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1章 絆
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「お前が、織田 信だな」
階段を駆け上がってきた信の目の前に立った男は、雪之丞が真後ろにいる事を気にもせずそう呟いた。今は落ち着いて隣で眠る信を見ると、大きな怪我がなかった事に安堵した。
犯人の情報は、未だ詳しく報告は受けていない。警察との段取りは、全て藤原に委ねている。
信を起こさないように雪之丞は、ベッドから降りた。そのままリビングに向かいノートパソコンの電源を入れた。早く藤原に報告しておくべきだと思ったからだ。
病院で伝えても良かったが、信の精神面に配慮して敢えて話をしなかった。恐らく、犯人は織田 久美子と縁のある人物に間違いはないだろう。
「自分の壊滅的な家事能力が、こんなところで役立つなんて想像もつかなかった」
信自身、雪之丞にまるっと世話になる事は、皆が言い聞かせてもメンタル的に負担であるはずで、まして絶対的な信頼を寄せる藤吉が、信を庇って重症を負ってしまった。信の性格から自責の念に駆られてもおかしくはなかった。
雪之丞の家で、全ての家事を引き受ける。
信にとって、雪之丞の家で世話になる理由が出来たのだ。
「自虐的なネタだけど、これも報告しておく必要あるかもね」
雪之丞は、メールを藤原と藤吉に送信し、パソコンの電源を落とした。ベッドでは、スヤスヤと眠り続ける信がいる。大好きだった寧々の息子。雪之丞にとっても信の存在は、大きくなりつつあった。
「そう、怪我をしたのは木下藤吉だけなの、残念ね。いっそ死んでくれたら良かったのに」
久美子は、一本の電話で藤吉の事故について報告を受けていた。
「まるでゴキブリ。私の邪魔だけをしてくれるわ」
久美子は、どうしても信を手元に置きたい理由があった。本来、信の未成年後見人は、久美子自身だった。信の父親は、久美子の兄であり、遺産は全て妻の寧々と信が相続した。その寧々も死んだ。残された相続人は、信だけだったため後見人の立場を利用して、全て横取り出来ると安易に思っていた。
親戚ということもあり、書類さえ整えば裁判所は簡単に久美子を後見人として認めた。面倒な手続きは、全て司法書士に一任していた。
久美子には、どうしても信の相続した金が必要だった。後見人になり、いざ相続金を自分の口座に移そうとしたところ、金融機関から契約上できないとストップがかけられた。
理由は、相続人の財産を守るため、理由なき預金の移動は認められないというものだった。
信を養うため管理上、預金を移したいと言っても、金融機関は首を縦には振らなかった。寧々の保険金の受け取りにしても、振込先の変更について、保険会社は融通が効かなかった。
久美子にとっては、自分の都合通りに動かない金融機関や保険会社は、疎ましいと思う以外になかった。
あてにした金の工面ができないので有れば、信自体は用無しだった。ただの邪魔者。信は当たり散らすだけの道具だった。だから、施設に入れた。だから、後見人の罷免もすぐに受け入れた。
だけど、今はその時と状況が変わっていた。ある人物から、信が欲しいと言われた。引き渡せば、それ相応の報酬を約束してもらった。だからこそ、久美子は信を手に入れる必要が出てきた。
久美子は、藤吉が信と引き離されたことが、愉快で仕方がなかった。
階段を駆け上がってきた信の目の前に立った男は、雪之丞が真後ろにいる事を気にもせずそう呟いた。今は落ち着いて隣で眠る信を見ると、大きな怪我がなかった事に安堵した。
犯人の情報は、未だ詳しく報告は受けていない。警察との段取りは、全て藤原に委ねている。
信を起こさないように雪之丞は、ベッドから降りた。そのままリビングに向かいノートパソコンの電源を入れた。早く藤原に報告しておくべきだと思ったからだ。
病院で伝えても良かったが、信の精神面に配慮して敢えて話をしなかった。恐らく、犯人は織田 久美子と縁のある人物に間違いはないだろう。
「自分の壊滅的な家事能力が、こんなところで役立つなんて想像もつかなかった」
信自身、雪之丞にまるっと世話になる事は、皆が言い聞かせてもメンタル的に負担であるはずで、まして絶対的な信頼を寄せる藤吉が、信を庇って重症を負ってしまった。信の性格から自責の念に駆られてもおかしくはなかった。
雪之丞の家で、全ての家事を引き受ける。
信にとって、雪之丞の家で世話になる理由が出来たのだ。
「自虐的なネタだけど、これも報告しておく必要あるかもね」
雪之丞は、メールを藤原と藤吉に送信し、パソコンの電源を落とした。ベッドでは、スヤスヤと眠り続ける信がいる。大好きだった寧々の息子。雪之丞にとっても信の存在は、大きくなりつつあった。
「そう、怪我をしたのは木下藤吉だけなの、残念ね。いっそ死んでくれたら良かったのに」
久美子は、一本の電話で藤吉の事故について報告を受けていた。
「まるでゴキブリ。私の邪魔だけをしてくれるわ」
久美子は、どうしても信を手元に置きたい理由があった。本来、信の未成年後見人は、久美子自身だった。信の父親は、久美子の兄であり、遺産は全て妻の寧々と信が相続した。その寧々も死んだ。残された相続人は、信だけだったため後見人の立場を利用して、全て横取り出来ると安易に思っていた。
親戚ということもあり、書類さえ整えば裁判所は簡単に久美子を後見人として認めた。面倒な手続きは、全て司法書士に一任していた。
久美子には、どうしても信の相続した金が必要だった。後見人になり、いざ相続金を自分の口座に移そうとしたところ、金融機関から契約上できないとストップがかけられた。
理由は、相続人の財産を守るため、理由なき預金の移動は認められないというものだった。
信を養うため管理上、預金を移したいと言っても、金融機関は首を縦には振らなかった。寧々の保険金の受け取りにしても、振込先の変更について、保険会社は融通が効かなかった。
久美子にとっては、自分の都合通りに動かない金融機関や保険会社は、疎ましいと思う以外になかった。
あてにした金の工面ができないので有れば、信自体は用無しだった。ただの邪魔者。信は当たり散らすだけの道具だった。だから、施設に入れた。だから、後見人の罷免もすぐに受け入れた。
だけど、今はその時と状況が変わっていた。ある人物から、信が欲しいと言われた。引き渡せば、それ相応の報酬を約束してもらった。だからこそ、久美子は信を手に入れる必要が出てきた。
久美子は、藤吉が信と引き離されたことが、愉快で仕方がなかった。
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