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1章 絆
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「お久しぶり、信君。私の事、覚えているかしら?」
学校帰りに突然呼びかけられ、振り向くと父親の親戚となる女性に声をかけられた。トウちゃんと出会う前、一時的に僕を預かってくれた。
「……お久しぶりです」
「よかった、一時的とは言え、家で世話になったんだから忘れるはずは、無いわよね」
癖のある笑顔を浮かべながら、無遠慮に僕の手を握って来た。
「今から、時間貰える?ちょっとだけ会って欲しい人がいるのよね」
僕の返事を待たずに、グイグイと握った手を離さず連れて行こうとする。
「待ってください。僕、用事があります」
「大丈夫よ、後で謝れば良いじゃない」
初めて会った時から、この女性が苦手だった。おばさんと呼ぶと般若のような顔をして頬を打たれた事もある。人の話なんて全く聞く気がないヒステリックな女性。
「久美子さん、手を放してください。僕、本当に用事があるんです」
織田 久美子という父親の親戚で、トウちゃんの前に僕の未成年後見人だった女性だ。既に僕とは関係が切れているはずなのに、何を今更会いに来たんだ?ズルズルと引き摺られ、僕が断ったって関係ないと連れて行こうとする。
「あら、織田様ではありませんか?」
突然呼び止められ、僕を引き寄せる力が弱まった。だけど、僕を掴む手は、放す気配はない。ぶんぶんと腕を振って、繋がれた手を振り解いた。振り返ると、久美子さんとは対称的な綺麗な笑顔を見せる雪ちゃんがいた。
「雪ちゃん!久美子さん、僕本当に用事があって…」
「そんなもの後にしなさい!私を困らせるっていうの?…コホン、柴田さん今日は、急いでおりますので失礼します。ほら、こっちに来なさい」
雪ちゃんに構わず、再び僕の腕を掴もうと手を伸ばす久美子さん。雪ちゃんは、僕と久美子さんの間に割って入り、僕を背に隠した。
「信君、お待たせしたかしら?織田様、申し訳ございませんが、彼は、私との約束がありますの」
僕を庇う様に、久美子さんの前に立つ。
「私は、その子の親戚なの、保護者なの。他人が口を挟むなんて非常識極まりないわ」
雪ちゃんの背にブリザードが吹雪くのがわかった。僕には聞こえた「どっちが非常識だよ クソババア」と雪ちゃんが呟いたのを。
「信君、このおばさんとは、どういう関係かしら?雪ちゃんにも教えてくれる?」
「あんたには、関係ないでしょ!他人が口を挟まないで!」
うん、雪ちゃんがぶち切れた。
「テメエの方が他人だろうが!この子の保護者は、木下 藤吉って言うんだ!何が保護者だよ!笑わせるな」
綺麗なお姉さんが、そんな啖呵切ったらダメだよ。さっきまで久美子さんに、連れ去られようと困っていたことも忘れるくらい、雪ちゃんの存在に安堵した。雪ちゃんが大きな声を出したおかげで、周りに人が集まって来た。久美子さんも、流石に冷静になったらしく周りを見渡すと悔ししそうに言った。
「チッ、今は分が悪いわね。出直してくるわ」
久美子さんは、踵を返してツカツカと立ち去っていった。
「雪ちゃん、ありがとう」
僕は、プンプン怒る雪ちゃんに抱きついた。
学校帰りに突然呼びかけられ、振り向くと父親の親戚となる女性に声をかけられた。トウちゃんと出会う前、一時的に僕を預かってくれた。
「……お久しぶりです」
「よかった、一時的とは言え、家で世話になったんだから忘れるはずは、無いわよね」
癖のある笑顔を浮かべながら、無遠慮に僕の手を握って来た。
「今から、時間貰える?ちょっとだけ会って欲しい人がいるのよね」
僕の返事を待たずに、グイグイと握った手を離さず連れて行こうとする。
「待ってください。僕、用事があります」
「大丈夫よ、後で謝れば良いじゃない」
初めて会った時から、この女性が苦手だった。おばさんと呼ぶと般若のような顔をして頬を打たれた事もある。人の話なんて全く聞く気がないヒステリックな女性。
「久美子さん、手を放してください。僕、本当に用事があるんです」
織田 久美子という父親の親戚で、トウちゃんの前に僕の未成年後見人だった女性だ。既に僕とは関係が切れているはずなのに、何を今更会いに来たんだ?ズルズルと引き摺られ、僕が断ったって関係ないと連れて行こうとする。
「あら、織田様ではありませんか?」
突然呼び止められ、僕を引き寄せる力が弱まった。だけど、僕を掴む手は、放す気配はない。ぶんぶんと腕を振って、繋がれた手を振り解いた。振り返ると、久美子さんとは対称的な綺麗な笑顔を見せる雪ちゃんがいた。
「雪ちゃん!久美子さん、僕本当に用事があって…」
「そんなもの後にしなさい!私を困らせるっていうの?…コホン、柴田さん今日は、急いでおりますので失礼します。ほら、こっちに来なさい」
雪ちゃんに構わず、再び僕の腕を掴もうと手を伸ばす久美子さん。雪ちゃんは、僕と久美子さんの間に割って入り、僕を背に隠した。
「信君、お待たせしたかしら?織田様、申し訳ございませんが、彼は、私との約束がありますの」
僕を庇う様に、久美子さんの前に立つ。
「私は、その子の親戚なの、保護者なの。他人が口を挟むなんて非常識極まりないわ」
雪ちゃんの背にブリザードが吹雪くのがわかった。僕には聞こえた「どっちが非常識だよ クソババア」と雪ちゃんが呟いたのを。
「信君、このおばさんとは、どういう関係かしら?雪ちゃんにも教えてくれる?」
「あんたには、関係ないでしょ!他人が口を挟まないで!」
うん、雪ちゃんがぶち切れた。
「テメエの方が他人だろうが!この子の保護者は、木下 藤吉って言うんだ!何が保護者だよ!笑わせるな」
綺麗なお姉さんが、そんな啖呵切ったらダメだよ。さっきまで久美子さんに、連れ去られようと困っていたことも忘れるくらい、雪ちゃんの存在に安堵した。雪ちゃんが大きな声を出したおかげで、周りに人が集まって来た。久美子さんも、流石に冷静になったらしく周りを見渡すと悔ししそうに言った。
「チッ、今は分が悪いわね。出直してくるわ」
久美子さんは、踵を返してツカツカと立ち去っていった。
「雪ちゃん、ありがとう」
僕は、プンプン怒る雪ちゃんに抱きついた。
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