結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。

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第四部第五章 久しぶりの人間界

俺が本物

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「俺が本物だ」
 
 私の近くにいるほうが口を開いた。どっちも怪しすぎて、私は信じれないでいたから一旦距離を保つ。もしかしたらどっちも偽物という可能性まであるし、今までのプランスは偽物ということまであって、信じられなくなってきてしまった。
 でも本物のプランスを見極めれば、嫁という肩書きがなくなったも同然。男が廃るという言葉と同じように、私が廃ってしまう。
 だから必死に見極める、だけど・・・・・。
 どちらとも偽物に見えてしまう。いや、そもそもこの魔王城は偽物? いつもこんな感じじゃない。こんなにベタベタしてないし、こんなにも静かじゃない。
 それに暗くない・・・・・。ということは二人とも偽物・・・・・? 確かに魔力が少ない。私でも倒せるレベルの強さだ。
 でも切り抜けるべきだろう。

「君たちいやこの、魔王城は偽物なんでしょ? だから破壊させてもらう」

 私はエネルギーは指先に込めて下に向け放つ。すると、私が立っているところすらも崩れて行き、下は空洞ということがわかった。多分この城自体、悪魔が侵入してきて作ったのだろう。

 悪魔と分かったのは、魔力的偽物強大だったからだ。それにこれほどに強度な魔力だ。悪魔でもないと難しいだろう。それか魔族だ。

 魔族でも難しいというところだろうけど、魔族ならギリできる。でも、悪魔はその上をいくようなくらい強い。だけど、プランスがいるから強いから無闇に悪魔が攻めてこないのだ。
 大悪魔でも、プランスには勝てないし、束となったからって結果は変わらない。プランスに対して、束で戦うなんて無謀なことはしてはいけない、
 まさに自殺行為だ。まあこんなことを考える前に、どうやって魔界に帰るかだ。いや、ここが魔界なのかもしれないな。

 でも、この場所は分からない。ここから見えるのは、果実だ。木がたくさん生えている。つまり、ここは
砂糖島だ。ここからフリンス大陸に行くのは難しいかもしれないから、通信で連絡するとしよう。
 
「プランス聞こえる?」

[どうした? 砂糖島に居るみたいだけど?]

 呑気にしている声だけど、やっぱり冷めた声だ。これこそプランスなのだろう。

 なんだか偽物のプランスの方がやさしく感じてきた。それは気のせいなのだろうけど、癒しを得たいのなら、偽物のプランスがいいだろうな。

「迎えにきてくれることできる?」

 今私とプランスは魔力で通信している。魔力で言葉が通じるという感じだ。とても便利で危険なところに行く時なんかは、重宝している。

「迎えに行くのはいいが……お前、本当にそこにいるのか?」

 プランスの声が、微妙に疑念を含んでいた。私も同じ疑念を持っている。ここが本当に砂糖島なのか、それとも偽物の空間なのか、どちらとも判断がつかない。周囲の光景も何かが歪んで見えるし、全てが作り物のような気がしてならない。

「そこにいるっていうのはどういうこと? 私がここにいるのは事実なんだけど?」

 私は少し苛立ちを隠せず、プランスに問い返す。自分が本物であるという感覚が今にも崩れそうだった。プランスだって偽物かもしれないという疑念が頭をよぎる。

 [それは……まあいい。すぐに向かう]

 プランスの返答はあまりにも冷静すぎて、逆に不安を掻き立てた。さっきまでの私の疑念は、時間が経つごとに膨らんでいく。果たして本物のプランスが来るのか? それとも偽物が再び現れるのか?

「それなら私はここで待つわ……」

 私はその場に座り込んだ。木々の間を抜ける風が生ぬるく、何かがおかしいと感じるが、結局は自分を信じるしかない。偽物に惑わされてしまうほど、私は弱くはない――そう、自分に言い聞かせる。

 遠くから何かが動く気配があった。小さな足音が地面を揺らしている。私はその方向に顔を向けるが、何も見えない。ただ、耳を澄ませば確かに何かが近づいてくる音だけは聞こえていた。

「プランス……?」

 小さな声で呼んでみるが、答えは返ってこない。その瞬間、私は再び疑いの渦に巻き込まれた。

 ――あの足音は本当にプランスのものだろうか?それとも、偽物が再び現れるのか?

「もういい……」

 私は立ち上がり、意を決して足音の方向へ向かった。

 私は立ち上がり、遠くから聞こえる足音に向かって歩み始めた。自分の体が重く感じる。どちらが本物でどちらが偽物か、何が真実で何が幻なのか、そんなことが頭を巡って、歩く度に足が沈むような感覚に囚われ、どこか現実感が薄れていくのを感じた。砂糖島の果実の甘い香りが鼻をつくが、その香りさえもどこか偽物のように思えてしまう。偽物の城、偽物のプランス、そしてこの島自体も……。

「迎えにきてくれることできる?」

 私は再び魔力でプランスに呼びかけた。返事が遅れて聞こえた。

[少し待て、今準備中だ。すぐに向かう]

 プランスの声は相変わらず冷静だが、どこか急いでいるようにも感じられた。やはり彼が本物なのだろう。しかし、それでも私の心にはわずかな疑念が残る。どれだけ長く一緒にいても、この世界では真実は常に揺らいでいる。

 私は、今いる場所がどこなのかもう一度確かめようと周囲を見渡した。果実の木が並んでいるだけで、何の手がかりもない。しかし、ふと足元を見下ろすと、小さな魔法陣のような模様が浮かんでいるのに気づいた。まるで誰かが私をここに導いたかのような感覚。

「これは……罠だったのか?」

 胸の奥に冷たい感覚が走る。だが、考える暇もなく、足元の魔法陣が輝きを増し、私の体を引き込もうとしていた。

「しまった……!」

 私は急いで飛び退こうとしたが、重力が強くなったかのように足が動かない。まるで、誰かが私をこの場に縛りつけているかのようだ。

 ――パリン!

 突然、頭上で何かが割れる音が響いた。見上げると、虚空から無数の小さな破片が降り注いでくる。どうやら、誰かがこの空間を壊そうとしているようだ。

「プランス、今すぐ助けて!」

 私は叫んだ。だが、返事はない。魔力の通信が途切れてしまったのだろうか。それとも、これはすべて私の想像なのか?

 その時、ふと遠くに人影が見えた。ぼんやりとした輪郭だが、確かに誰かがこちらに向かってくる。

「……誰?」

 足元の魔法陣がますます強く光り、私の体を引き込もうとする力も強くなっていく。次第に視界がぼやけていき、意識が遠のいていく中で、私はその人影に向かって最後の力を振り絞って手を伸ばした。

「……助けて……」

 果たしてその人影が誰だったのか、そして本当に助けが来るのか、私はもう確認することができなかった。

 視界が完全に闇に包まれた。
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