結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。

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第二部第一章 ベリズリー

会話

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 そして、宿に着くと、運が良く二室の部屋が空いていた。
 私とアンは女同士ということもあり、同室になってようやく女同士の会話をできるタイミングができた。
 もちろん、プランスとの旅も恋愛的に楽しいけど、やはり女子力が低い男性なので、たまに気遣いのないような事を口にする。
 そういう面ではやはり、アンとここで会話していたほうが、精神面的にも楽である。

「ミア、先にシャワーお浴びになりますか?」

 ミアと呼び捨てしている、反面他は丁寧な敬語が妙に納得行かない。
 どうせならば、普通の会話で楽しむほうがいいのだけれど、そうは行かないように思えた。
 だから、

「敬語は使わないで、もしかしたら敬語でお偉いさんかと思われてしまうかもしれないから」

 理由をつけて、アンに提供した。
 単純な性格な彼女ならすぐに言う通りにしてくれるという、私の観察力から編み出した方法なのだから、上手くいくはず。

 そう自信満々に勝負に挑んだ。
 それで、待つこと数秒でアンは口を開く。

「はい・・・・・出来ません、理由はミアが憧れの存在だからです」

 何やら微笑む彼女の瞳は真っ直ぐ私を見つめる。
 憧れの存在というのは、どういう意味かわからないけれど、そう言ってもらえたのは嬉しい。たしかにそう思った。
 だからこそ、どうして私なんかを憧れるのかがわからない。
 今じゃあ屋敷を出た落ちぶれの女なのに。ただの人なのに・・・・・。
 
 憧れという言葉だけで私は悩み、ベッドに座り込む。
 ソファーがないからだ。
 まあ別に座りたいほど疲れてないのだけれど、何か考える時はコーヒーと座るのが大事だと本に書いてあった。

「どうして私なんかを、尊重するの?」

「王妃だからって最初は思ってました。ですが、国民と同じ土俵に立つ姿、普通の王妃ではあり得ないと思ったんです」

 だから、と彼女は続ける。
 
 その前にこの言葉を私は整理しようと必死になった。
 確かに、私は国民と共に歩むようにしてきた。
 それでも、他の王妃は凶悪な眼で国民聖騎士を見守る。それは、王妃に限っており陛下は聖騎士には厳しいように優しく、聖騎士より下の者には、たまに見守る姿を見せる。
 これが、少なくとも十年近くルカに尽くした私の感想である。

「私はミアを憧れたのです」

 簡単に口にするようなことではない、と思わせるような感じで彼女は見つめてくる。
 全くと思ってしまった。

 別に何かと思ったわけじゃないけど、なんだか彼女には良い意味で、呆れた。

 たまにこういう、聖騎士がいるから王国が成り立つのだ。
 心優しい聖騎士など滅多に存在しない。
 だから、ルカもそういう聖騎士は戦場に送らず、王国の平和を守る、近衛兵として国にとどめた。
 それは内部で内戦や内乱を起こさないために役立つからだ。

 つまり、聖騎士の仕事には国民の心をケアするのも、入っている。
 まあそれだけ、大変だ。
 戦場から帰ってきた兵士は良く言っていた。『国に帰って、国民の笑顔を見ると幸せなんだよな』
 と。
 今思えばその聖騎士は、戦場から帰ってきた人なのだと思った。
 戦場なんて私は勇気がなくて行けない。いや、ルカに言われて行けなかった。

「ごめんなさい。私情でついてきてしまい」

 頭を下げる彼女になんだか、申し訳なくなってしまい、私こそと言って頭を下げると、なんだか妙に安心してしまった、
 普通ならば、気まずい空間になるはずなのに、すごいな。

「大丈夫だって、それより、何か食べたくない?」

 緊張感ほぐれた私はさっきまで、お腹いっぱいだったのに今はお腹が減ってしまう。
 やはり、今は安心できる空間なのだろう。

「あっそうですね・・・・・じゃあ上位聖騎士様に話してきます。いや一緒に行ったほうが・・・・・安全だから、でもミアのストレスに・・・・・」

 彼女は独りで考えた言葉を、無意識のように口に出した。
 しかもそれは、私の心配で何かと気分が良くも悪くもなくもなった。

「じゃ、じゃあ私もついていくよ。確かに一人だと危ないし」

 決定権は私にあるので、私が切り出さなければ一生私はお腹が減ったままだ。
 アンはなんだか変わった子なのだと、同時に思った。

「あっそうですか・・・・・それならよかったです! でもくれぐれむ危ない真似はしないでくださいよ」

 まるでお母さんのように、心配してくる、彼女になんだか喜びを覚えた。
 理由は、私のことを本当に尊敬してくれていると思ったからだ。まあそうでなければ、あんなことを気安く言うはずない。

「分かってるよ」

 堂々と言い張る私に彼女は怪訝な顔で見つめてくる。
 たぶん私のことが全然信用できないのだろう。

「ならまあ、良いですけど・・・・・」

 またしても、信用ない言葉をぶつけてくる。
 私がどうしてそんなにも危ないことをする人、と思っているのか分からないけど、私は眉を顰めた。

「なんでそんなに、心配そうな眼差しで見るの?」

「だって、今までずっと護られていて人が、急に危ない戦地に、雑魚の私がミアを護ってるんですよ」

「なんで自分が雑魚と思ってるの?」
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