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95 神さまのお家

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佐久夜は、大きく目を開いている。その視線が上に向いていくのは、神さまの姿が、大きくなっていったからだ。

スセリビメは、立ち上がると神さまの胸に飛びつき抱きついた。

「兄さま!」

神さまは、両手でスセリビメを抱きしめた。胸の中で大きな声を上げて泣きじゃくるスセリビメを落ち着くように背中をぽんぽんと叩いている。

呆けていた佐久夜も我に帰り、その場に立ち上がった。

「神さま、何が起こったんです?」

「うむ、名を授かったことで、面が外れて本来の姿に戻ったのじゃ」

本来の姿に戻った神さまは、壇上の上から皆に手を振った。

スセリビメも落ち着いてきたのか、泣き止み神さまの顔をじっと見つめていた。

「ひぃ、もう我は姿を隠す事はないぞ」

その言葉を聞いて、コクンと頷くと嬉しそうに笑った。

こうして奉納祭は、無事終わりを迎えた。

後日、スセリビメより祝いの品が、神社に届けられた。

「鳥居だ」

「まごう事なき鳥居でござりますな」

再び鴉天狗軍団が神社にやって来て、親方の鴉天狗の指示のもと、チャキチャキと作業を始め設置していったのだ。

「兄さま、これで外の世界へも行けますわよ」

神さまと並んで座りお茶を啜るスセリビメは、にっこりと微笑んだ。

佐久夜は、新しく設置され鳥居を見上げる。そして、鳥居の奥に神さまの社が建っている。

「神さま、神社だよ?」

「うむ?最初から神社であったぞ」

「いや、最初は廃墟だったてば」

佐久夜と神さまは、笑う。

真っ暗で、ボロボロで、電気もガスもない廃神社だった。

「我も神を名乗ることが、できるようになった。これからも佐久夜と共にありたいと願うが、佐久夜はどうじゃ?」

朱丸は、にっこりと笑う。
朧は、当たり前じゃないかという表情で、神さまの横で丸くなっている。
浅葱は、うんうんと既に頷いている。

「もちろん、俺が神さまを支えてやらないとな」

神さまが、右手を握り拳を突き出した。佐久夜も、同じように拳を突き出す。コツンと二人は、拳を重ね大きな声で笑った。




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