とうちゃんのヨメ

りんくま

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1章 絆

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「全て、処分してくれて構いませんわ」

やめて

「あら、嫌だ。汚いぬいぐるみなんか捨てあげる」

それは、お母ちゃんが作ってくれたんだ。捨てないで。

「汚い手で触らないで!誰のお陰で生活出来るか解ってるの?」

僕を殴っても良いから、それだけは捨てないで!久美子さんお願いします。

縋り付くために手を伸ばそうとするも、身体が雁字搦めにされ腕を伸ばすこともできない。両腕を見ると蔦のように何かがぐるぐると縛りあげられる、身動きが全く出来なかった。

「トウちゃん、トウちゃん、トウちゃん!」

泣き叫ぶが、久美子さんは笑いながら僕の大事な物を捨てていった。




「うわぁ!」

不意に僕は、覚醒した。目尻から涙が流れていた事に気づいた。身体が動かない?見上げる天井は、僕の部屋と違うし……酒臭い…。

最悪な夢だ。両腕どころか身体中に巻き付くトウちゃんと雪ちゃん。お酒を飲んだからって寝相が悪過ぎだ。

「本当にもう!」

気持ち良さそうに僕に巻き付く二人を見て、苦笑いしか出ない。

「夢じゃないけど、夢で良かった」

僕が見た夢は、かつて久美子さんに引き取られたばかりの時の出来事だった。教科書や制服以外には、殆どの私物が捨てられた。

スヤスヤと気持ち良さそうに眠るトウちゃんと雪ちゃんをゆっくり引き剥がし、僕は布団を出た。居間で麦茶を飲みながら、窓から空を見ると、明るんできている。長閑な風景にホッと一息ついた。

飲む散らかされたテーブルを片付けたらお風呂に入ろう。襖の隙間からトウちゃんたちを覗くと、僕が居なくなった布団に転がり混み、二人が抱き合った状態になっていた。

僕は、デジカメを構えて、二人の面白い状態を激写した。

「うん、仕返しに丁度良いかも」

気分が良くなり、僕はタオルを持って静かに音を立てないように部屋を出た。せっかくの温泉なんだから、朝風呂も堪能したいもんね。





「うわぁ、さらに酷いことになっている」

朝風呂でサッパリした僕が目にした二人の姿は、トウちゃんからすれば屈辱的な状態だと思う。
取り敢えず、面白いのでいろんな角度から二人を激写。

雪ちゃんの腕枕で胸に顔を埋めるトウちゃん。トウちゃんの頭を何度も優しく撫でる雪ちゃん。雪ちゃん、眠っていても色気がすごいです。とってもカッコいいです。僕もドキドキです。雪ちゃんは、トウちゃんの頭に唇を当てて、チュウしている感じです。

「二人が起きたらどんな反応するんだろう?」

僕は、眠る二人の姿を、隣の布団で横になって見つめていた。



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