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2章 楔
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もらったチケットは2枚。
「僕、舞台観に行ってみようかな?」
何だか、僕は歌舞伎自体はよくわからないけど、勝十郎さんにはもっとお近づきになりたいと思ってしまった。
「ふう、じゃあ、私が付き添ってあげる」
「何で、俺でも良いだろ」
「バカ、藤吉は歌舞伎なんてちっともわかんないでしょ。一応これでも片足突っ込んだことのある身なんだから、私が適任でしょ」
ぐぬぬと悔しがるトウちゃん。何だかかんだ言っても、トウちゃんと雪ちゃんは、僕を優先してくれる。
「ありがとう。トウちゃん、雪ちゃん」
雪ちゃんと勝十郎さんの関係が、決して悪い間柄では無い事がわかり内心ホッとしている。
もらった舞台のチケットは、京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)という演目だった。
白拍子の花子が、道成寺で舞を披露するうちに鐘に飛び込んで、蛇体となる、という内容で、勝十郎さんが演じる女形が、ひとりで一時間近くも舞い続けるという事らしい。
「華やかな演出も見どころだよ」
雪ちゃんは、簡単に説明をしてくれた。元々、歌舞伎役者となるために、勝十郎さんに師事を仰いでいたらしい。だけど、高校生になった時、トウちゃんと再会を果たして、役者ではなく別の夢を見つけてしまった。
特に見た目以外の才能も無いと感じていた事もあり、勝十郎さんに相談をして、舞台を降りたと教えてくれた。
勝十郎さんの奥さんともあまり良い関係でもなかったことから、家を出る事もあっさり許可してもらったと教えてくれた。
座席について、暫くすると照明が落ちた。ポンっと舞台にスポットが当たり、勝十郎さんが現れた。
舞台上で、勝十郎さんは、一瞬のうちに着物を替え、華やかな演出が舞台を盛り立てる。
当目で見ても綺麗な所作だとわかる。雪ちゃんの魅せられる所作は、勝十郎さんの教え込んだ所作だとわかる。
歌舞伎について、全く知らない僕でも、最後まで楽しめる演目だった。
舞台が終わり、雪ちゃんに連れられて僕は、勝十郎さんの楽屋に挨拶に行った。
「チケットをいただき、ありがとうございます」
楽屋で、お化粧を落としている最中にも関わらず、勝十郎さんは迎え入れてくれた。
「歌舞伎は、楽しめたかな?」
「はい」
歌舞伎の知識はないけれど、僕なりに覚えた興奮を勝十郎さんに伝えた。
勝十郎さんは、嬉しそうに話しを聴いてくれた。
「お時間いただき、ありがとうございました」
あまり邪魔しても悪い。僕たちは、楽屋を出ようとすると、楽屋にいた雪ちゃんの弟が、声をかけてきた私たち
「兄さん、もう戻って来ないの?」
どこか寂しそうに、雪ちゃんの袖を掴む。
「藍之介、またな」
ぽんぽんと頭をさすって、雪ちゃんは楽屋を後にした。僕もお辞儀をして、後を追った。
「雪ちゃん、雪ちゃん、良いの?」
「良いんだよ」
悲しそうで、悔しそうで、歯を喰いしばる雪ちゃんの弟の顔が、忘れられなかった。
「僕、舞台観に行ってみようかな?」
何だか、僕は歌舞伎自体はよくわからないけど、勝十郎さんにはもっとお近づきになりたいと思ってしまった。
「ふう、じゃあ、私が付き添ってあげる」
「何で、俺でも良いだろ」
「バカ、藤吉は歌舞伎なんてちっともわかんないでしょ。一応これでも片足突っ込んだことのある身なんだから、私が適任でしょ」
ぐぬぬと悔しがるトウちゃん。何だかかんだ言っても、トウちゃんと雪ちゃんは、僕を優先してくれる。
「ありがとう。トウちゃん、雪ちゃん」
雪ちゃんと勝十郎さんの関係が、決して悪い間柄では無い事がわかり内心ホッとしている。
もらった舞台のチケットは、京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)という演目だった。
白拍子の花子が、道成寺で舞を披露するうちに鐘に飛び込んで、蛇体となる、という内容で、勝十郎さんが演じる女形が、ひとりで一時間近くも舞い続けるという事らしい。
「華やかな演出も見どころだよ」
雪ちゃんは、簡単に説明をしてくれた。元々、歌舞伎役者となるために、勝十郎さんに師事を仰いでいたらしい。だけど、高校生になった時、トウちゃんと再会を果たして、役者ではなく別の夢を見つけてしまった。
特に見た目以外の才能も無いと感じていた事もあり、勝十郎さんに相談をして、舞台を降りたと教えてくれた。
勝十郎さんの奥さんともあまり良い関係でもなかったことから、家を出る事もあっさり許可してもらったと教えてくれた。
座席について、暫くすると照明が落ちた。ポンっと舞台にスポットが当たり、勝十郎さんが現れた。
舞台上で、勝十郎さんは、一瞬のうちに着物を替え、華やかな演出が舞台を盛り立てる。
当目で見ても綺麗な所作だとわかる。雪ちゃんの魅せられる所作は、勝十郎さんの教え込んだ所作だとわかる。
歌舞伎について、全く知らない僕でも、最後まで楽しめる演目だった。
舞台が終わり、雪ちゃんに連れられて僕は、勝十郎さんの楽屋に挨拶に行った。
「チケットをいただき、ありがとうございます」
楽屋で、お化粧を落としている最中にも関わらず、勝十郎さんは迎え入れてくれた。
「歌舞伎は、楽しめたかな?」
「はい」
歌舞伎の知識はないけれど、僕なりに覚えた興奮を勝十郎さんに伝えた。
勝十郎さんは、嬉しそうに話しを聴いてくれた。
「お時間いただき、ありがとうございました」
あまり邪魔しても悪い。僕たちは、楽屋を出ようとすると、楽屋にいた雪ちゃんの弟が、声をかけてきた私たち
「兄さん、もう戻って来ないの?」
どこか寂しそうに、雪ちゃんの袖を掴む。
「藍之介、またな」
ぽんぽんと頭をさすって、雪ちゃんは楽屋を後にした。僕もお辞儀をして、後を追った。
「雪ちゃん、雪ちゃん、良いの?」
「良いんだよ」
悲しそうで、悔しそうで、歯を喰いしばる雪ちゃんの弟の顔が、忘れられなかった。
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