?そういえばその甲冑。何か模様がありますね?」

 甲冑に模様?ああ。

「この甲冑の作成者の模様なんです。かっこいいでしょ?」
「はい。その刀も凄くいい物ですね」
「そうですか?では、この刀を感謝のお礼にどうです?」
「い、いいんですか?」
「はい、勿論」

 ここまで面倒を見てもらってお礼だけでは罰が悪い。刀の一本ぐらい渡しても問題ないだろう。というか九寺さんも何か言うべきではないだろうか。いい加減離して?

「ほら、九寺さんもお礼を言って」
「へ? あ、ハイ。すいません、みっともない姿をお見せして……。本当にありがとうございました」

 最後の最後だけ礼儀正しくてもなぁ……。もう君の威厳は最初から無いに等しいよ。寧ろ、君は某さんに矢を放ったことを土下座レベルで謝るべきだよ。
 某さんは刀を嬉しそうに受け取ると、九寺さんの方を見て苦笑しながら家を出ていく。

「いえいえ。これも何かの縁ですから。またどこかで会いましょう」

 いい人だったなぁ……。さぁて、これからどうしますかね。

「それで、村長。お願いがあるのですが」
「おう、どうした?」
「僕たち、実は今居場所が無いのです。一晩だけでも泊まらせてくれませんか?」
「それはいいがよぉ……。お前ら金はあんのか?」
「はい。いくらかはあります」

 ふっふっふ。以前水城さんからもらった大金が僕にはあるのですよ。僕の所持金は全部で十万円。一日泊まるくらいわけないね。

「これでどうですか?」

 見栄を張って二万円を出す。二人分の宿泊費としては十分すぎるだろう。しかし、村長はそれを見ても顔色一つ変えない。え?少ない?

「坊主。これは何の冗談だ?」
「へ?」
「こんな紙切れがお金のつもりか?」
「ど、どういう事ですか?」
「どうもこうも……おっと、すまない。客人が来たようだ。ひとまずここで待っててくれ」

 そう言うと村長は玄関の方へと向かっていってしまった。一体どういう事だ?二万円が紙切れなんてそんな言い方……

「おい」
「おぅふ。びっくりした。全然喋らないから死んでいたのかと思ったよ。で、どうしたの?友禅」
「いや、しゃべらなかったのはなんかそうした方がいいかと思ってな。それよりも俺様の思っている通りならこれはちょっとやべぇかもしれない」
「そうだね。いや、まぁ本当は気づいていたさ。時代遅れのこの村に、時代遅れの風習。時代を感じさせる風景に時代錯誤な服装。まぁ、気づかない方がおかしいんだけどさ」

 目の前には村長が訪問者から何かを受け取っているのが見えた。それは、どうやらお金のようで、僕たちが使ったことのない、いや、なんとなく見たことがある古銭のようなものだった。

「え、ど、どういうことですか?」

 マジで気づいていないっぽい九寺さんに、僕は現実をつきつける。

「言いにくいんだけどさ。僕たち、昔にタイムスリップしているみたい」
「な、なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

ここ一番という絶叫が家全体に響き渡る。やめなよ、村長が驚いてこっち見てるよ。

「ど、ど、どうすればいいんですか!? 私達、帰れるんですよね!? 生き残れるんですよね!?」
「し、知らないよ。僕だってわからない事だらけなんだ。とりあえず……涙拭けよ」

 見てられないよ。割とマジで。

 しかし、本当に困ったことになった。僕の無敵の『弱点に至る一撃』は最強な筈なのに、どうしてこんなにも効かない相手と戦うことになるのだろう。しかも、今回は足手まといの祓い人付き。詰んだよ。詰んだ。もういっそ殺してくれ。

 打つ手が無くなって僕は上を見上げる。ああ、空が茶色い……

「天井だろ」
「うっさい」
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