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1章 絆
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雪ちゃんの住む部屋は、35階建てのタワーマンション最上階だった。流石に世間知らずの僕でも、お値段が想像つかないレベルだという事は、知っている。
ベッドで眠る雪ちゃんを残して、僕は静かに部屋を出た。下着までクリーニングに出している雪ちゃんの部屋は、あまり生活感が感じられず、なんだか寂しい雰囲気だった。
塵一つ落ちてない磨かれた床、上から下まで曇り一つない窓ガラス。蛇口すらほとんど捻られたことがないと感じるシステムキッチン。食洗機もついているが、食器が一つもないため、一度も利用されたこともないだろう。
「寂しい…」
備え付けられている家具も、電化製品も何もかもが高級品で取り揃えられていたとしても、この部屋で寛いでいる雪ちゃんが想像できなかった。
冷蔵庫を開け、ミネラルウォーターを取り出し、封を開けた。コクリ、コクリ、喉を鳴らしながら飲み干した。
「うん、ミネラルウォーターも悪くないけど、僕は水道水の方が好きだな」
今もまだ、トウちゃんが怪我をした瞬間を思い出すと、身体が震えそうになる。だけど、心が折れずに普通でいられるのは、雪ちゃんの影響が大きかった。
「お母ちゃん、僕の周りは優しい人達がいっぱいだよ」
登ってくる朝日に、お母ちゃんの面影を重ねて僕は、みんなに感謝していた。
ふわっと優しく後ろから手を回され、優しい匂いに包まれた。
「雪ちゃん?」
「おはよう、優しい人達の中に、私も入っている?」
聞かれていた!僕の独り言聞かれていた!
「雪ちゃん、僕の独り言聞いてたの?」
耳まで熱くなってきた。きっと僕の顔は真っ赤になっているはずだ。ほっぺも熱い。
「信君、ねぇ、教えて?」
耳元で雪ちゃんに甘く囁かれた。雪ちゃんの甘い声が、耳の奥をくすぐってくる。ハスキーな声色が、僕の羞恥心をより刺激して、その場に座り込んで耳を、顔を、両手で隠したくてたまらなかった。
「優しい人達って、私も?」
「ヒャウッ」
雪ちゃんに回された腕が、僕をしっかりと絡め取って逃してくれない。モジモジ動いたせいか、雪ちゃんの唇が耳に当たって変な声が出た。雪ちゃんはいじわるだ!いじめっ子だ!僕が困っているのを絶対に楽しんでいる!
泣きそうになりながら、必死に僕は耐えていた。
「優しい…人…は…はぅっ…」
雪ちゃんが、僕の耳を唇で挟んだ!
何してんの雪ちゃん!
何度も何度もハムハムと僕の耳を唇で遊んでいる。ダメだ、ダメだ、ダメだ!
耳に意識がいって、思考がまとまらなくなってきた。
「トウちゃん!雪ちゃん!大先生!陽子さんーーーーーーー!」
言ったよ!言い切ったよ!
回された腕がぎゅーって力一杯抱きしめられた。
「雪ちゃーん!うわーん」
僕は、大声で叫んだ。涙が出てきたけど仕方ないもん!
「ぶぶッハハハッあはははっは」
僕を抱きしめたまま、雪ちゃんは、大声で笑い出した。笑って、笑って、しこたま笑って、息切れするまで笑って、やっと僕を拘束している腕を緩めて、一息ついた。そして、僕の両肩に手を置いてくるりと回転させられ、僕たちは向き合った。
「大好き 信君」
そして、雪ちゃんの顔がゆっくりと近づいてきて、思わず目を閉じた。
僕のおでこにに柔らかい雪ちゃんの唇が押し当てられた。
ちゅっとされて、雪ちゃんの唇が離れていったので、僕も目を開けた。
優しい笑顔で僕を見つめる雪ちゃん。
その笑顔を見てると、僕の心ポカポカと暖かくなってきて、嬉しい気持ちが溢れてくる。
「僕も、雪ちゃん大好き」
僕は、お返しに思いっきり雪ちゃんに抱きついた。
ベッドで眠る雪ちゃんを残して、僕は静かに部屋を出た。下着までクリーニングに出している雪ちゃんの部屋は、あまり生活感が感じられず、なんだか寂しい雰囲気だった。
塵一つ落ちてない磨かれた床、上から下まで曇り一つない窓ガラス。蛇口すらほとんど捻られたことがないと感じるシステムキッチン。食洗機もついているが、食器が一つもないため、一度も利用されたこともないだろう。
「寂しい…」
備え付けられている家具も、電化製品も何もかもが高級品で取り揃えられていたとしても、この部屋で寛いでいる雪ちゃんが想像できなかった。
冷蔵庫を開け、ミネラルウォーターを取り出し、封を開けた。コクリ、コクリ、喉を鳴らしながら飲み干した。
「うん、ミネラルウォーターも悪くないけど、僕は水道水の方が好きだな」
今もまだ、トウちゃんが怪我をした瞬間を思い出すと、身体が震えそうになる。だけど、心が折れずに普通でいられるのは、雪ちゃんの影響が大きかった。
「お母ちゃん、僕の周りは優しい人達がいっぱいだよ」
登ってくる朝日に、お母ちゃんの面影を重ねて僕は、みんなに感謝していた。
ふわっと優しく後ろから手を回され、優しい匂いに包まれた。
「雪ちゃん?」
「おはよう、優しい人達の中に、私も入っている?」
聞かれていた!僕の独り言聞かれていた!
「雪ちゃん、僕の独り言聞いてたの?」
耳まで熱くなってきた。きっと僕の顔は真っ赤になっているはずだ。ほっぺも熱い。
「信君、ねぇ、教えて?」
耳元で雪ちゃんに甘く囁かれた。雪ちゃんの甘い声が、耳の奥をくすぐってくる。ハスキーな声色が、僕の羞恥心をより刺激して、その場に座り込んで耳を、顔を、両手で隠したくてたまらなかった。
「優しい人達って、私も?」
「ヒャウッ」
雪ちゃんに回された腕が、僕をしっかりと絡め取って逃してくれない。モジモジ動いたせいか、雪ちゃんの唇が耳に当たって変な声が出た。雪ちゃんはいじわるだ!いじめっ子だ!僕が困っているのを絶対に楽しんでいる!
泣きそうになりながら、必死に僕は耐えていた。
「優しい…人…は…はぅっ…」
雪ちゃんが、僕の耳を唇で挟んだ!
何してんの雪ちゃん!
何度も何度もハムハムと僕の耳を唇で遊んでいる。ダメだ、ダメだ、ダメだ!
耳に意識がいって、思考がまとまらなくなってきた。
「トウちゃん!雪ちゃん!大先生!陽子さんーーーーーーー!」
言ったよ!言い切ったよ!
回された腕がぎゅーって力一杯抱きしめられた。
「雪ちゃーん!うわーん」
僕は、大声で叫んだ。涙が出てきたけど仕方ないもん!
「ぶぶッハハハッあはははっは」
僕を抱きしめたまま、雪ちゃんは、大声で笑い出した。笑って、笑って、しこたま笑って、息切れするまで笑って、やっと僕を拘束している腕を緩めて、一息ついた。そして、僕の両肩に手を置いてくるりと回転させられ、僕たちは向き合った。
「大好き 信君」
そして、雪ちゃんの顔がゆっくりと近づいてきて、思わず目を閉じた。
僕のおでこにに柔らかい雪ちゃんの唇が押し当てられた。
ちゅっとされて、雪ちゃんの唇が離れていったので、僕も目を開けた。
優しい笑顔で僕を見つめる雪ちゃん。
その笑顔を見てると、僕の心ポカポカと暖かくなってきて、嬉しい気持ちが溢れてくる。
「僕も、雪ちゃん大好き」
僕は、お返しに思いっきり雪ちゃんに抱きついた。
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