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68 超合金

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試行錯誤を繰り返して、鋳型のデザインがようやく完成。次に、溶かした青銅の合金を流し込む湯口を作成していく。

「どこから流し込むんだ?」

京平もスセリビメにプレゼントを考えているらしく、石膏ボードを使って青銅鏡の鋳型を作っていた。

京平の鋳型は、朧の後ろ姿を模った鋳型だった。しっかりと短いハート型にあしらった二本の尻尾が可愛らしい。

「やっぱり下からじゃないか?」

彫刻刀で目印を入れ、そこを中心に扇型に流し込み易く削っていく。

「なるほどな、漏斗の半分がくっついてる感じだな」

「斜めにすることで、良い感じに流し込めるし、バリのカットもしやすいと思うんだ」

石膏ボードの粉が、室内に舞い散らないように、作業は牛舎で行っていた。

牛車は、浅葱が作業場もしくは工房として、既にリフォームを施してある。

ザリザリと石膏ボードを削る音が、作業場内で響いていた。

湯口が出来上がり、表面となる石膏ボードと粘土を使って貼り合わせる。

次に佐久夜と京平は、二人で鋳型が収まるくらいの穴を社の裏手に掘っていく。

石膏ボードに流し込む溶かした合金が、冷めるまで置いておくための穴だ。

石膏ボードがズレないように粘土の繋ぎを塗りつけ、二枚のボードを貼り合わせると、ゆっくりと湯口を上に向けて、穴の周りに掘った土を戻していく。

「おぉ、なんか本格的じゃん」

「本格的に作ってるんだよ!」

るつぼにハンダをニッパーで細かくカットし、銅片と同じくらいの大きさにする。銅片とハンダを三対一の割合でるつぼに入れた。

「これが、青銅になるん?」

「巻き物によると、銅とすずと鉛が必要なんだって。ハンダは、すずと鉛の合金だからな。それを材料にするんだよ」

るつぼにそれぞれの材料を入れ、ガサガサと揺すって混ぜ合わせる。
土間から七輪を持ってきて、朱丸の作った竹炭を入れ、るつぼを中にセットした。

「朱丸!」

佐久夜が、声をかけると、朧と妖術の訓練をしていた朱丸が、ぴゅいっと飛んでやってきた。

「呼んだか?」

佐久夜に呼ばれ、朱丸は、嬉しそうに笑顔をみせた。佐久夜は、朱丸の頭を撫でる。後から、朧と浅葱も佐久夜の元にやってくる。

「秋刀魚焼くにゃ?」

七輪を見て朧の首が、ひょこっと伸びる。

「お餅も持ってくるでござりますか?」

どうも、うちの妖たちは食いしん坊さんだ。

「違うよ。朱丸、七輪の中の金属を熱で溶かして欲しいんだ」

朱丸は、るつぼの中を覗き、銅片とハンダを見比べる。

「赤から黄くらいかな?…佐久夜兄ちゃん、梅干し二個貰って良い?」

「良いぞ!」

佐久夜の許可をもらい、うへへと笑いながら、朱丸は土間に梅干しを取りに行く。ガチャガチャと土間から音が聞こえてくる。朱丸が、梅干しを物色している音だ。

「もっと食べても良いぞ!」

「やった!」

戻ってきた朱丸は、左右のほっぺをりすの頬袋のように膨らませ、戻ってきた。

「酸っぱいパワーオーン!」

朱丸の体が明るく光り始める。赤い身体が熱を帯び始めると、朱丸はるつぼに抱きついた。

「梅干しは、ただ食べたかったんじゃねえの?」

「ま、良いじゃん」

七輪の周りに風を取り込みながら、朱丸は、黄色く輝いていた。





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